諸事情により第三者視点です
理由としては、今回の内容的にはそれが最適だろうと判断したからです
…というか今回は、前回までのシリアス風味の話から解放されたので、普段ののんびりした感じを思い出すためのリハビリだったりします
***ロロナのアトリエ***
ある日のこと
アトリエに帰りついたトトリことトゥトゥーリア・ヘルモルトは、『錬金術』の先生であるロロナにドヤ顔で出迎えられた
「な、なんですかこれ? いつの間にこんな…」
「ふっふっふ…大変だったんだよ、見つからないようにこっそり作るの」
トトリが見つめる先にある物は、半透明の箱のようなものが赤い塊に挟まれていて、それに4本の足がついている何かの機械のようなものだった
「そこまでして隠さなくても…それで、何なんですか?これ」
「よくぞ聞いてくれました!これこそはホムンクルス自動精製装置…名づけて『ほむちゃんホイホイ』!」
「あの…その名前だと、まるでホムンクルスを捕まえるみたいな…」
「まーまー、細かいことは気にしない。とにかく、この装置を使えば、いくらでもほむちゃんを作れるの!」
結局、何なのかわからないままで「どういうことなの…」と困り顔になってしまったトトリだったが、ふと、これまでの会話の中で知っている言葉があることに気がついた。
「ホムンクルス自動精製装置……ホムンクルスっていうのは『錬金術』で生みだされた人間みたいな生命体…でしたっけ?」
「そーだよ!」
「それで…ほむちゃんって確か、昔、先生のお手伝いをしていたっていう人(?)でしたよね?」
「そうそう!…って、あれ?トトリちゃんにほむちゃんのこと、話したことあったっけ?」
途中までは嬉しそうに笑いながら頷いていたロロナだったが、自分はまだホムちゃんのことを話した覚えがなかったため、不思議に思い首をかしげた
「あっ、いえ。この前、マイスさんから聞いたんです。なんでも、マイスさんはそのホムちゃんから『錬金術』を教わったそうで……それで、今はアーランドにはいないってことも」
「そうなんだぁ…、トトリちゃんにも紹介したいんだけど、師匠がどこかに勝手に連れて行っちゃってて全然会えないの……」
残念そうに大きくため息をつくロロナ。窓の外へと向けられたその目には、どこか遠くまで旅をしているのであろうホムちゃんを映し出していた…
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そのころ、ホムちゃんは……
「前回、おにいちゃんが用意してくれた「おみやげ」ですが、グランドマスターは口と目を大きく開いて驚いていました」
「まぁ、そうだろうね…。種を植えた場所から翌朝ゴーレムが出来ていたら、誰だって驚くよ」
「はい。グランドマスターのあそこまでの驚き様は、これまでには無かったものです。……ただ、アレのせいで今回要求されている「おみやげ」のハードルが上がってしまっています」
……普通に『青の農村』のマイスの家に来ていた
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場所は戻って、ロロナのアトリエ
「あっ、ええっと、話を戻すけどね……この『ほむちゃんホイホイ』のここをパカッって開けて、その中に特別な材料を入れてーっと。あとは少しの間待つだけ!」
「少し、待つだけ…?」
半透明の箱の下の赤い部分に開いてある取り込み口に、ロロナが何か材料らしき物を入れてから、1分も経たずに、『ほむちゃんホイホイ』がカタカタと音を立てて揺れ出した
「あっ、もうすぐだよ。ちゃんとできるかなー?わくわく」
期待のまなざしを向けるロロナ。
……だが、『ほむちゃんホイホイ』は音を立てて揺れ続けるばかりで、それ以上の変化が見られなかった
「…何も、出てこないですね」
「あ、あれ?そんなはずは…あれれれ?」
トトリの言葉に焦りを感じ出したロロナは、『ほむちゃんホイホイ』の周りをウロチョロ動き、どこかに異常があったりしないか確認する……けれど、以上らしき異常は無く、焦りだけが積もる
「おかしいな。なんで…もう!動いて、お願い!」
「あの、あんまり叩いたりしない方が…」
もう、にっちもさっちもいかなくなったロロナはポコポコと『ほむちゃんホイホイ』を叩きだし、その行動にはさすがのトトリちゃんもロロナを止めようとした
「だって、せっかく作ったのに。お願いだから動いてー!」
「わ、動き出した!」
「やった!よーし、今度こそ」
ロロナの願いが届いたのか、それともただの偶然か。『ほむちゃんホイホイ』はいっそう活発に動き出す!
そして、ついに4本の足の間から「ポコンッ!」と軽快な音を立てて、中から何かが出てきた
「…ほむー?」
「や、や…やったー!大成功ー!」
「うわぁ!か、かわいい…!な、なんなんですか?この子?」
「えへへ、かわいいでしょ。この子がほむちゃんだよ」
「ほむちゃん」と呼ばれた3頭身ほどのそれは、トコトコと『ほむちゃんホイホイ』の下から歩いて出てきて、眠そうにも見える大きな目でトトリとロロナのことを見た
髪型はパッツン前髪にツインテール、服装は袖だけが異様に長いメイド服のようなものだった。どうやら女の子のようだ
「あ、ちょっと待って。ちっちゃいほむちゃんだから、ちっちゃむ、ちほむ…」
ホムちゃんを参考にしたとはいえ、大きさ等、色々と異なっている新生ホムちゃんに対し、ロロナは新たな名前をあげようと必死になって頭を悩ませる
「…ちむちゃん!この子はちむちゃんだよ!」
「ちむー!」
「鳴き声まで変わった!? あ、えっとその…初めまして…」
「ちむ!」
ロロナ、そしてトトリの呼びかけに対して元気に応える新生ホムちゃん…もといちむちゃん
…そんな小さくてカワイイちむちゃんにトトリが心奪われるのは、ある意味当然のことだったのかもしれない
「お返事した!ああ、かわいい…先生、触ってもいいですか? あわよくば、ぎゅーって抱きしめても!」
「うん、大丈夫だよ。だってこの子は、トトリちゃんのお手伝いをするために…」
そう言いながら、ちむちゃんについて説明をしようとしたロロナだったが、ある事が気になってしまう
ガタン ゴトンッ ガタンガタン
「あれ?まだ動いてる…なんで?」
ちむちゃんを生み出して、停止するはずの『ほむちゃんホイホイ』がいまだに音を立てて揺れ続けているのである
「あのね、わたしはトトリっていうの。トトリ。わかる?」
「ち・ち・む?」
「うわぁ、どうしよう…かわいすぎる…」
「あ、トトリちゃんばっかりちむちゃんと遊んでずるい!」
異常をよそに、ちむちゃんと戯れなごむトトリ。
そんなトトリにつられてロロナもちむちゃんと戯れようとするが、ガタンゴトンと鳴り続ける音がそれを良しとしない
「……じゃなくて、あの、あんまりのんびりしてる場合じゃないかも。ちょ、止まって!止まれー!」
「先生、ちょっと静かにしてください。ちむちゃんとおしゃべりしてるんですから」
「いや、うるさいのはわたしじゃなくて、この装置で…」
そう言ったちょうどその時、よりいっそう『ほむちゃんホイホイ』が暴れ出し、大きな音を立て出した
「わ、わ、わ!もう、ダメかもー!」
「だから静かにって…え?きゃああああ!!」
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そのころ、ホムちゃんは……
「……?」
「あれ、ホムちゃん?どうかした?」
「いえ、何か爆発音のようなものが聞こえたような気がして…」
「爆発音?『
「確かに、マスターのお手伝いをしていた頃は日常茶飯事で聞こえてました。…少し懐かしいです」
…マイスと思い出話に花を咲かせていた
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「あうう…。トトリちゃん、大丈夫…?」
「はい。なんとか…。はっ!ちむちゃん?ちむちゃんは!?」
『ほむちゃんホイホイ』による謎の爆発のせいか、白い煙に包まれたアトリエ内。その中で、二人の錬金術士の声が飛び交う
「ちむー…」
「よかったー。無事だった…」
「ちむー」
「ちむ!」
「ちむ?」
「え?なんか、声がいっぱい…」
煙が晴れてきて、トトリとロロナの目に入った光景は……
「きゃあ!きゃああ!ちむちゃんが、ちむちゃんがいっぱい!!」
トトリがそう声をあげるのも当然だった。アトリエの床が見えなくなるほど大量にいるちむちゃん。しかも、皆ワラワラと動き回るため、実際の人数よりも多くみえることだろう
「たた、大変!早くなんとかしないと!トトリちゃん、手伝って!」
「ちむー!」
「ちむ?」
「ちむ!」
アトリエ内、見渡す限りちむちゃん、ちむちゃん、ちむちゃん。
…そんな中にいれば、ひとりだけでもデレデレだったトトリは……
「幸せ…。もう、このまま死んでもいいかも…」
「わー!ちむちゃんに埋もれてるー!?だめー!しっかりしてー!」
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そのころ、ほむちゃんは…
「そういえば、ひとつご報告があります」
「報告?いったい何の?」
「ホムに弟が出来ました」
「弟!?…っていうと、アストリッドさんが新しくもう一人ホムンクルスを作ったってこと?」
「はい。…どうにも、ホムがこうして材料集めに出ている間、身の回りを世話する人がいなくて困ったらしく…」
「ああ、なるほどね……それで、その子の名前は?」
「ホムです」
「えっ」
「……グランドマスターは考えるのが面倒だったのでは?」
…相変わらず、マイスとノンビリ話してした
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「ふう…何とか片付いた…」
「あうう…。一人だけになっちゃた、ちむちゃん…」
「ちむー…」
片付けられた(意味深)ことによって、最初に出てきた一人だけになったちむちゃん
ちむちゃんが減ったことを残念そうにするトトリ。そして、なんだか悲しそうに涙目になっているちむちゃん。…まあ、自分の仲間たち(?)が全員消されてしまったのだから、気を落しもするだろう
「そんな落ち込まないで。専用の材料があれば、また増やせるから。とにかく、使い方を説明しておくね」
そんな二人を慰めながら説明を始めるロロナ
…その説明は、端的に言うなら「ちむちゃんを作るには、『ほむちゃんホイホイ』に『生命の水』を入れたらいいよ!あと、ゴハンの『パイ』を用意してあげれば、ちむちゃんが素材集めやアイテムの調合をお願いできるよ!」…とのことである
「…と、まあこんな感じかな。大体わかった?」
「えっと…。ちむちゃん作るには特別な材料が必要で、パイをあげて働いてもらう…」
「うん!ちむちゃんはパイが大好物だもん」
ロロナのことを昔から知っている人ならば「あっ、
「でねでね!パイが必要な時はわたしに言ってくれれば、いくらでも…」
「丁度良かったです。おねえちゃんもパイ焼くの得意だし、必要になったらいくらでも作ってもらえますから」
『錬金術』の先生であるはずのロロナの言葉もスルーしながら、安心したように言うトトリ
「へ…え?トトリちゃんのお姉さんも?」
「はい!美味しいんですよ、おねえちゃんのパイ。今度 先生が来た時、作ってもらいますね」
「あっ、でもねでもね!パイだったら私も結構…」
「ちむー!」
「うん、大丈夫。ちむちゃんの分も作ってもらうから」
めげずに『パイ』作りが得意なことを主張しようとするロロナだったが、今度はちむちゃんの「私もいるぞー!」と言わんとする主張の前にかき消されてしまう
…そして、トトリの耳にはロロナの声が聞こえていたのか否か、どちらかはわからないが、とりあえずまたもやスルーされた
「先生、今日はもうお仕事終わりにして、ちむちゃんと遊んできますね。行こ?」
「ちむ!」
挨拶もそこそこに、ちむちゃんを
「ううう…パ、パイ作りだったら絶対負けないんだからー!」
残されたロロナは、ひとりアトリエでそう泣き叫んだ
…一応、もう一度言っておくが、ロロナはトトリの先生である
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そのころ、ホムちゃんは…
「はむ、はむ…。『フレンチトースト』、美味しいです。濃厚でありながら、それでいてくどくなく、絶妙です」
「はははっ、それは良かった!いつもと違う作り方を試してみたから心配だったんだけど、口に合ったなら何よりだよ」
「はむ、はむ…。あっ…、『香茶』のおかわりください」
「はいはい。ちょっと待ってねー」
おやつ代わりに出された『フレンチトースト』を頬張っていた…。こっちは『パイ』以外も大好きである
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やっぱり、こういう話のほうが筆がのります
…でも、物語的には時にはシリアスも必要になってしまう……