それと、アクセス数を見ていたらですね……UAが2300を超え、お気に入り登録が18件になりました。嬉しいですね。……感想も、増えたらいいなあ。チラッ。
それでは今回の話。
写真を撮る仮面ライダーがいますよね? 皆さんご存知のあの方です。悪魔だの世界の破壊者だの言われてるあの人です。そうそう、なつみか「光家秘伝“笑いのつぼ”!!」あ、アハハ!! アハハハハハ!!!!
……失礼。やっとこっちに帰ってこれました。おじいちゃん、久しぶり……。
※祖父母は全員生きています。
そ、それはそうと、本編に行きましょう!! いつもどおりにですね。
それでは、お楽しみいただければ幸いです。
鈴本町 鈴音東高等学校
「それでは、明日は市立美術館で行われている“
明日、貴大達のいる二年生は写真家の光司の写真展に行くことになっていた。今は、その時のことについて説明が行われていた。
「これでHRを終わります。みなさん、高校生なので大丈夫だとは思いますが、最近は日も短くなっていますから、早く家に帰るように。……日直」
「きりーつ、礼」
「さようなら!!」
日直の号令がかかり、全員が礼をして帰る。貴大も荷物をまとめて帰る用意をする。荷物をまとめると、友人の新二や和馬達の所に行った。
「帰ろうぜ」
「ああ、そうだね」
「すまん、今日は部活だ」
「そうなんすか? 山宮っちも忙しいっすね~」
和馬は陸上部の練習があるようで、今日は貴大と新二、響の三人になった。
鈴谷町 風音通り
「そう言えば……光司って、どんな人なんすか?」
話しながら帰っている途中、響がそんな事を言い出した。それを聞いた新二が解説を始める。
「光司、職業は写真家。高校を中退して、趣味だった写真を仕事にし始める。それが見事にうまく行き、自費出版で出した写真集はかなりの話題になる。そこから、少しずつ貯金をして、ついには海外まで写真を撮りに行く。写真の幅は自然から街の景色。更には戦場にも行って、少年兵や難民たちについて伝える活動も始めている……僕が知っているのは、このくらいかな」
予想以上の情報量に貴大と響は驚いていた。新二はそんな二人を見て、少しおかしそうに笑って更に話をつづける。
「いや……今回の写真展のことを聞いて、少し気になって調べただけだからね」
「少しでこの情報量……」
「君だってベクトルが変われば、少しでもたくさん話せるだろう?」
驚いてそんな事を漏らした響に、新二は優しく笑いながらそう言った。響は今度は疑問符を浮かべる。
「例えば……女の子のことなら、たくさん話せるだろう?」
「なるほどっすね!! 確かに俺っちなら服から髪型、アクセサリーについてまで幅広く語れるっすよ!!」
新二の話で納得できた響。新二はそれにうんうんとうなずく。三人はそんな感じで帰宅していくのだった。
鈴本町 鈴音中央商店街
「……鴻崎さん、そろそろですか?」
鈴音市の中央商店街。その商店街を、いつもは占いをしている少女があるいていた。彼女は誰かと電話しているようだった。
「……はい。“使心獣”の方は接触しました。ライダー達は、まだです」
電話先の人物からの指示を仰ぐ少女。しばらく話を聞いてから、彼女は簡単な挨拶をして電話を切った。
「もうすぐ、私の出番かしら……」
彼女が貴大達の目の前に現れるのも、近いかもしれない。
鈴本町 鈴音市立美術館
「どうもこんにちは。僕はこの写真展にある写真を撮った光司といいます。よく“
鈴音市の市立美術館。貴大達は全員、写真展を回る前に光司の話を聞いていた。司は親しみやすい性格のようで、生徒達の中から笑い声も聞こえてくる。
「それでは、長すぎると嫌がれるのでこのくらいにします。皆さんが、僕の写真で何かを学んでくれれば嬉しいです」
司の話が終わり、生徒たちから拍手が聞こえる。それが止むと、教師達からの指示があり、写真展を回ることができるようになった。
「ホントに、種類が多いな」
「そうだね。ジャンルごとに分けてあるし、ジャンルごとに壁の装飾も違っていて、なかなか見やすいよ」
貴大が感想を漏らすと、隣にいる新二も細かに感想を話した。その目は写真にくぎ付けで、写真が気に入ったのだとよく分かった。
「そんなに気に入ったのか?」
「ああ!! 引き込まれる、っていうのかな? 僕の語彙ではこのくらいの説明しか思いつかない!!」
「そんなに気に行ってもらえると、撮った方としても嬉しいね」
貴大と新二が後ろを見る。そこにはこの写真展を開いた光司がいた。
「ひ、光さん!?」
「ハハ、驚かせてしまったね。それにしても、そんなに気に入ったのかい?」
「はい!! とっても魅力的な写真ばかりです!!」
今の新二はいつもの冷静沈着な委員長の姿ではない、好きなものを前にしてはしゃぐ子供のようだった。司はその姿に、嘘偽りもない感想だと確信した。
「それはありがとう。そんな君にはこれをあげるよ」
「それは?」
「これかい? これは僕の写真を気に入ってくれた人の何人かに配ってるものさ。限定二十冊」
司が出したのは写真集だった。中には司が撮った写真が入っていた。新二はそれを受け取った。その顔は満面の笑みだった。
「ありがとうございます!!」
「こちらこそ、僕の写真を気に入ってくれてありがとう」
新二が礼を言うと、司の方も礼を返してきた。新二は、いえいえ、と言ってからハッと思いだしたような顔をする。そして、訊きたいことがあったんだった、と言って司の方を見る。
「どうして、写真家になったんですか?」
司はそれを聞いて、しばらく考えてからこう話しだした。
「俺さ……学校が嫌だったんだ。いや、学校どころか生きてることすらも嫌になってたんだ」
いつの間にか、近くにいた生徒達も集まりだして話を聞く。誰もしゃべらずに話を聞いていた。司は一人、思い出すように先を話し続ける。
「俺、いじめとはいかないものの、いたずらされてて、友達もいなくってさ。だんだん、ここは自分の生きてる世界じゃないと思いだしたんだ」
司は辛いような、苦しいような顔をして話を進めていく。生徒達も、せれを神妙に聞いていた。
「人は嘘をつくよな。……偽のラブレターを送ってみたり、適当なところに呼び出して、誰も来ないのに人を待ち続ける俺を見て楽しんでたやつらがいた」
司の話を聞いた貴大は思った。先ほど司はいじめほどではなかったが……と話していた。しかし、その内容は完全にいじめの領域だった。
「そんな俺の癒やしは、写真だった。街に出て写真を撮る。山や海に行って写真を撮る。人はたくさんの嘘をついた。でも、写真はいつも真実だけを写してくれた」
その顔には、いじめの苦しさではなく写真への愛情があふれていた。笑顔になった司は話を続ける。
「ある日……本当に学校が嫌になって、やめてみたんだ。それで、親に頭下げて写真を撮る旅に出た。しばらく国内の写真を撮って過ごした。それから、それをまとめて出したんだ」
それは彼の軌跡。彼の歩んだ人生という道の軌跡だ。人はひとつだけしか道を選べない。そんな中、司の選んだ道は彼にとって、とてもいいものだったのだろう。
「後は知っている人もいると思う。出した写真集が話題になって、お金が入ってきて、少しずつ親に返しながらためた。そして、国内だけじゃなくて、国外も……と、思って国外で写真を撮り始めて……って感じだ」
独白が終わる。これが、今までの彼の歩んだ道。これからどうなるかも分からない、人生の道。
「……関係の無い話だが、二つだけ聞いてほしい事がある。……まず、皆は“何か嫌なことがあっても、絶対に逃げるな”って言葉を聞いたことは無いか?」
いきなりされた話の意味が分からないが、生徒たちのほとんどが司の質問に首肯した。司はそれを見てからこう言った。
「何事にも立ち向かえ、っていいたいんだと思う。でも、俺はこの言葉が絶対的に正しいと思えない」
生徒達は疑問を感じる。いろんな場面で聞いてきた、真実と思えた言葉が否定されたのだから。
「俺は、いやなことがあったら、一回逃げて落ち着いてみてほしいと思う。慌てた状態で考えてもいい案は出ない。それなら、プライドとか捨ててでも逃げて、冷静になった方がいいと思わないか?」
誰も、何も言わない。だが、その目は真剣で、彼の言葉について、自分なりに考えているのだ。司は嬉しそうに頷いて話を続ける。
「逃げっぱなしを進めているわけじゃない。冷静にどうすればいいのか考えてから動くことを選んでほしい。俺は、学校で嫌な目に会ってた。その時はこれからどうするとか考える余裕が無かった。でも、学校やめて……一回逃げてみたら、これからのことを考える余裕も出てきた」
司は嬉しそうな顔から、真剣な顔に切り替える。そして、全員を見渡すようにして話しだす。
「今の話を盲信しろとは言わない。絶対だともいわない。だが、心に留めておくくらいのことはしてほしい」
司はそう言って、大きく息を吐きだした。そして、司の話について考えている皆が顔をあげるのを見てから、話を再開しようと息を吸った。
「きゃあああああああ!!!!!!」
……しかし、それは叶わなかった。いきなり聞こえてきた悲鳴。皆が悲鳴をした方を見ると、そこには目に輝きをなくした美術館で働いている女性と化物と言えるそれだった。
「し、“使心獣”か!?」
「三坂君!!」
「叶!!」
貴大が急いでドライバーを出すと、遠くから叶の声が聞こえてきた。叶の位置を確認した貴大は再び“使心獣”の方を見る。“使心獣”は手に持った棍棒で展示してある写真を壊していく。
「やめろおおお!!!! 変身!!」
「
生徒や職員達はほぼ皆逃げてしまって、残っていたのは貴大、叶、司の三人だった。貴大は司がいることも気にしないで変身した。
「か、仮面ライダー!!」
「そうだ!! お前、なぜここに来た!!」
「理由? それは簡単だ。それは……そいつを連れていくためだ」
「光さんを?」
“使心獣”の意図がいまいち見えてこない。貴大は更に質問を重ねた。“使心獣”は偉そうに質問に答えた。
「そうだ。そいつは面白い“ココロ”の持ち主らしくてなあ、ドクターに連れて来るように言われたんだよ!!」
「そうか。……だが、そいつはさせねえ!!」
「言ってろ!! 俺だってこんな仕事はごめんだ!! もっと暴れてみたいのになあ……それが、こんな訳分かんねえもん撮ってる奴だぜ? 嫌にもなるって話だ」
「写真を悪く言うな!!」
「何?」
“使心獣”が愚痴を吐いていると、司が叫びだした。“使心獣”は不機嫌そうに司の方を見た。司は怒りに染まった顔をしている。
「写真は世界だ!! 現実から切り取られた世界のかけらだ!! あんたなんかに、あんたなんかに……写真を否定する権利は無い!!」
それは、写真に救われてきた彼だからこそ言える言葉。写真を愛しているからだから分かる想い。
「うるさい!! 何が世界だ!! ただ、外の様子を写した紙じゃないか!! それになにができる? 何もできないだろ?」
この“使心獣”は写真を知らなかった。知ろうともしなかった。見ることもなくそれを壊す。消していく。それは、写したものや撮った人を否定する行為。
「できる!! 思い出を残せる!! 真実を写せる!! 想いを伝えられる!! 写真には写真だからこそできることがたくさんある!! 写真のことを何も分かってないくせに…………分かったような口をきくなあああああ!!!!」
司は止まらない。誰にもしゃべる機会を渡さず、一人で語る。
「大切なものを壊すな!! 夢を、想いを……写真を、これ以上壊させない!!」
心からの叫びが外にあふれる。“使心獣”に写真を壊され、否定され、貶められ、消されていく。司は写真に癒やされ、助けられ、救われ、支えられてきた。そんな彼の想い、“願い”は形になる。
「その“願い”聞き届けました」
「な、何だ!?」
司はいきなり叶が喋り出したことに驚く。しかし、叶はいつかのように一人で語りだす。
「あなたの写真への想いは多くの人の通じている。その写真が写している景色は人々の心を震わせている。その写真の持つメッセージは皆に発信されている。その写真は、確実にいい方向に人を変えている。それは、誰が何と言おうとも、決して変わることのない、真実です!! たとえ、現物が無くなっても、視た人の心に刻まれる!! だから……彼の写した真実は、決して消えることは無い!!」
叶はそれだけ言って、司の下に向かう。そして、司にあの言葉を送った。
「あなたの“願い”を借ります」
「それって……」
叶が取り出した何も書かれていないチップ。そこに司の“願い”が流れる。そして、それが満たされると、そのチップには筆や弓、琴等が描かれている。
「彼の“願い”を込めたこのチップは、あなたを必ず倒す!!」
叶は手に持ったチップを“使心獣”に突きつけた。“使心獣”はそれを鼻で笑った。
「やれるもんならやってみろ。No25ニホンジカの“Cervus nippon”が徹底的に潰してやるよ」
「この力は、決して負けない!! ……変身!!」
「
その音声が流れると、叶の周りにはパーツに分かれた装備が現れる。叶はそれを装備していく。そして、それが終わった時、それは声をあげた。
「……戦か」
「なあ、お前の名前は?」
出てきた人格を確認した貴大は、名前を尋ねる。すると、その人格は名乗りを上げた。
「
「そ、そんなことは……」
「そう……そういうことにしておく」
「なんだお前? いきなり口調変えて」
叶の人格のことを知らないシカや司は首をかしげている。頼は二人を見ると、説明をする。
「僕は頼。この体はいくつもの人格を持っている。僕はその一つ。以上」
「ああ、そういうことか」
「あっそ。そうかい。それじゃ、そうと分かったら……」
シカは棍棒を構えた。貴大と頼も戦う準備をした。そして、シカが口を開いた。
「……試合開始だ!!」
シカはそう言って、棍棒を振り下ろす。頼は、それをよける。しかし、シカはすぐによけた方へと攻撃を加える。だが、やはり頼はそれをよける。それは、どこに攻撃が来るのか分かっているかのようだった。
「な、なんで当たらない!!」
「……そんなの簡単だ」
「何っ!?」
シカは攻撃が一向に当たらないことに憤慨する。頼はシカにパンチを放って、話し出す。
「“
「だから何だ!!」
「今言っただろ? 僕はそれを特徴としているんだ。予言の神なのだから、未来視くらいは造作もない」
「なっ!?」
頼の話に、シカは驚いていた。それはそうだ。未来が見える。それは一瞬一瞬の動きがすべてを決めるといっても過言ではない戦いの世界に置いて、絶対的なアドバンテージを持つ。
「そ、そんなの卑怯だろ!!」
「誰かが言っていた。…………卑怯汚いは敗者の戯言、と」
「外道め!!」
自棄になったシカは、頼に向かって攻撃を繰り出し続ける。しかし、どこに来るのか視える頼はいとも簡単によけていく。そして、カウンターを繰り出して、シカを動けなくすると、頼は二枚のチップを取り出した。そして、それを入れた。
「“
「これで終わり。……汝、痛み感じる事無かれ。“
頼はいつの間にか出てきていた弓を構える。頼の手にある矢は黄金に輝いていた。頼は狙いを定めると、それを放った。矢は一直線にシカにめがけて飛んでいく。
「あ、ああああ!!!!!!」
「行け」
放たれた矢はシカに命中し、シカは爆発した。爆風で、絵画がいくつか飛んでしまったが、幸いなことに壊れてはなさそうだった。
「……終わった」
頼はそういうと、変身を解除して、貴大と司のいるほうを見た。
鈴本町 鈴音中央商店街
「……君。そこの君」
「ん? 僕のことですか?」
「そうよ」
少年、中森翔一はとある占い師に声をかけられた。彼は何のためらいもなく占い師に近寄る。基本、人は信じてみる。これが、鈴音市民の市民性というものである。
「あの……占いですか?」
「そうよ。まあ、今日はそれが理由ではないのだけど」
「じゃあ、なんで声を?」
「あなたが一緒に暮らしている人に伝えたいことがあるからよ」
占い師がそういった瞬間、翔逸が眉をひそめた。占い師はそんなこと、気にしないとばかりに話していく。
「“変換”の子と“創造”の子に言っておきなさい。……“喪失”はもうすぐあなた達の前に姿を現す、と」
「変換? 創造? ……喪失? 意味が分からないんだけど……」
翔逸が恐る恐るそういうと、占い師は優しく微笑んでからこう言った。
「いいのよ。それを伝えることに意味があるの。だから、よろしくね?」
「う、うん……」
「ありがとう。それじゃあ、私はもう行くから、ちゃんと伝えておいてね」
占い師は最初とは打って変わって、優しそうな人になって去って行った。翔逸はすぐに買い物袋を持って、家に帰っていった。
「そういえば……あの人、お兄ちゃん達の知り合いかな?」
翔逸はふとそんな事を考えたが、後で本人達に訊いてみようと、考えるのをやめた。
どうでしたか? 未来視とかチートだな、とあとがきを書いている今、そんな事を考えています。……まあ、変えませんがね!!
みなさん、思うことがあるでしょう。……そう、あの占い師さんですよ。自称最強の仮面ライダー。その実力、能力は未知数。……え? 能力は分かってる? 名前の予想もついてる? そ、そんな馬鹿な……!?
……まあ、話はこのくらいにしておきます。
それでは、次回[懐]の回も見ていただければ幸いです。
See you next time!