リリカルに立ったカメの話   作:朽葉周

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02 ある日森の中、超遺伝子獣に出会った。

このウルという艦、なんでも元々はただの半自立型随行艦とかいう代物を魔改造したものらしい。

このウル級と言う艦は、完全自動制御により、中心となる大きな母艦の周囲を飛ぶ衛星艦のような存在として建造されたのだとか。

そしてその建造目的は、隔離研究施設――要するにこの船は、研究・開発施設機能を持っているのだ。

 

このウルは、俺とセットでの運用を目的としていた為、元のウルとは違いマニュアル・オートマ操縦を行う事が出来るようにカスタマイズされているが。それでも元は無人艦。俺が何もせずとも、艦は常に一定以上の状態を維持する。

 

さすがアルハザードの技術パナい。

 

とりあえず俺の寝てた部屋から艦橋へ移動。といってもこの艦橋、元々無人艦を魔改造して取り付けられたものと言うだけ在って、実にシンプルだ。

何せコンソールと椅子が一つ。要するに俺一人でこの艦を運航しろと。

とか思って、コンソールの中をチェックしている際にそれを見つけた。

 

――艦管理用AI?

思わずコレだとニヤリ。早速AIを起動させて、この船の大まかな管理を任せる事に。

残念ながら、AIの人格は学習型の代物で、現時点ではまだヒトらしさは影も形も無い。これは後々に期待だな。

と、そんな事を考えていたら、AIが早速報告をしてきた。

なんでも、この世界から程々の所にある世界で、ギーオスが暴れているのだとか。

早速艦を出航させ、それと同時に俺自身は自らのスキルチェックを行う為、艦に設置された仮想演習装置の中に入る。

 

――うん、成程。

プラズマ火球は使える。誘導プラズマシューターも使える。バニシングフィストなんかもOK。

そうそう、俺の特性として、エネルギーの変換というモノがあるらしい。つまり、吸取った(ドレイン)エネルギーを、攻勢エネルギーとして出力する事が出来るのだ。またチートである。

 

再生能力も高いし、空も飛べる。デバイスはないけど、寧ろデバイスを必要としない程の化物染みた脳みそがある。しかも最も驚くべきは、この身体精霊(?)と会話できるのだ。

なんだよ精霊って。某子供魔法先生の世界かツンデレピンクボムの使い魔かよ、と思わず自分に突っ込みを入れつつ、精霊についてのデータを漁る。

 

――あったあった。世の中に満ちる魔力の根、魔素。これを体内に取り入れ、各々のシステムにより生成することで魔力となる。

 

然しこの魔素は、自我のない意思を持っており、これとの意思疎通を行う事でより円滑な魔力運用が可能となる、とか。

要するに、世界のシステム運行におけるアプリケーションソフトか何かだろうか?

元々マナを縁り集めて生み出された俺だ。成程魔素の意思――精霊との意思疎通が容易いのも理解できる。まぁ、それが事実なら、の話だが。

 

ある程度自らの戦力調査が完了した所で、艦が実相空間に出たらしい。AIに頼んで艦内から転移出撃。ただしギーオスから少し離れた地点に出現させてもらった。

いやだってほら、いきなり顔面に15メートル級の怪獣とか出てきたら恐いじゃん。

で、転移して出たポイントから、AIの誘導に従ってギーオスの居るであろう予想ポイントに向かって飛行する。

 

最初若干びびったものの、慣れてみればコレが面白い。人間じゃなく、元々空を飛ぶことも考慮して作られた肉体であるおかげなのだろうが、物凄く飛びやすいのだ。

その上この身体、ありとあらゆるエネルギーを吸収できるドレイン能力を持ち、更にそのエネルギーをプラズマ化して攻撃に転用する事も出来る。

飛行時にはその応用で、プラズマを身にまとって飛行することで、戦闘行動時に各行動の威力を一段階引き上げる事が出来るのだ。

正にチート。いいのかこのボディー。

 

なんて事を考えていたら、何か視線の先で大爆発が起こった。ビックリしながら、足元の森の中に身を潜め、何事かと彼方に向けて視線を飛ばす。

 

其処には、中々大きめの魔力と、それを狙うように暴れる巨大な『トリ』の姿。

おぉ、早速ギーオス発見。アレの耐久力がどの程度の物かは知らないが、とりあえずさっさとバラして引き上げよう。

 

しかも何か、何処かの誰かと戦闘に入っているらしい。感じる魔力質からして、ギーオスを退治することは不可能ではない、と言う程度の魔力。一対一で向かい合うのは自殺行為だろう。

まぁ、俺には余り関係ないのだが、どうせならアレが殺される前にギーオスを仕留めてしまおうと思う。

 

一応万が一映像記録に顔を記録されては困るので、黒いフェイスガードをバリアジャケットで構築。これで顔も分らないだろう。

そうして準備万全の状態で、ギーオスと魔導師からある程度はなれた、然し両方を完全に射程に納めた位置に陣取る。

 

単発の威力が一撃必殺のプラズマ火球。ある程度の距離から魔力を溜めて――。

ごうっ、という音と共に放たれる山吹色に燃える弾は、そのままギーオスに直撃――しない?!

ギーオスはプラズマ火球が直撃するその直前、ピンク色の魔力砲撃に撃たれ、その所為で俺の予想地点から少しずれた場所に居た。その所為で俺の一撃は、ギーオスの片腕をもぐに留まってしまった。

一撃で仕留め切れなかったのは惜しいが、然しコレはチャンスだ。

片腕で身動きの取れないギーオスに、全身から魔力―プラズマを迸らせて特攻する。

後から記録映像で見れば、それはまさしく火の玉。白熱するそれは、ギーオスの脳天から股間までを貫通し、その直後ギーオスは轟音と共に爆散した。

 

 

ふぅ、なんとかなった。幸いあのギーオスは幼生体から間もない個体だった。

あれが全長100メートルにも及ぶ老成体だったりしたら、それこそ序盤からルナティックなんて展開になったかもしれない。

何せ俺はまだこの力を手に入れてから、まともな訓練など一度も経験していないのだ。

「――っ、此方時空管理局本局所属、武装局員の高町二等空尉です! あなたには原住生物殺害の現行犯です。大人しく此方に投降してください!!」

 

――って、あれ? 管理局、ってか、ピンクの高町って、え? いや、原住生物? (パニック中)

 


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