たくさんの読者の皆様の参加、ありがとうございました。次回の更新までに集計し、結果発表を行いたいと思っていますので、お楽しみに!
そして、今回のお話ですが「このタイミングで起こるのか?」と思う方もしるかもしれません……が、いちおう発生しないわけではないイベントです。きっと……たぶん、条件的にはは大丈夫なはずです。
メタァ……なことを言えば、「二次創作だから大丈夫」ですんでしまいますが。
***アランヤ村・トトリのアトリエ***
「はぁ……」
部屋の角っこに置いてある机の前のイスに座っているわたしは、気付けばため息を吐いていた。
机の前のイスに座っているとはいっても、別に棚に並べてある『錬金術』の参考書を読んでいたり、レシピを考えていたりしたわけじゃない。むしろ、何もやる気が出ないというか……心配で、不安で手がつかないというか……。
「トトリ?」
「わぁっ!? ぴ、ピアニャちゃんかぁ……」
窓から見える景色を眺めていたら、ピアニャちゃんに声をかけられた。いつの間にか知らないうちに、わたしのすぐそばまで来ていたみたい。
「ちむ~」
「ちむちーむ」
「ちっむ、ちっむ」
「ちちむー」
そのピアニャちゃんの足元には、ちみゅみゅみゅちゃん、ちみゅみみゅちゃん、ちむどらごんくん、ちむまるだゆうくんがいた。きっと、おねえちゃんが出掛けているあいだピアニャちゃんの遊び相手になってくれてたんだと思う。
「えっと、ピアニャちゃん、どうかしたの?」
「んー……トトリ、なんか元気ないなって思って……何かあったの?」
ピアニャちゃんに心配をかけちゃってることを申し訳なく思いつつ、ピアニャちゃんに聞かれた「わたしが元気が無い理由」について思い出した。
ピアニャちゃんやおねえちゃんたちと『青の農村』と『アーランドの街』を観光してまわったあの一泊二日の旅行を終えた後『アランヤ村』に帰ってきたわたしは、ゲラルドさんのお店で依頼を受けつつ……何か忘れているような気もしたけど、ノンビリと過ごしていた。
そう、あの時も自分のアトリエで調合の準備をしていたんだけど……
――――――――――――
***
「あー、うー! ヒマだー……」
「もうジーノくん。ヒマだからって、わたしのアトリエでゴロゴロしないでっ!」
「えー、だって……」
ジーノくんが寝転がっているのは、わたしのアトリエにあるベッド……とはいっても、先生のアトリエに行てったりソファーで寝ちゃったりすることが多くて、ほとんど家にいるちむちゃんたちの遊び場になっているんだけど……そこでジーノくんはゴロゴロしてた。
「何かすること無いの?」
「することって言っても、日課の鍛練は朝一で終らせちまったし……それに、冒険しようにも村の近くは弱っちいのばっかで、遠くは準備が面倒だからなぁ」
そう言って口をとがらせている様子を見てると、なんていうか、『冒険者免許』を更新して一人前の冒険者になってるはずだし、『フラウシュトラウト』っていう凄いモンスターを一緒に倒したりしているのに、ジーノくんって全然変わらないなぁ……って、すっごく思った。
まぁ、いきなり変わられても気持ち悪いんだけど。
「そういえば、最近はステルクさんに修行をつけてもらったりはしてないの?」
「いや、してるぜ? 試合とかもしてるし……でも、師匠に全然勝てないんだよなぁ……。それに、この前「街に行く」って言ったっきり、師匠まだ帰って来てねぇんだもん」
「へぇ、そうなんだ」
でも、おねえちゃんたちと街に行った時にはステルクさんに会わなかったような……?
もしかして、前に言ってた王様を見つけて追いかけてたのかなぁ?
……って、そんなこと考えてたら、なんでかわからないけどジーノくんがわたしのことをジィーっと見つめてきてた。なんだか目をキラキラさせてて、イヤな予感がするんだけど……。
「そうだ! ヒマだし、この際トトリでもいいや!」
「わたしでもいい……って、何の話?」
「試合っ、試合の相手! よしっ、そうと決まればさっそくやりに行こうぜー!」
試合の相手……? ええっと、それってつまり……?
「え、ええっ!? 無理! そんなのできっこないよ!? わたしがジーノくんの相手なんて……」
「んなことわかってるって! まっ、ヒマ潰しにやろうぜ、やーろーおーぜー!」
「で、でも……」
そうやってやるのを渋ってたんだけど、そういているうちに段々とジーノくんの機嫌が悪くなってた。そして、ついには「ぶー、ぶー」言いだした。
「なんだよー。やってくれないなら、ここでずーっとダラダラし続けてやる! ……だら~……ぐだ~……でろでろ~」
変なことを言いながら、ベッドの上で両手足を投げ出してダラけたり、転がったりしだしたジーノくん。
そんなことをされ続けたらさすがに調合にも集中できなくなっちゃうから、しないでほしいんだけど……でも、そうなるとジーノくんの試合の相手をしなくちゃならなくなるわけで……。
色々迷った末、わたしはため息を吐きつつベッドで寝転がっているジーノくんに言った。
「もうっ……一回だけだよ? 一回やったら帰ってね?」
「よっしゃー! じゃあさっそくやろうぜ!!」
「えっ、ちょ……まだ、準備が……きゃー!?」
……こうして、わたしは村から少し離れた岬にある原っぱに腕を引っ張られていった……。
――――――――――――
そして……
「……えっ」
「あれ? ……か、勝っちゃった?」
いきなり連れ出されて爆弾とかを持ってこれなかったから、杖だけで戦うことになったんだけど……今、わたしの目の前には尻餅をつくようにして倒れているジーノくん。そう、わたしはジーノくんに勝ったんだ。
「や、やったー! わたし、ジーノくんに勝っちゃった!」
「…………」
予想外のことに、わたしは
「あっ……ご、ごめんね。ジーノくん、手加減してくれてたんだよね? なにのわたし……」
「…………うっ、ぐすっ」
わたしが謝っていたら、呆然としてたジーノくんの顔が段々歪んできて、目じりのあたりに涙が溜まり始めた。
……!? も、もしかして、パッと見たところ大きな怪我とか無さそうに見えるけど、実はどこかに……!?
「ジーノくん!? どうしたの!? どこか痛いところが……!」
「うるさい! 触んな!!」
駆け寄って怪我が無いか確かめようと伸ばした手をジーノくんに振り払われた。
そして、ジーノくんは立ち上がって……
「う……うわあああぁーーん!!」
大声で泣いて走り出してしまった。
「ジーノくん!」
「くっ、遅かったか……!」
走っていったジーノくんを追いかけようとしたんだけど、いきなり後ろの方から声が聞こえてきて驚いてしまい、足が止まってしまう。
そして、反射的に後ろを振り向いた。そこにいたのは、直前まで走っていたのか息が荒く肩で息をしているステルクさんだった。
「ステルクさん! どうしてここに!?」
「村に着いたら、キミたちが戦いに村の外の出たと聞いてな。もしやと思い、急いで追いかけたのだが……」
そこまで言うと、ステルクさんは少しだけ目を伏せてしまう。
「……アイツも、私と同じ十字架を背負ってしまったか……」
「何の話ですか? ……って、そうだ! ジーノくん追いかけないと!」
「行くな!」
走りだそうとしたところで、ステルクさんに強い口調で呼び止められてしまう。
「今、キミが追いかけたところでアイツの傷口に塩を塗ってしまうだけだ。……ここは私に任せてくれないか」
「ステルクさん……お願いします」
――――――――――――
***今現在・トトリのアトリエ***
「……ってことが、昨日あってね」
「ふーん……よくわかんない」
「あはははっ。そ、そうだよねー」
キョトンとして首をかしげているピアニャちゃんを見て、自然と笑いが込み上げてきた。
……でも、こうやってアトリエでボーっとしててもどうしようもないわけで……でも、やる気も出無いし……どうしよう?
「……ちょっと、外の空気を吸ってこようかな?」
そう思い立ち、わたしはイスから立ち上がる。
「トトリ、どこ行くの?」
「うん、ちょっと気分転換に村の中を散歩してこようかなーって」
「そっかー。ピアニャはちぇちーにお留守番頼まれてるから、待ってるね!」
「ちむむー?」
「ちむーちむちむっ」
「ち~む~!」
「ちちむ、ちむー!」
ピアニャちゃんとちむちゃんたちに見送られて、わたしはアトリエを出た……。
――――――――――――
***アランヤ村・村中心広場***
「なんとなく出てきたけど……どうしよう?」
村の中を歩き回ってみてもいいような、広場のベンチに座って空を眺めてみるのもいいような……ゲラルドさんのお店に行って、お酒は飲めないけど誰かと話してみるのもいいかもしれない。
……と、そんな事を考えながら歩いていると、広場に入ってくる人影が見え……それが誰なのかわかったところで、わたしは駆け出した。
「ステルクさん!」
「キミか。となれば……」
「ジーノくんは……ジーノくんはどうなったんですか……?」
わたしがそう聞くと、ステルクさんは眉間にシワを寄せて、ただでさえ普段から怖い顔なのに一層顔を怖くした。
「アイツは……その、なんというかだな……」
「もしかして、ダメ、だったんですか……」
「いや、そうじゃないんだが……何と言ったものか」
何故かはわからないけど、中々教えてくれないステルクさん。
もしかして、本当にダメで、わたしには会いたくないなんてジーノくんが言ったんじゃ……。そう思うと涙があふれてきて……!
「お、落ち着け! 実は、そのだな……まだ、アイツを見つけられていないんだ。昨日と今日で村の中を何度も周ったんだが……影も形も見当たらなくてな」
「それって、もしかして……! 家出ですか!?」
「彼も『冒険者』なのだから「家出」という表現はいささかおかしいと思うが……? いや、むしろ逆に家に引きこもっているのか? アイツの実家は私も知らないから行けていないし、あり得ない話ではないかもしれんな」
「それならわたしが……!」
ステルクさんが調べられていないというジーノくんの家へ案内しようと、ステルクさんの手を取って歩き出そうとしたんだけど……
「ジーノ君なら、もう村にはいないよ」
「ひゃっ……! お、お父さん!? いつの間に!?」
「それで、村にはいないとは、どういうことでしょう?」
いつの間にかわたしたちのすぐそばにいたお父さん。そのお父さんにわたしは驚いてしまったんだけど、ステルクさんはそこまで驚かなかったみたいで、すぐさまお父さんの言葉の意味を聞いていた。
「昨日のことなんだけど、釣りをしようと思って港に行ったらジーノ君が泣いていてね、どう声をかけるべきか迷っていたら偶然マイス君が来たんだ」
「マイスさんが?」
「ああ。後から聞いた話なんだけど、なんでも本当はトトリが前に言ってたっていう『お酒』のことがどうなったかを調べに来たらしいよ? で、村に来たから私なんかにも挨拶しようと思って港に来たらしい」
『お酒』っていうと……『ビア』と『コヤシイワシ』を調合して作った『アンチョビア』とか、ついこのあいだ作った、『バクダンウオ』を使った『爆弾酒』、『トゲマグロ』を使った『マグロワイン』、『蝶々魚』を使った『バタフリキュール』とかのことなんだと思うけど……。
確か、一番最初にゲラルドさんにお酒の事を頼まれた時に、お酒の作り方をマイスさんに教えてもらったんだよね。その時の事を覚えてて、マイスさんは気にしてくれてるんだと思う。
……そう考えると、せっかく教えてくれたのに作ったお酒が生臭くて気持ち悪いものなのは、凄く申し訳ない気がする。ゲラルドさんのお店が生臭い理由がお酒のせいだって知ったら、マイスさんショック受けるんじゃあ……? でも、ゲラルドさんはあんなので喜んでるし……。
「話を戻すけど、ジーノ君はマイス君と話しだしたかと思ったら、ちょっとしたら何かせがむようにしてね。その後、大きな声で「んじゃ、『青の農村』に行くぜー!」って言って港を飛び出していったんだ」
「あれ? お父さんはお話に参加してなかったの? ……あっ、もしかしてお父さん、気付かれてなかった?」
「ジーノ君にはね。マイス君はいるのはわかってたみたいで、ジーノ君が飛び出していった後に私に声をかけてきたよ」
「そこで、さっきのお酒のことを聞いたんだ」とお父さんは付け足して言った。
ええっと、つまりジーノくんはマイスさんと何かを話した結果、『青の農村』に行ったってことで……。
「も、もしかして! ジーノくん、冒険者を辞めて農家になるの!?」
「さすがにそれは無いと思うが。だが……あんなに嫌がっていた道を選ぶほど、精神的に追い詰められていたんだろうな……」
……?
ステルクさんの言ってることはよくわからないけど、とにかくジーノくんは『青の農村』にいるっていうことは間違い無いはず。なら、今から会いに行って、あの時の事を謝って……。
そう考えると、ふいに肩をポンと叩かれた。わたしの肩に置かれた手はお父さんのだった。
「会いたいって気持ちもわかるけど、今はジーノ君にとって大事な時、色々考えたないといけない時期なんだと思う。だから……少しの間だけ待ってあげるといいよ」
「そう、なのかな?」
「そう心配そうな顔をするな。……私が『青の農村』へ様子を見に行っておこう。だから、キミは自分のすべきことをしていればいい」
ステルクさんにそう言われて……やっぱりまだ気になるけど、わたしはジーノくんのことはステルクさんと……あと『青の農村』にいるマイスさんを信じることにした。
わたしがすべきこと……?
そういえば、何かあった気がするんだけ……アトリエでも何か思い出しそうだったんだけど……?
「あ……ああっー!! そういえば、どうして村に帰りたくないのか、ピアニャちゃんに聞くのすっかり忘れてたー!?」
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***????***
ボキンッ
「「あっ」」
「ジーノ君、これで三本目なんだけど……力任せに地面に降ろせばいいんじゃないんだよ?」
「つっても、思いっきりやらないと修行って感じがしねぇし……」
「だからってさぁ。もうっ、ギゼラさんじゃないんだから十何本も叩き折られたら困るんだけど」
「えっ、トトリのかーちゃんも折ってたのか!? なら、それと同じくらいの数折れば、オレもトトリのかーちゃんみたいに強く……」
「えっ、いや、その理屈はおかしくない?」