魔法少女リリカルなのは〜復讐者の選ぶ道〜   作:びーびー

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第0話〜絶望の記憶

それは特別な日だった。

 

特別に幸せで・・・

 

特別に不幸せな・・・

 

 

 私ことエリ・キタザワの5歳の誕生日、いつもは忙しいお父さんもその日はおやすみを取ってくれて家族三人でミッドチルダ東部にある遊園地に行った。前日の夜から眠れないほど楽しみにしていて、だから少しだけ寝不足だった私は帰り道の途中で力尽きたように眠ってしまい、そしてお母さんの悲鳴で目を覚ました。

 

「頼む・・・カリーヌとエリだけは見逃してくれ・・・! 」

 

 周りを見回すと私達は四人の変な人に囲まれていた。お父さんは必死にその人たちと話しているが、

 

「・・・我が主は少しでも多くの魔力をお望みだ」

「テメーラは運がなかったんだよ」

 

 そう言って知らない人たちがお父さんに剣を向ける。

 

 お父さんは私達を守るように背を向けていて、でもその体は震えていた。

 

 お母さんは私を強く抱きしめていて、でもその体もやっぱり震えていた。

 

「お母さん・・・?」

 

 私の声にお母さんはさらに強く私を抱きしめ、大丈夫と私を落ち着かせるかのように繰り返した。

 

「があぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁあぁぁぁぁぁ!?」

「あなた!?」

 

 突然響いたお父さんの悲鳴に驚きお父さんのほうを見るとその胸から手が生えていて、その手は光る何かをつかんでいた。

 

「蒐集開始」

 

 剣を持った人の声とともにその手から本が浮かび上がり、そしてすぐに手におさまった。何が起きたのかわからずに混乱する私の手は自然とお母さんの服を強く握る。

 

「お願いです!この子だけは・・・「シャマル」っ!」

「えぇ、クラールヴィント」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁああぁあ・・・」

「お母さん!?ねぇお母さん、お母さん!」

 

 再び、今度はお母さんの胸から手が生えてくる。何が起きているかわからない私はただお母さんを呼び続けることしかできなかった。

 

「蒐集、開始」

 

再びその言葉とともに浮かび上がった本はさっきより早く降りてくる。

 

「二人で一ページもいかねえのか。だめだめだな」

「・・・」

「あ・・・う・・・」

 

 何が起きているのかわからない。

 

 何を言っているのかもわからない。

 

「お父さん・・・お母さん・・・」

 

 目に映るのは自分の前で倒れているお父さんとお母さんだけ。自分に向かって歩いてくる剣士さえも意識の外にあり、ただお父さんとお母さんを呼び続ける。

 

「あっ・・・」

 

軽い衝撃とともに自分の胸からも腕が生え、私の意識は闇に呑まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 次に私が目を覚ますと私はベッドに寝かされていてベッド脇のイスにはお父さんの友達が憔悴しきった顔で座っていた。

 

「・・・レジアスおじさん?」

 

 私の声にレジアスおじさんは驚いて、泣きそうになりながら私を抱きしめてくれ、私はよくわからないままされるがままになっていた。そうこうしている間にたくさんお医者さんが来て、私にはそれからたくさんの検査が待っていて疲れ果ててしまいお父さんとお母さんのことを聞く前に倒れるように眠りについてしまった。

 

 次の日、私が目を覚ますとそこにはレジアスおじさんだけでなくゼストおじさんもいた。話をきくと、といっても当時の私にはよくわかっていなかったが、闇の書の守護騎士による蒐集活動によってミッドチルダ以外の次元世界では被害が出ており、それを心配したレジアスさんになかば冗談でお父さんのデバイスから二人への直接通信ができる機能を取り付けてはどうかと提案がされ採用されたらしい。

そして事件当日そこから発せられた緊急信号を受け取ったゼストさんは急いで助けに来てくれたとのこと。私は蒐集の被害にあいそのまま放置されていたら危なかったらしいがゼストさんに保護され、また若いこともあって安静にしていれば無事退院できるらしい。そう、私は・・・だ。

 

「おじさん・・・お父さんとお母さんは?」

 

 その私の言葉に二人は目を伏せる。手はきつく握り締められ唇はきつく結ばれている。

 

「お父さんとお母さんは?ねぇ、おじさん、お父さんとお母さんは?」

 

 部屋の外を歩き回る人の音だけが響く。

 

「エリ、気を強く持って聞いて欲しい。・・・タカシとカリーヌさんは「レジアス!」」

「止めるなゼスト、この子には知る権利がある!そして俺達が、友だった俺達が知らせなければならんのだ!」

「しかし・・・」

「この子はタカシとカリーヌさんの娘だ。隠したままにはしておけん」

「・・・わかった」

 

 そして私は聞かされた。

 

 お父さんはもう私の頭を撫でてくれないことを。

 

 お母さんはもう私に笑いかけてくれないことを。

 

 

 

 

 お父さんとお母さんが死んだことを。

 

 

 

 

 お父さんとお母さんが・・・殺されたことを。

 

 

 

 

・・・私が一人ぼっちになってしまったことを。

 

 

「あぁぁっぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁあっぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああぁぁああああぁぁぁぁああああああああああああああぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっぁぁぁぁぁぁぁあぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっぁあぁぁぁぁぁっぁ」

 

 

 


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