マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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 大遅刻してしまい、申し訳ありません!
 感想への返信も行っていきますので、少々お待ちください。


 今回のお話しはマイス君視点。
 ……そろそろ誰かが一回、マイス君をぶっ叩いてもいいと思っている、そんな作者です。


ロロナ【*8-2*】

【*8-2*】

 

 

 

***マイスの家***

 

 

 

 前もって約束をしていたクーデリアと、雑談をしながら晩ゴハンを作ったりしてた、そんな時。突然(ウチ)に来たロロナ。

 ……なんだけど、玄関で会った時はいつも通りニコニコだったはずのロロナは、家に入るなり何故かすっごく不機嫌に。「ぷくーっ」と(ほっぺ)を膨らませてしまった。

 

 本当にいきなりのことで、何でロロナがそんな風になっちゃったのかはわからなかった。だけど、「じゃあ、バイバイ」とか言って追いかえしたりは絶対にしないし、むしろどうしてそんなことになったのか分かるまでは帰す気はないから、ちゃんとお話をするためにも、まずはロロナに機嫌をなおしてもらうことに。

 

 

「……っと。うん! こんなものかな」

 

 

 ()()()、《僕の目の前にはロロナはいなかったりする》》。

 僕の視線の先にはフライパンの上にある黄色い塊、『オムレツ』――『オムライス』のライスに乗せる前の卵の塊だから正確に言えば違う気がするけど――が一つ。新しく追加した一人前の晩ゴハンだ。

 

 

 なんで、そんなことになってるのかというと……クーデリアから「ちょっと邪魔だから、ロロナの分も作ってあげるなりなんなりしてなさい」といった感じの事を言われて、キッチンの方へ追いやられたからだったりする。

 

 ロロナの分を追加で作らないといけないのは決まってたことだからいいとして……家に入れてソファーに座ってもらえるまでには落ち着かせはしたけど、今日の(あの)ロロナをクーデリア一人に任せてよかったのか、っていう一抹の不安は残ってたりする。

 でもまあ、ロロナが頬を膨らませた時に、クーデリアは何かわかったような様子をみせてたし、ロロナのほうも僕がキッチンへ行かされるのを止めたりしないくらいには僕よりもクーデリアのほうに用があったみたいだし……お互いに心当たりがあるみたいなら二人で話し合ってしまったほうが、事情を知らない僕が色々口出ししてしまうよりもスムーズに解決できるのかもしれない。

 

「でも、結局何の話だったんだろう?」

 

 盛り付けておいたライスの上に卵を綺麗に乗せながら、何気なしに二人がいるリビングダイニングへの通路の方へと目をやる。流石にここからじゃ話し声は聞こえないけど、時々ロロナの「ええっ!?」なんていった大きな声だけは聞こえてくる。……その感じからして、何とも言えない沈黙が続いたり、ケンカになったりってことにはなってはいなさそう、かな?

 

 

 「でもなぁ……」と、やっぱりあのロロナの珍しい怒りようを思い出して不安を拭いきれないまま、完成した『オムライス』を運んでいく。

 

 ……もし、まだ不機嫌だったら、僕がどうにかするべきなんだろうけど……どうしたらいいかなぁ?

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 追加分の『オムライス』を持ってリビングダイニングへとついた僕が見た光景(もの)は……

 

 

「あ~う~!」

 

「はいはい。とりあえず、今は好きなだけ(もだ)えときなさい」

 

 ソファーに座り、両手で顔を(おお)い「いやっいやっ」とでもいうかのように首を横に振っているロロナ。大半が隠れてしまっている顔は、手で覆えていない部分や指の間から見えている個所の肌は、ゆで上がったかのように真っ赤だった。

 そんなロロナのすぐ隣に座って、何やら慰めの言葉らしきものをかけながら「よしよし」といった様子で背中を撫でてあげているのはクーデリア。その顔は、呆れや同情が入り混じったような複雑な表情で……でも、どこか嬉しそうっていうか「ほっこり」といった言葉が似合いそうな穏やかさも感じられる。

 

「ふぅ……恥ずかしがってるロロナも……って、あら? そっちも終わった(できた)のね」

 

「うん、ばっちり上手くできたよ。「()」ってことは?」

 

 「クーデリア(そっち)も?」と小首をかしげてみる。すると「まあね」と軽く返してくるクーデリア。

 やっぱり、最初っからロロナが不機嫌になってた原因をわかっていたみたいだったし、元々ロロナとは長い付き合いであるクーデリアからしてみれば朝飯前だったのかもしれない。……まぁ、その割にはロロナはいつも通りってわけじゃなさそうだけど。まだ僕のことに気付いてないみたいだし。

 

 追加分の『オムライス』をテーブルに置き、先に出していた分とあわせて配膳をちゃちゃっとすませた後、僕はロロナたちが座っているソファーとはテーブルを挟んで反対側にあるイスに座る。

 それとほぼ同時に、クーデリアがロロナの肩を叩きながら声をかける。

 ……顔を上げたロロナがようやく僕に気がついたみたいで、驚いた様子で「うひゃぁ!?」と声をあげたのには苦笑いするしかなかった。

 

「まぁ、とりあえず晩ゴハンを食べようか?」

 

「そうね。せっかく作って貰ったんだし、そうしましょ」

 

「う、うんっ……それじゃあ、いただきまーす」

 

 僕の言葉にクーデリアが賛同し、ちょっとモゴモゴしながらロロナも頷く。

 そして、ロロナが言ったのに合わせて僕とクーデリアも「いただきます」と続く。

 

 

 ……うん。思った通り、今日の『オムライス』は過去最高とまではいかないかもしれないけど、十分にいい出来だろう。

 そいうやって自画自賛してたんだけど……

 

「はむっ……んん~! おいしー! 『パイ』もそうだけど、やっぱりマイス君の作った料理は……はっ!?」

 

 『オムライス』をスプーンでひと(すく)いし口へ運んだロロナが、どこかいつもと違う難しい表情をしていた顔をほころばせていた。

 お墨付きをもらえたから一安心……というか、素直に言ってただ単純に嬉しかった。

 ……けど、なんでロロナはまた顔を赤くしてるんだろう? しかも、「うー」なんて言いながらたぶんだけど僕の事をジーッと睨んできてる。……うん、鋭くないけど、あの目つきはきっと睨んでるんだと思う。でも、なんでだろう? クーデリアはああ言ってたけど、まだ何か……?

 

 「それとも、ライスのほうに混ぜ込んでみた『ピーマン』が嫌だったのかな?」なんてことも考えたんだけど……どうやらそれは無かったみたい。僕のほうから中々視線を外そうとせずにもう一度スプーンで『オムライス』を掬い、食べた。また顔をほころばせ、再びハッとして…………わざとやってるんじゃないかって思うくらい、何度かそんなことが続いた。

 

 コロコロと変わるロロナの表情を、ちょっと微笑ましく眺め……ふと、その視界のはじに、同じようにロロナに顔を向けているクーデリアが見えた。そっちに目をむけてみると、偶然かそれとも視線に気づいたのか、クーデリアもコッチを見てきて……視線が交わった。

 そして……どっちが先と言うわけでもなく「クスッ」と笑った後、僕たちも自分の分の『オムライス』へとスプーンを向かわせた……。

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

「……それで? いきなりだったけど、ロロナは何か急用とかあったりしたんじゃ……?」

 

「えっと、特に用があったわけじゃないんだー。本当にただ単に「マイス君に会えたらなー」なんて思っただけの思い付きで……あははっ……ううっ、色々用意してきてるなんて言えないよぅ」

 

 晩ゴハンを食べ終えて、『香茶』を一杯飲みつつのんびりと雑談をする僕たち。このころになると、ようやくと言うべきかロロナもほとんどいつも通りに戻っていた。

 うんうん。顔を真っ赤にしているロロナは、毛を全部刈られて涙目になってる『モコモコ』と同じくらい庇護欲をくすぐるものがあるけど……でも、やっぱりいつものニコニコしてて元気いっぱいなロロナが一番だと思う。

 

 

「んなこと言って、()()()()()()()()()()()()焦ってた感じだったのにねー?」

 

「ううっ!? それはーそのっ、くーちゃんが()()()()()()()()()()()()()で……!!」

 

「えっ?」

 

「ああ~いやっ、なんでもないよ!? マイス君は気にしないで!」

 

 そうは言われても、気になるものは気になるんだけど……?

 それに、今の話は、さっきロロナが不機嫌だったことの原因に繋がっているんだと思う。それなら……

 

 

「でも、話は大体わかってると思うんだけどなぁ?」

 

 

「「えっ」」

 

 僕の言葉に、二人が揃って声を漏らした。

 ただし、ロロナは驚いた様子で、クーデリアは疑うような声色で……だったけど。特にクーデリアのほうは「何言ってるんだ、こいつは」とでも言い出しそうな、これまでにないくらいジットリとした目を向けてきてる。

 

「何言ってるの、あんたは」

 

 実際に言ってきた。

 

「いや、だってさっきの話って、ロロナがなんだか怒ってたっぽかったのと関係があるんでしょ? それなら……ね」

 

「ホントにっ!?」

 

 アワアワしだすロロナ。やっぱり()()()()()()()()()

 

 

 不機嫌になったロロナ。それを見てすぐに何かを察したクーデリア。僕がいない間に二人で話して、それからロロナが顔を真っ赤にして恥ずかしがり、クーデリアがそれを慰める。

 その状況とこれまでの経験から分かっている二人の性格や根本的な人間性。ここ最近の二人の様子等々。

 

 それらから推測し、導き出される話の全容(結論)は……!

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 きっとロロナとクーデリアで飲みに行く約束でもしてて、ロロナがその日付を勘違い。待ち合わせ場所で待ってても来なくって「急なお仕事でも入ったのか、家の用事かなー」って仕方なくロロナは移動開始。そこで思い付きで僕の家に行ってみたらクーデリアがいて、問い詰めてみたら、約束してたのは明日とか明後日だった……みたいな事だったんだと思う。

 それなら、ロロナがいきなり僕の家(ウチ)に来たことも含め、いろいろと納得できる。

 

 

 ……って、あれ? あれれ?

 

「クーデリア? どうして、頭かかえちゃってるの……?」

 

「あんたが馬鹿だから」

 

 ひどい!?

 

「だって、ねぇ? 言ってることは大体あってるんだけど……あんたのその様子からすると、どー考えても中身は全然間違ってそうなのよね」

 

「えっ? それってどういう……」

 

「ロロナみたいに、顔の一つでも赤くしてみせなさいっての! ったく……察しが良いのか悪いのか、なんで一歩手前(そこ)まで察せてそうなのに肝心のところで……」

 

 そこで大きなため息をつくクーデリア。

 

 結局どういうことなのか、よくわからないまま。

 疑問を残しつつ、もう一人の当事者であるはずのロロナのほうを見てみると……

 

「そうだよねー、マイス君だもん。ふんっ」

 

 どうしてかはかわかんないけど、また頬を膨らませてた……なんで?

 

 

 

 

 

「くーちゃんには止められたけど、やっぱり「お泊まり作戦(ツー)」を実行するしか……!」

 

「あーうん、本気ならそんくらいしないと、このアホは動じなさそうではあるわね……でも、それを本人の前で言っちゃって良かったの?」

 

「あっ」

 

 また僕の知らない話をしていた二人だったけど、そのうちのロロナが「まずいっ!?」とワタワタ慌てはじめ……そんな姿をクーデリアがまたため息混じりに見つめている。

 

 ええっと……なんだか少し嫌な予感がするんだけど……大丈夫、だよね?

 

 




クーデリア「ロロナは楽勝だった。マイスは問題外だった」

ロロナとクーデリアのやりとり。何があったかは次回のロロナ視点で回収します。

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