スクールアイドルの一存   作:クトウテン

22 / 25
前回でいかにも一章終わりそうな感じだしたじゃろ?
残念、もうちっとだけ続くんじゃ。



第二十一話 再会するのは

「だいたい、何考えてるの。おかしいわよね? 頭の怪我をしたせいでもっと頭おかしくなったんじゃないの? ねぇ、聞いてる?」

「はい、そのとおりでございます」

 

どうも、杉崎鍵です。現在病院にて療養中です。

が。

あのライブの後、どうやら寝不足のせいか寝落ちてしまった俺の事でてんやわんやの自体になったそうで学校に救急車が来るわ意識のない生徒運び込まれるわ(俺)そしてその後理事長に長時間のお説教をしてもらい……罰ということで、療養中5日間の面会謝絶状態の謹慎を食らってました。もう暇すぎてエロゲーしかできない。詰みゲーは二本解消した。そして明日には退院予定だ。一週間と少しこの部屋にお世話になったわけだがそれもようやく明日で終わり。さようなら病院食。もう会いたくないよ。

そしてまぁ、療養兼謹慎がようやく解けた! と思ったらまず一番に鬼の形相をした絵里さんのありがたいお説教が始まった。

予定調和ですねわかります。

 

「あと思うんだけど……なんで貴方の病室はこんな満員なのよ!」

「いやぁー俺に言われましても……」

 

そう。

今はベッドの横に絵里さんが座る形で話しているがその後ろを見るとそこにいるのは……。

 

「んー、次の曲はどうしよっかなぁ」「……どうせまた私が歌詞を付けなきゃいけないんですよね……」「次はポップな感じの衣装にしよっかなぁ」「な、何よこっち見て……!」「にゃ、別に凛が来たのは学校のプリント届けるのに来ただから!」「り、りんちゃぁん……っ! で、でも私まで連れてくる必要あったの……っ?」「ほんま、女の子ばっかりやねぇー……このたらし」

 

一番最初から、穂乃果ちゃん、海未さん、ことりちゃん、真姫ちゃん、凛ちゃん、かよちゃん、希さんである。

 

よくもまぁ、我ながらこんなに女の子ばっかり集まったものだと思う。フェヒヒ。

 

「というか西木野さんどうせお見舞いに来るんだったらなんであの時いってくれなかったのにゃー! おかげで私がプリント届けに来る羽目になっちゃったよぅ」

「し、仕方ないじゃない! あ、あんな大勢の中で手上げる勇気……その……な、ないし」

 

凛ちゃんは俺に恨みでもあるのだろうか。いやあるのかも。そして真姫ちゃんは少しは良くなったかと思えばまだまだ恥ずかしがり屋さんなんだね。いや当たり前だけど。

 

「まぁでも、いいと思いませんか? こうしてみんな集まって」

 

絵里さんの言葉に穏やかに言葉を返すと、一度わざとらしく嘆息を吐くも苦笑するように口元を歪めて一言。

 

「限度ってものがあるけど……まぁそうね」

 

窓から外の景色を楽しみながら、頬を笑みの形に歪める。

 

「えぇ。こんな沢山の女の子が集まってくれるなんて。 

―――まるで俺のハーレムのようじゃないですか! きゃっほい!」

「…………」

「あれ、絵里さん?」

「話しかけないで。同調してしまった私を殴り殺すかあなたを殴り殺すか考えてるところだから」

「凄いデッドオアダイ過ぎませんかねぇ!?」

 

最近絵里さんがやたら過激になってきてる気がする。

と、そんな所で後ろの方にいた穂乃果ちゃんが急に身を乗り出し、口を開いた。

 

「あ、杉崎君杉崎君きいてー! 生徒会長さんがね! 私達のこの前のライブ撮ってくれたのをアップしたらまた票を貰えて! 今ぐんぐん伸びてるの!」

「……へぇー、そんなことしてたんですか、絵里さん。ぬふふ」

「その気持ち悪い笑い方を今すぐやめないとねじ切るわよ」

 

何をねじ切るつもりなんだろうか。

とりあえず我が身が惜しいのでふざけるのはやめておこう。

 

「いやー、それにしても凄かったぜ三人共。ほんと、最高のライブだったよ」

「えへへ。そうかなぁ? でもありがとうね。あのライブがあったからこそ、私達は一つやるべきことを見つけられたから。それも鍵君のお陰かな?」

 

やるべきこと。その内容についてはわからなかったが、その言葉を発するときにほのかちゃんの瞳の奥で激情にも似た何かがちらりと見えた気がした。それは今までにない、覚悟のようなものだった。

 

「……そっか! なら俺もたくさんマネージャーとして」

『それより先に怪我を直せ!』

「…………うぃ」

 

まさかの全員からの否定だった。何ぞこれ。

 

大人しく、ベッドにモゾモゾと潜り込み、手持ち無沙汰になったので枕元のケータイを開いてみると。

 

「あれ? 不在着信……?」

 

そこには不在着信が5件も来ており、時間はほんの数分前だった。

よく見てみればサイレントマナーの状態になっており、そのせいで音が聞こえなかったのが理解出来た。

 

誰からの電話だろう、そう思いケータイのロックを解除しようとした所で。

バンッ、と激しい音を立てて部屋の入り口のスライドドアが開け放たれた。

 

死角からくる音の大きさに思わず皆が一度飛び跳ねて固まる中、俺は別の理由で硬直を得た。

 

なぜなら。

なぜならそこに居るのは―――。

 

「―――林、檎……」

「あ、あのっ、兄、お兄ちゃんを探しているんですがっ、こ、このお部屋で間違いないでしょうかっ!」

 

最愛の、義妹の姿だった。

 

「ちょ、な、りんっ!?」

 

唐突な出来事にうまく言葉が出ない。

しどろもどろになりながら言葉を紡ごうとワタワタしていると俺より遥かに冷静な声が耳に届いた。

 

「貴女……一旦落ち着いてもらえるかしら。 それで、そのお兄さんと言うのは? 宜しければ、だけど事情を伺っても?」

 

絵里さんである。こんな時でも冷静に、凛とした佇まいで物事に対応しようとするその姿はまるで大人のようで、その美しさと相まって幻想的なものさえ感じてしまう。

 

「あ、あの、す、すいませんっ。えっと、私の名前は杉崎林檎っていいますっ! 一昨日来やがれ!」

「え」

「よろしくお願いします!」

「―――あっ、はい。宜しく」

 

あ、今絵里さんすごい悩んだ。突っ込むべきか流すべきかで悩んだ結果疲れない方を選んだのだろう。絵里さん、それ大正解です。

 

「えっと、それで? お兄さんのことなのだけれど」

「はい! えっと、お兄ちゃん……ぁ、兄の名前が杉崎鍵って言いまして!」

 

みんながその言葉に愕然としている。おいお前ら、そんな信じられない顔で林檎と俺を何度見するつもりだ。覚えとけよ!

絵里さんも林檎の言葉に若干動揺しながらも俺の事を伝えようと座っていた席を開けようとして。

 

「あぁそれなら―――」

「―――すごい紳士的で、格好良くて! いつも優しくて本当にかっこいい兄なんです!」

「ごめんなさい人違いだったみたいだわ」

「絵里さぁん!?」

 

酷い裏切りだ! 扱いが酷すぎる! てかあんたら何全員『やっぱ別人かー』みたいな顔してうなずいてんだよ! 流石に傷つくぞおい!

 

「あっ! お兄ちゃん!?」

「林檎っ!」

 

どうやら先程の声で俺を発見したらしい林檎が慌ててこちらへと駆け寄ってくる。

 

「おま、どうしてこんな所に!」

「だ、だってお兄ちゃん事故で怪我したって連絡が入ったから心配で……! う、うぇぇええええんっ! 良かったよぉおおおおおお」

「わ、わぁ泣くな! 泣くなって! ごめんな林檎! あぁああでもちょ、今抱きしめられたら頭がっ! 鼻水がっ……」

 

落ち着くまでしばらく時間が必要であったことは記しておく。

 

 

 

 

「ぐずっ……み、皆しゃん……みっともない所をお見せしました……ふぁっきゅー……」

「ねぇ杉崎林檎さん? 幻聴かしら? さっきからなんか変なこと言ってない?」

「ふぇ?」

「あ、なんでもないわ」

 

絵里さん分かりました。分かりましたから『おいどうするんだよこれ』って目で必死に訴えかけてくるの辞めてください。

 

「えーっと、取り敢えず……林檎ちゃん? は鍵君の妹さんで、怪我したことを聞いて一時的に鍵君のお世話するためにこっちに来たって事だよね?」

「はいっ! そうです!」

「……それにしても意外ですね。まさか杉崎君の妹がこんな娘なんて……」

「何が言いたいか分かりますけどやめといて下さい。さすがの俺でもそろそろ凹みますよ。まぁ林檎が褒められて嫌な気はしないですけどね。なんてったって俺の自慢の妹ですから」

 

胸を張ってそう言ってやると、先程まで絵里さんが座ってた所に腰を掛ける林檎がくすくすと笑みを零しながら言った。

 

「えへへ……嬉しいけどお兄ちゃん。りんごは妹じゃなくて、“義理”の妹だよ?」

「おいおい、何もそんな強調することねーだろ? そんなに俺の妹は嫌かよ」

「そういう訳じゃないけど……だって本物の妹だったらその……出来ないこと、あるんだもん」

「全員動くなっ!」

『ッ』

 

我愛しの妹君の口から漏れた爆弾発言に今までにない危険を感じた俺は威嚇するように大きく吠えた。

近くにいた海未さんがなぜか隠すように右手に持っていたケータイをひょい、と取り上げる。

 

「あっ……!」

 

何故か開かれているのは、電話のダイヤル画面で『11』。

この次はなんの数字を打ち込むつもりだったのか、想像するだけで恐ろしい。

 

「あ、あのなぁ! 言っておきますけど林檎と俺は疚しい関係とか一切無いですから! もう! 欠片も!」

『必死過ぎて怪しい……』

「お兄ちゃん。そういえばあの時あげたりんごの……ぁ、あの画像……ちゃんと使ってくれてる?」

『!?』

「お前お子様脳の癖になんでこういう時だけは最悪な勘違いを促進させるんだよぉおおおおお!」

 

全く持って厄介極まりない。

またそれから数十分を言い訳に費やして、なんとか皆の目を『ドブに沸く虫を見る目』から『犯罪者にしか見えない不審者を見る目』まで回復させた。回復である。誰がなんと言おうと復帰だ。

 

「それで? 結局義理とはいえ妹にまで性的な行為に及ぼうとしているようにしか見えない自称ちゃんとしたお兄さんはどうするつもりなの?」

「すげー迂回したデッドボール投げてくるのやめてくれませんかねぇ!? ……俺、というより林檎はどうするんだ? すぐにあっちに帰るのか?」

「ううん! せっかくだから旅行も含めてお兄ちゃんの看病しようと思って! えへへ。だからお父さんとお母さんも張り切っててねー?」

「お? これとかか?」

 

そう言いながら、林檎が持ってきたであろう無骨な真っ黒のボストンバッグを持ち上げる。

 

「あっ、そのカバンは―――」

 

林檎がそう言いかけるも、ときすでに遅し。ボストンバッグに収まりきっていなかった何かが持ち上げた衝撃で地面に転がった。

 

ゴトン(今まで見たことのない防犯用にしては異常なデカさと凶悪さのあるスタンガンが地面に転がる音)

 

「それお父さんとお母さんが持って行けって。あはは、変だよね。なにがあってもお兄ちゃんが守ってくれるって言ってるのにそのお兄ちゃんに使うものだって変なこと言うんだよ?」

『……………』

 

無。ただただ無……ッ! みんなの絶対零度の視線がただひたすらに俺を突き刺す。

とりあえずこれ以上変なものがあっても困る。そう思ってそのかばんの中を物色する。

 

「……林檎。この某新世紀な方々のユニフォームは?」

「お兄ちゃんとこれで心の壁を作れって」

「逃げちゃダメだ林檎! じゃあこの某雛見沢の少女が持ってそうなナタは!?」

「何か間違い起こしそうになったらこれでお兄ちゃんのお兄ちゃんを切れって。意味がわからなかったけど」

「嘘だッ!」

「二度ネタはダメだよ!」

「ぅぐ……」

 

痛い所をつかれた。いやそうじゃねぇ!

 

「じゃあこのディーブでダーティーな一見さんお断り過ぎる感じのエロ本は!?」

「『鍵に好意を寄せてる、または寄せそうな女の子がいたらこの本を見せてこれが鍵の趣味なんですって振れ回っておいて』って飛鳥おねーちゃんが」

「あのクソアマァァァァァアアアア! 今日という日は許さねぇぞ! こうなったら電話かけてやる! …………おい飛鳥! お前また林檎に―――え、あ……わ、悪い。そうだよな、お前にもたくさん心配かけちまったよな。ごめん。でも元気だから心配すんなよ。え、えぇ!? い、いや、嫌じゃないけど……そ、その恥ずかしいっつーか……その……うぅ。ば、バカにすんな! てかお前はなんでそんな簡単に言えるんだよ! お、俺もそうだけどさぁ……! う、うううう……ぉう。俺も……だぞ。……ううううっせー! ちゃんと言ったわ! 恥ずかしいから何度も言わせんじゃねぇ! ……あぁ。そうだな。今度戻った時はちゃんとお前に会いに行くよ。あぁ。おう。はは、ありがとな。じゃあな……ふぅ」

『いい笑顔で、ふぅ、じゃねーよ!!!』

「うおっ!?」

 

びっくりしたぁ! なんだよみんな揃って。

 

「何、今の、長い間連れ添った彼女とのやり取りみたいなの」

「え? いやただの幼馴染っすよ?」

「ふぅん……」

 

目に見えて絵里さんの機嫌が悪くなった。いやそれだけじゃない、全体的にみんながジトッとした視線を投げかけてきている。

 

「と、ともかく! 林檎はうちにくるんだよな!? 幸い俺の家もここから遠くないし部屋も余ってるから林檎も一緒に入れるだろ。俺はあと一日ここで泊まるからりんごは先に俺の家に行っててくれないか? 住所と鍵あとで渡すからさ」

「うんっ。わかったよお兄ちゃん!」

 

不意に感じた嫌な空気を払拭するためにもごまかすように話題を切り替える。

その話題ににんまり、と笑いながら林檎がそう頷いた。

あぁもう本当にうちの妹は可愛いなぁ。

 

「あ、そういえばお願いされてるんだった! ねぇお兄ちゃん!」

「ん?」

 

と、そんな時だ。急に何かを思い出したらしい林檎がポケットから可愛いなにかのキャラクターであろう人形をつけたスマートフォンを取り出し、何かの操作を始める。

 

「えっと、なんていうか、がんばっ!」

「え?」

 

目の絵に、何故かスマートフォンをぐいっと押し付けられた。

 

「え? どういうことだ林檎? このケータイをなにすればいいんだ?」

 

説明もされずに押し付けられたスマートフォンにあたふたしていると、その声は聞こえた。

 

『……―――鍵、さん』

「…………ゑ?」

 

それはどう表現したらいいのか。スピーカー越しから聞こえる、可憐で美して、穏やかで暖かなその声。

聞き覚えのある、ある女の子の声。

 

そんな声が、スピーカー腰でもわかるくらい凍てつき、錆びたようにザラ付いた何かを押し殺す様な声をしている事に、俺は素っ頓狂な声を挙げざるを得なかった。

 

『……お久しぶりですね? 鍵さん。もしかしたら忘れているのかもしれないので名乗らせて頂きますね? どうも、わたくし碧陽学園生徒会長を努めさせて頂いております、西園寺つくしと申します』

 

限りなく、硬質な声。

聞き慣れたはずの、西園寺のその声に。

 

俺は何かとてつもないことが起きそうな予感を感じずにはいられなかった。




今更ですけど本当にギャグを書く難しさに心が折れそうです。書けるだろ(ハナホジーとか言ってた頃の私パロスペシャル仕掛けたい(憤怒)
なんか、いい書き方とか、ギャグ参考になる作品とかございませんかね。ぜひあったら教えて下さいませ。
ついでに余談ですが基本的にはこの作品一存風味でギャグを統一して(いるつもりになって)おりますがたまにバカテス風味も混ぜて(いるつもりになって)います。

その他にこの作風に合いそうなギャグ系がありましたらぜひ教えてくださいませ。軍資金集めて特攻します。

お読みいただいて有難う御座いました!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。