先日発売されたアトリエ最新作「ソフィーのアトリエ」、私は今日買う予定です。
※2019年工事内容※
誤字脱字修正、細かい描写の追加、句読点、行間……
***マイスの家前・畑***
「ふう、こんなところかな」
日課の水やりを終え、目の前に広がる畑を見渡しながら呟く。
畑の大部分に王国祭用に頼まれた数種類の花が植わっており、あと2,3日もすれば綺麗に花を咲かせるだろう。
残りのスペースに普段食したりするための『ジャガイモ』、『ニンジン』、『ホウレン草』、『カブ』、『森キャベツ』といった作物を育てている。こちらも少しばらつきはあるが4~6日ほどで収穫できそうだ。
そして、先日手に入れたすっぱいリンゴ――『サワーアップル』は火をとおせば食べられるそうなので、種を畑から少し離れた場所に植えてみた。果物の樹を育てるのは初めてなので色々不安だけど、同時に楽しみでもある。
日課としてやるべきことを一通りやり終えた僕は、家の玄関から入って右の作業場へと行く。
作業場には、薬の製作用の『薬学台』と、鍛冶仕事用の『炉』と『鍛冶台』がある。
それらは この家に初めて来たときからあったものだが、そのときとは違い、今はホコリを被っていたり汚れていて使えない状態ではなく、しっかりと掃除されている。
そして、『薬学台』や『鍛冶台』があっても十分すぎるほどスペースのあったこの部屋に、前までこの部屋に無かったものが新たに置かれていた。
そう
――――――
最初はささいな欲求からだった。
「もっといろんな種類の作物を育ててみたい」
本来の目的である『空間にルーンを満たす』は、農作業によって発生する『ルーン』を利用するだけなので、育てやすい作物をとにかく育てるだけでいい。
しかし、やはり沢山の種類を育てたい・知らない作物を育てたいと思ってしまうのは「人の性」いや「農業者の性」なのだ。
そして、いざ新しい作物を……と思って行動を起こそうとしてもそうはいかなかった。
種が無かった。
ティファナさんのおかげでいくらかは種類が増えたけれど、それでも物足りなさがあり満足できなかった。
そんな時、僕の頭の中によぎった言葉――
「ないものは創るしかない」
新たな作物を作る。例えば「品種改良」。
すでにある作物から新たな品種を生み出す方法で、『シアレンス』に居た頃育てていた『サクラカブ』は「冬が旬のカブがいつでも育てられるように」と品種改良された春が旬の作物だった。
だけど、残念なことに「品種改良」の専門知識なんて無いし、当然したこともない。
「なら無理か」と諦めかけたんだけど、ふと、あることを思いついた。
『
存在そのものをつい最近知ったばかりであり、もちろん原理も知らないし知識も無い。
でも、釜に素材を入れていきながらグルグルかき混ぜることでいろんなものを作り出す錬金術は、良くも悪くも「自分にもできそうに見えてしまう」のだ。
まあ、仮に錬金術が使えたとしても、新しい種類の作物を創ることができるとはかぎらないのだが。
とにかくやってみようと思った僕は、街で手ごろな値段の釜を買い、家に持ち帰って設置した。
当然、設置の仕方も必要そうな物もわからないので、ロロナのアトリエで見たものを思い出せる限り再現することで、錬金術用の設備を自分なりに形にしたのだった。
――――――
***マイスの家・作業場***
そして 今日、ついに錬金術をしてみようと試みている。
「とはいっても、どうしようか……?」
錬金術は、ロロナから少し聞いた話とロロナがしているところを眺めたことがあるくらいだ。
最初はロロナに色々聞いてみたり教えてもらおうかと思ったけど、王宮からの依頼で大変そうで頼むのは迷惑になりそうなのでやめた。アトリエの存亡がかかっているそうだから、手伝いはしても邪魔はしたくない。
他に錬金術に詳しそうな人といえば、ロロナの師匠のアストリッドさんだけど、あまり会わないうえ、見かけたら見かけたでアトリエで寝ているか ロロナをからかっているかで、ロロナとは別の意味で頼みたくなかった。
それで今にいたるのだけど、もう完全に見様見真似、そして直感で混ぜてみることにした。当然、失敗して爆発するかもしれない………それどころか、何も起こらずに変化の無い釜をかき混ぜるだけの虚しい結果になる可能性も十分にある。
「いや、そもそも何をつくればいいのかな?」
モンスター図鑑や植物・鉱物図鑑、料理のレシピ本なんかは読んだりしているけど、錬金術の本は読んだことがないし見かけたことも無いので、初歩なんてわからない。
つまり、ロロナが作っていたものを思い出して真似てみるか………ぶっつけ本番で何か考えてみるか。
だけど、いきなり何かここには無いものをつくろうと思っても、いきなり想像がつかない。まずはイメージできるものを試してみるべきか。
「カブはあるから、そこからサクラカブを……いや、ピンク色にするってだけでもよくわからないや…」
いっそのこと難しいことは考えずに最初は≪冬に育たない作物≫を≪寒さに強く≫して≪冬にも栽培できる≫ようにするくらいの考えでいいのかもしれない。
「≪冬に育たない作物≫は、ティファナさんから貰ったけど植えきれなくて余ってた≪カボチャの種≫でいいとして……≪寒さに強く≫するにはどうすればいいんだろう?」
寒さに強い作物、つまり冬にでも育つ作物を入れればいいのかもしれないが、持ち合せが無いうえに違う植物同士を混ぜたら失敗する未来しか見えない。
……そういえば、ロロナと探索に行ったときに「もう持てないから」ってくれた『ぷに』ってモンスターの『ぷにぷに玉』って素材、たしか「生きている」っていう特性っていうものがあるって言ってた気がする。
特性というのはロロナから聞いた話だと、素材やアイテムに付いているもので、錬金術などでの調合の時や 実際に使う時に効果が発揮される重要なものだそうだ。
それは、同じ素材なら必ず付いている特性もあれば 個々に付いていたり付いていなかったりする特性もあるらしい。
詳しくはわからないけど、「生きている」っていうのはつまり「生命力が強い」とも言えなくもない気がする。
そして、生命力が強ければ寒さも耐えられるかもしれない。
……いや、冷静に考えればすぐわかるけど、無理があるよね。
錬金術がわからないからって半分やけになってしまっているのが自分でもわかる。
「まあ ダメでもともと。できなかったり失敗したら諦めて、素直にロロナかアストリッドさんに相談しよう」
『鍛冶台』で事前に作っておいた初級に毛が生えた程度の杖『スタッフ』を手に取る。一度深呼吸をした後、錬金釜の中に素材として『カボチャの種』と『ぷにぷに玉』を入れた。
さあ、あとは混ぜるだけのはずだ……!
杖で混ぜ始めてそう時間のたたないうちに、杖を持つ手に伝わってくる感覚が変化した。 空の釜を混ぜる感触ではなく、まるで釜の中に水か何かが満たされていて 釜に入っている杖の部分にわずかな抵抗が感じられる気がするのだ。
つまり、成功か失敗かはともかく錬金術自体はできているんじゃないか。そう思い釜の中を見てみると
「何、これ……?」
気づかないうちに、窯の中が 水とも淡い光の塊ともとれるような不思議なものに満たされていた。
一瞬手が止まったが、「調合中に混ぜるのをやめたり 集中が切れたりすると爆発するんだー」とロロナが言っていたのを思い出し、必死に杖で混ぜた。
「あれ? 爆発しそうなときはどうすれば………」
けっこう大事なことを確認してなかった。
どれだけの時間、混ぜただろう。……実はいうほどたっていなかったりする。
窯の中から淡い光が少し漏れたかと思うと、すぐに静まり 杖はまた何もない空間を混ぜる感覚に戻った。
「できた……のかな?」
杖を釜から完全に出し、釜の中を覗き込んでみると――
「ん?」
――そこには素材とは似ても似つかないモノがあった。人の握りコブシよりも少し小さいくらいの大きさの黄色い
成功した時のイメージは当然 大きいわりに薄いあの普通のカボチャの種で、色が少し変わるくらいかなっと思っていた。 だけどコレはまるで、皮がオレンジのカボチャを そのまま手のひらに収まる大きさにしたような……
「……あれ? これってどこかで?」
前に見たことがある……けど、何だったかな?
………………。
「そうだ! コレは『アクティブシード』!!」
思い出した。シアレンスで何種類か持っていた不思議な種。
『アクティブシード』、地面に落とすことで急成長し、まるで生き物のように活動しだす植物。
一見すると植物系モンスターに見えてしまうような種類もあるが、植えた者の言うことを忠実にきき、戦闘に参加したり 農作業の助けをしてくれたりする凄い奴等なのだ。
「カボチャみたいな種は『ジャックの種』だったかな…? それにしても、なんでアクティブシードが……?」
まだ ちゃんと機能するのかはわからないけど、アーランドでは一度も見たことも聞いたことも無いアクティブシードが作れるなんて。やはり、錬金術は常識から逸脱した技術なのだろうか。
「それとも、僕だからか……?」
その答えはいくら考えても、考え付かなかった。
とりあえず、今日はもう錬金術を試さずにいよう。新たな作物にについてはまた後でだ。