仮面ライダーHearts   作:山石 悠

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 どうも、山石悠です。お久しぶりです。今日、テストが終わったのでまた出していきます。……え? 手ごたえ? それは、訊かないで……。

 それでは、本編のお話。
 なんでこうなったのかな、と思っている今回です。一話、長くても二話で終わるなと思っていたのです。しかし、何がどうなったのか三話になってしまいました。
 なので、今回の前中後編で構成されている“遊戯”シリーズの全編はバトルなしでお話だけです。残り二話が、ぶっ通しで戦います。一話で三戦。

 それでは、お楽しみいただければ幸いです。


[悪] 悪漢達の遊戯

鈴浜町 鈴音港D区画

 

「きゃあああ!!!!」

「ああああ!!!!!」

 

 

 阿鼻叫喚図。いつもは漁船や客船の出入りで賑わう、この港の状況を説明するにはこの言葉で十分だろう。人々は皆、“ココロ”をむさぼり喰われている。中には腕をなくした者、上半身と下半身が分かれた者、首から上がない者、など死者も出ている。だが、人質のような形で捕まっている人も大勢いた。

 

 

「ハハハ!! 逃げろ逃げろ!! 楽しいゲームの時間だ!!」

 

 

 嗤いながら人々を襲う“使心獣”達。その姿に共通するのは海にすむ生物達であることだ。その数は五体ほど。どの“使心獣”もこの惨劇を楽しんでいた。

 

 

「な、なんでこんなことに……」

「その疑問に答えてやろうか?」

「ギャッ!」

 

 

 とある男性は恐怖に包まれた顔でつぶやく。彼は仕事で外の街から来ていた。そんなタイミングでこの事件である。彼にも愛する妻や子供達はいるだろう。だが、“使心獣”達にそんな事情は通じない。

 

 

「そんなに驚くなよ。ちょっと来てもらうだけだ」

「な、何が目的で……」

「目的? それはたった一つだ」

 

 

 男性に向かって笑いかける“使心獣”。その大きな姿などから見てクジラではないかと思われる。“使心獣”は男性の問いにあっさりと答えた。

 

 

「俺たちは“仮面ライダー”と遊びたいだけだ」

「か、“仮面ライダー”?」

 

 

 この街に住んでおらず、都市伝説に疎い彼は知らない。この街で戦う正義の味方。それが“仮面ライダー”である。今回の“使心獣”達の目的はその“仮面ライダー”達にあるようだ。

 

 

「そうそう。だから……」

 

 

 “使心獣”は男性にニヤッと嗤いかけると、その笑顔を絶やさぬまま言った。

 

 

「……おとなしくしててくれや」

「あ、あああああああ!!!!」

 

 

 絶叫が木霊した。

 

 

 

「こ、これは……」

「ひどい……」

 

 

 しんと静まった港に二人の少年がいた。二人とも全力で走ってきたのだろうか? 肩で息をしている。そんな二人は港の惨状を目の当たりにし、殆ど喋ることができなかった。今の港は真っ赤に染まり、人という人がいなくなってしまっている。一体、何があったのだろうか?

 

 

「叶! 人がいないか探すぞ!」

「はい! 僕はこっちを探すので、三坂君はそっちを!」

「分かった!」

 

 

 二人の少年はそれぞれ二手に分かれて走り出した。

 

 

 

鈴浜町 鈴音港C区画

 

「はぁ、はぁ……。誰かいませんか!」

 

 

 静まり返った港で叶の叫び声だけが響く。しかし、それは誰に届くこともなく消えた。叶は誰もいないことに焦っていた。

 

 

「どうしましょうか? やはり、これも“使心獣”の仕業でしょうか?」

 

 

 叶はいったん走るのをやめ、思考し始める。内容はこの場にいない人についてとその現況についてである。叶は自分の中にいる他の人格たちとも相談する。……まあ、今話せる人格の中でもっとも知的なのは、今外に出ているこの人格であるが。

 

 

「みなさん、どこにいるんでしょうか? まず、この港の様子が分かりませんから探しにくいですね」

 

 

 叶はこの港についてよく知らないようで困っている。ちょうどいいので、この港について説明しよう。この港は北を上としたとき、横長になっている。西からA区画。東に行くにつれてB,C……と、なっており、一番東がF区画である。追記すれば、区画ごとに種類分けされており、Aは国外輸送。Bは国内輸送。Cは観光、客船。Dは港の管理。Eは捕獲漁業。Fは養殖、栽培漁業である。今、叶がいるのはC区画。観光や客船の発着に使われる区画である。

 

 

「こっちにはいなさそうです。三坂君の方にいるのでしょうか?」

 

 

 叶は自分と一緒に来た、もう一人の少年、三坂貴大がいるほうを見た。

 

 

 

鈴浜町 鈴音港E区画

 

「うわっ、魚臭いな」

 

 こちらの少年、三坂貴大は魚の生臭い匂いに驚いているようだ。それもそう。このE区画は遠洋漁業、沖合漁業などを担当する区画だ。臭いがするのも当然と言える。貴大は当たりを見まわる。しかし、何も見つからない。

 

 

「……ホント、どこにいるんだろうな?」

 

 

 倉庫、船、事務所、などなど。貴大は隅々まで探す。だが、やはりどこにもいない。貴大はここにはいないと結論づけて、次のエリアに移動しようとする。その時、電話が鳴った。貴大はすぐに電話に出る。

 

 

「もしもし」

「貴大君。僕だ、神田だ」

「あ、神田さん。どうしたんですか?」

「今、どこにいるんだい? 僕は鈴音港にいるんだけど……」

「俺も今、鈴音港にいます。これって、やっぱり」

「うん。十中八九“使心獣”だと思う。今、D区画にいるんだけど、張り紙を見つけたんだ。内容は『仮面ライダーに告ぐ。直ちにA区画まで来られたし。もし、これを無視すれば、人質の“ココロ”と命は無いと思え。我々と遊戯をしようではないか』だ」

 

 

 貴大はその張り紙について聞いて、二つのことを思った。一つは内容についてである。これには人命がかかっている。更には“使心獣”曰く、“遊戯”をしなければならないようだ。そして、二つ目は存在についてである。貴大が最初に来たのは、D区画。つまり、先ほどの張り紙のあった区画だ。それを始めから見つけていれば、もっと早くA区画に行くことができたのだ。貴大はすぐにA区画に向かって走り出した。

 

 

 

鈴浜町 鈴音港A区画

 

「遅い。遅すぎる」

「うるさい。あいつらが張り紙に気がつかなかったんだからしょうがないだろ」

 

 

 とある倉庫。そこには目隠しをされ縄にしばれた人々、100人以上。そして、特に縛られていない青年達六人である。おそらくこの六人が犯人だろう。六人のうちの一人が暇そうに叫ぶ。そして、それを隣にいる青年がなだめる。

 

 

「仕方ないよぉ~、本当に遅いもん」

「まあ、そうなんだけどな」

「……なあ、そろそろ来るぞ」

 

 

 三人が話していると中で、話していない三人の中の一人が口を開いた。そんな彼の目の前にはモニター。そのモニターには港を疾走する二人の少年と一人の青年……貴大達がいた。

 

 

「今どこ?」

「B区画。もうすぐAに着く」

「そうか。……じゃあ、作戦とルールの確認をするか。作戦は予定通りに決行だ。ルールは覚えているな?」

 

 

 青年の中で一番鋭い目つきをした青年が喋る。彼がリーダーだろう。六人は作戦とルールについて確認した。そうしていると、彼らの待っていた人物がやってきた。

 

 

「……着いたか。遅かったな」

「すまんな。あんな分かりにくい所に張り紙があるとは思ってなかった」

 

 

 青年の言葉に貴大は何でもないように返す。その様子を見ていると、今の両者の間には電撃が走っているような気がしてしまう。

 

 

「フン。まあ、いいだろう。本題に入ろうではないか」

「本題?」

 

 

 青年の発言に疑問を覚えた貴大は、怪訝な顔で青年を見る。しかし、青年の方は一切気にしていないようだった。青年はニヤッと笑うと言った。

 

 

「ゲームしようぜ」

「……は?」

 

 

 貴大がなんとか口に出せたのはこの言葉だけ……いや、この音しか出せなかった。叶や勇介も同様だろう。青年は貴大達の様子をおかしく思いながら話す。

 

 

「聴こえなかったか? ゲームをするといったんだ。お前たちに拒否権があるとは思わないことだ。もしも断ったら……」

「断ったら?」

「……この人質はみんな死ぬ」

 

 

 人質たちはその発言に叫びをあげる。しかし、彼らの周りにいた青年が「黙ってろ」と言うと、どすの利いた声で脅すと全員が黙りこむ。貴大達はその様子を見て怒る。

 

 

「卑怯だろ!! 早く人質を解放しろ!!」

「卑怯? 知るかそんな事。お前たちが何を叫ぼうが、この場で襲いかかろうが、参加する気がないならこの場でこいつらを殺す。たとえ今すぐ変身してこいつらを助けようとして、六対二だが全員、無事に助けきれるのか?」

「ぐっ! それは……」

 

 

 青年の話はもっともだ。貴大は参加するしかないのかと思ったその時、叶が口を開いた。

 

 

「あなた達の話は分かります。しかし、ゲームに参加して皆さんの安全が保障されているかは疑問です」

「まあ、そうだな。実際、俺たちが勝ったら殺すつもりだし。それまでの安全の保証になるのは……俺たちの首ついてるこれぐらいだな。こいつは爆弾で俺たちがルール違反すれば爆発する。これが信じられないなら、保証はないとしか言えないな」

 

 

 青年の話を聞いて、叶の方も参加するしかないと諦めたようだ。貴大は叶を見てから、青年に話しかける。

 

 

「俺たちはゲームに参加する。ルールを教えろ」

「そう言ってくれて助かる。それではルールの説明だ」

 

 

 青年はそう言うと説明を始める。ゲームのルールはこうだった。

 

 

 ゲームはまず“使心獣”側と“仮面ライダー”側に分かれる。現在のチームメンバーは“使心獣”側六名。“仮面ライダー”側二名だ。そして、別れた両者は六回の殺し合いをする。場所はA~Fの六区画で一回ずつ行われる。一回の戦闘に参加できるのは一人。“仮面ライダー”側が勝利するたびに人質の六分の一が解放される。そして“使心獣”側が勝利するたびに人質の六分の一ずつが殺される。ルール違反をした場合、その場でそれ以降の試合すべてを敗北扱いとする。以上がこのゲームのルールだ。

 

 

「大体分かった。俺たちは、A区画から始めればいいのか?」

「好きな区画から攻略すればいい。それで、どうでもいいかもしれんが……」

 

 

 貴大の返事を聞いた青年は勇介の方を見る。そして、そのまま首をかしげながら質問する。

 

 

「……あんたは逃げないのか?」

「逃げない。この街の人々を守る警察が、仮面ライダーに全部任せてしまう上、逃げ出すなんて絶対に許されない」

「そう言う割に他の奴らはすぐに逃げ帰ったぜ?」

 

 

 青年は嘲笑する。しかし、勇介はその発言を一蹴した。

 

 

「彼らは警官の中にある“警官魂”を忘れてしまった。だけど……俺は忘れない! 失くさない! 必ず市民を護るんだ! いざとなったら、生身でだって戦う!」

 

 

 勇介の心からの叫び。それは時として、敵味方にかかわらず心を動かすこともあるのだ。

 

 

「“警官魂”ね……。面白いな。今のあんたの“ココロ”をぜひとも喰ってみたい。きっとうまいはずだ。それに俺が人間で普通の出会いならきっと友人になったな。要するにこの状況じゃなければ味方になってたよ。だが、俺は敵だ。はっきり言おう。今の……」

 

 

 青年は勇介の方を見ると、少し残念そうに笑う。他のメンバーも似たような表情を浮かべた。

 

 

「……力のないままのあんたが、いくら叫んだところでどうにもならない」

「ッ! …………」

 

 

 青年の今の発言で黙った勇介に対して、青年はさらに追い打ちをかける。

 

 

「今叫んだだけで、こいつらが助かるか? いや、助からない。結局、どんなに強い想いがあっても実行する力がないと意味がない」

「…………れ」

「だから、お前なんていてもいなくても同じだ。いや、むしろ邪魔かもしれんな」

「…………まれ」

「さっさと消えろ。このゲームに参加しない奴らなんていらない」

「黙れええええ!!!!」

 

 

 青年の辛辣な発言に勇介は声を荒げる。そして、いつにもなく真剣な表情の勇介は声を荒げたまましゃべりだす。

 

 

「分かってるんだ! 俺に二人のように戦う力なんてない! 分かるか? 年下の少年二人に自分がするべき仕事を任せて、自分は後ろで見ているだけ! そんな俺の気持ちが!」

「神田さん……」

 

 

 貴大は勇介の思いを聞いて、複雑な気分になる。申し訳ないような、そんな気分だ。貴大がそう思う間にも勇介の話は続く。

 

 

「護りたい! 二人のような戦う剣でなくてもいい! せめて、せめて……」

 

 

 勇介は拳を作って、天に向かって叫ぶ。己の“願い”を。

 

 

「……盾に、俺は盾になりたい! 様々な障害からみんなを守る盾に!」

「その“願い”聞き届けました」

「え?」

 

 

 勇介の叫びに応えた者がいた。それは叶だった。勇介は素っ頓狂な声をあげる。叶はその声に少し笑みをこぼし、ポケットから何も描かれていないチップをとりだした。そして、それを勇介の胸に当てた。それの意味を知らない勇介は叶に尋ねる。

 

 

「これは?」

「あなたがここにいたのは無駄なんかじゃない。あなたの気持ちは、僕らや人質に取られている人たちを勇気づけた。結果は変わらなくとも“使心獣”の心を動かした。そして、あなたの“願い”は僕に力を与えてくれる」

「それって、一体どういう……」

「あなたの“願い”を借ります」

 

 

 勇介の疑問を無視した叶の一言を合図に、勇介の胸からチップに向かって何かが流れる。そして、それが止んだ時、何も描かれていないチップには、炉に盾が立てかけられた絵が描かれていた。叶はそれを見てにっこりと勇介に笑いかける。

 

 

「ね? あなたの“願い”は僕の力になった。あなたのおかげで、僕は人を守れるようになります」

「俺の“願い”が、力、に……?」

「ええ。あなたは僕らと一緒に戦っているんです」

「そう、か。よかった。無駄じゃ、無かったのか……」

 

 

 勇介は叶の言葉を聞いて、安心したような顔になる。そんな勇介を見て、貴大も声をかける。

 

 

「神田さん。あなたは“Hサーチャー”を設置してくれた。今回だってここのことを教えてくれた。あなたは邪魔じゃない。あなたは俺たちの仲間だから」

「貴大君……」

「おいおい、俺たちを置いて感動的なシーンを作ってんじゃねえよ」

 

 

 貴大の言葉にジーンときていた勇介に、青年が話しかけてくる。それで三人はそちらに意識を向けた。

 

 

「いつまでやってんだよ。こっちだって暇じゃないんだ」

「そうだな。それじゃあ、始めるか」

 

 

 貴大はそう言って、前に出る。叶は勇介の方を見た。

 

 

「神田さん。あなたはここまで多くのことをしてくれた。今度は僕達の番です。あなたの体は後ろにいるかもしれません。でも、その想いや“願い”は僕達と一緒にあるんです」

「叶君……」

 

 

 叶はそれだけ言うと前に出た。三人がそうしている時、青年たちはゲームの開始を喜んでいた。全員、嬉々とした顔で立っている。

 

 

「始めるぞ。俺たちはそれぞれの区画にいる。好きな区画から攻略に来ればいい。開始は三十分後だ」

 

 

 そう言うと、六人は人質を連れて出て行った。貴大達は互いに顔を見合わせる。その顔には必ず勝つという、揺るぎない“決意”があった。

 

 

「二人とも……勝つぞ!」

「「おう!」」

 

 

 三人の声は天高く響く。遊戯は、もうすぐ始まろうとしている。




 どうでしたか?

 次回から遊戯のスタートです。楽しみにしていただければと思います。

 それで、とうとう挿絵が出せるようになりました。早速ですが、[必] の回の鈴音市の所にマップを載せました。気になったらぜひ見てください。ペイントで十分くらいかけて作ったちゃちな地図ですが、少しでもこの話のイメージがしやすくなればいいなとおっています。

 それでは、次回の[恁]の回も見ていただければ幸いです。

See you next time!

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