スクールアイドルの一存   作:クトウテン

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これ読んでて何言ってるんだコイツ……(ドン引き
って思ったことありません?

安心してください、私も思います(真顔


第十話 第一回音乃木坂学院生徒会議事録

「過去の失敗を糧にしてこそ、我らは前に進めるのよ! ってなんでこんなこと私が言わなきゃいけないのよ!」

 

それは高坂穂乃果が失意の念に呑まれていた時間よりも少し前に遡る。

最近では見せなくなった強い光を宿しながらも不敵な笑みを讃え凛々しい表情をしているのは我らが生徒会長絢瀬絵里だ。

心なしか生徒会室の雰囲気は軽く、みんなの表情は明るいものへと変わっていた。

 

「いえ、なんというか、そういう電波を感じ取りまして」

「なんだか理解でき無いっていう理解ができて我ながら戦慄してるわ……」

「えぇんやない? 今のえりちにはぴったりやし♪」

「う、なかなか鋭いこと言うわね希……まだ怒ってる?」

「しらんもーん。最近素っ気無いえりちなんてしらんもーん」

「も、もう! 拗ねないでよ希! ね? もうあんな事しないから」

「ほんまに……?」

 

そう言って指を絡め合う二人。って、あ、あれぇ?

 

「主人公そっちのけでいい雰囲気作るのやめてもらっていいすかねぇ!?」

「主人公(笑)」

「鼻で笑われた!」

「主人公って言うにはキャラが足りんのちゃう?」

「まさかの主人公否定!」

「うーん、『主』と『公』って字を抜いたら身の丈にあってるんじゃないかしら」

「そりゃあ“人”ですからねぇ!? ってか名前の出るモブキャラ以下ですか!?」

「えーと、突然だけど名前伺ってもいいかしら、えーと、ごめんなさいね。人の名前を覚えるのは得意なんだけど貴方はちょっと……」

「まるで追撃を与えるかのごとく人類を否定!」

「あー、確か松林錠とかそんな感じだった筈や」

「凄い! かつてここまでニアピンに名前を間違える人物はいただろうか!!」

 

一気に突っ込んだせいか乱れた息をぜーはー、ぜーはーと吐き出す。

ややしばらくして落ち着いてきたところで番茶に一口付け、

 

「いいっすね! これですよこれ! このふざけた感じがたまらない! これが生徒会です!」

「出来れば全世界の生徒会に土下座してほしい発言ね」

「というかあんだけ貶されて喜んでるとか鍵君ヘンタイさんとちゃう……?」

 

失礼な。

 

「どちらかというと俺は可愛い女の子が泣いて困る姿をその子の父親の住む家の横に住んでいる田中英夫(46歳無職。アル中で風俗に通っている駄目人間)の様な微笑ましい眼で見つめているくらいの可愛いもんですよ」

「あなたは今すぐ死んだほうが世の為だわ」

「おまわりさん、呼ぶ?」

「二人共ツッコミがハードですねぇ。そんなんじゃ俺のハーレムやっていけませんよ?」

「なに当然のようにその頭のおかしいカテゴリに私達を入れてるのよ!」

「え? だって希も絵里ももう俺に落ちただろ?」

「馴れ馴れしい! そしてポジティブにも程があるわよ!!」

「えぇ、自慢なんですよ。なんたって世界が崩壊する日でも明日の事を考えられるくらいにはポジティブですから」

「それはポジティブ通り越してただの痴呆よ!」

「えぇ!?」

「なんでそこで驚くん!?」

「さぁ仕事しましょうか」

『急に素に戻るのだけはやめてぇーーーー!』

 

二人のツッコミもそこそこに、三人で落ち着いて番茶に口をつける。

 

「ずずっ……ふぅ。それで、どうするのよこれ」

「ずずっ……ふぅ。鍵君はなんかあるん?」

「ずずっ……えぇ。というより、一つしかないと思ってます」

 

俺の言葉に二人の視線が集中した。

 

「一体それって? ……ずずっ」

「なんなん? ……ずずっ」

 

二人が重ねて言葉を紡ぐ。どんだけ仲良しなんですかアンタら。

 

「はい―――スクールアイドルです」

「ぶっ」

 

会長が吹いてた。

 

「え、えりち、な、なんというか表現出来ても表現しちゃいけない顔になってるけど大丈夫なん!?」

「ご、ごほっ! そ、そんな顔してないわよっ……というよりどういういことよ!」

「ま、まぁまぁ、とりあえず聞いて下さい。 えぇと、とりあえずこのグラフを見てください二人共」

 

パソコンを操作し棒グラフとヒストグラムが描かれた表を画面へと映しだす。

 

「これは?」

「上位ランカーのスクールアイドルがいる学校の、いなかった頃の入学生と出来てからの入学生との比率です」

「!! ……すごい、こんなに」

「……このグラフを見て、どう思います?」

「とっても太くて……長い……」

「きゃぁっ!? 鍵君がいままでにないくらい幸福な顔をして鼻血吹いとる!?」

「えっ!? なんで!? なんでなの!?」

 

く、くそ……なんて破壊力だ……!(ダバダバダバ

 

「と、ともかく! 調べた所この学院は特に秀でた部活動もなく……こう言ってはなんですが魅力の伝わりづらい学校です! じゃあ絵里さん問題! この学校の良いところを述べよ!」

「え、えぇ? ……えっと、風紀がよく取り締まられて……」

「はいブゥーーー! 一回休み! はい希さん!」

「んー、女の子が多い所とか?」

「まぁいいでしょう! 正解! つまり、この学校の良い所は美少女が(・・・・)多い所です(・・・・・)!」

 

室内が静まり返った瞬間だった。

 

「え? あれ、驚かないんですか? あれ? あっれ」

「あなたの阿呆らしさに思いっきり放心させてもらったわよこの色情魔!」

「色情魔なんてそんな事ありません! 俺が愛を与える代わりに皆には生活費をもらうだけです!」

「ヒモやないか!」

「ヒモのなにが悪いんですか!」

『総じてだよ! 総じて色々基本的に全てが悪いよ!』

「だ、だめや……なんだか自然と突っ込んでまう……え、えりちぃ。うち、鍵君に染められちゃったみたい……」

「ぐへへへ、じゃあ次は俺が希さんに突っ込む番ぶらぴっ!?」

 

絵里さんの正拳突きが俺の鳩尾を襲った。

思わず地面に倒れこむ。

 

「次は○臓六腑のどれかよ」

「が、がはっ……そ、そこまで言うなら隠す意味……な……ガク」

「で、なにトチ狂ったこと言ってるのよ」

「うん、今に始まったことやないけどね」

「うわぁ、ほんと二人共順応早いですね。俺の扱いが最早プロですよ。もう嬉しくて涙が出そうです」

『はいはい』

「うわぁーーーーん!」

 

息の揃ったコンビプレイに思わず涙が溢れる! 

ひどい! ひどいや二人共!

 

「う、うぅ……話を戻しましょう。まぁ戻すも何も簡単な話なんですけど、美少女がいる利点ってなんでしょうか。学校が華やぐ。見ているだけで目の保養になる。俺のハーレムになれる。ひとまず候補としてはこれくらいでしょう」

「ええ、そうね」

「そうやね」

「……最早つっこみもしませんか……。ごほん! じゃあこんなことで入学希望者は増える? もちろん答えはノーです。どれだけ可愛い子がいてもその彼女自身に何かのネームバリューが無ければ人が集まることはありません」

「あぁそれだからスクールアイドルなんや」

「そうです。高坂さんは確かに考えが足りなかった点はありますけど、その考え自体はとても良いものでしたよ。この学校の良いところをよく分かってます」

「…………」

 

会長は苦々しい顔をしたまま反応は返してこない。

 

「絵里さんの仰りたい事も分かりますけど、事実今この学園を救える可能性が高くコストも掛からずリスクも少ないと言えばこれしかないんです。というより、こんなことが丁度あることが奇跡みたいなもんなんですよ」

「……えぇ、分かったわ。じゃあ私はあの活動を推進した方がいいってわけね?」

「いえ、別にそうとは言ってませんけど」

 

またも訪れる静寂。あれ?

 

『はぁ!?』

「うぉっ! な、なんですか!」

「なんですか、じゃないわよ! じゃあ何なのよ今の一連のやり取り!」

「今完全に話がうまく纏まりそうやったやん!?」

「絵里さんが納得してないのに、ですか?」

「えっ……?」

 

そういうと絵里さんは驚いたように口に手を当て、それに対して希さんもそれもそうか、と言った風な表情をして黙り込んだ。

 

「理由は分かりませんが、絵里さんが彼女達に対してでは無く、その行為自体に疑問を抱いているのは分かります。ですから、それなら許可しなくてもいいんじゃないですか? ―――ただ俺からしてみれば絵里さんはそんな考えの自分にも疑問を抱いているように見えますがね」

「…………」

 

遠からず、と言った所なのだろう。その表情が強ばる。

 

「なら話しましょうよ。分からないならわからないなりに出来ることなんて沢山ありますって!」

「貴方って馬鹿みたいなこと言いながら実は周りをよく見てるわよね……なんだか、こう……」

「ムラっときましたか?」

「イラっときたわよ今!」

「ほら、そんな感じでいいじゃないですか。変に取り繕う必要ありませんって。会長だって人間です。ここにそれを否定する人はいませんよ」

「―――。はぁ、分かったわ。でも私はこの学校の為となれば妥協しないわよ?」

「妥協という言葉ほど絵里さんに似合わない言葉はなさそうですけどね」

「じゃあ何なら似合うのよ」

「勿論俺の事が大好きでたまらない淫乱かい―――」

 

顔を掴まれた。

すごいギリギリ言ってる。というより激痛がやばい。痛すぎて声にもならない。

 

「その次はなぁに? 言ってご覧なさい?」

「か、かい、かい……回転寿司! ぐへへ……マグロの光沢だけで一発イケるぜぇ……!」

「意味不明。ギルティ」

「ちょっおまっ」

 

パキョッ。

 

その日は不思議な事に放課後残っていた生徒たちが不気味な悲鳴を聞いたという。 




あ、ようやく十話迎えました。読んでいただいた読者様ここまで読んで頂き有難う御座いました。

これからもお暇な時間にでもどうぞ読んでやって下さいませ。

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