***サンライズ食堂***
ひょんなことから何故か凄く不機嫌になっちゃったクーデリアさん
先生も、ステルクさんやイクセルさんも どうしたものかと頭を悩ませている時……その空気を変えるきっかけが…!
「こんにちは!イクセルさん、
『サンライズ食堂』に入ってきたのは、あろうことかクーデリアさんが不機嫌になった一因(だと思う)マイスさんだった
「あら、マイス。ちょうどいいところに来たわねー」
「えっ、クーデリア?よくわからないんだけど……何かあったの?」
良い笑顔過ぎて 一周回って怖いクーデリアさんに手を引かれるままに、わたし達がいるテーブルまで来るマイスさん。だけど、マイスさんはクーデリアさんの様子にも気づいていないのか 至っていつも通りな感じで、「どうしたの?」と軽く首をかしげている
そんな様子を見たイクセルさんが、小声で「面倒そうだし、関わりたくねぇけど……放置したらしたで、延々と店の空気が悪いままだし…」と呟いた後、ため息をついてからマイスさんに言った
「いや、たまたまウチに居合わせったってだけだ。……で、昔話をしてたんだけどよ、それでちょっとあってな」
「ええっとね…その、りおちゃんのことで……」
続いて先生がそう言うと、マイスさんは「ああ、リオネラさんのこと」と納得したように頷いた
それを見たクーデリアさんが、マイスさんに問いかける
「ねぇ、トトリから聞いたんだけど……あんたの
「うん。2,3カ月に一回くらいで『青の農村』に来てるよ」
「隠す気ゼロなのか!?」
「ええっ!?」
イクセルさんのツッコミに驚いたうえで、また首をかしげて「ど、どういうこと?」と悩みだすマイスさん
そんなマイスさんをみていると、本当にこの人がわたしよりも年上なのかが疑わしく思えて……あっ、そんなこと言ったら、先生もか…
「あ、あのねあのねマイス君。その……りおちゃん、もう何年も街には帰ってきてないの」
先生にそう言われて、一層首をかしげるマイスさん。そして、周りを見て……
「えっと、街に来てないんですか?」
「全然、見かけてないぜ」
「少なくとも、私も会っていない」
「ええ、ギルドにも顔を出してないし、街で人形劇をしている人がいたって話も聞いてないわ」
イクセルさん、ステルクさん、良い笑顔のクーデリアさんにそう言われたマイスさんは、ゆっくりとわたしの方をむいてきた
「……そういうことみたいです、マイスさん」
「え、ええぇー!?」
―――――――――
「なるほどな……まあ、キミらしいと言えなくもないか」
腕を組んで頷くステルクさんに、マイスさんは困ったように「あははは…」と笑っていた
「はい…。街から近いですし、街方向の街道のほうから来ているのも見たことがあったから、てっきり街に行った後 『青の農村』に寄ってくれているのかと思って……」
マイスさんの説明を聞いて、わたしは「まあ、確かに思えなくもない…かな?」と納得する
他の皆さんも似たような反応で半分呆れ気味に笑っていた
「はぁー、そういうことだったのか。…ま、昔っからロロナとは別の意味で抜けてるところが有るからな、マイスは」
「ええっ!?イクセくん、わたしそんなに抜けてなんかいないよ!」
ロロナ先生の反論に「どっこいどっこいだろ」と返すイクセルさん
そして、クーデリアさんはと言うと……
「…………ふんっ」
「あっ、ちょ……あいたたた!」
さっきまで自分が座っていたイスにマイスさんを座らせて、後ろからマイスさんの髪をワシャワシャと撫でまわしたり、ほっぺをグニーっと引っ張ったりしてた。マイスさんは、どうしてされているのかは わかっていないみたいだけど、リオネラさんの一件で負い目を感じているのか されるがままだった
…と、そんな中でわたしは、いつの間にかステルクさんがアゴに手を当て、何かを考え込むような体勢をとっていることに気付いた
「ステルクさん? どうかしましたか?」
「…ん? いや、少し疑念が湧いてな……」
そう言ったステルクさんは、やっとクーデリアさんに解放されたマイスさんに目を向け、口を開いた
「そのだな……まさかとは思うが、キミの村に王が訪れたりはしてないだろうな」
「周期はバラバラですけど偶に来ますよ? 最近だと、今年の初めくらいに7日間くらい…………あっ、えっと、もしかして……?」
いつも通りに喋っていたマイスさんだったけど、途中である可能性に気付いたんだと思う。一度ハッっとしたかと思うと段々と目が泳ぎ出した
その様子を見て、ステルクさんはイスから静かに立ち上がり テーブルそばの壁に立てかけておいた自分の剣を手に取って……
「「って、ダメですよ!?ステルクさん!」」
わたしが言うのとほぼ同時にロロナ先生も同じことを言い、抱き締めるような形でステルクさんを止めた。イスに座っていたわたしも立ち上がり、少し遅れて 剣を持つステルクさんの手を捕まえた
「ええい、止めるな!アイツに一発入れなければこの気、一向に収まらん!!」
そう言ってもがくステルクさんだけど……まだ冷静な部分もあるんだと思う。そうじゃないと、わたしと先生なんて力ずくでふりほどけるだろうし……
カチャリ
そんな聞きなれない音が聞こえ、気になってステルクさんを抑えながらも その音がした方を見てみると……
「あの子だけならまだしも、ジオ様まで…!!」
そこには、イクセルさんに両腕を捕まえられているクーデリアさんがいた
あれ?クーデリアさんが持ってるのって……『銃』!?
「は・な・し・な・さ・い・よ!この!」
「離せるかっ!ステルクさんもそうだけど、店の中で銃撃ったり、剣振り回したりしたら、店の物も壊れちまうだろ!」
「イクセルさん!?マイスさんの心配じゃないんですか!?」
「言いたいことはわかるが、半分自業自得みたいなもんだろ!」
「…残りの半分は?」
「天然だな」
わたしはそう言われて「ああ」ともらしてしまう。…だって、それで納得してしまうんだもん……
「くそ、離せ!」
「離しません!」
未だにもがくステルクさん。そんなステルクさんを止める先生
このままではらちがあかないと考えたのか、ステルクさんはロロナ先生に向かって口を開いた
「王が訪れていた。…ならば、王だけでなくアストリッドも
「マイス君はそんな事する子じゃありません!さすがに教えてくれますよ。…ねっ、マイス君?」
そう言ってロロナ先生はマイスさんのほうを向いた
これにはマイスさんもしっかりと頷いて、返事をした
「来てないよ。アストリッドさんのことは調合素材を要求してきた時に、僕でも居場所を突き止めようとはしたけど、結局わからないままなんだ」
「だよねー」という感じで、流そうとした先生。…だけど、ふと動きを止めたステルクさんが怖い顔をして言った
「…待て、調合材料の要求とは何だ?」
「えっ?えっとですね、定期的に ホムちゃんがおつかいで『
「マーーイーースーーくーーーーん!!」
「先生まで!? わーん!もう止められないよぉー!!」