スクールアイドルの一存   作:クトウテン

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大変長らくお待たせいたしました。
風邪とか熱とか喉の炎症で再熱とかで体調が面白い事になってまして。
あと今回の話が難産だったのも相まって。

今回の話は急遽足したものとなっております。

……だってほのか側の話じゃないから描写することなくてなにか足すしかなかったんだもん(本音

まぁでも実際これはこれでありかなって感じです。

※本話は当作完全オリジナルストーリーとなっておりましてラブライブ!要素が一ミリもございません。
何卒ご了承ください。


第十一話 バイトを始めよう

さて、と。

 

あれから生徒会室では特に話が発展するような事もなく、残り僅かな時間をダラダラとくだらない話をしながらお茶を飲むという有意義な時間を過ごしそのままの足である場所へと俺は向かう。

 

それがここ。

 

喫茶店アルボース。

 

それがどうしたと思うかもしれないがなんと俺は今からここでアルバイト募集の面接をするのだ。

まぁ俺がこっちにいる間企業の方から支援金として余るくらいの金はもらってるんだけど……なんつーか今までこうしてたのが癖づいちゃって結局バイトの面接受けちまったんだよなぁ。

 

我ながら損な性格だと思いながら、面接予定時刻の五分前になった為店内へと足を踏み入れる。

 

カランコロンと昔ながらの音がドア上に設置されたベルから俺を出迎えるように聞こえる。

 

「いらっしゃいませ~。1名様でよろしかったでしょうか?」

 

すると奥からとてとてと早歩きで店員さんが……おぉ!!美人さんじゃないか!

明る過ぎないブラウンの髪をロングに伸ばした可愛い女の子がそこにはいたのだ!

うっひょお! ここは天国かよ!

 

「あ、すいません。面接の件で来ました。杉崎健と申します」

 

と、思うがもちろん表には出さない。流石にね? 常識はあるんですよ。

 

「あっ、貴方が! ちょ、ちょっと待っててもらってもいいですか!? 店長さーん!」

 

そう告げるとワタワタとしながら美少女が来た方へとまた引っ込んでいった。可愛い子だなぁ。店内で大声を出すという喫茶店にはあるまじき行為だとは思わなくもないが喫茶店にいるお客さんの顔をみてみれば皆があの子を微笑ましそうに見ていた。……なるほど、人気者なわけか、そりゃそうだよな。

 

そんな事を見ているとまたとてとてと慌ただしく美少女がまた戻ってくる。

 

「あ、あのっ、店長さんがお待ちですのでっ、どうぞっ」

 

みんなにこんな感じの態度で接客してるんだろうなぁ。そりゃ人気にもなりますわ。そう思っても可笑しくないほど彼女のその姿には心惹かれるものがあった。

 

「ありがとうございます」

 

仲いい訳でもないし、仕事中だし今お話するのは遠慮しておくか。

会釈とともに一言告げて奥の方へと進んでいく。

 

小奇麗な店内を抜けて『staff only』という札の掛けられた扉の前に、一度深呼吸。そして意識を切り替えてからまず、2回ノックをする。

 

そう、この瞬間から戦いは始まっているのだ。これはいわば聖戦。アルバイトというのは山と同じだ。高い山もあれば、低い山もある。そして俺はこの(バイト)を、今までにない程高い物と、みた。

店長自ら出てくるのが基本礼儀だ。チェーン店などは基本そのまま店内へと通してそこで面接を始める。

が、これは違う。店長が出てくる事はなく、俺がそちらへと赴く、それは店長がスタッフルーム―――店長の城とも言うべき本拠地でその面接を取り計らうのだ。

だからこそ、ここからは一歩も間違える事ができない。

 

『……入れ』

 

それは女性の声であった。なんとなく真儀留先生を彷彿とさせる声色だ。女性店長という事に喜びそうになるがここは敵地、気を引き締めろ杉崎健!

 

「はい」

 

そう一言おいて、ドアノブを捻りドアを開け、消してお尻を向けない様にドアを音を立てずに閉める。

 

スタッフルームの内装は店内とさほど変わりはなく、落ち着いたゴシックな色合いの壁と店員用に設けられたソファーにしっかりとした机。一番部屋の奥の方にはデスクワーク用の机とその上に乗るパソコン―――そしてそのデスクワーク用の椅子には、その声の主であろう人物が座っていた。

 

まとめた黒髪は乱雑な物ながら彼女の雰囲気によく似合っており、その感じがむしろ彼女特有の色香を発していた。スタイルの良さと、キリッとしたイメージは出来る女のソレだ。

性格は声色に感じたものとさほどの違いはなさそうであった。

 

「よろしく。私が君の面接をする高雛優梨香という、椅子にかけてくれ」

「―――よろしくお願いします。ありがとう御座います」

 

ふた言告げて、椅子に腰掛ける。

 

これで前哨戦は終了。唇が酷く乾いていくのが良く分かった。その唇を舐めることにより一時の潤いを得て、ようやくしっかりと対面する。

 

さぁ、どうくる。

 

ドクンドクンとうるさい心臓の音を聞きながら相手にすべての神経を注ぎ集中する。

 

そして、その時は来る。

そのルージュの塗られた唇が、動いた。

 

「―――なんかエロそうな顔してるから不採用」

 

 

 

 

「いや、いや。いやいやいやいやいやいやいやいやいやおかしいでしょうなんですかその偏見に満ちた理由!」

「何言ってるんだ、私は店長だぞ。独断と偏見に塗れてて何が悪い」

「最低だ! 凄い最低なことを胸を張っていった!」

「胸を張る……? 公衆の門前で何を破廉恥な」

「曲解の仕方が小学生か!」

「そうやって偏見で物を言うな!」

「物凄いブーメランですねぇ!?」

 

一気に重い空気が瓦解した。瓦解された。

目の前の人物はそこまでのやり取りをするとフッ、笑みにも取れるように軽く息を漏らし足を組み替えた。

 

お、おおおお……見、見え。

 

「ほら見ろ! このど変態が!」

「……はっ! な、何を言ってるんですか初対面の女性のスカートを除くなんてこの紳士杉崎健が」

「あぁそういえば今日パンツ穿いたかな」

「うぉぉおおおおおお!!!」

「ギルティ」

「ハッ! ち、違う! 無罪です! これは罠です! 孔明の罠です!」

「嘘をつくなこのドブネズミが。お前の悪業はこの私が見させてもらった。金庫から金を取ろうとするわ私の下着を盗もうとするわ……この、外道がっ!」

「悪業もなにも100%偽造ですよね!?」

「は、立場は私のほうが上だからな。―――裁判なら私が勝つ」

「ほんとなんでそんな最低な台詞を堂々と言えるんだよ! アンタは真儀留先生か!」

「ふぅん、私みたいな奴が居るのか。それはさぞ迷惑だろうな」

「自覚あるならやめろよぉおおおお」

「いや、店内のお客様に失礼だから声もっと下げろ」

「ここに来てマトモな発言!!!(小声)」

 

思わず息が乱れる。こんな連続で突っ込まされたのはいつぶりだろうか。いや確実あの生徒会以来だ。何だこの人、才能に溢れすぎてるだろ。

 

「さて、じゃあ帰れ」

「散々弄くり回して凄いですね」

「いや、それ程でも」

「突っ込みませんよ」

「……おねがい」

「褒めてねぇよ!! ってあぁ!」

 

そんな上目遣いでお願いされたら……くぅ! 俺のバカ!

 

目の前の女性―――高雛さんはそんなやり取りに満足したようでくくく、と悪役じみた笑い声を漏らすと同時にくるりと後ろを向いた。

 

普通に仕事始めちゃってるんですが。

 

「えっ、えっ。まさか本気で帰れってノリですかこれ」

「…………(カタカタカタカタ)」

「あの、あのぉ」

「…………(カタカタカタカタ)」

「……」

「…………(カタカタカタカタ)」

 

さすがの仕打ちに俺のHPはゼロだよ……。そんな感じで泣き崩れて居ると、カタカタカタカタと聞こえていたタイピングの音が急に止んだ。

 

「週なんぼで入れるんだ」

「えっ……と、基本四くらいでお願いしたいですけど、状況に応じて変更可能です。あと土日祝も特に予定がなければ入れます」

「時間」

「学校が終われば、なんで17時からなら何時までも」

「いつから」

「いつからでも」

「なら明後日でいいな。それまでにこの資料を覚えておくように。制服は支給制だが黒いズボンは自分で揃えてくれ。靴は黒か焦茶の革靴。髪型と色は自由ではあるが……常識のある範疇に留める。まぁお前を見る限り心配はなさそうだがな」

「えっ、えっ」

「という訳だ。よろしく頼むよ―――杉崎健。今日からお前はここのスタッフだ」

 

ニヤリ。言葉にするならそんな笑みを浮かべながら見せてきたのは、店員登録書と書かれた紙をプリントしたものだった。

 

くそ……本当に大人ってやつはずるい。

 

「……よろしくお願いします。精一杯、やらせて頂きますんで」

 

その言葉にまた、高雛さん―――いや、店長は満足そうに口の端を歪めた。




多分杉崎ならこうするんじゃないでしょうかね。

あ、このお店の名前の由来は勿論あれですよアレ。
薬用……ん? 誰か来たようだ……。

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