マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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 前回の最後の流れのまま……のつもりが、別方向にすっ飛んで行っちゃった話

 そのうえ、上・中・下の3つにわかれる予定


 前々から考えていた話で、これまで散々引っ張っていたけど、そろそろストーリーに絡ませていこうかな…と思い、今回書きました


 あと、「原作改変」「捏造設定」等が多々含まれるようになる予定です。ご注意ください


2年目:マイス「あの人との思い出・上」

***冒険者ギルド***

 

 

 僕には気になることがあった

 それは、先日トトリちゃんと一緒に立ち寄った『ロウとティファの雑貨屋』にいたフィリーさんのことだ

 

 

「…それで、よくわからないけどフィリーさんは店を飛び出していっちゃったんだ。どうしてだと思う?」

 

「いや、知らないわよ」

 

 僕の質問に対して、カウンターにいるクーデリアはピシャリと答えをかえしてきた

 

 

「というかね、あたしじゃなくて本人に聞きなさいよ。ほら、あっちにいるんだし」

 

そう言ってクーデリアは、隣のカウンター…依頼を扱う受付のほうを指差した。そこにはちょうど女性の冒険者の応対をしているフィリーさんがいる。

 

「さっき聞いてきたよ。…でも、「なんでもないから」の一点張りで……」

 

「なら気にしなくていいじゃない」

 

「まあ、それはそうなんだけど…」

 

 それでも、気になるのは気になるし、心配になってしまうのだ

 

 

 折れたのは、僕の様子を見ていたクーデリア。ひとつため息をついた後、「しかたないわね」と言わんばかりの視線を僕に向けながら問いかけてきた

 

「で?その話って何時(いつ)の事よ?」

 

「えっと……一昨日(おととい)だったかな」

 

「一昨日…ああ、あいつが大ポカした日ね」

 

「大ポカ?」

 

 僕が聞き返すと、クーデリアは淡々とした様子で「そうよ」と答えてきた

 

「あんたが気にするようなことじゃないけど。それに、だいたい月一くらいのペースでやっちゃってる事だから、もう恒例行事みたいになってるわよ」

 

「そうだったの?」

 

「ええ。それでもって、失敗した後のフィリーはアワアワしてて居ても邪魔なだけだから、失敗の後処理が終わるまでいつも『冒険者ギルド』から追い払ってるのよ……で、一昨日はあいつの避難先だったあの雑貨屋に、たまたまマイスが来たってことでしょうね」

 

 

 「なるほど」と、頷きかけたけど「あれ?」と不思議に思うことがあり首を傾げた

 

「でも、それじゃあなんで逃げるようにお店から出て行っちゃったんだろう?」

 

「さあ?…おおかた、仕事で失敗したっていうのを あんたに知られたくなかったんじゃないかしら?」

 

 …そうなのだろうか?

 しかし、いつも一緒の職場で仕事をしているクーデリアが言うんだから、なんだかんだ言いつつも説得力はある

 

 

「でも、そんな気にしなくてもいいと思うんだけどなぁ。むしろ、失敗の事を相談してほしいくらいだよ。僕だって『カマ』で品質を上げたい作物を()ってる時に、勢い余って他の作物も『カマ』で刈っちゃったりもするし…」

 

「……後半の失敗談はひとまず置いとくけど、あたしもだいたい同意見ね。だってフィリーって、マイスに出会ってからずっと情けない姿ばっかり見せてきてたんでしょ?それが1つ2つ増えようが、今更気にするとじゃないと思うわ」

 

 ううーん?…さすがにその考え方はどうなんだろう?行き過ぎな気もするんだけど……

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 そんなふうにクーデリアと話していたんだけど……

 

 

「ちょっといいかしら?ギルドのカウンターに用があるんだけど」

 

 僕の背後のほうから、そんな声がかけられた

 珍しく長話しすぎたのだろう。きっと冒険者さんが用があって来て、世間話をしているのを見つけて邪魔に思ったんだろう

 

 そう思い、僕はすぐにその場から移動しようと動きだす

 移動と同時に、後ろに来た人に一言謝罪をいれる

 

 

「ああっ!ごめんなさ……あ、れ?」

 

 振り返った先にいたのは、どこかで見たような気がしなくもない女の子。綺麗な長い黒髪を横で束ねていて、服装は動きやすさもありながら どこか(きら)びやかで……

 ……あれ?

 

 

 

「ミミちゃん?」

 

「ハァ?…………っ!?」

 

 僕の言葉に、相手も僕の顔を確認してきて……そして、驚いたような顔になる

 

 反応からして、やっぱりミミちゃんなのだろう。いやぁ、驚いた!まだどことなく幼さは残っているものの、僕の知っているミミちゃんより凛としてて……何というか、知らない間に立派になったなぁ……

 

 

 

「……き」

 

 …ん?「き」?ミミちゃんがそんな声を漏らしたような気がしたんだけど…

 

 

 

 

 

「キャアァアァァーーーーーー!?」

 

 

 そんな大声をあげて、ミミちゃんは『冒険者ギルド』の外へとむかって一目散に走って行ってしまった

 

 

「……え?」

 

 ミミちゃんがいきなり走って行った……なんで?

 

 大声…叫び声というか悲鳴をあげていた……なんで?

 

 なんで?どうして?えっ?

 

 

 ……もしかして、()()()()()()()() ()()()()()()()()()()

 

 

 …なんだか、目の前の光景がグルグル回ってるような気が……

 

「ちょ!?何、いきなり倒れてるのよ!?マイス!?」

 

 クーデリアの声が、なんだか随分遠くから聞こえてくるようなきがしたけど、よく…わからないや……

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

「ん…」

 

 まぶたを開けると見知らぬ天井…いや、なんだか何処かで見たことがあるような……?

 

上体を起こして周囲を確認してみると、僕が寝ていたベッドをはじめ、テーブル、イス、タンス…部屋中の家具は、様々な装飾が付けられていて、何だかお値段が高そうなものが多かった。

 

 

ガチャリ

 

 ドアが開く音がしたのでそっちに目をやると、そこにはクーデリアがいた

 

「あら?やっと起きたの?ついさっき…って感じかしら。気分はどう?」

 

「どう、って特には……ああ、そうか」

 

 何処かで見たことがあるって感じたのは、ここがクーデリアの家だったからか

 『貴族』の家とだけあって大きなお屋敷なんだけど、クーデリアと飲みに行った帰りなんかに送っていったりしたことが何度もあるため、屋敷の内装は大体知っているのだ

 

 

「あれ?でも、なんで僕はここに?」

 

「消去法よ。あのまま『冒険者ギルド』内に寝っ転がせているわけにはいかないし、あんたの家に帰そうにも村の人たちのほとんどが農家でギルドに顔出さないから引き取り手がいないし、だからといって『アトリエ』あたりに持って行っても邪魔しちゃうだけ。…で、手伝い読んでウチの来客者用の部屋に運んだってわけ」

 

「なるほど…」

 

「…それに、なんか今のあんたを放っておく気にはなれなくて」

 

 それはどういうことなんだろう?よくわからないや

 

 

 僕がそんなことを考えていたのがクーデリアにはわかったのだろう。訝しげに僕のほうを見てきた

 

「あんた、自分が何で倒れたか憶えてない?」

 

「え、ええっと」

 

 倒れたのは…、確か『冒険者ギルド』で倒れて……で、なんで僕は…

 あっ、そうだ、ミミちゃんに叫び声をあげながら逃げられて…

 

「……少し、ステルクさんの気持ちがわかった気が」

 

「案外冷静なのね」

 

「考えをそらせておかないと、なんだか涙があふれてきそうで……」

 

 ハァ…と気づかないうちに大きなため息が出てしまい、自分でもかなりショックだったんだというのが今更ながら良くわかった

 

 

 

「知らないうちに嫌われちゃってたのかな…」

 

「知らないわよ。あんたとあいつのそもそもの関係も知らないのに、嫌われたかどうかなんてわかるわけないじゃない」

 

 僕の呟きに、少しトゲがありながらも律儀に答えてくれるクーデリア。…そういえば、前にクーデリアに聞かれた時は言葉を濁らせてはなさなかったんだっけ

 

 

 僕とミミちゃんの関係、か…

 知り合い、友達……それ以外…?上手く言葉が思いつかない

 出会ったきっかけの話をするのが一番伝えやすいのだろうけど、それは()()()()躊躇(ためら)われた

 

 

 そんな僕をどう思ったのか、クーデリアは「ちょっと待ってて」と部屋を出て行く

 ほんの数分後、高そうなワインと二人分のグラスを持って来たクーデリアが客室内のテーブルにそれらを置いてイスに座った。そしてベッドに座っていた僕に向かいのイスを指し示してきた

 

「ほら、座りなさいよ。ワイン注いであげるから」

 

「えっ…?」

 

「喋り難いことも、お酒が入れば少しはマシになるでしょう?日も落ちちゃってるし、ちょうどいいんじゃない?」

 

 そう言いながらクーデリアは僕に微笑みかけてくるのだった

 

 

「クーデリアなら大丈夫かな…?」という思いが湧いてきて、つい誘いに乗ってしまう

 イスに腰をおろし、クーデリアからワインの注がれたグラスを受け取りながら口を開く

 

「…確かに、ゆっくり飲みながら話すくらいがちょうどいいかもね」

 

「あら、長くなるのかしら?」

 

「なんていったって、僕がミミちゃんに初めて会ったころの話から始まるからね。……ついでと言っては何だけど、他の人には話して欲しくない話でもあるんだ」

 

 ここでひと息つき、グラスを傾けてワインで唇を濡らす

 

 

「あれは、今から7年くらい前のことなんだけど……」

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

―マイスがアーランドに来てから3年目に入った頃―

 

***アーランドの街そばの街道***

 

 

 その日も僕は『アーランドの街』へと顔を出しに行っていた

 というのも、前の年の年末にあった『王国祭』のイベント『武闘大会』で優勝は逃したものの目立ったこともあって、僕を指名した依頼が『王宮受付』経由でよくくるようになったからだ

 

 なので、前まで街に行くのは一日置きくらいだったのだけど、その頃から毎日になっていた

 

 

 いつものように、街の玄関口と言える大きな門にいる門番さんに挨拶をして僕は街に入り、そのまま『王宮受付』のあるお城のほうへと目指す…

 

 

 

 はずだったのだけど、その日は違うところがあった

 

 門から街に入ってすぐにある少し開けた広場のような場所。町の外へと行く馬車が積荷を積んだり、最終確認をするために停車できるように広めに設けられたスペース

 

 そこにいたのは、裾のあたりにフリルのついた可愛らしい水色の服を着た5,6歳くらいの女の子で、何かを探すようにあたりをキョロキョロと見渡していた

 そのせわしない動きに、その女の子の肩より少し下まで届くツインテールはフリフリとよく動いて、その子をより一層幼く見せていた

 

 

 最初は「迷子かな?」なんて思ったけど、よくよく考えてみると、お店のある中央の広場ならまだしも こんなところで親とはぐれたりするかなーっと不思議に感じた

 しかし、放っておく気にもなれないから、話しかけてどうしたのか聞いてみるべきだろう…そう思って女の子のほうへと僕の足は自然と動いていった

 

 でも、そこで予想外のことが起きた

 

 キョロキョロしていた女の子が、僕の顔を(とら)えてピタリッと止まったのだ

 女の子の表情が明るくほころんで、一直線に僕のほうへと駆け寄ってきた

 

 そして、その子は僕の数歩手前で立ち止まり、僕の顔を見た

 

 

「あの…!ぶとーたいかいに出てたマイスさんですか」

 

「うん、僕がマイスだよ!それで、キミは?」

 

「えっと、ええっと……ミミは ミミ・ウリエ・フォン・シュヴァルツラングっていいます。シュヴァルツラング家のむすめです」

 

 

 そう、これが僕とミミちゃんの出会いだった

 

 

 

 

 

「あの……

 

 

 

 

 

おかあさまがげんきになるおくすり ください…!」




 ツインテようじょミミちゃんカワイイヤッター。…ただ、原作ではCG一枚だけの登場&正面絵が無かったこともあって、脳内補完をたくさんしながら書いています


 今回の回想の時期は今作の『ロロナのアトリエ編』、「54マイス「3年目になって変わったこと」」と「55,マイス「迷って悩んで…どうしよう?」」の間くらいとなっています


 そして、原作『トトリのアトリエ』のミミちゃんイベントを知っている方には、今回の回想だけで「あっ…(察し」といった感じでマイス君とミミちゃんの関係に察しがつかれるかと思います
 …なので、今回はできる限りネタバレとなるような書き込みは控えていただければ幸いです。次回の更新の際に全容がわかるようになる予定なので、それまでお待ちください。お願いします

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