仮面ライダーHearts   作:山石 悠

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 どうも、山石悠です。

 高校生活にもなじみ始めてきた今日この頃でございます。部活は将棋部、クラスでは殆ど喋らないという、目立たないやつです。

 ……と、僕のことは興味ないと思うので、本編のお話にしましょう。
 今回は、夏祭りですね。今回の話はこの作品を出し始めたころから温めていたお話でした。作品内の時間が夏になるまでは、出せないですから。
それで、今回は今回のお話[憶]の回と次回の[想]の回の二話で一話なお話なのです。

 ということで、お楽しみいただければ幸いです。


[憶] 街の記憶

鈴谷町 鈴音東高等学校

 

「三坂君、夏祭りに行こう!」

「え?」

 

 

 優希は唐突に言いだした。貴大はいきなりのことに驚いてしまった。

 

 

「だから、鈴音祭りっていう夏祭りだよ。鈴音神社であるんだ。それで、この神社にはずっととある言い伝えというか、伝説があるんだ。それで、それに関係したうわさがあって、それを確かめるために行くんだ」

「ああ、そういうことか。……ん? でも、それなら祭りの日じゃなくてもいいだろ?」

「それがね、祭りのある日がその伝説で大きな意味がある日なんだよ!」

 

 

 優希のすごい力説に貴大は圧倒されて、ただただうなずくことしかできなかった。

 

 

「あ、ああ。分かった」

「決まりだね。じゃあ、今日の放課後に早速行ってみよう!」

「了解だ。放課後な」

 

 

 優希は上機嫌に貴大の席から自分の席へ帰っていく。そして、今度は頼れる委員長こと、西崎新二がやってきた。

 

 

「三坂君。永見とデートのお約束かい?」

「お、お前!? 何言ってんの!? 部活だ。デートじゃない」

「そうかな? 僕や山宮君達からすればデートに見えるよ。きっと、永見さんの方もそう思ってるさ」

「お前たちはともかく、優希はそう思ってないだろう」

「はあ、君は鈍いのかい? 人の気持ちには気づいてあげなよ」

 

 

 新二は呆れたといわんばかりに深い溜息をつく。そして、忘れていたけどと前置きしていう。

 

 

「いつか三坂君の隠しごとの方も教えてくれるといいけどね」

「な、お前何言って……」

「安心してよ。変な推測をして言いふらしたりとかそんな事をしないよ、僕達は」

「僕達って、まさか……」

「さあね。あ、もうすぐ先生も来るし、このくらいにしようか」

 

 

 新二は意味深な笑みを浮かべて自分の席に帰る。貴大は新二の言った「僕達」という言い方で、おそらく和馬や響も気が付いているのだと思った。貴大はハーツのことを話したらいいのか悩んでしまって、その日の授業に集中できなかった。

 

 

 

鈴沢町 鈴音神社

 

「ここだよ。ここが鈴音神社。鈴音の土地の開拓に尽力して、神様になったという女性が祀られているの」

「へえ、そうなのか」

「そうなんだよ。まあ、くわしいことは知らないんだけど。……あ、神主さんだ。あの人に訊いてみよう」

 

 

 優希はそういうと神主の方に走って行った。貴大もすぐに優希と神主の方に走って行った。優希は早速、お願いをしているようだった。

 

 

「神主さん。この神社に祀られている鈴音様について、教えてください」

「いいですよ。あ、そこにいる君も一緒かい?」

「あ、はい。すいません、お忙しいのに」

「いやいや、これも私の役目ですからね」

 

 

 神主は優しく笑い、貴大と優希にとある質問をしてきた。

 

 

「君たちはなぜこの土地が鈴音と呼ばれるかご存知かな?」

「いや、知りません」

「私もよく分かりません」

「そうですか、それなら最初から話しましょうか」

 

 

 この神社、そしてこの町の歴史について話し始める。

 

 

 

名もなき村 イの田

 

「お鈴ちゃん、おはよう」

「あ、おばあちゃん! おはよう!」

 

 

 昔々、お侍さんや貴族さまがいらっしゃったころ。鈴音市のある場所はとても小さい、名もなき村だった(この場では名無村(ななしむら)と呼ぶことにしよう)。この村の人々はみんな感情の豊かなものばかりだった。そんなこの村に住んでいるある十歳の女の子がいた。女の子の名はお鈴。動植物と音楽を愛する心優しい女の子だった。お鈴は村人みんなに好かれていた。

 

 

「わーい! 太郎、太郎! こっちこっち!」

「ワンワン!」

 

 

 名無村はみんなが家族のようで心温まる村だった。お鈴はそんな名無村ですくすく育っていった。一年がたち、お鈴は北の山に行くようになった。二年がたち、今度は山の生き物にも好かれるようになった。三年がたち、だんだんと子供っぽさが抜けて大人っぽくなり始めた。四、五年とたつと、村で一番二番を争うほどの美人になった。六年ほどたつと、近くに住む男性達がお鈴に求婚するようになった。しかし、お鈴はこれをすべて断った。

 

 

「お鈴さん! どうか、どうか私と……」

「いやいや、こんな男となんて駄目です。私と結婚しましょう」

「何を言っている。お鈴さんは拙者と結ばれるのだ」

「全員嫌よ! 私は誰とも結婚しないと言ってるでしょう」

 

 

 お鈴は頑なに結婚しないと言って聞かなかった。二年もたつと、とうとう男性達も諦め始めた。そして、もう一、二年するとぱったりと来なくなった。お鈴は男性達が来なくなると、お鈴はこの村をもっと良くしようと言いだした。海で取れるものを加工して新たな料理を作り、山で採れる植物で工芸品を作った。お鈴の始めたことによって、少しずつ村は大きくなってきて、街となり始めた。

 

 

「それは、こっちに持ってきなさい! それはあそこに積むのよ!」

「お鈴さん、あんた働きすぎじゃないかい? ちっとは休んだらどうだ?」

「駄目よ! 頭が休んでどうするのよ! さあ、そんなこと言ってないであなたもそれを運ぶのよ!」

 

 

 お鈴はそこらの男たちよりもしっかりと働き、村でトップと言えるほどの地位を手に入れたのだった。お鈴は休むことなく、毎日毎日働いた。それは他の村人たちみんなが心配するほどだった。だが、彼女はとてもパワフルで一度も倒れることもなかった。そんな生活が数年ほどが過ぎた。

 

 

「……ねえ、最近雨降らないわね」

「そうですね。これ以上降らないと作物がみんな死んじまうよ」

「用水の方も駄目よね。……ああ、水が足りないわ」

 

 

 ある年、梅雨の時期になっても雨が降らず、水不足に陥ってしまった。このままでは作物だけではない。住人達まで水が飲めずに死んでしまう。人々はどうしようかと悩んだが、こればかりはどうにもならなかった。しかし、名無村の神社の神主が言いだした。

 

 

「生贄じゃ。生贄をささげれば、きっと雨が降るだろう」

「い、生贄!? 神主さん、そんなのどうするんだよ!?」

 

 

 神主のこの一言で、村の人たちは悩んだ。生贄として神にささげる。それをすれば、生贄は死んでしまう。この村に住む人は比較的優しい人が多く、それは新しくこの村に来た人にも伝染していた。なので、みんな悩んでしまったのだった。そんなとき、ある人物がやってきた。

 

 

「私を生贄にしなさい! それなら問題ないわ!」

「お、お鈴ちゃん!? あんた、自分が何言ってるか分かってるのか!?」

「分かって言っているのよ! 急いで! 早く雨を降らせましょう!」

 

 

 お鈴は自分が生贄になると言って聞かなかった。村人たちはみんなお鈴を止めようとしたが、お鈴は決して止まらなかった。そして、結局お鈴が生贄になることに決まったのだった。そうして、お鈴は生贄として死んでしまった。その後、彼女が亡くなってから名無村に雨が降り、人々は救われたのだった。その時の雨の音はみんなをいたわる、優しいお鈴の声のように聴こえたそうだ。

 

 

「お鈴ちゃん。ありがとう、あんたのおかげでみんなが救われた」

 

 

 人々はお鈴の名前と、あの時の雨の音からこの土地を鈴音と呼ぶようになった。鈴音の村はお鈴の作った様々な名産品のおかげで、更に大きくなった。そして、現在の鈴音市ができたのだった。村人たちはお鈴に感謝の意味を込めて、神社に祀ったのだった。それが、現在の鈴音神社だ。

 

 

 

鈴沢町 鈴音神社

 

「……そんなことがあったんですか」

「うう、悲しい話だよ」

「ですが、鈴音様のおかげで多くの人々が救われました。このことは鈴音の土地に住む私たちは、忘れずに伝えるべきなのです」

 

 

 話が終わるころはもう、夕方だった。貴大と優希は神主の話が終わると悲しい顔で感想を述べた。貴大はうつむいていたが、優希は思いっきり泣いていた。神主は何処か遠くを見るような目で、締めの一言を言う。そして、貴大はあることを思い出して、優希に言った。

 

 

「なあ、優希。確か、鈴音様に関する噂があるんだろ?」

「あ、そうだったね。それはね、鈴音様を見た人がいるって話なんだ」

 

 

 優希がそういうと、神主がそれかと、思い当たる節があるような反応をして、二人に言った。

 

 

「確かにそういう話は聞きますね。私は見たことがないのですが、この神社に現れるようです」

「その鈴音様がどんな感じか聞いたことはないですか?」

「着物を着た綺麗な女性だったといいます。それで、見た人は心が抜け落ちたような感じでしたね。鈴音様を見た巫女が一人いますが、彼女は未だに心が戻ってきません」

「“ココロ”が戻ってこないだって!? それ、本当ですか!?」

 

 

 貴大は神主の話から貴大はすぐに“使心獣”を連想した。鈴音様を見たという噂の真実は鈴音様に化けた“使心獣”の仕業なのだろう。

 

 

「神主さん、お忙しい中ありがとうございました。それじゃあ、優希行くぞ」

「あ、うん。それじゃあ、また」

「はい。またいつでも来てくださいね」

 

 

 貴大と優希は神主に挨拶して帰る。貴大達は境内の中を歩いていると、どこからか鳥の鳴き声が聞こえてきて、貴大はその鳥の鳴き声がする方を見た。すると、そこには着物を着た綺麗な女性がたっていた。

 

 

「あ、あれが、鈴音様……」

「おい! “使心……」

 

 

 優希は鈴音様が現れたことに驚いていた。貴大の方は、おい“使心獣”と声を掛けそうになるが、優希が隣にいるため言えなかった。女性は二人の方を見ると軽く一礼した。その時、強い風が吹いてきた。その風で二人は目をつぶってしまった。二人が目を開けて女性のいたところを見ると、そこにはもう誰もいなかった。

 

 

「み、三坂君。あれって……」

「ああ、あれが噂の正体だろうな」

 

 

 二人は先ほど見た女性を見たせいで動けなかった。そのまましばらく止まって、しばらくすると心が戻ってきたのか正常な思考ができるようになった。二人は帰るか、そうだね、と話して神社をあとにした。この鈴音市に現れた、鈴音様に化けた“使心獣”。貴大はあの幻想的だった女性の姿を思い出しては、思考の渦に引き込まれていった。




 どうでしたか? 今回はバトルはありませんでしたが、次回はちゃんとありますから。

 それで、次回はついに……ああ、やっぱり言えない! 次回を見てください。

 それでは、少し雑談などを。
 このお話は物語の中の時間で、一年間戦う予定です。このお話の最後も、矛盾しない物をなんとか用意しています。……気が早いですかね?

 まあ、そんな感じでこれからの予定もしっかりと立ててあるので、やる気と時間さえあればちゃんと完結できるかなと思います。

 それでは、次回の[想]の回も見ていただけば幸いです。

See you next time!

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