ある程度定期的に更新する予定です。
感想などありましたらお気軽にどうぞー。
「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・はぁ!」
そう。僕ーー乙坂有宇は激しい動悸と共に目を覚ます。
そこは病院のベッドだった。
記憶が曖昧だ。本当に目を覚ましたのかわからない。今が現実なのかわからない。そう、まだ夢の中にいるのかもしれない。いや、さっき見ていた夢がもしかしたら現実なのかもしれない。そんな現実離れした夢のような話だ。
「気分はどうっすか?」
病室のイスに腰掛けていた友利はそう聞く。至って平然とした様子だ。いつもの彼女らしい。
「僕は・・・・・・・・・いったい、どうしたんだ?」
「覚えてないんですか?」
怪訝そうに、友利は聞く。
「あなたはライブ中に倒れたんです。『ZHIEND』のライブ中に」
「・・・・・・・・そうか」
記憶はある。
そうだ。妹の歩未は死んだ。そして僕は自暴自棄になってやさぐれた。そんな時に、友利に助けてもらった。そして、オムライスを食べたんだ。それから僕は元の生徒会に戻った。前と同じ、いつも通りの当たり前の日常が戻ってきた。そんな時、僕はZHIENDのボーカリストであるサラ・シェーンに会った。そして、友利のお兄さんにサラを会わせた。奇跡的な事に、彼女の歌を聞いたお兄さんは僅かながらではあるが、改善の兆しを見せた。そして、ライブに友利と一緒にいった。
そこまでは覚えている。
問題なのはここだ。
さっき見ていた。夢だ。正直、あまりに現実離れしている夢の内容だった。いかにも夢らしい夢。普通だったら一笑に伏してしまえばいいだけだろう。なぜか、今の僕にはそうすることができなかった。
「・・・・・・・何か嫌な夢でも見たんですか?」
友利は聞いてくる。
なぜだろうか。今、僕は重大な決断をしようとしている。なんだか、そんなような気がしたんだ。
その夢の内容を夢と認めるか、あるいは夢でないとするか。それだけの事なのに。僕たちの運命すら変えてしまうような、大きな決断であるような気がした。
無意味なほど長く、考え込んでしまう。
「本当に大丈夫ですか? 顔色悪いっすよ」
友利は彼女なりに、心配そうに聞いてくる。
「何でもない。そうだ。僕は夢を見てたんだ。ただの夢を。だから何でもない」
「・・・・・・そうですか。安心しました。体調には問題がなさそうなので、すぐにでも退院できるでしょう。ただ、今日一日くらいはここで安静にしていてください。私もそろそろお暇します」
「あ、ああ」
「では乙坂君。また明日、学校で会いましょう」
「ああ、またな」
そして、僕と友利は別れた。これからまた、いつもと同じ日常が続く。
歩未のいない。
そして、さっきみた夢とは無関係な、これまで通りの日常が。