フェストドロップせえへんねん……一枚は交換したけど、それ以上はきついねん……。
取り敢えず、モニュメントは全回収したいねん……。
あ、それと色々思うところがあったので、主人公に関する描写を少し修正しています。まだキャラが立ってない状態だからへーきへーき。
――選定の岩に深々と突き刺さる黄金を前に、息を呑む。
見る者を等しく魅了させる魔力を秘めたそれは、王を選定する為の、王たる象徴である。
誰しもがその剣を手に取るも、決して抜くことは叶わなかった。
高名な騎士でも、名だたる諸侯でも、例外はない。等しく理想を胸に、現実を突きつけられていった。
マーリンは、私をこの場に誘い込んだ。その意味は、まだ分からない。
ただ、彼はこう忠告してきた。
「これを抜けば、君は王として祝福されるだろう。しかしそれは同時に、君の運命を否応なく決定づけることになる。同時に、人であることもね。後悔しても、呪いを吐こうとも、奇跡に縋っても。決して、変わることはない。――それでも、君は王になるかい?」
試すようで確信を持って問われた言葉に、私は静かに行動を以て示す。
柄を手に、一息。ゆっくりと、感触を名残惜しむように、引き抜いた。
喜びは、ない。どこまでも予定調和染みていて、実感が沸かない。
それでも、私は王となった。
望んだ未来だ。それが例え、示し合わされた結果だとしても。この選択に間違いはない、筈だ。
そうだ。こんなにも、未来は明るい。
蛮族に怯えて暮らす無辜の民、それを護るために命を懸ける騎士といった、かけがえのない国民を導く。私には、その力がある筈なのだ。
選ばれたと言うのは、つまりそういうこと。
ならば、臆している暇なんてない。
人間であることを止めてでも、私はブリテンを救いたいと思っていた。それぐらい、愛しているのだ。
――それなのに、いざ王になってしまえば湧きあがる不安と焦燥感。
ブリテンという国そのものを背負ったという事実が、選定の剣を通して重く圧し掛かる。
それでも、決して弱さを見せることは出来ない。
騎士としての実力も不足している上に、政治に関しても秀でている訳でもない。
如何に選定の剣を抜いたとして、本質が変わる訳ではない。
足りない、あまりにも、足りない。
だからせめて、明るく振舞おうと思った。王が明るく振舞えば、民の不安も少しは安らぐだろうと思ったから。
今の私には、その程度の事しか出来ない。
足りない、あまりにも――
王とは何なのか、かくあるべきなのか、それさえも不明瞭。
だからこそ、自分に出来ることを全力でやるしかない。
手探りでも、徒労であろうとも。
――ならば、求めろ。己が望む王を。理想の憧憬を。
王となって数年。研鑽を重ねながらも悶々と不安を抱えたまま日々を過ごしていた、そんな時だった。
一人静かに王としての知識を学んでいる時、眼前に不思議な光が奔流する。
濃密なマナの渦が、私を飲み込まんと勢いを増す。
このような未知を前に、私は何故か逃げようとは思わなかった。
月並みな言葉になるが――この光の先に、私の求める"答え"があるような気がして、躊躇われたのだ。
王になったばかりで何も成していない自分が、まるで逃げるようにいなくなってしまったら、この国はどうなるのだろうか。
好奇心と理性がせめぎ合っている時、マーリンの声が聞こえた。
『――ふむ、その光の先に、因果律が収束する地点があるね。原因は不明だけど、どうやら君がその先に進むことは確定しているらしい。ということは、これはきっと、君が王になる為に必要な試練なんだろう。なら、行ってくるといい。テコ入れなら私がやっておくから、気にすることはないよ』
誘惑を後押しする一言を前に、私は唾を飲み込む。
恐る恐る、手を光に向けて伸ばす。
指先に微かに触れた瞬間――抵抗する暇もないほどの力で呑みこまれた。
驚愕に動きが僅かに止まった、その刹那。頭の中に、私の知らない知識が一瞬で送り込まれてくる。
聖杯、サーヴァント、マスター……脳を蹂躙される痛みに耐えながら、その意味を咀嚼していく。
そして理解できたのは、英霊の座と呼ばれる場所に何故か登録され、とあるマスターに召喚されようとしていること。
理解は出来た。しかし、解せない。
私はこの知識で言う所の英霊足る格を持ち合わせているとは思えない。
何故、私なのか。間違いではないのか。
そんな疑問に答える者はいない。
しかし、これがマーリンの言う通り、試練だと言うのならば。それを終えることが、私の――いや、ブリテンの繁栄に繋がるとするならば。
引き寄せられる感覚に身を委ね、精神を落ち着かせる。
選定の剣を抜くときと同じぐらいに緊張しているのが分かる。
何事も初めては緊張するものだとサー・ケイも言っていたが、なるほど確かにその通りだ。
未熟ながらも王である私を隷属させる力を持つ人間が、マスターとなるとするならば。その者から色々と学ぶことが出来るかもしれない。
しかし、その逆も然り。悪逆の限りを尽くす外道がマスターとなる可能性だってある。
もしその時は――覚悟を決めなければならないだろう。
気を引き締め、その瞬間を待った。
――光を抜けた先私は、鈍色の軌跡に祝福された。
この世の者とは思えない深く、悍ましい悲鳴が鼓膜に響く。
しかし、本来ならここで持つ不快感も、目の前の光景に目を奪われていた私には届かない。
足元まであるであろう長身の黒いコートに、革素材であしらえた赤いパーカーを下に着込んだ青年。彼こそ、
そして、その手に握る、片刃の長剣――確か、刀だったか。
純白の柄と、鈍色に妖しく光る極限まで洗練された刃。派手な装飾もないシンプルな構造なのに、選定の剣と同じ位に美しいと思った。
しかし、それに魅入られている暇はなかった。
私のマスターであろう青年の纏う剣呑な雰囲気によって、未知の連続を前に茹だっていた思考が冷却されていく。
襲い掛かる化生の者を斬り、カタナを鞘に戻した彼は、ゆっくりと私の方に振り返る。
目と目が合った瞬間――目を背けられないほどの圧倒的な自己が、私を呑みこまんと襲い掛かってきた。
彼はただ、こちらを振り返り立っているだけだ。
それなのに、動けない。身体が石になったかのように、指先の僅かさえ動かせない。
私は、王だ。選定の剣が選んだ、なるべくしてなった王だ。
そんな私が、彼の覇気を前に言葉を紡ぐことさえ出来ないでいる。
――悔しい。心の底からそう思うと同時に、私は歓喜さえしていた。
間違いなく、彼はマスターとして最高峰の逸材だ。これが初めての召喚である自分でも、はっきりと公言出来る。
そして、彼が軽く目を伏せた途端に場の空気が弛緩していく。
突然の出来事に、変に勢いよく息を吸って咽そうになったが、ぐっと堪えて整える。
彼は、間違いなく私を試していた。吟味し、見極めようとしていた。私が、彼のパートナー足り得るかどうかを。
……答えはない、が――及第点程度は貰えたと勝手に解釈することにした。
ならば、無様をこれ以上晒すことは許されない。
評価が地の底であろうと、並であろうと、彼を失望させてしまえば同じこと。
これからの私は、常に上り調子でなければ許されないだろうから。
「初めまして。私はセイバーのサーヴァント、ですが――まだ半人前なので、セイバー・リリィとお呼びください」
こういう場での礼儀が分からないので、せめてもの挨拶をする。
「……暮宮那岐だ」
少し遅れる形で、マスターも名前を預けてくれた。
……いや、私の場合はただの記号であって、本名を預けてはいない時点で対等とは程遠い。
そも、サーヴァントとは使い魔――つまり、彼にとっての道具のようなものでしかない。ならば、呼び方にこだわる理由もない筈だ。
事実、彼はそのことに対して何も返してこない。不満がある訳ではない多少の証拠にはなる。
「マスター、外に複数の敵を察知しました。状況は分かりませんが、私が殲滅してきます。マスターは待機を」
ともあれ、この場は未だ敵陣の中。悠長に事を構えている暇はない。
この剣がどれほど通用するかを見極めると同時に、彼の期待に応えることのできる唯一の役目を逃す道理はない。
「待て」
しかし、そんな逸る思いを一喝するように、静止の言葉が室内から飛び出さんとした私の背中に刺さる。
「この一帯、どこにも安全な場所なんてない。俺を護る為の選択なのは分かるが、そう思うなら共に行動していた方がいい」
……確かに、その通りだ。
敵の絶対数も不明、待機するよう告げた室内は、倒壊寸前の廃屋。
マスターの安全を優先するのであれば、あまりにも外れた作戦だ。
私は愚かだ。先んじてマスターに自分の価値を証明したいとばかり逸った結果、危うく空回りするところだった。
失望、されただろうか。
「――大丈夫。邪魔にはならないさ」
しかし、そんな私の心境を悟ったかのように、マスターは先程よりも落ち着いた調子で答えてくれた。
私の浅ましい考えを汲んだ上で、私を立てようとしてくれている。
悔しさに打ち震える身体は、次第に理性を取り戻していく。
――期待、されている。故に、もう無様は晒せない。
「ありがとうございます、マスター。では、共に往きましょう。その背中、微力ながら守らせて戴きます」
マスターは頷き、どちらともなく屋外へと飛び出した。
そして待ち構えていた化生の群れを、互いの獲物を以て薙ぎ払う。
黄金と鈍色という対照的な輝きが、地獄を抜け出す活路を開く。
夥しい数の骸骨の群れが、古ぼけた剣やら槍を構えてこちらに襲い掛かる。
しかし、遅い。欠伸が出る程に。
数ばかり多くて統率が取れておらず、我先にと迫るせいで動きに精彩を欠いている。
ただでさえそんな状態なのに、敵の動きそのものも、訓練された兵士に比べて遥かに劣る。
魔力で動いていることもあってか、人間とは違い筋力の制約のない馬鹿力で武器を振るうが、獲物の長さで同族を巻き込んでさえいる始末。
未熟者の私でさえ、雑魚と言い張れる程度の、数だけの存在。
これでは、彼に実力を評価してもらうにはあまりにも不相応だ。
気が緩んだのだろう。私の意識は、次第にマスターの方に向けられる。
彼もまた、つまらなそうに眉間に皺を寄せて敵を一掃している。
サーヴァントである私には敵ではないとしても、人間にとっては十分脅威となり得る数と力だ。
しかし、それさえも彼にとっては関係のない話だと言わんばかりに、美麗な一振りを以て殲滅していく。
形状からして、敵の攻撃を受けることも出来なければ、使い方を誤れば簡単に折れてしまうであろう極限まで鋭利になるように特化された剣。それがカタナ。
こと斬ると言うだけならば、これだけ優れたものはそうないだろう。
しかしその多様性の薄い斬ることに特化した形状は、必然的に使う者を選ぶ。
片刃しかない為、返しによる斬撃が出来ない上に、突けば骨に当たった時点で砕けてしまうだろう。
だが、剣閃に一切のブレがなければ、それは万象一切を切り裂く至高の一撃と化す。
首を、胴を、腕を、足を。状況に適した部位を、一撃の下に寸断していく。
無意識に唾を呑みこむ。
私の知っている円卓の実力者ほどではないにしても、その強さは召喚の際に贈られた知識による、現代の一般人の基準を遥かに凌駕している。
単純な剣術のぶつかり合いなら、下手をすればマスターに分配が上がるのではないだろうか。
その可能性に至った途端、口元が吊り上がる。
嬉しいのだ。こんなにも素晴らしいマスターと共に戦えて。その背中を護ることが出来て。
次第に私自身も昂り、剣に込める力がより一層増していく。
マスターもまた、カタナを振るう速度を上げていく。
それから数分も経たない内に、次第に数を増やしていき、最後には百を優に超えていた化生は、全て物言わぬ残骸と成り果てた。
「お疲れ様です、マスター」
「ああ」
互いに軽く息を吐き、顔を見合わせる。
マスターの全容をきちんと見るのは、これが初めてになる。
童顔の部類に入る顔立ちながらも、青年としての面影を残しており、その眼光の鋭さは修羅場を知る者のそれ。
この時代の人間にしては珍しい、淀みのない白髪は、煙に乗った粉塵によって多少煤けているも、その色は失われていない。
自然と、その姿を見入っていた。
カリスマ、と言えばいいのだろうか。少なくとも、未熟者の私に比べて、余程他者を導くに相応しい能力がある。
彼がマスターで本当に良かったと、改めて認識する。
だって、マスターのような手本から、王となるべき素養を学ぶことが出来るのだから。
「ここにもう用はない、別の拠点を探そう。取り敢えず、あちらにでも向かおうか」
マスターの指差す方から、強い魔力反応を感知する。
魔力の正体が何にせよ、有力な情報には繋がりそうだ。
私はマスターの言葉に頷き、移動を開始した。
Q:(日記じゃ)ないじゃん。
A:せやな。
Q:主人公、強くね?
A:少なくとも、本人は高スペックなので無意識に凄いことやっている可能性はある。自覚無しだから、勘違い。イイネ?
Q:リリィと同程度の剣術って、どれぐらい?
A:紅茶から護りの要素を抜いたぐらいかな。流石にしょぼすぎるか?(ぇ
Q:リリィ可愛い
A:ずっとこのままのリリィでいてくれよな~頼むよ~