スクールアイドルの一存   作:クトウテン

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初期は一存ベースの書き方するんだ(ドヤァ
とか言ってた彼は死にました。

それとUA1万、総合評価1000を超え感想も30件頂きました。
拙作をここまでお読みなってくださった読者の方々、評価してくださった方々、感想を下さった方々には感謝しかありません。

何卒これからも拙作『スクールアイドルの一存』をよろしくお願い致します。




第九話 失意の少女、決意の少女

“『良いですか。スクールアイドルとして、もし貴女達が当校の看板になった時、貴女たちの一挙一動全てがこの学校の評価につながってくるんです』”

 

ぐるぐるぐるぐる。

 

“『言ってるじゃないですか。『その責任を背負って、自分が最後の希望を断つ原因になるかもしれないという可能性まで抱えて、それをやりたいならやればいい』ってね』”

 

ぐるぐるぐるぐる。

 

“『勿論それは、貴女だけじゃない。一緒にスクールアイドル担った周りにまでそのリスクは及びます』”

 

ぐるぐるぐるぐる、と。

 

あの言葉が、彼の口から漏れる毒のような言葉の残滓が未だ脳裏にこびり着いて消えない。

 

何でそんなことをいうのだろうか。

私が何か間違った事を―――いや。

 

分かっていた。これがただの八つ当たりだなんて。

家に帰ってきた後、制服から着替えもせずにそのままベットへと倒れこんだ私は枕を抱え込むようにしてベッドの上にうずくまる。

 

間違っているのは、私。

正しいのは、彼。

 

なんて考えなしだったんだろう。

なんて浅はかだったんだろう。

 

思えば昔からそうだ。

 

思い立ったが吉日とは言うけれど、それは結局成功した人間しか言えない言葉だったんだと思う。

 

思い立って、行動―――失敗。

思い立って、行動―――成功。

 

では失敗した人はなんて言えばいいのだろうか。

 

石橋を叩いて渡る? 分からない。

ただ言えるのは、私がまさにそれだったというだけ。

 

偶々(たまたま)運良く今まで成功してきただけ。

その偶々に運良く乗っかっていただけ。

その偶々に皆を―――海未ちゃんとことりちゃんに強要していただけ。

 

ここに来てようやく気付いたその愚かさに―――思わず私は、高坂穂乃果は自嘲した。

 

同時に悔しさに顔が歪む。

言い返せなかった。

あの言葉に、確かに正論だ。

彼の言葉は間違っていない。

正しくて正しくて正しい。

でも、そうじゃないと私は思った。

 

それだけじゃ足りない(・・・・)と確かに感じた。

そんなありきたりで当たり前の言葉でこの想いを止められたくない―――と、確かに感じた。

 

それでも、言えなかった。

言い返すことも出来ずに、私はその場を去った。

 

「じゃあ結局、そんな大切でもなかったのかな……」

 

思わず口から漏れたつぶやきに納得しそうになる。

 

「分からないよ……」

 

もう何も。

 

「分からない……」

 

そんな時、枕元に置いていた携帯から電子音が鳴り響く。それは電話の着信音だった。

表示を見るとそこにあるのは『海未ちゃん』という名前が。

 

「……もしもし。どうしたの海未ちゃん」

『……その様子だと、ずいぶん参ってるようですね、穂乃果』

 

幼馴染はどうやら全てお見通しのようだった。

 

「あはは……そうなのかな。ねぇ海未ちゃん」

『なんです?』

「私って自分勝手だよね」

『……そうですね』

 

その声は思ったよりも簡単に返された。

 

「え、えぇ? そこはほら、少しは慰める所じゃない?」

『何言ってるんですか。自分勝手が服を着て歩いたような性格をしておいて良く言えますね』

「そこまで!? 私そこまでだったの!?」

『少なくとも私の中ではそうですね。昔から事あるごとに私達を連れだしては男かと思うくらいやんちゃをしたり振り回したり……はぁ、思い出すだけでため息が出ますよえぇ』

「ご、ごめんなさい……なんか、ごめんなさい……」

 

想像以上に幼なじみは辛辣で当たりが強かった。聞く相手を間違えたのかもしれない。

 

『本当に、本当に、ほ、ん、と、う、に! 穂乃果はいつもいつも自分勝手でマイペースで我が道を行くという三重苦を抱えた馬鹿ですからね』

「ごめんなさい……だからもう心を抉らないでよぅ海未ちゃん」

 

胸が痛いよ! 痛いよ海未ちゃん!

 

『で―――何なんです? 自分勝手ですよ穂乃果は。いつもいつも。でもそれが一体何だと言うんです?』

「ぅえ? だ、だって、それでたくさん迷惑かけて……嫌な思いさせて……」

『いつそんな事言いましたか?』

「う、うぅ。だって海未ちゃん今ぁ」

『いいじゃないですか。それが貴女なんですから』

「……え?」

『迷惑だったなら側に居ません。嫌な思いをしていたら今頃あなたと笑っていません。そんな事もわからないんですか? 穂乃果は。―――そんな自分勝手にいつも私を引っ張って、私の知らない景色を見せてくれた。そんな貴女を私は誇りに思っています』

「……海未、ちゃん」

『ことりも私も穂乃果にいつも手を引かれて、色んな所に連れて行かれました。川辺、花畑、木の上、山の上。怖かったり不安だったりするのに、不思議ですよね……最後はいつも笑っていました。―――穂乃果』

「……何? 海未ちゃん」

『あなたが何を考えているかは大体分かります。でも、構いません。私を―――いえ、私達を。いつものように貴女が引っ張って下さい。その分私達が貴女を支えましょう。だから穂乃果……私達の知らない景色をまた見せて下さい』

「―――」

 

胸が熱くなる。

ギュッと、強く胸を掴まないと何かが溢れてしまいそうで、強く、強く。

 

その時思ってしまう。

 

胸からあふれるこの気持ちを、この心を、今すぐ。

 

(ウタ)にしたい」

 

それができたらどんなに気持ちいいんだろう―――なんて。

 

「海未ちゃんありがとう」

『……いつもの事ですから。それで、決まったんですか?』

「うん! 海未ちゃんとことりちゃんに見せたい景色ができちゃったから、私は進むよ」

『自分勝手ですね、全く』

「えへへ、でもついてきてくれるんでしょ?」

『穂乃果だけじゃ不安ですからね』

 

 

そんなやりとりに安心して、起き上がる。

 

「いよぉーしっ! なら早速明日から作戦会議だぁー!」

『―――ふふ、そうですね。それじゃあ今日はもう遅いので。おやすみなさい、穂乃果』

「―――うんっ。ありがとう、海未ちゃん!」

 

プツ、という音を最後に通話が終わる。

 

「本当にありがとう、海未ちゃん、ことりちゃん。――頑張ろう。私も沢山頑張るから。それで絶対に目標を叶えよう」

 

静かな部屋で一人、そう漏らして空を見上げる。

 

曇っていた空はいつの間にか満月の覗く綺麗な星空に変わっており、月も、星々も、祝福するかの如く闇夜を暖かく照らしていた。




ことり「えっと、私も……応援……」

海未「ほのかガンバ!」
ほのか「ありがと海未ちゃん!」

ことり「(´・ω・ `)」

小鳥ちゃん今回空気でごめんなさい。


有り難うございました!


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