魔法少女リリカルなのは〜復讐者の選ぶ道〜   作:びーびー

2 / 15
第1話 両親に向けて~管理局入局まで~

 

 事件後ほかに身寄りがなかった私はレジアス家に引き取られた。家はレジアスおじさんの家に住むことになったがミッドの自宅は維持していくことにする。レジアスおじさんたちはとてもよくしてくれるが私は未だに喪失感や悲しみから立ち直れていない。

 

 

 それからしばらくして闇の書は管理局によって破壊されたらしい。レジアスおじさんが言うには大きな被害が出たらしいが私にとってはあまり関心がない話だった。いや目を背けていたというほうが正しいのだろう。

 

 

 事件の証拠品として管理局に持っていかれたお父さんの形見のデバイスが返ってきた。レジアスさんが無理をいって取り戻してくれたらしい。デバイスを使っているお父さんの姿が思い浮かんできて泣いてしまった。レジアスさんが困った顔をしていた。

 

 

 数ヶ月ぶりに自宅に行ってみる。静寂を保つ部屋に私は本当に一人ぼっちになってしまったということを実感する。涙が止まらない。ぼやけた視界であたりを見回すと机の上にラッピングされた箱とメッセージカードがあった。どうやら誕生日プレゼントだったらしい。お父さんとお母さんの字を見てわけがわからなくなってしまい寝室に駆け込み布団を頭からかぶる。両親のにおいに包まれているうちに眠りについた。

 

 

 翌日、目を覚ますとレジアスさんの家に戻ってきていた。どうやらいつまでも帰ってこない私を心配してゼストさんと様子を見に来てくれたらしい。思いっきり泣いて多少すっきりした頭でお礼を言うと乱暴に頭を撫でられた。すこし痛い。

昨日見れなかった誕生日プレゼントを開けてみると中には銀の腕輪が入っていた。ゼストさんが言うにはインテリジェントデバイスというらしい。デバイスマスターだったお父さんの自作らしい。起動すると名前をつけて欲しいといわれたのでひとしきり悩む。鏡を見ると泣いて目を赤くした自分がいたため涙からとって【ティアーズ】と命名。目をきらきらさせて自分も欲しいとレジアスさんにしがみつくオーリスちゃんをみてすこし笑うことができた。立ち直り始めているのかもしれない。

 

 

 お父さんのデバイスからティアーズへ基本術式を移そうと弄っていると事件当日の映像が出てきた。遊園地ではしゃぐ私とそれを見守るお母さんが記録されていた。なんだか遠い昔のことのように思えてしまう。そして場面は切り替わり帰り道、お母さんの背中で眠っている私が記録されていた。いやな予感を覚え映像を止めようとするがその前に事件のシーンが始まってしまった。体が凍りついたように動かなくなり私は意識を失った。

 

 

 次に目が覚めるとそこは病院だった。傍らにはレジアスさんとオーリスちゃんが心配そうに私を覗き込んでいた。意識が戻らなかった私は病院に運ばれたらしい。オーリスちゃんにははずしてもらって倒れた理由をレジアスさんに話し、覚悟を決め今まで目を背けていた事件のことについて尋ねる。そして闇の書のこと、お父さんとお母さんを殺した犯人がまだ生きている?かも知れないことを聞いた。胸の中で何かが燃え出す音が聞こえた気がした。

 

 

 病院から退院するとすぐにゼストさんに魔法を教えてもらうようにお願いした。理由は強くなりたかったからだ。それが復讐の為か、それ以外の為かは自分でもわからなかったが何もしないでのんきに過ごす自分というのは許せそうになかった。理由を尋ねられ思ったことをそのまま口にしたら渋い顔をされた。頑張ってお願いしたらとりあえず色々と調べてみることになった。結果、

魔力量ランクA 空戦適性あり レアスキルなし 予想魔導師ランクA

となった。あとレアスキルというほどではないが幻術魔法の資質があるらしい。魔力光は薄い青色。ちなみに魔力量は頑張ればAA、運がよければAAA-に届くか届かないかくらいまで伸びるとのこと。将来有望だと言われたが、ゼストさんには習うことができないらしい。そもそもゼストさんが使うのは古代ベルカ式といって私のミッド式には詳しくないということと管理局の仕事が忙しいということがあるそうだ。ただ闇の書の守護騎士も古代ベルカ式を使うらしいのであいている時間に色々と教えてくれるように頼んだ。これもあまり良い顔はされなかったが了承してもらえた。

 

 

 いろんな人、といってもそんなに伝はなかったが、に尋ねた結果レジアスさんの勧めで陸士訓練校に入ることにした。魔法の魔の字も知らないので三年ほどかけてじっくり鍛えることになる。将来は管理局に入ることになるらしいが闇の書のことから考えてもそれは問題ない。むしろ好都合だ。

 

 

 6歳を迎えた私は第4陸士訓練校に入学。訓練の日々、生傷をつくってはオーリスに心配される日々が続く。砲撃などの威力の高い魔法には向いていないことを自覚しティアーズとともに相談した結果幻術魔法を用いた奇襲、または数で押す戦法を取ることにした。より一層激しい訓練が必要になりそうだ。

 

 

 陸士訓練校の訓練の合間にもゼストさんのところへ通い古代ベルカ式のことを学ぶ。カートリッジシステムなど知れば知るほど恐ろしさが増していく。守護騎士達がどのような魔法を使うかはよくわからないが正面から戦うのはやめたほうがよいという結論に達する。

 

 

 先日行なわれた空戦Aランク取得試験に落ちた。ここまで順調だった為にかなり落ち込む。ゲイズ家ではなく自宅の両親の寝室に引きこもりぐだぐだと落ち込む。すると突然ティアーズがあの日の映像を流し始め、《こんなところで立ち止まっている場合ですか》と活を入れられた。すぐさまゲイズ家に戻り半年後の為に訓練を始める。ちなみに心配をかけた罰としてオーリスの1時間ほどの説教の後にレジアスさんに拳骨一発をもらった。次の試験も落ちてしまったが三回目になんとか合格、空戦Aランクを取得した。

 

 

 あの時以来、苦しいときにあの日の映像を見て自分を奮い立たせるのが癖になってしまった。良くない兆候だろうか。レジアスさん達にはこのことは言っていない。

 

 

 陸士訓練校に入って三年が過ぎ、気がつけばもう卒業直前だった。しかしこの時期に頭の痛い問題が持ち上がった。一応首席で卒業することが有力視されていた私にはあらゆるところからスカウトが来た。私としては闇の書関連で本局に行こうと思っていたのだが、つい先日行なわれた私の9歳の誕生会にてその旨をレジアスさんに報告したところたいそう機嫌を損ねてしまった。後でゼストさんから聞いたところによると私が行こうとした本局とレジアスさんが所属する地上はとても仲が悪いらしい。ゼストさんは私のしたいようにすれば良いと言ってくれたが、それを知った私はレジアスさんへの恩と自分の想いの間で悩むことになる。

 

 

 卒業がすぐそこまで迫っているにもかかわらず結論を出せないでいる私のところにある人物がやってきた。誰であろう管理局歴戦の勇士ギル・グレアム提督である。突然の有名人の訪問に訓練校はとんでもない大騒ぎになり私も緊張でがちがちだった。私はグレアム提督直々に本局へのスカウトをされ、彼もまた闇の書の被害者であることを聞かされた。また本局に入局した際には闇の書関連で便宜を図ってくれるという約束もしていただいた。私の心は決まった。

 

 

 レジアスさんの帰宅を待ち、本局へ進むことに決めたということを報告するとともに育ててくれた恩を裏切るしかできない自分勝手を詫びた。途中から涙が溢れてきてしまい最後までしっかり伝えられたかわからない。しばらく無言が続いたがレジアスさんは深いため息をつき本局入りを認めてくれた。どうやらあの誕生会の後ゼストさんとオーリスに怒られたらしい。レジアスさんがオーリスに怒られているところを想像して少し笑ってしまった。その後レジアスさんと管理局入りするにあたって「管理局員として誇りをもって自らの信じた道を進む」という約束をする。その後オーリスに「お父さんは私が支えるからお姉ちゃんは自分の信じる道を進んで」と励まされる。本当に良く似た親子だと苦笑する。ありがとうレジアスさん、ゼストさん、オーリス。

 

 

 

 晴れて陸士訓練校を卒業し私は本局武装隊へと配属された。

 

 お父さん、お母さん天国から見守っていてください。私は頑張ります。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。