マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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 更新遅れてしまい、大変申し訳ありませんでした!
 昨日の夕方頃からの記憶がスッポリ抜け落ちてるんですが……まあ、理由は作者自身がよくわかっていますので、ご心配なく(?)


 さて、作者「小実」のページの活動報告にて行っているアンケートですが、今現在も受付中です!
 そして、活動報告にてアンケートは(~6/25まで実施予定)としていますが、正確には6/25の本編更新が行われた時点で締切とさせていただきます! 次回の投稿の際にも書かせていただきますが、お忘れの無いようお願いします。


5年目:マイス「『青の農村』は今日も賑やか」

 

 僕の家に、『錬金術』による調合をしに錬金釜を借りに来ていたミミちゃん。

 僕はそんなミミちゃんの調合を見守りつつ、ミミちゃんと話していたんだけど……

 

 そんな『作業場』に、さっきまでミミちゃんとの話の話題になっていたトトリちゃんが入って来た。それに続くようにしてメルヴィアが。さらには、ピアニャちゃんにツェツィさん、パメラさんまで家に来ていたのだ。

 

 

 そんなわけで、ずいぶんと賑やかになった僕の家だけど、さすがに『作業場』で立ち話っていうわけにもいかないので、ミミちゃんがしていた調合の片付けをしてから、リビングダイニングの方へと案内した。

 

 

――――――――――――

 

 

***マイスの家***

 

 

「はい、『香茶』です。よかったらどうぞー」

 

 そう言って僕は、みんな分用意した『香茶』の入ったカップをテーブルに置いた。テーブルを囲む形で配置されているのは、三人がけのソファー一つに一人がけのイスが三つ。……これらが全て埋まるというのも珍しい気がする。

 

 

「あれ?」

 

 ふと目にとまったのは、三人がけのソファー。そこに座っているのは左から順にミミちゃん、トトリちゃん、ツェツィさん。……で、それがどうしたのかというと……

 

「てっきり、ピアニャちゃんを挟んでトトリちゃんとツェツィさんが座るのかと思ってたんだけど……」

 

 当のピアニャちゃんはひとりでイスのほうに座っているのだ。……残り二つのイスには、それぞれメルヴィアとパメラさんが座っている。

 

 僕の疑問に答えたのは、『香茶』を受け取って一口口にしたツェツィさんとトトリちゃんだった。

 

「私もそうしたほうがいいと思ってたんですけど……」

 

「ピアニャちゃんが「こっちがいい!」ってイスから離れなかったんです」

 

 ああ、なるほど……。だからキッチンで『香茶』を準備している時に、少し騒がしかったんだ。……まあ、ピアニャちゃんくらいの子なら、特に理由も無く我儘を言ったりしたくなるものだろう。

 

 そんなことを思いながら、ピアニャちゃんのほうへ目をむけたんだけど……不思議なことに、何故かピアニャちゃんはイスから立ち上がっていて、ニッコニコの笑顔で僕のほうを向いていた。

 

「ん! マイス、ここ座っていいよ!」

 

「えっ、でもそしたらピアニャちゃんが座るところがなくなっちゃうよね? 僕のことは気にしなくていいよ」

 

「大丈夫! ピアニャ、マイスのおひざの上に座るから!」

 

 

「「「「えっ!?」」」」

 

「ちょ!?」

 

「あらあら~。仲良しね~」

 

 僕の声に被るようにトトリちゃん、ツェツィさん、メルヴィアが。ワンテンポ遅れてミミちゃんが驚きの声をあげ、パメラさんだけがいつもの調子でニッコリ笑った。

 

「ねぇマイス、早く早くー!」

 

「早くって……ええ?」

 

 どういうことだろう? 『最果ての村(あっち)』だと普段から誰かの膝の上に座るのが普通だったんだろうか? それにしたって、僕以外でもいいはずなんだけど……それに、これまでトトリちゃんたちの家にいたわけだし、トトリちゃんとかツェツィさんにせがむならわかるんだけど……?

 

「ピアニャちゃん! お膝の上がいいなら私がっ!」

 

「おねえちゃん、必死過ぎ……。でも、ピアニャちゃん。ピアニャちゃんとマイスさん、あんまり大きさ変わらないし、潰れちゃうかもだからやめといたほうが……」

 

「トトリちゃん……さすがの僕もそこまで小さくないと思うんだけど……?」

 

 それに、トトリちゃんよりも大きいから、そこまで言われるほどじゃ…………いや、でも、少し追い付かれてきてる気もするけど……それに、同じくらいだったミミちゃんももう僕よりちょっと背が高くて……で、でも! さすがにピアニャちゃんには負けてないよ!?

 

 

 そんなふうに内心焦ってしまっていた僕だけど、ピアニャちゃんが膝の上に座ってくることは別に何の問題も無いから、座ってしまおうかと思ったんだけど……そこに、別の人がピアニャちゃんに声をかけた。

 

「ピアニャちゃーん? お膝なら、あたしのところも空いてるわよ~?」

 

「ほんと!? なら、そっちに座る!」

 

 そう言ってピアニャちゃんはテトテトと駆け寄り、()()()()()の膝の上に飛び乗った。

 ツェツィさんが「そ、そんなぁ……」と肩を落として落ち込んでいる……のは、ひとまず置いといて、僕は膝に座ったピアニャちゃんの頭を優しく撫でているパメラさんが気になった。

 

「へぇ、パメラさんとピアニャちゃんって仲が良いんですね」

 

「そうよ~。ツェツィがトトリとメルヴィアと一緒に冒険に出た時には、あたしのお店で預かってるの。だから、仲良しなのよ~」

 

「マイス! お店屋さんごっこ楽しいよ!」

 

 そう笑顔で言うピアニャちゃんを見て「本当に楽しかったんだろうなぁ」と思った。……でも、色々と気になる内容があったんだけど?

 

 ツェツィさんが冒険って……大丈夫なのかな? いちおう、トトリちゃんとメルヴィアっていう一流の冒険者がついているなら、よほど強いモンスターが出てくる採取地じゃなければ大丈夫だとは思うけど……

 もしかして、ギゼラさんから受け継いだ冒険者の才能がツェツィさんにはあったり……? いや、さすがにそれはないか。

 

 

 ほんの数秒間。そんなことを考えていたんだけど、その間をどう思ったのかパメラさんがクスクスと笑い出した。

 

「あらあら……嫉妬しちゃった?」

 

「えっ、なんでですか?」

 

「もうっ! マイスったら相変わらずつれないんだからー」

 

 そう言ってパメラさんが(ほお)をプウッと(ふく)らませた。けど、僕には何が何やらで……?

 と、そんな様子を見てか、トトリちゃんが少し首をかしげて言ってきた。

 

「あの……前から思ってたんですけど、マイスさんとパメラさんってお友達……なんですよね?」

 

 「友達」って言った後に変な間があった気がしたんだけど、気にはなったもののソコがどうしたのかわざわざ聞く気にもならなかったから、とりあえずトトリちゃんの問いに答えることにした。

 

「そうだよ。アーランドがまだ『王国』だったころからの付き合いなんだ」

 

「そうよ~。でも、聞いてよトトリ。マイスったらあたしがロロナのところでお世話になってた頃は会いに来てくれてたのに、お店を開いてからは全然来てくれなかったのよ? それに、『アランヤ村』でもマイスのほうから会いには来てくれなくて……ヒドイと思わな~い?」

 

「ええっ……それはちょっと、どうかと思いますよ?」

 

 そう言って非難の目を向けてくるトトリちゃん。

 確かに、パメラさんが言ってることは大体あってる。事実、『アランヤ村』の『パメラ屋さん』というお店に関しては、途中まで気づいていなかったということもあって全く立ち寄ったことが無い。

 だけど……

 

「でも僕、開店してすぐの頃のお店に行った事ありますよ? ただ、何も買うものが無くて帰ったんですけどその時「冷やかしなら帰って~」って言われて……それ以降は申し訳なくていかなかったんですけど」

 

「あ、あら~? そんなことあったような……なかったような?」

 

「たしかにパメラさんのお店の商品って、マイスさんが欲しがりそうな物は無かったような?」

 

 パメラさんのお店の品ぞろえを思い出すようにして呟くトトリちゃん。

 ……と、そこにミミちゃんが一言挟み込んできた。

 

「そもそも、王国時代の頃からマイスは、他所の店で何か買ったりしなくてもいいくらい大抵のものは自給自足できてたんじゃなかったかしら?」

 

 その言葉に、トトリちゃん……あとメルヴィアが「ああ……」と声をもらしながら納得したように頷いていた。なお、ツェツィさんは驚いたように「えっ!?」と声をあげていて、ピアニャちゃんは話がよくわかっていなかったみたいでコテンッと首をかしげていた。

 

 

――――――――――――

 

 

「そういえば……結局、なんでみんなして『青の農村(うち)』に来たの?」

 

 みんながひととおり『香茶』を飲み終えたあたりで、僕はトトリちゃんに向かってそう話しを切り出した。

 

「あっええっと、それは……」

 

 トトリちゃんは少しどもりながら、パメラさんの膝の上でいまだ『香茶』をゆっくりと飲んでいるピアニャちゃんをチラリと見た後、改めて口を開いた。

 

 

「ピアニャちゃんから色々話しを聞こうとしてたら、ピアニャちゃんが「『あおののうそん』に行きたい!」って言いだしちゃって。それで、仕方ないから一回連れて行ってあげようかなって思って……で、おねえちゃんが「トトリちゃんとピアニャちゃんが行くなら私もっ!」って」

 

 トトリちゃんに続いて、今度はメルヴィアが話しだす。

 

「んで、トトリたちがツェツィが少し村から離れることをゲラルドさんに伝えに行った時にあたしもそこにいて、ならあたしもついて行こうかなってなって……ほら、最近のツェツィってちょっと心配じゃない?」

 

 メルヴィアの言いたいことはなんとなくわかった。

 僕はツェツィさんとはそこまで親しいわけじゃない。だから「前と比べて」なんてことは言えないけど、それでも最近のツェツィさんはピアニャちゃん関係になると変になる気がする。……それは心配になってもしかたないと思う。

 

「それで、店番がヒマだったあたしが気分転換にピアニャちゃんに会いに行こうとしたら、たまたま『青の農村』へ出発しようとするみんなに会ってね~。なら、あたしも里帰りにーってことでついて行くことにいたの~……別にここが故郷ってわけじゃないんだけどね」

 

 最後に、頬に手を当てながらそう言ったのはパメラさん。

 ヒマだったからって店番を投げ出したっていうのがいろんな意味で心配なんだけど……当のパメラさんは特に気にした様子も無く、その顔にはいつも通りの微笑みが浮かんでいた。……本当にいつもそんな感じでお店をやってるのかな?

 

 

 

 ……さて、みんなからどういう経緯で『青の農村(うち)』に来たのか聞いたけど……

 

「……つまり、特別何か用があったってわけじゃないんだ」

 

「そうですね。ただの観光ってことになるかと……」

 

 もちろん、別に観光が悪いってわけじゃない。実際のところ『青の農村』を訪れる人のうち、作物の買い付けなどの「商売目的」の次くらいの多いのが「観光目的」なくらいだ。だから、むしろあがたいくらいだったりする。

 

 となると、問題はここからの観光の内容なんだけど……

 

 

「お祭りは、ついこの前あったから次は来月だし……後は、お店と畑ばっかりで見て楽しめるなんてものはほとんど無いかな? 後は普通の村っぽいノンビリした雰囲気を……って、それは『アランヤ村』でもできるか」

 

「あの、リオネラさんはいないんですか? 人形劇ならピアニャちゃんも喜ぶと思いますよ? それに、わたしも観てみたいかなぁって」

 

「リオネラさんは街のほうで活動しているから、すぐにっていうのは……あっ、でも今日の昼過ぎに『青の農村(ここ)』の広場で人形劇をするって予定が入ってたっけ」

 

 トトリちゃんたちと海に出たあの冒険の際に、長期間家をあけてしまうのにその管理をリオネラさんに任せてしまうのは悪いと思い、あの時にリオネラさんには活動拠点を僕の家の『離れ』から街のほうへと移ってもらっていたのだ。だから、最近も活動拠点は街のほうのままなんだけど……あの時はたしか、フィリーさんやクーデリアもリオネラさんが住む場所を探すのを手伝ってくれたんだよね。

 

 そんなリオネラさんだけど、『青の農村』にも定期的に人形劇をしに来てくれている。ちょうど今日の午後がその時だったのだ。

 でも、今はまだ昼前の午前中。まだまだ時間がある。

 

「昼は僕がご馳走するとして……それまでどうしようか?」

 

 僕の言葉に、トトリちゃん、ツェツィさん、メルヴィアが「うーん」と頭を悩ませていた。

 農業……は、興味を持ってるピアニャちゃんだけなら体験させてあげたりしてもいいんだけど、他の人たちを放っておくわけにはいかないから少し難しい。街に行く……ってなると、もう街でいいんじゃないかなって話になる。

 

 そうなると……他に何かあるかなぁ? 

 

 

 

 そんなふうに悩んでいるところに、小さなため息が聞こえた。聞こえた方を見ると、そこにいたのは少しだけ呆れたような顔をしたミミちゃんだった。

 

「何悩んでるのよ。『青の農村(ここ)』には、モンスターと(たわむ)れることが出来るっていう他所じゃ絶対できないことがあるでしょ」

 

「「あっ」」

 

 僕とトトリちゃんの声が重なった。そして、そのまま顔を見合わせる。

 

「……じゃあ、とりあえず外に出よっか?」

 

「そうですね」

 

 

 

――――――――――――

 

***青の農村・広場***

 

 

 

 みんなを連れて家から出て、とりあえず『広場』のほうへと行ったんだけど……

 

「大丈夫……なのよね?」

 

「うん。まぁ、あたしもよく知らないけど」

 

 そう、心配そうにしているツェツィさんとメルヴィアが見ているのは、僕らを()()()()ようにして集まってきたモンスターたち。

 『青ぷに』、『緑ぷに』、『耳ぷに』、『ウォルフ』、『たるリス』、『近海ペンギン』、『サラマンドラ』……あとは、暴れなくなった『暴れヤギ』など、冒険者なら普段敵として相対しているモンスターたちだ。

 

 村のあちこちにいるモンスターたちのうちの何体かが、歩いている僕に気がつき「おっ、マイスだ!」と寄って来て、それに釣られるようにして「なんだなんだ?」とさらに寄って来て……『広場』に着くころには十数体のモンスターが取り囲むまでになったのだ。

 

「『青の農村(ここ)』には何度も来たことあるけど、わたしもこんなに一杯が来るのは初めてかも……」

 

「あたしもよ~。なんだか、人気者になっちゃったみた~い!」

 

 トトリちゃんはモンスターの多さに少し腰が引けてしまっている。けど、パメラさんの方はむしろ嬉しそうに「いや~ん」と体をくねくねさせていた。

 

「うわぁ……! いろんなのがいっぱい! えへへっ、お友達になれるかな?」

 

「大丈夫よ。『青の農村』のモンスターたちはマイスに似て優しい子ばっかりだから、こっちから叩いたり危害を加えなければ何もしてこないわ。そこの『近海ペンギン』なんかいいんじゃないかしら? 頭を優しく撫でてあげたら喜ぶわよ」

 

 そう言ってピアニャちゃんにモンスターとの接し方を教えてあげているのはミミちゃんだ。まだ小さかったころに『青の農村(ここ)』に来てモンスターたちと遊んだことがあるからか、ミミちゃんもモンスターたちも互いに慣れている様子だった。

 なお、ピアニャちゃんに「よしよーし」された『近海ペンギン』は嬉しそうに翼をパタパタさせていた。

 

 

 

「なー」

 

「あっ、この鳴き声は……」

 

 僕にとっては聞きなれた泣き声に反応したトトリちゃんが、キョロキョロした後に僕の足元に目を止めた。

 つられるようにして僕も自分の足元を見て……予想した通り、「なー」が僕の足に行儀良く座っていた。そのなーを、僕は一度しゃがみ込んで両手で優しく抱き上げた。

 

「な~ぅ」

 

「あはははっ、元気そうでなによりだよ」

 

 ()(かか)えてあげると、なーは甘えるようにひと鳴きした後、僕の胸に体全体を使ってグリグリと擦り付けてきた。それに合わせる様にして、僕はなーの喉元を撫でさすってあげた。

 

 

「マイスさん、そのネコさんってやっぱり『青の農村(この村)』の子なんですか?」

 

「そうだよー。正確には、『青の農村』が出来る前から僕の家で暮らしてた子なんだけどね。今ではこの村の立派な看板ネコだよ」

 

「でも、ネコがモンスターと一緒にいて危なくないんですか?」

 

 そうツェツィさんが心配そうに僕の腕の中にいるなーを見つめながら問いかけてきた。

 

「大丈夫ですよ。みんな優しくて、襲ったりしませんから! それに……」

 

 僕がそう言っていたあたりで、『緑ぷに』が「ぷににー(ボクにもかまってー!)」と駆け寄って……というか、()()ねてきたんだけど……

 

「フニャシャー!!」

 

「ぷぷっー!?」

 

 僕が抱き抱えていたなーが、勢いよく振り向き見下ろすようにして足元の『緑ぷに』を威嚇した。すると『青ぷに』は跳びあがり、すぐさま近場の物陰……ツェツィさんの足元に逃げてしまった。

 ついでに、なーの威嚇には『青ぷに』だけでなく、トトリちゃんやツェツィさん、メルヴィアも驚いていた。……なお、パメラさんはいつもの調子で、ミミちゃんとピアニャちゃんは他の子に夢中だったからリアクションは無かった。

 

 

「……と、まあこんな感じに、『青の農村』じゃあ一番なーが強いから何の心配もいらないんです」

 

「は、はあ……?」

 

 自分の足元に来た『青ぷに』に驚きつつ、困り顔でどうしたらいいかわかっていない様子のツェツィさんが、何とも言えない返事を返してきた。

 

「まぁ強いって言っても、『島魚』よりも強い奴は村の近くに来たこと無いから倒したことは無いんだけど……」

 

「『島魚』より弱い敵になら簡単に倒すみたいに言われても……てか、それって軽く並みの冒険者よりも強いじゃない、ホントにネコなの……? 「『グリフォン』を『クワ』で追い払う農家」の噂といい、本当に規格外ばっかね『青の農村(ここ)』にいるのは」

 

 おでこのあたりに片手を当てて「やれやれ」と軽く首を振るメルヴィア。

 補足しておくと、人よりも大きい二、三メートルほどの……『シアレンス』にいた時、本で見た「クジラ」という生き物に似たモンスター『島魚』だけど、別になーが食べたりはしていない。というか、なーにコテンパンに負けたあと何故か仲良くなって、今でも時々、街はずれの川を泳いで『青の農村』まで遊びに来たりする。

 

「あっ、ついでに言うと、さっきなーが怒った時は「私が遊んでもらってるんだから、邪魔しないで!」って言ってたんだよ」

 

「いや、そんな当たり前みたいにネコの言葉を翻訳されても……」

 

 「……でも、マイスさんなら仕方ないか」と呟くトトリちゃん。このくらい、僕じゃなくても『青の農村』の人なら誰でもわかるんだけど……ああ、あとホムちゃんもしっかりと理解できるはずだ。

 

 

――――――――――――

 

 

 ……そんな感じに始まった、『青の農村(うち)』のモンスターたちとの触れ合いだったんだけど……

 

 

「わぁあ! モサモサで、揺れて、楽しい!」

 

 そうはしゃいでいるのは、モサモサの毛を揺らしながら走る『暴れヤギ』の背中にまたがっているピアニャちゃん。楽しそうにしているピアニャちゃんはもちろん、『暴れヤギ』のほうも嫌がってる素振りは無く、むしろ自分の上ではしゃいでいる声を聞いて楽しんでいるようだった。

 

 

「ピアニャちゃん、いいなぁ……。ね、ミミちゃん。わたしも乗りたいなぁ……なんて言ってみたり」

 

「『暴れヤギ』をあの子から取り上げるわけにはいかないでしょ? ならトトリは別の奴を……『近海ペンギン』には乗れないし、『サラマンドラ』なら乗せてくれると思うけど?」

 

「でっかいトカゲ……カッコイイ気もするけど、ゴツゴツしてて足が痛そうだからやめとく……」

 

 トトリちゃんの言葉に、「えっ、乗る? 乗っちゃう?」とスタンバイしていた『サラマンドラ』がガックリと落ち込んだ。

 ……けど、そんな心情から来た仕草とは知らず、トトリちゃんは「ほら、なんだか元気なさそうだし、乗ったら悪いよ」と言い、それが『サラマンドラ』にはある種の追い討ちになってた。

 

 

「ねぇ、パメラさん……。私の気のせいじゃなかったら、この子たち、私の後ろずっとついて来てる?」

 

「ええ、ずうぅ~っとついて来てるわ! ツェツィのファンになっちゃたんじゃないかしら~?」

 

 歩いては立ち止まり振り返るツェツィさんの後ろには、『青ぷに』と『たるリス』が何故かずっとついてまわっていた。

 人同士でも好き嫌いがあるように、モンスターでも「この人は好き、この人は嫌い」といった感情はある。だから、本当にたまたまその『青ぷに』と『たるリス』が「ツェツィさん大好き!」ってなったんだろう。

 

 

「……ヤバいわ、コレ。なんでこんな甘えた声出すのよ。これじゃあ本当にあたし『ウォルフ』倒せなくなっちゃいそう……」

 

「クゥ~ン……」

 

「ああっ!? よーしよーし! ココかー? ココがいいのかぁー?」

 

 寝転がって可愛らしく鳴く『ウォルフ』と、その無防備なお腹をしゃがみ込んでワシャワシャと撫でまわすメルヴィア。そのメルヴィアの顔は、普段のカラッとした軽快な笑顔とはまた違った、なんというかトロけた笑みになっていた。

 

 

 

「あははははっ。平和だなぁ……」

 

 つい一ヶ月ほど前に『フラウシュトラウト』と激闘をしたのを忘れてしまいそうなくらい、平和な時間……。

 

 

 

 

 

 この時、僕の身に危機が迫っていたとは、到底気づくことが出来なかった……。

 





 最後に漂う不穏な空気……
 でも大丈夫です。そんなに深刻ではありません。……いちおう、これまでにフラグのようなものも有ったりします。

 さて、どうなるでしょう?

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