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第11話 幕開け
ミッドチルダ南部の上空に私はいた。
傍らには眠り姫がバインドで拘束されている。
そして私は待っている。
舞台に役者が揃うのを。
幕を上げる時が来るのを。
「「「はやて!」」」
「はやてちゃん!」
「「主はやて!」」
『はやてさん!』
やっと来たわね。
いらっしゃい、待ってたわ。
これで劇が始められる。
「ティアーズ、準備はいい?」
《後は開始の合図のみです》
ならば始めよう。
愚かな即興劇を。
憎悪の茶番劇を。
無意味な復讐劇を。
「カウントダウン」
《3・2・1》
開始の合図は小さな花火。
でも気をつけて、油断していたらそこで降板。
「【ティアドロップ】」
《マルチショット》
役者達は私の周りに浮かぶスフィアを見て慌てて防御の体制をとり始める。
驚くことかしら?
私が本気だと思っていなかった?
攻撃してこないと思っていた?
……残念。
「シュートっ!」
声とともに50を超える涙の名を冠するスフィアが放たれ、間をおかず着弾。
「幕は上がったわ。さあ始めましょう!」
実はここからが本番であり、ここからを書きたかったからこの小説を書きました。