なお、「せいえ・・・」のイベントは書きません。
※2019年工事内容※
誤字脱字修正、細かい描写の追加、特殊タグ追加、句読点、行間……
王国祭が終わり、新たな一年を迎えたアーランド。
まあ、わたしは去年と同じで 王国からの依頼を次々とこなしていくだけなんだけど……二年目ということもあって心に少し余裕ができて、そう焦らずにやっていけそうかな?
「と、思ってたわたしはもういません……」
これまでの生活がガラリと変わってしまうかもしれない事態となっている。
その原因はもちろん師匠なんだけど――
「どうかしましたか、マスター?」
「ううん、なんでもないよ!」
今私の目の前にいるのは『ホムンクルス』の
青みがかった髪のお団子付きツインテール、そして全体的にフリルが沢山の白黒ゴシックのメイド服のような服装を見にまとった、クーちゃん以上わたし以下の身長でちょっと無表情な女の子。
『ホムンクルス』っていうのは、簡単に言うと「錬金術で生み出された人間」みたいなものらしい。
なにはともあれ、ほむちゃんはカワイイし、調合を手伝ってくれるし、おつかいにも行ってくれるみたいだからすっごく助かるんだけど……。
「ん、なんだ? ロロナが「弟か妹なら妹がほしい」と言ったから用意したのだが、何か気に入らないところでもあったか?」
「そういうわけじゃないですけど……」
あえていうなら、手伝ってくれるのはすごく助かるけど そこに重点を置きすぎてて妹って感じが薄れちゃてる気がする……カワイイからいいか!
そんなことを考えていると、師匠がほむちゃんに何かを小声で言ったかと思えば、わたしの腕を掴んで強引に引っ張って奥の部屋に連行してきた。
「わわっ! いきなりなんなんですか師匠!」
「し! 静かにしていろっ! さて、どうなる……」
師匠がドアの隙間から何やら覗いていたから、ちょっと気になってわたしも覗いてみると……錬金釜のおいてある場所の少し前にほむちゃんがチョコンと座っているだけ。
カワイイけど、それがどうかしたのかな……?
コンコンコンッ
アトリエの入り口からノックの音が聞こえてきた。
でも扉は開かれなくて、シーンとした時間が少し続く……
コンコンコンッ
「こんにちはー」
次のノックの後には挨拶が付けたされたけど、それは誰かいるかいないかの確認みたいで、扉を開けて入ってこようとはしていないみたい。
お客さんが困らせてしまうと思い、奥の部屋から出て玄関まで行こうとしたけど、師匠に捕まえられ止められた。
そして、師匠がほむちゃんに小声で――
「ホム、返事をして入らせろ」
――と言って、わたしを捕まえたまま奥の部屋に戻り、また覗いて様子を見る体勢になった。
コンコンコンッ
「……すみません、誰もいませんか?」
「いいえ、います。お入りください」
ほむちゃんの見た目に合わない
入ってきたのはマイス君。
「こんにちはー……えっと……?」
「いらっしゃいませ」
「はじめまして、だよね?僕はマイスっていいます」
「ホムはホムです」
「それじゃあ、ホムちゃん……でいいのかな?」
そう言うマイス君。はじめは見知らぬほむちゃんに戸惑っていた気がしたけど、すぐにいつものように話せるようになっていた。
「……おもしろくないな」
「師匠、マイス君に何を求めてるんですか……」
小声で師匠に言い返してみたけど、師匠はマイス君がほむちゃんにどんな反応をするのか気になってたってことかな?
マイス君は手に持っていたカゴをおろすと、床に座っているほむちゃんと向かい合わせになるように自身も床に座った。
「ホムちゃん、ロロナはどこかに出かけているのかな?」
「マスターは用があるそうで、今いません」
「そっか……どうしようかな」
「むー」と悩んでいるマイス君と、相変わらず無表情で何をするわけでもないほむちゃん。
マイス君はわたしに用があるみたいだし、そろそろ出てあげないといけないと思って師匠にもう出ていいか確認しようと思ったら、悩んでたマイス君が――
「それにしても……
アストリッドさんに こんな大きな子供がいたなんて……!」
「ぶふっッ!!??」
ごめん、マイス君! 予想外の言葉に吹き出しちゃった!!
一緒に覗いていた師匠は師匠で口をポカンと開けて固まってる。こんな師匠はじめて見るかも……!
「はい、ホムを生み出したのはグランドマスターです」
「ああっ、やっぱりそうなんだ!」
ほむちゃんは間違ったことは言ってないんだけど「錬金術で」って言葉が抜けてるせいで勘違いがそのままになっちゃった。
「それなら、ロロナのことを『マスター』なんて変わった呼ばせ方させてるのも納得だよ」
その発言、マイス君のなかで師匠がどういう存在なのかが凄く気になっちゃうんだけど……
「その凛として、綺麗で、おしとやかな感じは、ロロナを弄って遊んでいない時のアストリッドさんにそっくりな気がしたんだ」
「……わかりませんが、グランドマスターとホムを褒めていると判断できます。どうすれば良いのでしょうか?」
どうして師匠の子供だと思ったのかはわかったけど、それだけの要素でよくそう思ったね……?
ほむちゃんは相変わらずの表情のはずなんだけど、ちょっと戸惑ってるようにも見えなくもないような気がする。
そして、師匠はといえば――
「ここ最近、真面目になったことは一度も無いはずだが、何故そう思ったんだ……?」
師匠、たまには真面目になってくださいよ……。
「それに……若くても僕と同じくらいの子供のいる
「……? よくわかりませんが、グランドマスターがホムを生み出したことは間違いありません」
これ、ほむちゃんが認めたこともあってマイス君の中で「ホムちゃん=アストリッドさんの子供」っていうのが完全に決まっちゃってないかなぁ?
「いいんですか師匠?」
「いや、出るタイミングが中々つかめなくてな……というか、考えようによっては、奴はエスティ嬢に喧嘩売っているのだが、言うべきだろうか」
「それで、マイスはマスターに何の用があったのですか? 内容によってはホムからマスターにお伝えしますが」
「ああ、用事ってほどじゃないんだけどね。うちで作ったモノのおすそわけに来たんだ。だから渡してくれるだけでいいよ」
そう言って、マイス君はカゴから何かを取り出す。
「この『アップルパイ』なんだけど――「パイっ!?」
「「「…………。」」」
「ロロナ?」
「どうしました?マスター」
「あっ……」
驚いた顔でわたしを見るマイス君、無表情で同じくわたしを見るほむちゃん
「え、ええっと……」
「パイで飛び出すのはさすがに驚きだぞ、ロロナ……」
少し呆れたように師匠が言ってきた。
「まあ、キミにもいろんな意味で驚いたがな、マイス君」
「もしかして、ずっと聞いてました……?」
「キミがどういうリアクションをするのか少々気になってな。…良くも悪くも予想の斜め上をいったものだ」
そう言いながら師匠はソファーに座った。
「せっかくだ、その『アップルパイ』を食べながら話そうか。ホム、お茶を入れてくれ」
「はい、グランドマスター」
立ち上がり香茶の準備をするほむちゃん。
マイス君は……「どういうこと?」っていいたそうな困り顔でわたしを見てきてる。座ったままの状態だから上目遣いになってて、いつも以上にカワイイなぁ……
その後、アップルパイを食べながらほむちゃん『ホムンクルス』のことを話して、誤解を解いた。