スクールアイドルの一存   作:クトウテン

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昨日出すとか言っといてこの醜態を見よ!(寝落ちました

しかも寝落ちたせいでスマホの充電は切れてるわ書きなおすわのてんてこ舞い。調子乗るといいことないね! 絶対許さない!
あ、お気に入り件数が一日で800から900まで伸びておりました。お気に入りして下さった皆様方。誠に有難う御座います。

今回はラブライブ要素ゼロですが、ラブライブ要素以外興味のない方は飛ばしても構わないと思われます。多分。


第十五話 喫茶店にて

「はぁ……どうすっかなぁ」

 

あの話を聞いた後、バイトが入っていた俺は一人キッチンで洗い物をしながらぼんやりとした意識で今日の出来事をまとめようとしていた。

 

頭の中に何度も現れるのはまだ幼い会長の踊るバレエ。

画面を通したものだと言うのに、だいぶ古い映像だというのに。

これほどまでに人の心を揺さぶることの出来るものなのか、という事を俺は初めて知った。

 

会長の言い分はこうだ。

ダンスというものをある程度知っている絵里さんからすれば、まともな腕もない彼女達は正直―――アイドルにさえ、見えないと。

正直、その全てがお遊戯にしか見えない、と。

 

……さて。

 

「どうしたもんかなぁ……」

 

本日何回目になるかもわからないこのセリフ。

しかしそれに終止符を打つ存在がいた。

 

「おい杉崎、ぼさっとしてる暇あんなら手ェ動かせい」

 

ばしっ、と少し硬い板のようなもので頭を軽く叩かれる。

 

「いてっ……ってすいません。少し考え事してました」

「はぁ……陽美菜のパンツの妄想はあれほどやめろと言ったじゃないか」

「まるで過去同じ事例があったかのように! つか俺の考え事はすべてエロ一択なんですか!?」

「違うのか!?」

「まだあって一週間立ってない人間に失礼じゃないですかねぇ!?」

「はぁ? 私は店長だぞ。つまりお前に何をいっても許されるだろうが」

「相変わらずエッジの効いたボケですねぇ! 使われる身としては笑えないんですけど!」

「ボケ、だといいなぁ(ニヤニヤ」

「変な伏線をはらないでください!」

 

厨房で皿洗いをしながら放心していると近づいて来たのは黒髪を乱暴に束ねた女性、高雛店長だ。

その顔にはいつもと同じく何を考えているのかよくわからない微笑みと、大人の女性が持つ余裕のような物を貼り付けていた。

 

「というか表でなくて良いんですか?」

 

この店実は入ってから知ったのだが働いているのは店長と女の子の二人きりだったようなのだ。まぁでもこのお店も水曜日は休みだし客足もそんなに多いというわけではないから辛いわけではないが、それでも女の人二人というのは辛いものがあるだろう。

しかし二人共大変見た目がよろしい。つまりどういうことかというと、それだけでも客が寄ってくるのだ。

ある種の客寄せパンダ的な意味だったんだが、それを店長はしっかり理解しているように何回か頷くように相槌をうち一言。

 

「いいんだよ、陽美奈さえいりゃ男どもなんて財布も同然」

「お客様は神様じゃないんですかねぇ!?」

「違う。奴らは自分達を金というエサを私達に恵む飼い主だと思っているが所詮は経済という籠に閉じ込められた家畜さ……クククッ」

「どこから突っ込めばいいかわからないんであえて言いますけど、最高に最低ですねアンタ!」

「ふっ、私だって皆を笑顔にできる様なお店を作りたかったさ……」

「て、店長……」

「ただみんな口を揃えて言うんだよ。サービスにムチとロウソクを入れるのはやめろって」

「返せよ! 一瞬でも感じた感動を返せよ!」

 

嫌すぎるわそんな店!

 

「頭ごなしに否定するな! 考えても見ろ、注文を終えた客がこう聞かれるんだ。ご一緒にムチは如何ですか? って。な?」

「な? じゃねぇよ! ポテト感覚で変な世界広げないでくれますかね!?」

「いいじゃないか! ムチで叩かれたら今ならなんとスマイルもついてくるぞ!」

「さぞ恍惚とした笑みなんでしょうねぇ! 支払いの代価は途方もないですけども!」

「あぁ。勿論アフターケアとして写真も収めてここにしか通えなくしてやる」

「悪質! というかそれはアフターケアじゃなくて追い打ちって言うと思いますが!」

「ついでにムチは二回目の来店から一発1万円だ」

「暴利もここまで来るとアホらしい!」

「叩きたくも無いのに……叩かされて……う、ぐ……」

「その台詞は死んでから3日過ぎた後の心臓マッサージ位言うの遅いですね!」

「ちゃんと手元見て食器を洗え」

「うぐぅ……っ!」

 

言ってることは間違ってない。すごい正しい。正しいだけに、ツッコミたい衝動が半端ない!

 

「…………(にやにや」

 

そしてそれが分かっているのだろう。その様子をひどく満足気に眺める店長。

……悪趣味過ぎる。というか俺の周りにはどんな場合でもサディスティック系の人がいないといけない法則でも働いてるのか?

 

「……で、どうだ? 少しは気分楽になったか?」

「……ほんと、大人の人ってずるいっすね」

「はは、大人になるって事はそういう事なんだ。覚えておけ」

 

どうやら店長は俺がいつもどおりではないことを分かっていたらしく、その為にわざわざいてくれたらしい。

ちくしょう。かっこ良すぎるじゃねぇか。

 

「女か?」

「別に俺の彼女、とかじゃないんですけど……えーと、店長」

「ん?」

「もし仮にですけど、Aグループっていうアイドルになりたい集団の中に店長がいて、しかしそれらがまだまだ歌もダンスも発展途中で現段階ではうまいとは言えず、ダンスがすごい上手な母親にせめてダンスがまともにならなければアイドル活動させないと言われたらどうします?」

 

全部が嘘ってわけでもないが、まぁだいぶぼやかした伝え方ではあるだろう。

その俺の言葉に訝しげに店長は俺をひと睨みした後、手元の帳簿に目を落とした。

 

「なんだ唐突に……。まぁ、いい。その条件なら」

「なら?」

「うーん、二択、かな」

「といいますと?」

「まず一つ、アイドルの存在理由を変える」

「……で、次は?」

「世界中の人間が私を崇めるようにする」

「気が長いよ! 数ある選択肢の中でどうしてそんな地球温暖化と同じくらいの規模のものを選ぶんだよ!」

「夢は大きく、って言うだろ?」

「せめて実現可能範囲にとどめてください!」

「馬鹿だな杉崎は。いいか? “人”の“夢”と書いてだな――」

「“儚い”だよ! それは叶わないタイプのやつですから! 自慢気にできませんから!」

 

この人はどんだけダークなネタが好きなんだよ! 人を絶望させる申し子か!

俺はもう内心、いや外にも出してるけど絶叫を上げながらその言葉に突っ込みを入れ、それに満足したのかようやく店長はふ、と吐息を漏らした。

 

「……は、まぁ冗談はこれくらいにして。私ならどうするか、ね。まぁとりあえずその母親に教わってでも何でもして母親をぶち抜くね」

「―――母親を、ですか?」

「当たり前だろ? 子供ってのは義務ってのがある。私が思うに子が背負う最大の義務ってやつは、親に見せてやることさ。自分の成長した姿って奴を」

「――――」

 

まるで空気のような人だ。掴み所がわからない。飄々としていて、人をおちょくるのが好きで―――凄い格好いい女性。

それがこの人なんだろう。

 

「結婚とかしないんですか? 店長」

「あ゛?」

「ひっ、ごめんなさいごめんなさい!」

 

思わず口を付いてしまった失言に店長がドスの効いた声を漏らした。怖えぇぇぇ!

 

「……なんか付き合った男共がなぁ。みんな逃げていくんだよ。自分が情けないって言って」

「うわぁ……」

 

とてもいたたまれない気持ちになった。確かにこんなにそこらの男以上に格好良くて、信念を持った女性が身近に居たら俺もそう思ってしまうかも知れない。それぐらいにこの人は、かっこいい。

 

「で、たまにハガキが来るんだよ……“あなたのお陰で自分を見つめ直すことが出来、素晴らしい女性と幸せになれました。貴方の事は忘れません。本当に有難う御座いました”……って」

「ごめんなさい。わかりました。本当に俺が悪かったです。だからもうやめましょう」

「まだネタなら腐るほどあるぞ」

「俺バイトしに来たはずなんだけどなぁ! いつからここ拷問部屋になったのかなぁ!!」

 

そんなこんなで話をしていると、割と溜まっていた食器も全て洗い終わり、清掃自体もだいたい終わっていた。

 

「よし。ま、もう相談事はいいのか?」

「……えぇ、店長のお陰で吹っ切れました。ありがとうございます」

「よし、なら陽美奈のやつと交代してこい。あいつ休憩だから」

「うっす」

 

その言葉を最後に店長は休憩室に引っ込んでいく。それを見届けてから俺も身だしなみを確認してからお客様のいる場所へといき、そこに立っている女性に声をかけた。

 

「陽美奈ちゃん、休憩だよ」

「ひゃああああ!?」

「おわぁ!?」

 

トントンを肩を叩いたらその女性は一瞬飛び上がり、後ずさりながらもこちらを見た。

 

「あ、あ……しゅぎさきさん……す、すいません」

「……」

 

ブラウンの長髪をふんわりと跳ねさせた可愛い女の子―――町谷陽美奈ちゃんが驚いたせいか若干声と肩を震わせながらそういう。

……かわえぇ。

この為にここに働きに来てると言っても過言ではない。

 

「本当に陽美奈ちゃんかわいいね。付き合おう」

「ふ、ふぇえええ!? だ、ダメですダメですっ! まだ知り合って間もないですから! あのあのっ、まだわたし杉崎さんの事わからなくてっ、そのっ―――」

 

なんだろうね。この林檎に通じる感じの欲求。Sっ気がすごい刺激される感じ。

もう俺襲ってしまいたいくらいです。

 

「おいてめぇ! 俺等の陽美奈ちゃんに何してくれとんじゃゴラァ!」

「おうてめわれこらぁ! 舐め腐っとんじゃねぇぞボケがぁ! あぁん?」

「ナッコラー! ヤッコラー! スッゾスッゾコラー!」

「最後の奴は出る作品違いだから帰れ! 良いじゃねぇか! これは正当で正式な新入スタッフと先輩スタッフの絡みじゃないっすか! 俺の知識だとこのまま肉体関係になるんですから黙ってて下さい!」

「に、肉……ふ、ふぇえええ!?」

『お前の知識偏りすぎだろ!?』

 

しかし、そんな一連の流れを邪魔してくる人はいるもんで、今日も元気にこの店にたむろしてるのはおっちゃん三人組であった。

最初の方はビクビクしたもんだが随分気のいい人達で今じゃこんな感じだ。

 

「つかキー坊てめぇ本気で陽美奈ちゃん狙ってるの? ねぇおじさん達まじで狙ってるんだったらちょっと硬くて黒くて玉の出るあれを貴様の眉間に押し付ける事も(やぶさ)かでは無いんだけど……」

「言い方が卑猥なのに対して俺の命がマッハ! 助けて陽美奈ちゃん! 殺される!」

 

ゴリゴリと眉間に押し付けられたその何かに対して思わず陽美奈ちゃんにヘルプコールを出してしまう。手を伸ばすと彼女は一度息を呑んでから決意したように声を振り絞った。

 

「え、エッチなのは行けないと思いますよ杉崎くんっ」

「今その話題!? 多分半ページ位波遅いよそれ!?」

「安心しな陽美奈ちゃん。今からこいつはそんな事さえ言えなくなるからなぁ……」

「いやー! 入ったばっかりのバイト先で眉間にこんなもん押し付けられたくねぇー! だれかぁー! だれかぁー!」

「あーもーっ! 杉崎煩いぞ! お客様の前で何大声張り上げている!」

「いやいやいやいやそんな事より今俺の眉間にヤバイもん押し付けられてるんですけど! 大声とかそんなレベルじゃないんですけど!」

「そんなんどうでもいいわ!」

「俺の命が安価すぎる!」

 

……まぁ、そんなこんなで。俺のバイト事情も中々おかしなもんだけれども。

喫茶店アルボース。ここは変人の集まる賑やかな喫茶店なのだ。

 




杉崎も格好いいですけどやっぱりなんだかんだ一存は周りの大人たちも魅力的ですよね。そんな感じの一話でした。
有難う御座いました。

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