僕のことはいいですね。本編の話です。
今回は“遊戯”シリーズの中編。今回からバトルです! 今回の三つの戦いの特徴を言わせてもらうと……
貴大君の一戦目は燃えます。
叶君の一戦目は“Fate/”のアーチャー(ギルガメッシュ)ですね。
貴大君の二戦目はギャグっぽいです。
それでは、お楽しみいただければ幸いです。
鈴浜町 鈴音港A区画
鈴音港のA区画にあるとある倉庫。そこには外国語の書かれた箱が置いてある。数は多いがすべて端に寄せられていた。おそらくここにいる“使心獣”の青年が移動させたのだろう。人質達も黙ってとある二人の様子を知ろうとしていた。その二人は倉庫の中央で向かい合っていた。
「……じゃあ、始めるか」
「そうですね。すぐに倒して人質の方を解放させてもらいます」
両者は戦う準備をする。青年は“怪人体”になり、少年……叶はドライバーをつける。青年の姿は魚を彷彿とさせた。叶はチップを一つ取りだす。それは二本の剣を交差させたマークだ。叶はそれをドライバーに入れて、ある言葉を紡ぐ。
「変身!」
「
その音声が流れると、叶の周りには鎧が現れた。叶はそれに体や足を入れていく。それが終了した時、そこには殺気を放つ戦士がいた。
「ア゛ア゛。俺様……参上」
「それが“グラント”か。今の人格は願っていうんだろ?」
「お喋りはいい。俺様の戦いは始めから、山場なんだよ」
「おお! すごいな。だが……その山場はいつまでもつかな?」
「フン、いつまでもに決まってるだろ! 俺は仮面ライダーグラント、願」
「ハハハ、すぐにもがき苦しむことになるさ。俺はNo37オニダルマオコゼの“Synanceia verrucosa”だ」
両者は自己紹介を終えると構える。願は徹底的に攻めるような姿勢。しかし、オコゼの方は守りの構えだ。カウンターを狙っているのだろうか?静かに時間が過ぎる。しばらくすると、両者の空気がより張りつめた物になる。そして、願の方が走り出した。
こうして、遊戯は始まった。
鈴浜町 鈴音港B区画
「おう。あんたの方か」
「そうだ。お前は必ず倒す」
「おいおい、そんな怖い顔しないでくれよ」
まじギレ寸前な少年、三坂貴大と飄々としたつかみどころのない青年。二人はB区画の一番広い場所にいた。空は嫌になるくらいの青。雲ひとつない空とはこのことを言うのだろう。
「御託はいい。さっさと始めるぞ」
「はいはい。全くつれない人だなあ」
貴大にとって人質をとるという行為は、もっとも許されないものだ。そのきっかけは“怒気”の“
「変身!」
「
その音声が流れると、固い決意を表す装甲が現れる。それは機械的な音を立てながら貴大に装備されていく。そして、それが終了した時、そこにいるのは“心の守護者”と呼ばれる仮面ライダーハーツだ。
「アハハ、変身したな。じゃあ、俺も戦闘準備だ」
青年はそう言うとその姿を変化させる。その姿は特徴的な姿のイカのようだった。
「……イカか?」
「その通り。俺はNo18ダイオウイカの“Architeuthis dux”さ」
青年は自分の正体を喋る。貴大はダイオウイカという名前を聞き、何かを思い出しかけた。しかし、特に何も思い出せずそのままにしてしまった。
「さあ、始めるぞ」
「そうだな。それじゃあ、行くぞ」
両者は構え、己の敵に向かって走り出した。こちらの遊戯も始まった。
「
貴大は素早く二枚のチップを入れる。それはすぐに貴大の手元にやってくる。貴大はそれを手に切りかかった。
「はあああ!!!!」
「うっ! ギャッ!」
イカはすぐに攻撃を防ごうとしたが、その腕を斬り落とされてしまった。しかし、他の手で貴大の動きを封じる。貴大は剣をとり落とす。
「くっ! 離せ!」
「そんなこと言われてもねえ」
貴大はなんとか逃げ切ろうとするが、両手両足をふさがれ動けない。イカは抑えるのに使っていない手を使って貴大に攻撃を加える。頭、胸、腹などを攻撃する。あえて言うが、貴大は昆虫ではない。あたりには貴大のうめき声が響いている。
「ガッ! ぐっ! うっ!」
「なんだ? 終わりか?」
貴大にはイカの声にこたえる余裕すらなかった。人質の方からはもう駄目だ、というあきらめの声が出てきた。だが、それを払拭する声があった。
「仮面ライダー! 頑張ってくれ!」
それは、人質の中の一人の声だった。その声に周りの人質達もそれを聞いて、一緒に「頑張れ!」とか「負けるな!」とか「あなたならできる!」という声が出てきた。それに反応したイカは手の一つを使って、人質達を殴った。
「ぎゃああ!!」
殴られた人にはあざや傷ができる。幸い命にかかわるレベルや、後遺症が残るほどの怪我はなかった。しかし、その痛みは変身している貴大の比ではないだろう。痛みに叫ぶ人々を見た貴大はキレた。
「あ゛あ゛あああああ!!!!」
貴大は叫んで、燃えた。体は炎に包まれる。理性の鎖を捨て感情に身を任せた貴大は、メラメラと燃え上がる。その炎の熱さにイカは手を離した。離された貴大はドサッ、と倒れたがすぐに起きあがる。その時には炎が消えて、“
「な、何が起きてるんだ!?」
「おりゃあああ!!!!」
貴大は叫びながら攻撃を加える。剣は綺麗にイカの腕を斬り落とす。残りは八本だ。イカは再び、貴大を抑え込もうとする。しかし、貴大はまた炎を出して守る。イカは軽いやけどを負う。
「熱い……。これはどうした物か」
「はあああああ!!!!」
「せいっ!」
「ぐっ!」
イカは貴大の炎が消えるとき。つまり、攻撃を加えるときにカウンターするようにしたようだ。それはなんとか成功して、貴大のボディーにキツイ一撃が入る。貴大は少しうめくがすぐに攻撃を再開する。今度は攻撃時も燃えている。これではイカにできるのは回避くらいだ。
「ハッ! ハッ!」
「おりゃあ! せいやあ!」
イカは攻撃をよけていく。しかし、攻撃を完全によけ切れているわけではない。手の二、三本はもうすぐ切り落とされるだろう。貴大はいきつく暇もなく攻撃を繰り返す。基本は振り下ろしだが、所々で突きや切り上げが混じる。イカの方はかなりのダメージを負っている。貴大はかなり本能的だが、“
「“
「燃やせ怒気を! “
「ぎゃああああ!!!!」
ズバッと綺麗に決まった斬撃は、イカに多量の“ココロ”を流し込む。イカはその攻撃で爆発した。貴大はそれを見て倒れこんだ。その時に変身も解除させられてしまった。意識が飛ぶことはなかったが、しばらく動くことができなかった。
鈴浜町 鈴音港A区画
「おりゃあ! せいやあ!」
「はあ! だあ!」
鈴音港のA区画。そこでは殴る蹴るの肉弾戦が繰り広げられていた。攻め気味なのは刺々しい鎧を着た戦士、グラントだ。対して少し守り気味になっているのは“使心獣”の方だ。だが、守りと言ってもカウンターを狙っているようで、そこまで差があるわけではなさそうだ。
「はぁ……。さっさとくたばれよ」
「そう言われて、『はい、そうですか』なんて言って倒されるわけにはいかんな」
お互いに会話を挟む。これは余裕があるわけではない。お互いの疲労を少しでも回復させるためにしているのだ。今は、攻めていた願の方が疲れているようだった。
「くそ、全然終わらねえ」
「じゃあ、お前が負ければいいだろ?」
「そんな選択肢は存在しねえ!」
「……まだ、そんなこと言う余裕があるのかよ」
願の発言にオコゼは苦笑する。しかし、内心では焦ってもいる。彼は強力な毒を持っている。しかし、それがあるのは背中だ。戦う時にいきなり背中を見せれば、警戒されるだろう。そもそも、あんなにとげのある背中を攻撃しようだなんて考えるもの好きは少ない。したがって、オコゼは背中のとげを使うことを諦めている。そうすると、倒す手段はないに等しいのだった。
「再開するか。もう休憩挟む前に倒すか」
「何言ってやがる! 貴様を倒すのはこの願様だ!」
願はだいぶ楽になったようで、今にも飛び出せそうだ。一方でオコゼの方は少し余裕がない。両者は戦う構えをとると、激突する。願は相変わらず攻めを続ける。その勢いは先ほどよりも激しかった。
「おらあ! はああ!」
「うっ! ガッ!」
ボディーに何発もパンチをする願。オコゼの方は反撃の余地がない。オコゼはかなりのダメージを受けてきた。
「……つ、強い」
「当り前だ! 俺様は最強なんだからな!」
願は自信満々に言い切り、チップをとりだす。そして、それをドライバーに入れる。
「“
叶の“願い”を形にした“
「喰らえ! 願式必殺術! “
「グガアアアアア!!!!!」
アレスの虐殺、そんな意味を持つ必殺技。それは願の周りに大量の武器を作り、敵にめがけて打ち込む。それは全て急所にヒットし、オコゼは爆発した。
「……俺の勝ちだ」
願はそれだけ言うと、人質達を解放し始めた。
鈴浜町 鈴音港C区画
「おいおい、お前はそんなに傷だらけで挑むのか?」
「当り前だ。早く人質を助けないといけないんだ」
鈴音港のC区画。そこにいるのは傷を負った貴大と“使心獣”の青年と人質になっている人たちだ。青年は貴大を見て、心配するような発言をする。
「ちょっと待て。お前、焦って負けたらそれこそ問題だろ」
「……うっ! ま、まあ」
「だろ? お前は負ける確率が上がる。俺は楽しめない。これじゃあ、大問題だよ。誰も得しない」
青年は呆れたように話す。貴大はそれを聞いて、少し休憩することにした。
「なあ、なんでお前たちは人を襲う?」
「なぜか? 俺たちに力をくれたドクターに恩を返すためだな。後、俺が楽しく生きるため」
青年は胸を張って言いきる。貴大はそれを聞いて更に質問をする。
「お前の言うドクターっていうのは……」
「ドクターか? ドクターの名前は竜崎だったはずだが?」
「やっぱりそうだよな。それじゃあ、お前たちのアジトはどこなんだ?」
「おいおい、そんなの答えるわけないだろ」
貴大の問いに青年は少々おおげさに返す。貴大は話していて、こんな状況でなければ本当に友人になっただろうな、と思っていた。
「……じゃあ、始めるか」
「もういいのか?」
「ああ。じゃあ、行くぜ?」
「当り前だ!」
二人は休憩を終わらせ、戦闘の準備を始める。貴大はドライバーを出し、青年は“怪人体”になる。
「それは、アザラシか?」
「アシカだ」
「そうか。すまん」
「気にするな。それよりも……」
「ああ。……変身!」
貴大は誤解してしまったが、アシカである。アシカとアザラシはよく似ているが違う。貴大はそれに対して、謝罪して変身する。
「
その音声が流れ、装甲が現れる。そして、それは貴大に装備された。
「じゃあ、行くぜ!」
「来い!」
貴大はアシカに向かって走り出す。先ほどの疲れはだいぶ取れたようだ。貴大はチップを取り出し、それを入れて攻撃を始める。
「
「はあああ!!!!」
「ハッ! フッ!」
貴大は己の四肢を使って攻撃を始める。殴って殴って蹴る。その攻撃はリズムがよく、ダンスのようにも見える。だが、リズムがいいのはタイミングが取りやすいということでもある。
「ハッ!」
「ぐっ!」
アシカは貴大にカウンターを決めた。それは鳩尾に入り、貴大はそれの痛みに苦しむ。だが、敵は待ってはくれない。
「ハッ! はあっ! せいっ!」
「グフッ! ガッ!」
倒れこんだ貴大に攻撃を加えるアシカ。その重い一撃は傷を負った貴大に、大きなダメージを与える。貴大はなんとかしようと、精一杯考えてとあるチップを使うことにした。
「
“羞恥心”を意味するその音声が流れると、アシカは
「え?」
「あっ」
出せた声はこれだけだ。お互い、何が起きたのかいまいち理解できない。貴大は“
「“穴があったら入りたい”だ!」
「そんなチップもあるのかよ!!」
意味を理解した貴大にアシカは突っ込む。アシカは突っ込みを入れてはいるが、実際は十メートル近くの穴に落ちているのだ。はっきり言ってピンチである。貴大はそれを見逃さない。すぐに二つのチップを入れる。
「“
「はあああ!!!!」
「に、逃げ場がない!」
貴大の足に“ココロ”がたまる。それは、今の姿に合わせてか白く輝いている。その光がもっとも輝いた時、貴大は穴に飛び込んだ。
「届けろ決意を! “
「だあああ!!!!」
「があああ!!!!」
アシカは逃げ切れなかった。貴大の必殺技はしっかりと叩き込まれ、爆発を起こした。爆発の時に上がった煙が晴れると、そこには肩で息をした貴大がいた。貴大は天を見上げ、やりきった顔をすると言った。
「……どうやって上がろうか?」
その問いに答える者はこの場にいない。貴大は上に上がる方法を精一杯考えた。
遊戯はようやく半分を終えたのだった。
どうでしたか? 相変わらず、戦闘描写が上達しませんね。
今回は少し、物語の核にかかわりそうなものを入れました。どこ、とは言いませんが。
それで、どうでもいいのですが、今回の叶君の戦い。必殺技の“
それでは、長々と話してしまいましたので、このくらいで終わります。
次回、[愛]の回も見ていただければ幸いです。
See you next time!