削除と編集間違えて消してしまった。
文量少ないと思ったので加筆しようとしたら、消してしまいました。
加筆しましたが、ほぼ昨日の内容と一緒です!後半少し加筆しただけです><
ごめんなさい。
とあるカラオケの一室。きちんと掃除や招集がされているためか、煙草のにおいはほとんどない。
『さぁさぁ皆!遠慮なく歌って食べるんだ!何てたって今日は太朗ちゃんのおごりだからね!』
「そうそうドンドン曲を入れていってくれ。注文も好きなのをとっていい」
俺はクマさんをジト目で睨みながら、他の皆にそう促す。このやろう、何が『財布忘れてきたテヘペロ』だ、思わずその豆腐が詰まっている頭をはたいてしまったわ。
「えっと、兄さん、俺達も」
「気にするな。俺先輩、お前ら後輩」
『きゃー太朗ちゃんかっこいい!あ、僕はアイスコーヒーで』
「クマさんは後日返せ」
『えー奢ってくれないのー?』
「クマさんに対してはいくらでも驕ってやるよ」
『ホント!?じゃあ色々と頼まないと損するね。護堂ちゃんも祐理ちゃんも遠慮せずに頼みなよ、ほらほら』
備え付けの電話口に立って、受付に色々と注文するクマさん。驕りはするけど、奢らないってね。勘違いしたのはクマさんだから、俺は悪くない。だから、後日お金の返却を求めてもそれは当然の権利だ。
「かように狭き部屋で歌って何が楽しいのじゃ?」
「思いっきり歌えることが気持ちいいんだ。ツッキーも何か歌うか?」
「妾は遠慮しておこう。汝らの言うような歌は一切知らぬからな」
「さよけ」
今この部屋には俺とクマさんを含めて六人と二匹いることになる。カラオケにも最近はペット同伴が出来る店があることを初めて知ったが、まぁ許可されたのだからいいだろう。正確には子犬限定と見えたが、聞いてみたら大丈夫といわれたのだからいいだろう。たとえ目を逸らしながら言われても許可は許可だからな。
問題があるとすれば子猫たちがこのカラオケの耐えられるかどうかだが、最悪音量を下げればいいしな。ツッキーも何やら自信ありげに問題ないといっていたし。
「な、何故このようなことに……」
万理谷さんが一人でブツブツと頭を抑えていて、護堂君が心配していた。
しかし、彼女の言っていることも一理ある。何故皆でカラオケに来ているのか?遡ること数十分前、丁度クマさんが来たときのことだった。
『で、こんな所で何してるの?』
ほとんど接点はないはずなのに、まるで旧知の仲であるかのように馴れ馴れしく振舞う球磨川禊。その近すぎる距離感を拒むように、祐理は後ずさる。彼の無邪気な笑みからは危ういものを感じるからだ。さながら濁っていて、どこまでも澄んでいる『負』を。人当たりの良い祐理であっても、あまり対面したくない相手であった。昨日おぼろげながら、平然と骨を追っているのを思い出して、尚更そう思った。
「わ、私はただここに住まわれる方に御用が……」
『へぇ~そうなんだ!これまた奇遇なことに、僕と大体一緒だ!だったらこんなところで立ち往生してないで、さっさと中の人を呼ぼう』
「え、あちょっとま」
止める間もなく、軽やかな身のこなしで躊躇なく呼び鈴を鳴らす。しばらくして、扉の向こうでドタドタと足音が駆け寄ってくる。
「は~い、だれですか・・・ま、万理谷先輩ッ!?」
「こ、こんにちは静花さん。突然の訪問失礼します」
鳴らしてしまったものは仕方ないと頭を切り替えて、出てきた静花に挨拶をする。
『僕のことも忘れないでね~』
「……?失礼ですが、どちら様ですか?」
『僕かい?僕は生まれも育ちもジャンプから飛び出してきた球磨川禊っていうんだ。よろしくね』
面白いとおもっているのか、滑稽な態度でいっそ清々しいほど明るく自己紹介。親戚に変人の多い草薙家であっても、輪をかけて変な人が来たと静花は思い、類が友を呼んだ可能性を考えてしまう。とりあえず、静花は球磨川なる人の訪問理由を尋ねる。
「その球磨川さんがうちに一体何の御用で?」
『それがさー、ちょっと、このあたりに僕の親友がいそうな気がしたからさ、適当にそこらへんの呼び鈴を鳴らしてみたんだよ。そしたら君が出てきたのさ』
「……で?」
『それだけだよ?』
小首を傾げて、馬鹿にしているのか。禊は、悪びれた様子を見せやしない。この態度で、静花は真面目に取り合うことをやめて、悪戯として後回しにすることにした。そして、もう一人のお客さんの用件を聞くことにした。まさか、祐理の方も同じ理由ということはないだろう。
「万理谷先輩は?」
「私は草薙護堂さんに用事がございまして……」
「お兄ちゃんに?万理谷先輩が?」
「ええ、昨日のことで少し」
その言葉を聞くやいなや、二人をほっぽって中に駆け込んでいってしまった。残されてポカンとする。
『お兄ちゃん。ちょっとそこに座りなさい』
『座ってるだろ?何言っているんだお前。それよりお客さんは……』
『いいから椅子から降りて、そこに正座してって言ってるの!それとお爺ちゃん!ごめんだけど代わりに出て!一人は悪戯だから追っ払っても大丈夫だから!』
『やれやれ、慌しいね』
そんなやりとりが玄関越しに聞こえてきてしばらく、草薙一朗が外に出る。その齢にして70近い彼は、物腰丁寧に二人を出迎える。
「とりあえず、二人とも中に入りなよ。丁度今皆でお茶をしているんだ」
「あ、いえお構いなく」
『では遠慮なく』
恐縮する祐理と我が物顔で家に上がる禊の構図は酷く対照的であった一朗は後に語る。
何やら静香ちゃんが慌しく入ってきたと思ったら、護堂君に正座を強要して、その後しばらくしてクマさんと昨日の亜麻色の少女が入ってきた。
『おぉ。本当にいたよ!百回中百回は外す僕の勘がこうして当たる日が来るなんて!やったぞ僕、凄いぞ僕!これで僕もプラスの仲間入りだ!……なーんてね。本当は事前にここにいることを聞いて来たんだけどね』
「君は太朗君のお友達だったのかい?さっ、君達の分のお茶も入れるから自分の家だと思ってゆっくりしていきなよ」
「天より零れ落ちし月の神格……、まさか貴方は!?そんな羅刹の君まで……ッ!?それに貴方は昨日の……!??!?」
「ほぅ、貴様、妾の正体を一瞬で看破しよったか!見事な霊視よな!」
クマさんが何か語りだしたり、一朗さんがマイペースだったり、亜麻色少女が顔面蒼白で今にも倒れてしまいそうになっていたり、ツッキーが何故かドヤ顔決めていたり、視界脇では草薙兄妹が説教したりされていたり。
一気に慌しくなったなぁ。
「田中先輩もここに座りなさい」
気がつけば、修羅を背後に顕現させた静花ちゃんに説教喰らっていた。なんでもあの亜麻色少女は彼女の先輩だそうで。そうですね、いらない騒動を起こしちゃったもんね。中学生に怒られる俺情けないぜ。
横では、交代で解放された護堂君は、扉の前で固まっている亜麻色少女に話しかけようと席を立つ。だが。
「きゅう」
「うぇ!?なんだ急に!大丈夫か!?」
亜麻色少女が急に全身の力が抜けたように、近づいた護堂君に向って倒れこむ。気絶してしまったようだ。慌ててそれを抱き抱える彼だったが、突然のことで、彼女の下敷きになってしまった。幸い怪我はないようだ。ここに来た時から顔色悪かったし、病気か何かだろうか?しかし、気付いているだろうか、護堂君よ。今君の手に収まっているそのやわらかな感触に。
「お兄ちゃん……?」
鬼神や…鬼神が御光臨なすったぞ―――っ!はわわ祟りじゃあ……静まれ、静まりたまえぇ!なんて覇気!静花ちゃんの顔が夜叉となり、さすがの護堂君もたじたじの様子!
「まてこれは不可抗力だ!」
「お兄ちゃんのばか――――――っ!さいって―――――――っ!」
しかし、乙女の胸を許可なく触ったのだからそのくらいの罰は受けて当然。護堂君のおかげで解放された俺は、触らぬ神に祟りなしとばかりに傍観を選ぶ。
『にぎやかな家だね、ここ』
「今日は一際にぎやかだけどな」
カオスともいうが。
で、その後ちょっとして目を覚ました亜麻色少女、すなわち万理谷さんが護堂君やツッキー相手に、これは少し丁寧すぎではないかね、というくらい慇懃な態度で接したことで、静花ちゃんと一悶着あったりして、なんやかんや周囲を巻きこんで最終的にクマさんがカラオケで親睦を深めようという提案をしたから、こうなったんだ。
道すがら護堂君と万理谷さんは和解したのか、必要以上に丁寧になることはなくなった。が、元々礼儀正しいのか、常に敬語だ。同級生に対しても敬語というのも珍しい。まるでいいとこのお嬢さんみたいだ。俺?俺は近づくことすらできなかったよ?会話なんてもってのほかだね。
ちなみに何故かツッキーに対しては今でも慇懃に振舞っている。残念系の人にそう振舞う必要はないのに。同じ女としてその美貌に敬意を払っているからとかかな?ツッキーは満更でもなさそうで、ふんすふんすと鼻息が凄い。調子のんな。
しかし、護堂君と万理谷さん、二人は見ていて本当にさっき知り合ったばかりかと疑問になるくらいには仲がよくなった。何か聞くときは彼か、元々接点のある静花ちゃんに聞くし。……いやそれについては、他が俺とクマさんとツッキーしかいないから当然の帰結かもしれない。護堂君が人間ホイホイであるなら、俺達はグラサンと変態と残念系だからな。
とはいえ、近くに恋人がいながら当の本人の放置して別の女と仲良くしているのはどうなのか。
「そこんところどう思う?」
「何故妾が若い神殺しのことを気にせねばならんのか。関係なかろう?」
「そんな事言ってまたまた」
「くどい!」
おやおやどうやら、拗ねているようだ。彼女としても気分のいいものではないらしい。全く、護堂君も罪深い男だぜ!
『ほら、次は祐理ちゃんだよ』
「え?!私入れてませんけど!?」
『僕が適当に盛り上がりそうなのを入れておいたよ!ほら早くマイクもって早く早く!』
「え?え?」
「おぉ巫女が歌うのか。では妾も一緒に歌おうかの。静花よ、貴様も一緒じゃ」
「いいですよ!一緒に歌いましょう!」
「え?えぇぇ?」
「何じゃ妾では不服か?」
「いえ、滅相もございません!」
しかし、ツッキーはウマがあったのか静花ちゃんのことを気に入っているが、意外なことに万理谷さんのことも気に入っているらしい。シロとクロの次くらいで可愛がっている。顔が明らかにニコニコしている。静花ちゃんもツッキーのことが好きみたいだ。まぁ女の子同士で何か通じることもあるんだろう。万理谷さんはなんだかんだで付き合っている分、嫌いではないんじゃないかな、ただ態度が固いだけで。
「ところで盛り上がりそうな曲って何入れたのさ」
『パンチラオブジョイトイ』
「!?」
結果は言うまでもない。
クマさんが入れた曲が流れる始めた瞬間、俺達は逃げるように部屋を飛び出した。女の子に平然とあんな事ができるなんて。さすがクマさんやでぇ……。どんな空気になるかわかるだけに、あの空間にいたくないのですよ。静花ちゃんと万理谷さんに挟まれていた護堂君南無。
外に出ると既に日が傾きかけていた。腕時計に目を落とすと二時間ほど経過していた。結構時間が経っていたみたいだ。休日とはいえ、そろそろ解散しないと万理谷さんと静花ちゃんもあまり遅くなるのも嫌だろう。ほとぼりが冷めたら戻って終わりにしよう。
『ふふ、ようやく二人きりになれたね』
「え、なに急にきもい」
『太郎ちゃん、人には言って良い事と悪いことがあるんだぜ?』
「クマさんが口に出したのは男に言ってはいけないことだ」
クマさんがいきなりきもい発言をしたので焦った。別の意味で身の危険を感じる。全身に鳥肌が立つのを抑えられない。しかし、確かに二人きりになったのだから、時間潰すついでにあの件について済ませてしまおう。
「クマさん、昨日告白したいことがあるとか何とか言ってたよな」
『え、告白って……そんな僕達男どう、あっ、はい。ちゃんと話すから。話すから、釘を突きつけないでよ』
満更でもないといった感じで恥らうクマさんに、怒りを通り越して殺意が沸いた。ああ、これが昨日のクマさんの気持ちか。確かにこれは釘を刺したくなる。物理的にもな!
『ていうか、ここで話しちゃうの?』
「ここで話せないのか?」
『んー。まぁいいか』
いかにも重大そうな顔したと思ったらすぐにけろりとする。いいのかよ。
そして、クマさんを俺にこんな事を聞いて来た。
『太郎ちゃんは転校したいと思ったことない?』
「急になんだ」
『いいから答えてよ。軽い気持ちでいいからさ』
普段へらへらしているクマさんが何やら真剣な顔になっている。軽い気持ちといいつつも、彼は何かを見極めようとしているのかもしれない。
転校か……。転校……。
「考えたことないな」
『それは現状に満足してるってことかい?』
「満足?」
それは今の生活にということだろうか。どうだろうか。クマさんがいるから、学校生活は楽しい。家とか日常であれば、草薙家と時々交流があるから楽しい。それで俺は満たされていると考えてもいいかといえば、俺の場合満足というよりは―――。
「どうでもいい、かな」
ポツリとこぼれ落ちる。その言葉をどう受け取ったのか、クマさんはいつもの浮かべている笑みを深くした。
『へぇ……。太郎ちゃんもそんな顔するんだね!うん、安心したよ。君と関わってもう一ヶ月になるけど、今ようやく確信した!やっぱり君は僕と同じで、違うんだって!』
「うん?それは矛盾してないか?」
『僕にとっては全然矛盾してないから良いんだよ!そんなことより、君に、この世に二人としていない唯一無二の親友にお願いがあるんだけど』
そんな真顔で言われても照れくさいんだが。ってか本当に急にどうした。
「金は貸さないよ?」
『あはは、違う違う。そんな現金な話をしているわけじゃないよ。もっと大事でどうでもいい話さ』
「矛盾してない?」
『矛盾してないよ。お願いって言うのは、僕に君の力を貸してくれないかっていうのだよ』
そして、キリリッと顔を引き締めてこう続けた。
『あの安心院さんを倒すためにね』
サーセン本当にサーセン。