PlayStation®Storeにて『アーランドシリーズ』がセールで割引されていることをごく最近知りました
2017年3/15まで『新・ロロナのアトリエ』のPS3版が70%OFF。その他、全三作のVita版が50%OFFだそうです
お得……ですが、三作そろえると結局かなりかかりますね。でも、実質安くなっているわけですから良い機会ということには違いないでしょう
Vita版三作で8331円! 個人的にはサイフ以上にデータ容量のほうが心配になります
以上、本編には完全に関係無いお話でした
貰えたものが永久資格じゃなかったりと、少し思っていたのとは違うことになってしまった冒険者免許の更新
でも、これで免許更新のために必死に冒険者ランクのランクアップをしなくていいから、頻繁に『冒険者ギルド』に行かなくてよくなったわけだ。つまり、時間的にも気持ち的にも少し余裕ができてきた……気がする
だから、『アランヤ村』に戻って少しゆっくりしようかな?……って思ったんだけど、前々からマイスさんから聞いていた『青の農村』でのお祭りが間近に
――――――――――――
***青の農村***
「わあ……! 人、いっぱいだ。って言っても、前の『記念祭』が少なかったから、そう思っちゃうだけで、いつもこれくらいだったっけ?」
賑わっている村の通りを眺めて、わたしはついそんな言葉をもらしていた
前回の『記念祭』は『青の農村』の身内でのお祭りで特別なイベントも無かったから、宣伝が無かったこともあって人はほとんど平日と同じくらいだった記憶がある。それが最も近いものだったから、必然的に今日は人が多いと思えてしまってるんだと思う
それにしても……
「くんくん……あっ、あのお店『フライドポテト』売ってる。あっちは『ポップコーン』だ! 他にもいろんな食べ物のお店があるみたいだね。さすがは『青の農村』ってところかな?」
村の入り口付近にも関わらずいろんな美味しそうな匂いがしてくる。比較的匂いがするもの以外のもののお店もあるみたいだから、本当にかなりの数のお店が出ているみたいだ
そして、「さすがは『青の農村』」というべきなのは、その安さ。街で同じようなものを買う場合の6,7割ほどの値段になっている。けど、安いからと言って品質が悪いようには見えなかった
たぶんそうなっている理由は、出店で出されている食べ物の原材料が『青の農村』の中だけでまかなえているからだと思う。例えば『フライドポテト』なら『じゃがいも』、『ポップコーン』なら『トウモロコシ』といった作物。どちらも村の中で育てているのを見たことがある。それらをお店に
……うーん。店先に見える商品や、他の人が食べてるのを見てると、匂いと合わせてだんだんとわたしも食べたくなってくる……
「いやいや! ダメだよね。まだ参加するって決めてないけど、今日のお祭りは……」
「ん? あっー! トトリだ!」
立ち止まっていたわたしに、後ろからいきなりそんな声がかけられた。その声は私の知っている声で、振り返ると思っていた通りの人がそこにいた
「あっ、ジーノ君。ジーノ君もお祭りに来てたんだね」
「おうっ! ……じゃなくて!!」
「ええっ!? どうしたの?」
元気に笑顔で返事をしたかと思ったら、目を見開いて私に顔を寄せてきたジーノ君。何なのかと思って、どうしたのかと聞いてみたんだけど……
「お前、このあいだの更新の時、一人で行っただろ?」
「……ああ、そっか。わたしと一緒に免許貰ったから、ジーノ君も同じ日に更新するんだったね」
そう、三年前に二人で一緒に『アランヤ村』から馬車に揺られて『アーランドの街』まで来て冒険者になったのだ。一緒に冒険者免許を貰ったんだから更新する日が同じなのは当たり前のことだ
「ごめんね、ジーノ君。うっかり忘れちゃってた……」
「まぁ、トトリの事だから直前まで調合とかしてて、バタバタしてたんだろ? しょうがないヤツだなー」
さっきまで少し怒ったようにムスッとしてたジーノ君だったけど、すぐに元通りになって笑顔に戻った
こういう、切り替えが早くてさっぱりしているところがジーノ君らしさだと思う
「あっ、でもそれじゃあジーノ君も冒険者免許、更新できたんだね」
「世界最強の冒険者になるんだから、それくらい当然だって」
「そっか。……最近は一緒に冒険してない時も多かったから、大丈夫かちょっと心配だったんだよね」
わたしがそう言うと、「んな心配はいらねぇって」とジーノ君は元気に笑いながら言った
「トトリに誘われなかった時は近場で適当にモンスター倒してまわってたし。それに最近は師匠と離れたところまで行ったりしてたからな」
「師匠? ……それってステルクさんだったよね」
そういえば……と、時々、街中でステルクさんを見かけない日があったことを思い出した
何かお仕事でもあったのか、いつもステルクさんが探している王様を追っているのかと思ってたけど……もしかすると、その時もジーノ君とどこかへ行ってたのかもしれない
「でも知らなかったなぁ。ステルクさんに修行をつけてもらってるっていうのは聞いたことあったけど、二人で冒険してるなんて初めて聞いた」
「言っただろ、最近って。これまではそんなこと無かったのに、師匠のほうから「いくぞ」っていきなり言って、オレをいろんなところに連れ回したんだよ。……まあ、師匠の技も色々見れたし、強い奴とも戦えたから良い修行になったんだけどさ」
「でも、本当に疲れたんだぜー?」と、ジーノ君は少し口をとがらせていた
……そんなジーノ君の不満とは別に、わたしはある可能性に気がついた
「もしかして、それって……ジーノ君が免許更新が厳しそうだったから、ステルクさんが手を貸してくれたんじゃ……」
「えっ? 何か言ったか、トトリ?」
「ん、んーん。なんでもないよ! あはは……」
もしかしたら、わたしの考えた通りかもしれないけど……でも、結果的にジーノ君がちゃんと免許更新ができたから良しとしよう。うん、そうしよう
わたしがそんなことを考えていると、不意にジーノ君が何かを思い出したように「あっ、ヤベっ!」と声をあげた
「急がないと受付が締め切られるかもしれないんだった! じゃ、トトリ。また後でなー!」
「え、うん。急ぐのはいいけど、人にぶつかっちゃダメだよー?」
足早に村の集会場前の広場の方へと駆け出したジーノ君に、そう言葉をかけてその背中を見送った
「……確か、女性の部は男性の部の後だから、受付の時間はまだ余裕があるよね。わたしはちょっとゆっくり見てまわってから行こうかな?」
――――――――――――
***青の農村・集会場前広場***
村の中を一通り見てまわった後、広場の方へと行ってみたんだけど……
「あーっ、トトリちゃんだ!」
声のした方を見ると、ロロナ先生がコッチを見て大きく手を振っていた
「先生も来てたんですか? それなら、一緒に来ればよかったですね」
「えへへ、そうだねー。あっ、ちょうど始まるみたいだよ」
「ほら」と言ってロロナ先生が指し示した方を見ると、広場の中央付近に設置された特設ステージにいくつかのテーブルとその一つにつき一人、男の人がいた
―――――――――
ステージにいる男の人たちが誰なのか確認する前に、特設ステージのわきにコオルさんが出てきた。コオルさんは発した声が大きくなる機械の一種『拡声器』を持っている。どうやら今回のイベントもコオルさんが司会進行役みたい
『参加者も、見学者もよく来てくれたな。今日も村長の思い付き企画を元にした
「「「「「うおー!」」」」」
特設ステージにいる参加者と、それを見守る観客たちの声が重なり合って、みんなの耳に届いた。それを聞いたコオルさんが満足したように頷く
『気合十分だな。それじゃあルール説明をするぞ。ルールは村長が出した原案は衛生面とか後片付けがすごく大変そうだったから色々変えさせて貰って「制限時間内に多く食べたヤツが勝者」、それだけにした。まあ、食べた量のカウント方法が少しだけ複雑だから説明するぞ』
コオルさんがそう言うと、村の人であろう女の子が、お皿に乗った『ケーキ』と『何かの焼き魚』を持ってコオルさんの隣に立った。お魚の種類は……うーん、焼かれてるからっていうのもあるけど、川魚に詳しくないからよくわからないや
『まず、参加者には受付の時に「食べたいもの」を書いてもらった。で、今、もうすでに結構な量を用意した。短時間で作ったとは言っても、味は店で出せるほどだと保証する。どっかの働きたがりな誰かさんが丹精込めて即行で作ったんだからな』
「働きたがりな誰か」……わたしを含め、ほとんどの人が誰かわかっているみたいだった
『そして重要な食べた量のカウント方法だが……皿の枚数で数える。そのために一皿の料理の重量は統一してある。だが、察しの良いヤツは気づいてるかもしれないが、料理によって食べやすさが違うから、「食べたいもの」を書いた時点から勝負が始まってる。特に魚みたいな骨のあるのとか、ケーキみたいに形が崩れやすいものは難しいだろうな。好きな食べ物を書いたヤツの中には苦労しそうな奴もいるかもな』
女の子が持っている『ケーキ』と『焼き魚』を指し示しながらそう言うコオルさん。ステージ上の参加者の誰かが「げっ……!?」と声をもらしたようで、それを聞いたコオルさんはニヤリと笑っていた
『最後に、この大会用に作られた料理は「大食い」ってこともあって結構用意されてるが、参加者のテーブルに運ばれることが無かったものはイベント後に格安で販売するぞ。「あいつら、こんなに美味いのをあんな必死に食べて……もったいない」とか思いながら美味しく食ってくれ』
そんな最後の一言でひと笑いを起こしたコオルさんは、ステージ上の参加者のほうに目をやって確認をとると、一呼吸おいて声をあげた
『それじゃあ始めるぞ! 覚悟を決めろ。『大食い大会』男子の部、
―――――――――
「始まりましたね、先生」
「うん……うわぁ、すごい勢い」
参加者がいるそれぞれのテーブルへと、お祭り運営に参加している村の人たちによって次々に運ばれて来る料理
参加者によって食べているものは違うけど、参加者たちは一様にすごい勢いで食べはじめていて、見ているだけの観客の皆もそのヒートアップに感化されるように盛り上がっていった
「こんなに競い合うなんて……優勝賞品って何でしたっけ?」
「えっとね、『旬の作物盛り合わせ』と『青の農村の店、何処でも半額券』が何枚かと、あとは『村長に武器・防具・農具・調理器具、いずれか無料注文券』だよ」
「あっ、女性の部と同じなんですね」
「そうだねー。今回は大食いってことでちょっと配慮があっただけで、別に景品が違うってわけじゃないみたい。けど、男の子でも女の子でも、競争相手が減るわけだから少しお得な気がするよね」
「少しというか、人数制限があっても無料参加な時点でお得ですよ……」
そう、この『大食い大会』、「吐きそうなほど食べる前に止める」という約束を厳守すれば無料で参加できるのだ
でもそれじゃあ、用意した料理は格安で売るらしいし、これって絶対に赤字になるんじゃ……。お祭りだからって、そんな事になったら大変なことになるはずなんだけど…………
そこで、わたしはふとあることに気がついた
あっ……もしかしてお祭りって、マイスさんがお金を使うために開催されてるのかな……?
そんな事を考えながら参加者の人たちに目を向けていると、ある人に目がとまった
その人というのは、わたしの知っている人だった……
「ふぅ……入賞賞品が研究費の節約に使えそうだと思って参加したけど、やっぱり僕には難しい大会だったかな? まっ、今日の分の食費が浮いたと思えばいいか」
そう言って「うん、ごちそうさま」と手を止めたのはマークさんだった。どうやら食べていたのは『サンドウィッチ』だったみたい
というか、参加していること自体意外だなぁ……
『おっと。時間が残っているが、さっそく脱落者が出たみたいだな。根性が……って言いたいところだけど、まぁ吐かれるよりはマシか。他の奴も無理すんなよー』
そんなコオルさんのアナウンスが入るけど、他の参加者は変わらず勢いよく食べ進めて…………って、あれ?
「こんだけ量産してるのに、このクオリティ……。それに、なんだこの味は!? 『ケチャップ』……いや、下の米を炒めた時の香辛料に秘密が? おいマイス! これどんな食材使ってるんだ!?」
『おいおい、料理の質問はプライベートでやれよ。……っていうか、手が止まってるから負けちまうぞ?』
コオルさんに注意をされているのはイクセルさんだった。料理人っていう職業のせいか、完全に食べている『オムライス』の作り方に興味がいっていて、まだ一皿目で止まっているみたいだった
「そういえば、ジーノ君も参加してるはずだけど……何処かな?」
そう思って参加者の中から探していると……ジーノ君じゃない、別の人を見つけた
ただ、「知ってる人」というわけじゃなくて、「なんだかどこかで見たことがあるような……?」という感じで目がとまっただけなんだけど……
「うん! 美味い! けど、少し限界……というか、胃もたれが」
「あなた、そんなこと言ってないで時間まで食べてー」
「くぅ……母さんの料理なら、いくらでも食べられるんだけどな」
その男の人に観客中の一人の女の人が声をかけていた。けど、やっぱり限界が近いみたいで、食べるペースは落ちていた
……うーん? やっぱり、話したりした記憶は無いんだけど、なんでかわからないけど顔に見覚えがある気がする。誰かに似てる気がするような……しないような……?
ちょっと気になったけど、考えても考えても思いつきそうにも無かったから、改めてジーノ君を探した。すると……
「辛ぇー! でも、うめぇー! でも、やっぱ辛ぇー!! つーか、何皿も食べていくうちにドンドン辛くなってきてる気がする!?」
『言っておくが、ずーっと同じ鍋でできたもん出してるぞ。蓄積してるんじゃないか? まあ、そのうち一周回って辛くなくなると思うぞ』
「そうなのか!? じゃあ、もっと食わねぇと!」
喋っているけど、同じかそれ以上に口を動かして食べ進めているジーノ君。ジーノ君が食べているのは……確か『カレーライス』だっけ? 前にマイスさんの家に泊まった時に、わたしも食べさせてもらったことがある。けど、わたしにはちょっと辛くて「あまくち」っていうのに変えてもらった覚えがある
それにしても……美味しそうなものが沢山あって食欲が刺激されるにはされるんだけど…………
「後にある女性の部は、参加者が減りそうですね。なんだか、見ているだけでお腹が膨れてきそうです……」
「あははっ、そうだね。……でも、私『パイ』なら別腹だから頑張れるよ! 本当だよ!」
「……先生、参加する気なんですね」
ロロナ先生は「そうだ! 『パイ』各種って書いたら、いろんな種類の『パイ』作ってくれないかな? そうしたら飽きないし、美味しいよ!」と、かなり張り切っているみたいだった
……この様子だと、女性の部は先生が優勝しちゃうんじゃないかな?
「わたしはそのあたりのお店で、いろんな種類を少しずつ買って食べればいいかなぁ?」
男性の部の制限時間が迫る中、わたしはどんなお店があったか思い出しながら何を食べようか考えていた……
――――――――――――
結局、男性の部はジーノ君が、女性の部は先生…………じゃなくて、ヒラヒラのかわいい服を着た女の子が優勝した
その女の子はどうやら先生と似たような戦法を取っていたみたいで、たべたいものを「デザート各種」と書いていたらしい
そして優勝の際の言葉は……
「やはり、おにいちゃんの料理は絶品です……と、頑張って作ってくれたおにいちゃんに、ホムは最大限の称賛の言葉を送ります」
……っていう、ジーノ君が言った「やったぜ」みたいなのとは違った、なんとも言えない感想を言った
……あと、その女の子が表彰台に上がったあたりからずっと先生が……
「ホムちゃん!? ああ、あ! あの子、あの子がトトリちゃん! ほら、前に言ったことあるよね!? 憶えてる? ほむちゃん!?」
……そう言いながら、わたしの肩を掴んでゆさゆさ揺らしてきて、ちょっとだけうるさかった
というか、競技中は気づかなかったのかな? 先生らしいと言えば先生らしいけど……