まあ、それはいいのです。そのうち治るので。
今回のお話のお話! ……何言ってるのか分からなくなってきます。
今回は「夏だ! お化けだ! 肝試しだ!」という感じの勢いで創りました。ですので、今回はホラーな要素が入っています。後、中二な要素も少し入っています。
それでは、お楽しみいただければ幸いです。
鈴木町 幽霊ビル二階
「……ねえ。ここ、本当に出るの?」
「ああ、まじで出るって。だって実際に倒れてた人もいたんだろ」
蒸し暑く寝苦しいなと苦しむ人が多そうな深夜。この場には二人の青年がいた。夏・夜・幽霊ビル。この三つを総合させれば彼らのしていることは言うまでもないだろう。片方の、背の高く楽しそうにしている少年がもう一人、小柄でびくびくしている少年を連れてきたのだろう。
「そうだったね。じゃあ、本当にあうかもしれないのか……」
びくびくした少年はそこまで言うと、一呼吸置く。そして、口に出すのも恐ろしいと言わんばかりに口に出す。
「……吸血鬼が」
ガサッ
その時どこかから物音がする。二人はビクッと飛びあがって立ちどまる。そしてあたりを見回す。そして、見つけてしまった。彼らの後方五メートル当たりの
「あ、あ、ああ……」
「ヒッ……」
それは悲鳴を木霊させる二人とは対照的。まるで忍ぶ者たちのような動きで静かに夜のビルを翔け、夜を紅く染める。
鈴谷町 鈴音東高等学校
「三坂っち~~♪」
「ど、どうした?」
夏休み。学生がそれぞれの青春を謳歌するこの時期。貴大は……いや、この学校の生徒たちは夏休みの間にある補習という物に参加させられていた。今は、休憩時間。皆が暑そうにしながら机に突っ伏したり、友人と話している。そして、今の貴大の状況は後者であった。新二や和馬と話しているところに響がやってくる。
「この前は夏祭りだったっすよね」
「ああ、そうだったな」
「どうだったすか~~? 特に永見っちと」
「あ。そ、それは……」
貴大はつらそうにうつむく。あれから優希は部活に来ず、貴大はまともに話せもしていなかった。皮肉なものだが、そのおかげで“辛苦”の“
「そ、そうだった、忘れてたっすよ! み、三坂っち。肝試しするっすよ! この、四人で!」
「肝試し?」
「そ、そうっす!」
響は焦りながら他の二人も見やる。二人はやってやろうという感じで響を見る。響はそれに安心して続ける。
「実は鈴木町に最近噂の心霊スポットがあるっす。その名は“忍ぶ鬼の紅き城”っす! ……実際は白い廃ビルっすけど」
「……最近、思うようになったんだが、この街ってそういうネーミングが得意な奴でもいるのか?」
全員が沈黙する。三人は何も返せなかった。鈴音東のエースだった原田の異名“雷の羚羊”や今回の心霊スポット“忍ぶ鬼の紅き城”にしても中二なネーミングが多い。これ以外にもハーツは“心の守護者”と呼ばれているし、いつかのタコは“夜海に蠢く魔物”といわれているそうだ。
「そ、それはどうでもいいっすよ。いくっすか? いかないっすか?」
「……行くよ」
貴大は肝試しに行くことにした。そして、それをきっかけにハーツのことも話してしまおうと思っていた。おそらく三人なら信じるだろうし、それを誰かに言いふらしたりすることはないだろう。
「良かったっすよ。それじゃあ、日程は決めておくっす」
「ああ、分かった」
鈴木町 幽霊ビル入口
「全員集まったっすね。それじゃあ、出発っす」
「「「「おー」」」」
響の掛け声に他の四人が合わせる。響は四人の反応によしよしと言わんばかりにうなずいてライトをつける。そして、城に向かって一歩を踏み出した。三人もそれに続く。四人は一列になっていて、順番は響、和馬、新二、貴大だった。ゆっくり、四人は先に進む。その途中で新二が貴大に話しかけてきた。
「三坂君、君はこういうのは苦手かい?」
「いや、今までは駄目だったんだが、いろいろあって耐性がついた」
「全く、君は一体何をしているんだろうね」
「それは、もうすぐ話すよ」
「そうかい。それは期待しておくよ」
新二は今までよりも良い答えを聞けたので嬉しくなっていた。貴大はああいってしまった以上は言うしかないなと決心した。その間にも四人は先に進んでいく。
「皆! いるっすか?」
「ああ」
「いるよ」
「大丈夫だ」
「問題ない」
四人はしっかりと返事をした。響はそれによしよしとうなずいて先に進もう……とした。響はあまり賢くない頭を使って考える。今この場にいるのは四人。自分が質問したので返事をするのは三人だ。しかし、今返事をした人数は……。響から血の気が引いていく。
「だ、誰っすか?」
「何言ってるんだ?」
響がいきなりおびえ出したことに三人は不思議がる。響は少し震えながら説明する。
「だ、だって。ひ、一人分、返事が多かったっす」
「そうだったか?」
三人は一切気がつかなかったようだ。響は「聞き間違いだったかもしれないっす」と言って先に進み始める。しかし、彼は確信していた。あの時、返事が多かったのだと。そして、そんな響を見て笑うものがいる。
「くっくっく。この調子で残りも“恐怖”でいっぱいにしてやる……」
その笑い声は誰にも聞こえることなく消えていく。
まだ恐怖の紅き夜は始まらない。
鈴木町 幽霊ビル地下一階
遅くなってしまったが、このビルのことを話すことにしよう。このビルは三階建てである。更に地下があり、それは一階だけだ。入口は一階の正面玄関とすべての階にある非常口のみである。貴大達は正面玄関からこのビルの一番下の階に入った。そこから上にあがっていくのだ。
「何にも出てこないな」
「ああ、恐ろしいくらいに静かだな」
四人は一切しゃべっていなかったが、その沈黙を破ったのは和馬だった。和馬は何も起こらないのがつまらないらしい。そして、その和馬のつぶやきに反応したのは新二だ。新二は先ほどおびえていた響が少し心配だった。響と貴大は相変わらず口を開かない。
「早く何か幽霊でも出てくればいいのにな」
「ここなら幽霊じゃなくて吸血鬼だろう」
「あ、そうだったな。もしも、出てきたらこいつらで倒す」
「こいつらってなんだい?」
「それは……」
和馬は鞄の中をあさる。そして、ある物をとりだした。それは十字架・聖書・ニンニクetc……という、吸血鬼を始めとする妖怪たちの弱点になりそうなものだった。
「分からないけど、何も起きないのはそれのせいじゃないかい?」
「え? ……そうかも」
新二の指摘に和馬はなるほどと納得する。しかし、持ってきた物をここに捨てていくのはどうかということで、結局持っていくことになった。和馬は本当に、自分の持ってきた物が役に立っているのかと考えていた。そんな時、風と共に声のようなものが聞こえる。始めはかすれて気がつかないものだった。
「そ……も…、……んわ」
「ん? 誰かなんか言ったか?」
「いや。どうした?」
「誰かの声が聞こえた気がしてな」
和馬は誰もしゃべっていないと聞いて、風の音が声のように聴こえたのだと納得した。こういうことはよくあるネタじゃないかと。木の影が幽霊に見えたりするというのもこれと同じだ。和馬は気にしないことにしたが、その後も何度か耳につくようになる。そして、その声はだんだん意味のわかる物になる。
「そんな……、きか……」
「コロ…。貴様らを…す」
「貴…の…はうまいか…」
内容はいろいろ違えど、なんとなくの内容は理解できるようになってくる。「そんな物効かん」とか「コロス。貴様らを殺す」「貴様の○(吸血鬼がいるのでおそらく“血”だろうが)はうまいか」……と、恐ろしい内容を何度も聞かせてくるのである。和馬はだんだん恐ろしくなってきた。その時、バサバサっと鳥か何かが飛ぶ音がする。和馬はこれに過剰反応してしまった。
「殺される。どうしよう……」
「だ、大丈夫かい!?」
今回は響よりも重症で完全に取り乱している。貴大達四人は急いで、和馬を落ち着かせる。しばらくするとだんだん和馬も落ち着いてきたが、相変わらず顔は恐怖に染まっている。
「す、すまない。風の音が呪いの声に聞こえてな」
「仕方ないさ。こういう状況ではよくあるよ」
謝る和馬に新二がしっかりフォローを入れる。こんな場でも落ち着いている新二に和馬だけではなく、響も安心していた。そして、やっぱり一緒にいてよかったと思うのだった。そして、やはりそれを見ているものがいる。それは少しいらついていた。
「くそ! 奴らの“恐怖”が減少している!」
それは次のターゲットを新二に定めて行動を開始する。
紅き夜を迎えるために。
鈴木町 幽霊ビル二階
新二達四人は二階にいた。一階は壁がすべて取り払われており、あまり巡る意味はないのではということで、次に行くことになった。なぜ夜なのに壁がないとすぐに分かったかといえば、このビルの全方位の窓が見えたおかげだった。それで、二階に上がった四人は今度は新二を先頭にしていた。新二は先頭を歩きながらあたりを見る。その時どこかから視線を感じた。
「何かいるのか?」
新二は視線を感じるほうを見る。そして、驚いてしまった。そこに真っ赤な目をした何かがいたのだから。新二はすぐに懐中電灯をそちらに向ける。すると、何かは逃げてしまった。しかし、新二は何かが靴を履いていたのをギリギリ見た。そして、何かがいたところに近寄る。そして、下を見るとそこにあったのは血の水たまりだった。血はほとんど乾いていなかった。
「こ、これは……」
新二はすぐに後ろを見る。しかし、そこには誰もいなかった。新二はすぐに不安になって貴大達を探す。
「おーい! 皆ー! どこだー!」
「『どこだー』は、こっちのセリフだぞ」
新二の呼びかけにすぐ答えたのは貴大だった。後ろには響や和馬もいた。貴大は新二を見て言った。
「全く、なんで先に二階に上がるんだよ」
「え? だって一階には何もないからって……」
「何言ってるんだ。それでも一応行こうと言ったのが先頭だったのは分かってるんだ」
貴大の言葉に新二はおかしいなと思うが気にしないことにした。四人はそのまま最上階、三階に上がって言った。そして、それを見ていたものは、深呼吸をしていた。
「危なかった……。もう少しで、見つかる所だった」
それは深呼吸すると、いよいよ貴大達四人の“ココロ”を喰らうことにした。貴大を襲わないのは“使心獣”だとばれないようにするためだったので、貴大の“恐怖”はあまりないが、他の三人はそれなりにたまってきたので少し早めに喰らうことにしたのだった。
紅き夜がもうすぐ始まる。
鈴木町 幽霊ビル三階
いよいよビルの最上階である。貴大達は今度は貴大を先頭に歩く。あの後、新二が後ろにしてくれということだったので、貴大が前になったのだった。
「……響。これってどうしたら終わりだ?」
「え、えっと……。往復したらっすよ」
「そうか……」
貴大は響に聞きたいことを聞くとまた黙る。貴大はこのビルになんとなく、違和感を感じながら歩く。この違和感のお正体を考えるが、なかなか答えが出ない。しばらくいろいろなところを歩いた。そして大広間のようなところに着いた。その時、大きな音が鳴る。この音に貴大以外の四人が驚く。貴大はすぐにドライバーをとりだす。貴大の聞きたくない音のトップスリーに食い込んでくるこの音、“Hサーチャー”の音だ。あたりを見回すと、そこにはスーツを着た紳士という言葉がぴったりな青年がいる。青年は恭しく頭を下げる。
「ようこそ、我が居城に」
「我が居城? ……お前が吸血鬼の正体だったのか!?」
「ええ、その通り。私がこの城の城主、No32ナミチスイコウモリの“Desmodus rotundus”でございます」
「やっぱり“使心獣”だったか」
「分かっておられたのですか。やはり、そのセンサーはなかなかごまかせない。まだ、五回ほどしか血も“ココロ”もいただいていないというのに」
「貴様……!」
貴大はドライバーをとりだす。新二達三人は貴大とこのビルの城主を名乗る人物の話すことが理解できなかった。なので、新二が代表して貴大に尋ねる。新二はこの状況が自分の理解を超えているというのになぜか落ち着いていられた。
「一体、これはどういうことだい?」
「俺が今まで誰にも秘密でやってたこと。そして、この前の夏祭りの日に優希にばれたことだ。今日、普通に話すつもりだったのに……」
「一体君は何をしていたんだ?」
「それは……“百聞は一見にしかず”ってことで」
貴大はそういうとドライバーをつける。キィィンという音がして貴大に巻き付いた物を見て三人は何が起こるのかますます分からなくなる。
「さあ、行くぜ! お前も準備しとくんだな!」
「そうですね。そうさせてもらいます」
貴大は“H”のホルダーから真っ白なチップをとりだす。青年の方はその姿を吸血鬼のもととなった動物、蝙蝠を連想させる物に変えた。
「さあ、始めましょう」
「そうだな……変身!」
「
その音声に合わせて貴大に“
「こういうことだ。俺は皆の“ココロ”を護る戦士“仮面ライダーハーツ”なのさ」
「驚いた……」
「そりゃあ……言えないっすね」
「……確かに」
三人は驚きっぱなしのようだ。貴大はそれを見て少し笑って蝙蝠を見る。
「さあ、始めるか」
「
その音声で、貴大は水に包まれる。そして、その水がはじけると、そこにいるのは青を基調とした姿の“
「
貴大は一気にいくつものチップを入れた。これにより武器として“棒”が与えられ、その攻撃“打擲”の威力をあげる。更に貴大自身が“加速”し、相手には“辛苦”を与える。
「これでもくらえ!」
「ぐうっ! は、速い!」
そうなのだ。もともとスピードタイプであった“
「せいっ! はっ! うりゃあ!」
「ガッ! ぐっ! うっ!」
蝙蝠は攻撃をかわそうとするが、それでも何発か喰らう。貴大はスピードを得る代わりに失った攻撃力を補うように攻撃を重ねる。そして、最後ということでチップをとりだす。
「“
「流せ悲嘆を! “
貴大は蝙蝠に圧縮された水の付いた棒で連続攻撃をする。その清流のように優雅で激流のように力強い攻撃が終わると、蝙蝠は倒れて爆発した。爆風で、新二達は少し後ろに飛ばされたが、怪我はなかった。貴大は変身を解いて三人のそばによる。
「まあ……こういうことだ」
「君、結構大変なことに巻き込まれているんだね」
「ああ、まあ」
「気にしないでいい。僕たちはこのくらいで、君を避けないさ」
「ありがとう」
「どういたしまして」
四人は今まで以上にきずなを強くした。貴大はそのことに喜びながら、次は優希の方もなんとかしないといけないなと思うのだった。そして、貴大は太陽が出そうになった早朝の朝、三人と別れた。貴大は後ろのビルを見る。ふと、人影が見えた気がしたがそんなことないかと、一人納得して家路に着く。
こうして紅き夜は終わったのだった。
どうでしか? ……季節がずれてはいますが、納涼体験はできたでしょうか?
僕はこの情景を想像してたら、その晩は寝れませんでした。ちょっと怖かった。
と、僕のことはこのくらいで今回のお話を振り返りましょう。
今回の敵は「ナミチスイコウモリ」でした。蝙蝠というのは吸血鬼のモデルになった生き物ですね。しかし、実際に血を吸う蝙蝠は少ないらしいです。ほとんどは植物(特に果実)や小動物(虫など)を食べているんだそうで。
それでは、次の話題に行きましょう。次はホラーな内容についてです。
今回の敵の「ナミチスイコウモリ」(以降、蝙蝠と呼称)は何度か“恐怖”を喰らうために行動しました。それは、「片山君が呼びかけた時の返事」「山宮君への風の振りをした呼びかけ」「西崎君の前に姿を現す」「三坂君との戦闘」の四つです。
……あれ? と、思った方がおられるかもしれません。そうです。この話には蝙蝠が仕掛けたこと以外にも、奇妙な点がいくつかあるのです。
さあ、それの正体は一体なんでしょう? 始めに言っておきますが、あの蝙蝠がしたのは先ほど言ったもので全部です。
ということは、あれは………。
という話でした。
それでは、次回の[悩]の回も見ていただければ幸いです。
それでは。
See you next time!