Side Nanoha
「ティアナが出て行った!!??」
はやてちゃんのその言葉に、機動六課のブリーフィングルームに衝撃が走った。
……というか、驚いた護クンの声でブリーフィングルームに衝撃波が走ったみたいなの。エリオなんか椅子から至近距離だった分椅子から転げ落ちちゃってるの。
「そ、それって如何いう」
「んー、まぁ、言うた通りの意味で、ティアナは機動六課、っちゅうか管理局を離れたっちゅうこっちゃ」
「だから、なんで!?」
「ちょっと、護くん落ち着いて!」
勇んで椅子から立ち上がる護くんにそう声を掛けて宥める。護くんって基本的に直情的だから、すぐに興奮するんだよね。
「(それ、なのはが言えた事じゃない)」
「何か言ったフェイトちゃん」
「ううんなにも」
何かフェイトちゃんが言ったような気がして声を掛けたのだけど、フェイトちゃんはニコリと否定して。うん?
取り合えず護くんが落ち着いたのを確認して、はやてちゃんに再び話を進めてもらうように視線を送る。
「さて、ティアナが六課を離れた事に関してやけど……ぶっちゃけると、管理局に対する不審から、っちゅうのが一つ」
「管理局に対する不審?」
「次元世界を守るっちゅうお題目を掲げてたくせに、実際やっとったんはスカリエッティみたいな研究者を抱えて裏であくどい事やっとったりしたやろ」
まぁ、それは確かに。管理局はその、次元世界全体の平和と安定を司るとした組織だ。その組織が実は裏で色々悪い事をしてました、だなんていわれれば、ソレは当然信用ががた落ちするとは思う。
「……けど、それだけじゃないよね? それだけの事情なら、よりにもよって今管理局を離れる事なんて認められる筈ないよ」
「フェイトちゃん……」
「如何いうことですか?」
「今、管理局は先のJS事件で揺らいでるんだ。常でさえ人材不足な今、ティアナほどの戦力をそう簡単に手放せないだろう?」
そうなのだ。ティアナの戦力は、リミッター付きとはいえシグナムさんにも匹敵するほどの物だ。ただでさえ最高評議会の一件で地下勢力が勢いづきそうな今の状況で、ティアナ見たいに優秀な子が簡単に管理局を辞められるとは到底思えないのだけれども。
「んー、まぁ、辞表を残して姿晦ました、っちゅうんが正しいから、正直辞表を受け入れざるを得ないってだけなんやけどな」
「――それって、もしかしてティアナが誘拐されたかも知れなってこと!?」
ふと思い浮かんだ考えに、背筋に冷たいものが走った。もしかしたら、辞表を擬装してティアナを誘拐することで痕跡を消そうとしているのではないか、なんて。
「いや、それはない。……と、いうか、そうならん為に姿を消したっちゅうか」
「――如何いうことだ?」
ソレまで黙って静かに話を聞いていた朱雀君が、首を傾げて問い掛ける。
「んー……ほら、ティアナ、例の地球の連中に伝手があるっちゅうのはしっとるやろ?」
「らしいな」
「ソレをうち等が上に報告してもうたんやけど……どうも上が、ティアナの身の回りをさぐっとったみたいでな」
そういってはやてちゃんがディスプレイに何かのデータを投影する。
其処に映し出されていたのは、見覚えの無い、けれども機動六課の内部だと分る一室の映像。其処に映し出されているのは、目元を隠した管理局の制服に身を包んだ男性の姿。
男性はその部屋の中を物色すると、部屋の中に何等かの術式を設置して、そのままその映像の枠の中から姿を消していった。
「コレはな、ティアナの部屋の中にティアナ本人が仕掛けた隠しカメラの映像や」
「……如何見てもコレ、ティアナ本人じゃないよな?」
「せや。ティアナは多分、管理局の特別査察官か情報部の人間やないか、っちゅーとったよ」
特別査察官っていうと、アコース査察官みたいな、独自で行動する調査員の事、かな?
でも、だとしたら何でティアナのことを?
「そこでさっきの話に戻るんや……ほら、うちらがティアナが地球にコネがあるっちゅう事を話したやろ?」
「え、うん」
「どうもソレが上――特にリンディーさんの派閥に関係ない所に洩れて、その事に上が過敏に反応してしもたみたいで……」
この間もブリーフィングルームでモロにその事を話してしもたから、余計にそういう黒い部類の連中が出入りするようになってしもた……なんて、はやてちゃんは笑いながら言い放った。若干引き攣った口元で。
「如何言う、こと?」
「如何いうことも糞も、上はティアナを地球のスパイやと疑っとるみたいやね」
「そんなっ!?」
思わず声を上げてしまう。ティアは、確かにちょっとおっかないし、私の事名前で呼んでくれない堅い子だし、っていうかなんであの戦闘能力で陸戦Bなんだろうかというか、空戦もこなして空戦AAA+と拮抗する陸戦Bっておかしいだろうとか、寧ろなんであれが一般局員なんだろうとか、あの子を出世させるだけで管理局の情勢は大分楽に成るんじゃないだろうかとか、色々思うところはあるが、基本的にはいい子なのだ。基本的には。
「(なのはもOHANASIするけど、基本的にはいい子だよね)」
「何か言ったフェイトちゃん」
「ううん何も」
首を振るフェイトちゃんから視線を外し、はやてちゃんに視線を戻す。
「まぁ、ただでさえJS事件で体力をごっそり抉られた管理局や。其処にギーオス変異体の一件も重なって、その解決策になりえる地球の情報に関しては、例えグレーでも根掘り葉掘りしとった、っちゅう所やろうな」
「そんな……」
「まぁ、管理局ならやるだろうなぁ」
ぼそり、と。不意に誰かがそんな事場を漏らした。思わず伏せていた顔を上げると、其処には何処か物鬱気な表情の朱雀君がいて。
「それ、如何いうこと?」
「管理局が本気で真っ白な組織だとでも? もしそうなら、スバル嬢の母君は未だ現役だっただろうし、ウチの会社から献金って名前で大量の裏金が管理局に流れる、なんて事も無かったろうに」
「う、裏金!?」
「……大体の企業はやってるんだよ。というか、それをしないと営業権は中々認められないし、そうやってでも金を集めなきゃ、現行の管理局体制の維持なんて到底不可能だろう?」
そう言って朱雀君は、少しだけ話をしてくれた。
拡大しすぎた管理領域、収入源が被保護地域からの献金に頼る物である事。上昇するテロ・犯罪に対する装備の質の向上と、それに比例して増大する装備の費用。
更に少ない資金を如何にかする為に海にばかり力を入れ、結果空白化する地上の守りと、それゆえに更に悪化する地上の治安。
まさにドツボとしか言い様の無い管理局の状況は、武力ではなく政治的に解決しなければどうしようもないのだ、と。
「……話が逸れたな。で、ティアナはそんな管理局の不穏な気配を察知して、一足先に管理局から手を引いた、と?」
「正にそんな感じやな」
疲れたように答えるはやてちゃん。うん、まぁ、私だって管理局が絶対的な正義だとは思ってはいない。それでも、少なくとも現場には、秩序と安定の理念を持って行動する人間は居たのだ。そう信じている。
「まぁ、ティアナのことはええねん。ブッチャケ一足先に安全な場所に逃げたっちゅうだけやしな……いや、悪意はあらへんよ?」
逃げた、と言う言い方に思わず視線に力が篭ってしまったのだろう。はやてちゃんはすぐにそういって手を振った。
「ティアナは無事。これは問題無いねん。問題はやね、うちらが地球にコンタクトを取るための伝手が無くなってしもた、って話やねん」
「あ、そういえば、地球に行くんだっけ?」
「せや。一応ティアナが六課を辞める前にコンタクトを取ってもろたんやけど、残念ながら連絡がつかへんかったらしい」
だからはやてちゃんは頭を抱えているんだ。
現在の地球は、何等かの現象によって、次元空間からの転移が不可能な状況になっている。
機動六課に下された命令は、そんな状況下で、如何にかして地球に潜入し、反応のあったロストロギアを回収する、と言うもの。
けれどもロストロギアの回収と言うのは名目で、本当の目的は地球の現状を確認してくる事なのだそうだ。
本来地球への道は現在断絶してしまっている筈なのだが、けれども先のすずかちゃん――地球から来た船の存在から、現在でも何等かの手段で往来が可能なのではないか、という話が出てきたらしい。
故に、その往来手段を探るのも、今回の任務の一つになってしまっているのだ。
「そんなわけで、うちらの任務は、先ず地球への潜入手段の模索から始める事になる。具体的に言うとくと、地球周辺の次元世界にアースラ、前衛拠点を置いて、何とか地球への道を探るっちゅう、まぁ中々アナログな方法をするわけやな」
そういって言葉を区切るはやてちゃん。
アナログな方法――前の会議で幾つか提案されていた、地球周辺の次元世界からの転移魔法による移動。
実際に次元世界から地球を観測して見なければ分らないが、現在の地球には次元世界からの航行を阻害する何かがあるらしい。アースラにそれらを計測する機材を詰んで、それを計測する事ができれば、もしかすれば地球に行く事ができるかもしれない、らしい。
はやてちゃんは「コスト削減」の為にティアナの伝手が使えればいい、なんていってたけど、あれは機材の借り出して続きがめんどくさかっただけだと思う。コスト削減なんて言葉から一番縁遠い、管理局地上部隊、機動六課です。
「と、まぁ土壇場でちょっと変更があったけど、予定通り管理外世界97番、地球へ向けて移動を開始しよと思う。各員、準備はええな?」
「「「「「「「「「「「「「「「「「はいっ!!」」」」」」」」」」」」」」」」」
「それじゃぁ、機動六課、地球へ向かって出発するでー!」
そんなはやてちゃんの号令と共に、レストアされたアースラ――アースラR2が次元世界へと転移する。
目指すは故郷、地球。
「――おかあさん」
「なのは……(鬼の霍乱だね)」
「何か言ったフェイトちゃん」
「ううん何も(キリッ)」
久しぶりに帰ることになる地球。海鳴の母の姿を想い、かの地へと思いを馳せるのだった。
Side Other
「――ハッ」
「うん? 如何かしたのかい桃子さん?」
「あ、ううん、なんだか、久しぶりになのはが帰ってくるような気がしたから……」
「なのはが? でも、なのはは管理局に居るんだろう? 次元障壁が展開されている今、地球連邦政府か、地球連邦軍関係者以外の往来は……」
「それはそうなんだけれど……でも、ふと思ったのよ」
「そうか。桃子さんがそういうなら、案外本当にひょっこり帰ってくるのかもしれないね」
「そうかしら? なら、美味しいシュークリームを焼いて待ってないとね!」
「はっはっは! ならボクは取って置きのコーヒー豆を用意しないとね!」
朗らかに笑い、桃子の腰に腕を回す士郎と、そんな士郎とにこやかに笑いあう桃子。
未だに外見年齢が20代半ば、下手をすれば20代前半と言われる海鳴の伝説のおしどり夫婦、彼らの経営する喫茶翠屋は、何時も通り平常運転であった。
Side Mera
「そういえば、なのは達が帰ってくるんだっけ?」
不意にアリサが言い放った言葉に、思わずコーヒーに伸ばしていた手の動きが一瞬止まる。
「ええ。というか、メラさんたちがミッドで大暴れしてくれましたので。管理局が地球の技術に興味を持って、その尖兵として高町空尉含む機動六課を送り込もうとしている、と言うのが正しいんですが……」
「地球の技術、ねぇ? 管理局って、なんだかSF小説の銀河連邦みたいなイメージがあるんだけど……」
「あはは、いいとこ頑張って土地の支配を維持しようとしてるペルシャの王様じゃないかな?」
ニコニコ笑いながらそんな事を言い放つすずか。何気に毒が強いが――成程、次元航行艦隊は目と耳か。
「そこんとこ、実際管理局で働いてたティアナは如何思うの?」
「管理局ですか? まぁ、治安維持組織――地上部隊に関してはうまく機能してたんじゃないでしょうか。問題は遺失物探索と、司法機関、政治機能、でしょうか」
「政治機能と司法機関? 何、管理局って三権分立してないの?」
驚いたようにそういうアリサ。日本人としては三権分立は割と当たり前な物なのだろうが、まぁ別に無いところには無い物だと思う。
「管理局の前身たる組織は100年ちょっと前のロストロギアによる大災害の折に組織された代物だ。政府どころか国すら崩壊した最中の緊急統治機構として結成されたソレの統治機構をそのまま受け継いでいたんだ。まぁ、政治的に拙い部分があるのは仕方ないんじゃないか?」
「はー……次元航行艦にやら魔法なんてぶっ飛んだ技術を持ってるんだから、あたしはてっきり宇宙ステーションの周りをランチが飛び交うSFな光景を想像してたんだけど」
「まさか。管理局は宇宙進出よりも次元世界進出を勧めてます。SF的な光景というと、寧ろ地球の事でしょう?」
「あー……ええ、確かに最近の地球はそんな感じね」
「地球衛星軌道上の全てのL点、同時に月のL点に建設されている地球圏絶対防衛網と、月に建設されている月面都市。嘗てのベルカの時代、これは架空どころか夢物語でも想像は出来なかったでしょう」
チラリと見れば、膝の上で渡されたPDA、そこに移される視覚化情報を見て驚いた表情のイクスが呆然とそんな事を呟いていた。可愛い。
イクスの頭を撫でつつ、一声かけてPDAをささっと操作。とある情報を引き出し、それをイクスに見せてやる。
「コレなんかも中々凄いぞ。地球圏絶対防網旗艦、エリュシオン。同型にニライカナイ、アヴァロン、ティルナノーグ、って続く超超大型艦」
そういって映し出す、白亜の巨艦。暗い宇宙の中で薄らと白く輝くその巨体は、巨大な宇宙基地に比べれば豆粒程しかない他の宇宙船に比べ頭一つ以上に飛びぬけてその威容を誇っていた。
「す、すご……」
「(呆然)」
「あら? そういえばティアナも知らなかったわね。アレが地球圏絶対防衛網の『象徴』、エリュシオン級よ」
此方の見ている映像データを引っ張ったのだろう。映し出される映像に、ティアナが呆然とそれを眺めていた。
因みにこのエリュシオン級、ブッチャケると『トップ』の『ヱルトリウム級』である。人工素粒子で構成されており、人工的に反物質を創ってぶつけデモしない限り壊れない、という点まで見事にパチっている。
次元航行に虚数空間での航行まで可能。内部はアーコロジー型で、戦闘さえなければ延々自給自足が可能。更には短距離長距離のワープすらこなすというトンデモ艦である。寧ろ変形しない新マクロス級でもいい。
……さすがに変形は無理だった。パーツの磨耗とか、メンテナンスの事なんかを考えると。マクロスもやりたかったんだけど。
「こっ、これは……ゆりかごよりも大きい?」
「ゆりかご? あんな儀礼艦と比較されても困るわね!」
「儀礼艦?」
「データを見たけど、アレって王族の乗る船なんでしょ? 王族の船を前線に出すワケはないし、戦艦に凝った内装する意味も分らないし。あれが儀礼艦じゃないって言うなら、ベルカってのは相当頭がおかしかったのね」
アリサの毒。どうもアリサは戦艦の建造にかなり食い込んでいるらしく、すっかり大鑑巨砲主義の魅力に取り付かれてしまっているらしい。近頃ではSR用のドーバーガンを開発しているとか。誰得だ、本当に。
「成程、確かにあの艦はそういう意味では儀礼艦ですね」
「そうでしょ。そもそも『次元戦闘可能』で『月の魔力があれば無敵』って意味分らないわよ。その点、このエリュシオン級はストレートに無敵よ!」
星の数ほどの超高出力レーザーは一発一発が小型のギーオスくらいを一撃で消し飛ばす威力。光子ミサイルは重力崩壊を引き起こすブラックホール兵器。最強兵器相転移砲は洒落にならないのでめったに使う機会は無いだろう。
相転移エンジンやら縮退炉やら、超高出力エンジンを多数搭載し、更にアルハザードの技術を完全に取り込み、更に発展させて建造されたこの艦。
正直、俺がウルC4フル装備で挑んでも勝てるとは思えない、そんな存在だ。……いや、スニーキングミッションで挑め、とか言われれば、手が無いでもないのだが。少なくとも正面からは無理だ。負けないけど、勝てない。
「アリサさん、話が逸れてますよ」
と、そんな事を話していると、不意に横――キャロからツッコミが入った。
「おっと。そういえば、何を話してたんだったかしら?」
「なのはちゃんたちが帰ってくる、って事だよ」
「そうそう。――で、如何するの?」
「如何する、とは?」
此方に向けて問い掛けてきたアリサに、思わず首を傾げてしまう。魔王――高町なのはたちがこの地球に――帰れるかどうかは別として――帰ってくることが、俺に如何関係するのだろうか?
「例えば、帰ってこさせるのか、こさせないのか。接触するなら、これを公式な物としてしまうのか、それとも非公式な物にしておくのか。公式なら管理局と如何いう付き合いをしていくのか、とか」
「知らんよ」
「知らんって、あんたねぇ」
呆れたような様子のアリサ。けれども、実際、そういった政治的な話は俺の知ったことではないのだ。
「だって、そうだろう? 俺はあくまで情報を届けただけで、確かにB&Tに色々設計書を送り付けてはいるけれども、あれは半分以上趣味だ。軍役もしてるけど、これは生活上の必要に駆られて」
「私がやしなうのに」
「ヒモはイヤ」
「なら私が二人とも養うわよ?」
「それもヒモでしょうが。イヤだって。じゃなくて、そういう事は、俺じゃなくて地球連邦政府の偉い人たちが政治的対応をするだろ」
実際、俺の知った話ではないのだ。色々設計したり教導したり戦ったりはしているが、俺は政治家ではない。情報は送るが、如何使うかまでは知ったことではないのだ。
万が一今の政治がイヤになったのであれば、身内だけつれて何処かの辺境の世界にでも渡ればいい、なんて考えている。
「第一、この後は艦隊と一緒に迎撃地点へ移動して、レギオンの群の迎撃なんだろう? 俺達が対応する暇なんてないだろう」
「ま、それもそうなんだけど――って、何か私まで同じグループにしてない?」
「お前、放っておくと何処に行くか分らん。から、お前のところの連中に伝えて、ウチで預かる事にした」
実際、コイツは軍人ではないのに前線に出てくる。しかも軍人ではないから軍からの命令を聞く必要は無いし、その上名誉中将の階級まで持っている。
いろいろな意味で押さえの利かないこの娘。ならばいっそ俺の周囲に置いてしまえば、少なくとも仲間のいう事くらいは聞いてくれる。
「ちょ、勝手な……ま、まぁ、いいけど」
「やった! 一緒だよアリサちゃん!(アリサちゃんつんでれ~)」
「(あれが元祖ツンデレですか。参考になります)」
「(イクスちゃんはクーデレだよね)」
「(……キャロさんは天然と聞きます)」
「(!!??)」
「(ツンデレキャラはアリサさんで、私はツンデレじゃない私はツンデレじゃない私はツンデレじゃない)」
「にししし、んじゃ、次元世界の話は全部政府に投げて、アタシらはレギオンに専念ってことで」
と、何故か最後にアギトの言葉によって纏められてしまった。
「……と、そろそろ時間か。ティアナ、そろそろ正気に戻れ」
「私はツンデレじゃない私はツンデレじゃ――ハッ!?」
何かブツブツ呟いていたティアナに軽くチョップを入れて正気に引き返す。ティアナはツンデレだろうに。
「え、ええと、如何しましたか?」
「今から俺の機体の完熟訓練に行くんだが、ティアナにも新型を支給するから、それの訓練をやっておいて欲しいと思ってな」
「新型、ですか? でも、私には……」
「お前が武御雷を使ってた時からどれだけ経ったと思ってるんだ。第一、TSFよりもSRのが生存率は高い」
「はぁ……って、SRを受領するんですか!?」
驚いたようなティアナ。だが然し、ティアナの腕前はミッドに行って少し鈍ったとはいえ、それでも俺や恭也が直々に教導を行なった所為で現役でトップクラス。突き抜けた特徴こそ無いが、ソロプレイには最適な万能機。それがティアナなのだ。
そんなティアナを、TSFで遊ばせる? とてもではないがティアナほどの戦力を遊ばせていられる余裕は無い。
「と言うわけで、これを支給するから、乗れるようになっておくこと」
「は、はい。……って、これは!?」
ティアナに渡した資料。それは、デモンベイン・ストレイドに関する資料だ。
中破大破して修復には時間が掛かるだろうと思われていたソレ。だが然し、驚いた事に修理はあっという間に完了してしまったのだ。
どうもC4内でオートマトンが自動修復していた事に加え、必要物資や入れ替えパーツなんかのデータを既に本陣に送信していたらしく、パーツを付け替えるだけであっという間に修復を完了させてしまったのだ。
「な、なら、メラさんが使えば……」
「いや、実は俺、この機体との相性は微妙に悪くてな」
何せ、この機体は『デモンベイン』なのだ。デモンベインとは、『人間の為の機体』なのだから。
俺と相性が悪いのは仕方のないことなのだ。というか、相性の悪さが若干程度しかない事のほうが驚きではあるのだが。
「で、俺はターンユニコーンに乗り換えたわけだ。だが、だからって眠らせておくにはコイツの性能は勿体無さ過ぎる」
「そこで、私、と」
「そういうわけだ。何せ今搭乗機が決まっていない凄腕のパイロットと言えば、ティアナくらいしかいなくてな」
「す、凄腕って」
そういって若干照れるティアナ。そんなティアナもまたかわいらしいのだ。
因みにウチのティアナは「私なんて凡人です」的な事は絶対にいえない。何せティアナは、凡人では絶対に耐えられないような俺と恭也の試練を見事に乗り切っているのだから。コレで自分を凡人と卑下するようなら、恭也と俺の二人に追われるデッドレースを三週だろう。
「と、言うわけで、ティアナにはストレイドの習熟訓練をやってもらうわけだが、……ついでに俺のアグレッサーもやってもらう」
「ちょ!?」
「なに、俺もユニコーンは手をつけ始めたばかりだし、互いに初心者だ。大丈夫だ、問題ない」
「やめて! それフラグですって!!」
キャーキャー言って暴れるティアナを引き摺り、機体の納められている格納庫へと移動を開始した。
ふ、ふふふ。ミッドでの醜態、俺が知らないとでも思っているのだろうか。ついでだから鈍ってる分も鍛えなおしてしまおうではないか。
生憎恭也はドイツでしのぶ嬢とイチャイチャ子育て生活中だろうから呼び出すのは無理だろうが、EFFの訓練生1000人くらいを呼び出せば恭也の代理くらいにはなるだろう。
「無理無理無理無理ッ!! 無理ですって!!!!」
「気合だ。世の中は大抵気合でなんとかなる」
「そりゃどこの熱血世界の話ですかっ!!」
そんな事を言いつつ、ティアナを引き連れ、機体の納められている格納庫目指して真直ぐに移動していくのだった。
■うちの三人娘
実は魔法信仰に一番染まっているのがはやて。なのはが管理局入りしたのは、人を助けたいと言う欲求と、現実的な経済性から。フェイトはなのはに助けられた事でなのはを親友とは認識しているものの、SLBのトラウマとその後の経験から変な方向にスレていい性格になっている。
作者がアンチしているのは、あくまで管理局世界の未成年を戦場に送り出したりすることをよしとする法制度。もしくは極端な思想教育に関して。とはいえ、あくまでも日本人規準の思考では受け入れ難い、と言うだけで、他所は他所。
■アースラR2
アースラをレストアした艦。
アースラは長期間の活動により廃艦が決定していたが、JS事件の折急遽隊舎を失った機動六課の前線基地としての再びの就役が決定した。
本作では更にギーオス事件、及び地球調査任務のためにアースラの利用が継続される事となった。
廃艦寸前のアースラを鳳凰院が個人資産で買い取りレストア。次元航行艦としては最新式の物になっている。外見が同じだけで中身はほぼ別物という有様。
当然アルカンシェルなどは搭載していないが、機関をフル稼働させてチャージしたエネルギーを全開放することで次元跳躍砲を発射する事が可能。連射は不可能。
■エリュシオン級
地球圏絶対防衛網旗艦。全長72キロの超巨大航行艦。
次元航行、虚数航行、ショートもロングもこなすワープ搭載と凄まじく多機能な万能航行母艦。
ブッチャケるとモデルは『トップをねらえ』から『ヱルトリウム』。
但しエーテル宇宙ではない点や、ワープに伴う時間変動などの点が異なる。
タキオンまで操るトンデモ戦艦な上に、人工生成した単一素粒子により組み立てられており、物理的に破壊するには人工的に反物質を精製―相殺させるしかない。
仮想敵としてアルカンシェルを搭載したXV級次元航行『艦隊』をも想定しており、例えアルカンシェルが連発で直撃しようと耐えられるスタミナを持つ。しかも戦闘出力次元断層フィールドを展開可能で、これはいわば究極の魔体のあのバリアの完全版。攻撃面ではグラビティーブラストは勿論相転移砲まで発射可能なのだが、正直居住惑星近隣での使用は危険すぎて微妙に使えなかったり。
同型艦に『二番艦ニライカナイ』『三番艦アヴァロン』『四番艦ティルナノーグ』『五番艦シャンバラ』『六番艦キャメロット』『七番艦タカマガハラ』等が存在する。
■俺と恭也のデッドレース
基本はメラが魔術、恭也が御神流を使って何処までも追いかけてくる地獄の訓練。
環境は市街地戦、森林戦、洞窟戦、砂漠戦、海戦と様々だが、此処を二人の怪物が本気で襲い掛かってくるというもの。しかも場合によっては追加戦力(才能だけなら恭也を上回る美由希とかその母である美沙斗率いる旧香港警防隊、久遠率いる妖怪部隊とかHGS他超能力者部隊、神裂一灯流初めとした退魔師部隊、キャロの元から送り出された魔術“超”紳士部隊、更に吸血姫や勇者王などの超人まで投入される)がくわえられる地獄の超特訓。良くて病院送り、悪くて短期再起不能。
今までにこれを受けてクリアできたのはティアナくらいで、メラ本人や恭也すらクリアできなかった超難題。その為、下手に自分を“凡人”などと卑下しようものなら、クリアできなかった他EFF隊員にDisられるのは必至。
つまり、“総合戦闘能力(戦術的・戦略的視野含む)”で言えば、ティアナはEFFの最高戦力の一人に入る。とはいえ現在の戦場は其処まで汎用性のある兵士と言うのが必要とされる物でもない(非対人の怪獣戦)上、メラ達のスタンスが「政治は政治家に、戦争は軍人に」である為、割とティアナは自由を許されている。
■デモンベイン・ストレイド
「デモンベインを信じろ、あれは人間の為の鬼械神だ」とは某先代死霊秘法の主の言葉。その為人外であるメラには今一つ相性が悪くなかったり。魔術の寄り代という意味では完璧なのだけれども。
故にこの最弱無敵はティアナに引き継がれることに。ティアナとの相性は、もうお前魔導探偵目指せよというレベル。
■ティアナ・ランスター
実は本作で最もチートな性能を持つのではないかと思われる原作魔改造キャラ。
その昔メラがアルハザードの遺産・遺跡を回収する最中に拾い、徹底的な調教もとい訓練により色々悟ってしまった少女。若年からマナの塊であり、周囲のマナを活性化させるメラの傍で魔術を習い、妖怪からも「あれ人間じゃねぇ」と言われる超人御神流に扱かれ、更に剣士、軍人、特殊部隊、暗殺者、魔術師、魔法使い、妖怪、退魔師、超能力者、超人その他諸々様々な相手との戦闘経験、更に政治的・思想的な教育も受けており、部分部分では他に劣るが、全体的なバランスで言えば最も優れた能力を持つ。
趣味は麻雀で、得意技能はツバメ返しと轟盲牌。