今日更新させて頂きます。
……言い訳なぞございません。スランプ? そんなイケイケな横文字使ってみたいですね。えぇ、理由ですか? 言いましょう。
サ ボ っ て ま し た 。
言い訳をすれば色々あるんですが、直訳するとこれです。
本当に申し訳ありません。流石に二週間放置はまずいという理性が働きました。見捨てることなく待っていただいた読者の皆様には感謝の念が耐えません。
あと謝辞を。
拙作、生徒会の一存を基礎に作られたクロス作品でありながら『ボーイズラブ』と『ガールズラブ』のタグを付け忘れるという愚行を犯しておりました。
大変申し訳ありません。噴飯物でございます。
この点について以下に責められても仕方ないと思っております。怒りを感じた方はぜひ仰ってください。怒りません。絶対怒りませんから。ただ三次元ホモの画像を送りつけます。怒ってませんけど。
「お姉ちゃん最近その人の話ばっかりだね?」
それは、この一言から始まった。
いつもと同じ帰り道。生徒会が終わると私は近場にある妹の学校まで迎えに行き、一緒に帰るようにしている。
もちろん今日も同じで、学校近くのベンチで待っていると妹―――亜里沙が、こちらに手を振りながら駆け寄ってきたのだ。
「え?」
言われて、思う。
そうだったか、いや、そんなことない筈。
「事あるごとにすぐその人の話を出すんだもん。もうタコに耳ができるくらい聞いたよぉ」
「それを言うなら耳にタコよ亜里沙……って、流石にそんなことないわよ。昨日だって亜里沙にしたのは新入生説明会についての話とか……」
「杉崎鍵っていう人がその新入生歓迎会の後にあるお姉ちゃんの学校で出来たスクールアイドルのライブの手伝いをしてる話だよね?」
「……いや、それは、あの」
ほら、愚痴というか、なんというか。
それらしい言い訳をモヤモヤと脳内で組み立てていると上目遣いで妹が声をかけてきた。
「ねぇ、お姉ちゃん」
「なにかしら」
「好きなの? その人」
「はぁ!?」
思わず大きな声が出た。
「そんなわけ無いでしょ。私があんな変態……あんな変態……変態のくせに……もう」
「えぇ……」
何故か妹が引いていた。
「な、なによ」
「うーん、まぁお姉ちゃんが認めてる人なんだから悪い人ではないのは分かるけど……亜里沙が認めた人じゃないとダメだよ?」
「だからそんなことないって言ってるでしょ!?」
「そう言うならそれでいいけど……。あっごめんお姉ちゃん」
そこまで話していると、亜里沙がこちらに振り向いて謝ってきた。亜里沙がちらりと視線を送った。……その先にいるのは黒髪で落ち着いた雰囲気のある女の子、雪穂ちゃんだ。彼女は私の妹の友達であり、たまにこちらの家にも遊びに来るから仲がいい女の子でもある。
「どうしたの?」
「今日雪穂ちゃんの所に遊びに行くって伝えるの忘れてたよね?」
「……全く亜里沙ってば抜けてるわよね。分かったわ。ご飯はどうするの?」
「うーん、ご迷惑だろうからその前には帰ると思う!」
「そう、分かったわ。それじゃあ行ってらっしゃい」
「うん! ありがとう! 行って来ます!」
そんなやり取りをして、亜里沙があちらへと走っていく。転ばないでよ?
雪穂ちゃんもこちらに気付いているようで、視線が会うとこちらに頭を下げてきた。
そのまま笑顔で歩いて行く光景に、微笑ましい物を感じながら、私はベンチから立つことなく、少しだけ考える。
―――好きなの?
……いや、そんなことは無いはず。
勿論好きか嫌いかで言われれば好ましい部類の存在だ。嫌じゃない。むしろいてくれると落ち着く。かと言ってこれが恋愛的なものかと言われれば……モヤモヤとしたモノがあるのだ。
「好き、好き、好き……?」
あぁダメだ。段々好きという言葉が頭の中で崩壊してきた。
一度頭を振って立ち上がる。よし、こんなこと考えてないで帰ろう。宿題と新入生歓迎会の最終調整と見直しをしなければ。
一人意気込み、来た道を戻っていく。
と言うかアレについて悩むなんていうことが間違っている気がする。うん、きっとその通り。というよりアレに恋愛感情を抱くなんて……よくよく考えたらその時点でありえない。何やっていたんだろう。
なんて。
その近く。彼女が歩き去るまでの光景を目に捉えていた小さな女の子は手を繋いでいる母親に向かって上目遣いに言葉を漏らした。
『ねーおかーさーん? あのきれいなおねーさん、どうしてお顔まっかっかなのー? おびょーき?』
『どうだろうね? もしかしたら、好きな人のこと考えていたのかもね?』
『すきなひとー?』
『えぇ、そうよー』
そんなやり取りは、もちろん彼女の耳に届くことはなく、町中の喧騒に紛れて消えていった。
◆
「よっし、お前今日帰れ」
それは、この一言で終わった。
いつもと同じ学校帰り。生徒会も終わった俺はそのままの足で喫茶店アルボースへと足を運び、アルバイトを開始する――んだけど。
「え?」
「いや、え? じゃないだろ。なんだお前その顔。私はゾンビをシフトに組んだ覚えはないぞ」
「いや、流石にそこまで酷くは……うわぁ」
無言で鏡をつきつけられて引いた。何だよこの土気色の顔。
自分でもびっくりするわ。
「……いや、お前の体調が悪そうなことには気付いていたが、正直ここまでだとは思わなかった。すまん……上司として失格だ」
「いや、悪いのは俺なんで気にしないでくださいよ……」
「ほんと、ほんと申し訳ないな……壊れない程度に使い潰すのが得意なんだが……」
「え?」
なんだか今不穏な言葉が聞こえた気がしたが、如何せん頭がぼんやりとしていて聞き取れない。
「まぁという事だ。ほれ、詫びも兼ねて1000円やるからあそこの和菓子屋で甘いもんでも買って食って寝ろ。あそこの和菓子はうまくていいぞ。ほらいけいけ」
「え、あっ」
講義する間もなく、ポケットにグシャリと1000円突っ込まれて店から追い出される。
「……はぁ」
まぁ、正直体はだるいし、助かるからいいんだけども。
……うぅ、申し訳ないなぁ。くそ、こんな顔してるから迷惑かけしまうんだよ……はぁ、こんなんじゃハーレム王になんかまだまだ遠いぜ。
具合が悪いせいか思考がネガティブに寄りがちだと思いつつも、ポケットの中に押し込まれた千円を財布へと入れ、ふと思う。
「和菓子かぁ……」
最近食べてないなぁ。言われてみるとすごい食べたくなってきた。あぁ! なんかもう脳みそが和菓子で決定してる感じがある! 団子と饅頭が食いたい!
少し覚束ない足取りで、店長が指差した方向へと歩いてみれば、その場所はすぐに見つかった。
『和菓子屋 穂むら』
綺麗な字体で書かれたその文字の店を見つけると、一応周りに似たような和菓子屋がないかを確認して……ないな。じゃあここか。
「……ちょ、やめてください!」
「えー? いいじゃん。すこしだけだからさぁ」
ん?
そんな声が聞こえた。聞こえたも何も見てみればそれは和菓子屋の数件手前の行われているやり取りだった。
黒髪の女の子と金髪の女の子が、長髪ロングと帽子の被ったいかにも今風な男と話している。
いや。
というより、絡まれていると言ったほうが正しそうだ。
なぜなら女の子の顔は本当に困ってるし嫌そうなのに対して男たちの顔はニヤニヤと下世話に歪んでいる。
……なんかムカムカしてきたぞ?
ちらり、と困った様に視線を迷わせていた彼女たちの視線が此方とぶつかった。それは縋るような視線だ。
女性にそんな目を向けらたら、しょうがない。
俺は、一度大きく息を吐き、堂々した歩き方で彼女達の方へと向かう。
そして息を吸い、言葉を吐く。
「おう、悪いな二人共。待ったか?」
『あ゛?』
男二人組が一斉にこちらを向いた。
ウワー、何だよこいつら。今までめっちゃ笑ってたやんー。なんで今そんな人を殺しそうな目でこっち見るんだよ怖いよー。
と思いながらもじっとり冷や汗を背中に流しつつも俺は笑顔を保ちつつ声を重ねた。
「おう、悪いなお二人さん。こいつら俺のツレだから」
「はぁ?」
若干俺もすがるような視線で彼女たちに目配せすると、疑問形な声を漏らしながら振り返った男に彼女たちは笑顔でそうなんですよー、と声をだす。
「……ちっ、行くぞ」
と、明らかにテンション下がった男たちがすごすごと歩いて行く。それを姿を見えなくなるまでニコニコと笑顔を貼り付けたまま見送って、
「うわぁあああこわかったぁあああ!」
崩壊した。
いや、怖い怖い。あー、もう二度とあんな体験したくないわ。
「す、すいません! 助けてもらって有難うございます!」
「あ、いや気にしなくて良いよ。勝手にやっただけだから」
実際そのとおりだし、これで恩を着せるようなつもりはない。
「うー、で、でもせっかくなのでそこの和菓子屋さんが私の家なんですけど、お礼させてくれませんか? 亜里沙、それでいいかな?」
「えっ? う、うん!」
「お、マジか! 俺も今ここに行こうと思ってたから、それは嬉しいな。けどね」
「あ、何でしょうか」
「あんまり自分の家を他人にポンポン教えるのは辞めたほうがいいぞ。いつ何があってもおかしくないからね」
「……フフ、優しいんですね」
黒髪の女の子が、そう言ってふと優しく微笑んだ。
その表情になにかダブるものを感じるが、その違和感はすぐに溶けて無くなる。
「じゃあ行きますよー!」
彼女が隣にいた金髪の美少女の手を引っ張って中に入っていくのを見届けながら、俺も後へと続いていった。
◆
「……ふぅ」
家についた俺は、どっかりとパソコンの置かれたデスクの上に腰を下ろし、息をついた。
あの後結局穂むらにて和菓子を食べながら彼女二人―――雪穂ちゃんと亜里沙ちゃんとで話が弾み、そこに雪穂ちゃんのお母さんも交わって話が弾んだ。
甘い物も久々に口にすると美味しく、ましてや穂むらの和菓子は絶品だったのだ。多分これからしばらくお世話になる気しかしない。
「さ、てと」
ケータイを確認すると、もう明日はいよいよ新入生歓迎会。
つまり―――μ'sの初ライブなのだ。
それだけじゃなくて俺には生徒会の仕事もある。やる事をやらなければいけない。企画案の見直しと、会場設営。スケジュールなどを最終調整し、明日の朝もμ'sの最後の練習に付き合うのだ。
「うっし!」
パァン! と頬をはる。
じんじんとした痛みが広がるが、あえてそれが喝入れになってやる気が湧くのがわかる。
「やってやるぞー!」
一人で意気込み、パソコンに向かって作業を始める。
やがて日が完全に沈み、夜になり、明け始めて―――。
いよいよ運命の日が、やってきた。
お読みいただき有難うございました。