うちのカルデアで一番絆高いのがステラさんな時点で、どれだけ本腰入れてプレイしていないかが分かる。
魔神柱イベントも、多分十体ぐらいしか手に掛けてないし。だって、ガチャしても鯖手に入らないから関係ないし……。
アナムネシス見習えって、あれ1.5回に一回は十連で最高レア出るぞ。
なお、ストーリーの展開を知ったことでこの小説の前提が一部崩壊してしまった模様。割とどうしよう。
継ぎ接ぎで取り繕ってもどっかでまた破綻しそうで……。
え、どうせまたエタるんだから関係ないって?……せやな!!
「
赤雷を纏いし鮮血の刃から放出される一撃が、波濤の如く飛竜の群れを呑み込んでいく。
これで、何度目の真名開放になるだろうか。
今この場に居ないマスター、那岐の魔力残存量などお構いなしに幾度となく放たれる一撃をもってしても、飛竜は一向に数の減退を見せない。
聖杯という究極の魔力タンクを贅沢に利用した人海戦術。質はともかく、量に関しては一級品。
対して此方の数は、十にも満たない英霊とマスター。そして、背後にあるリヨンの街の人々。
以前から数の暴力に頼る傾向は見られたが、今回はあまりにも露骨過ぎる。
それはやはり、リヨンに陣を取る此方の思惑を逆手に取ろうとしたが故の、当然の思考の帰結か。
「チッ……鬱陶しい。蛮族の侵攻を思い出す。数ばっかり多くて、その癖ひと当てのやり甲斐はねぇと、全く一緒だ」
「呆れるほどに有効な戦術だね。財産の使い方というものを理解している」
「間違っているわ、アマデウス。悪戯にお金をばら撒くのは、資産の独占以上に経済の流れに影響を及ぼす悪行よ。その日気分で衝動買いするのはいいけど、無駄な浪費は駄目なんだから。あんな風にね」
マリーの視線の先では、またもモードレッドの宝具によって、まるでハエ叩きが如くあっさりと地に落ちていくワイバーンの群れが量産されていた。
突如として現れたワイバーンの群れは、まっすぐリヨンへと進軍。
一切の警戒もなく、ただただ愚直に進んでいく姿は、紛れもなく死兵。或いは、捨て駒。
破れかぶれに見えるそれも、数が多ければ此方としては無視することも出来ない。
だからと言って、個別撃破するにも数が多すぎる。
一体一体殲滅していく内に、徐々に街へと押されていく光景が容易に想像できる。
故に、有限の魔力を使い潰していくしかない。
数の暴力を前に、ジリ貧になっていく――なんてことはなかった。
「まだまだ行けるぜヒャッフーー!!」
生き生きとした表情で、モードレッドは二発、三発と宝具を発動していく。
その姿に疲労の様子も見受けられなければ、魔力が不足すると言った様子もない。
モードレッドのマスターは、何かと規格外な印象を持つ那岐であり、彼ならばアレほどの宝具を使用されたとしても問題ないと言うのも、妙に納得してしまう。
しかし、過信は禁物なのは確かであり、敵方の戦力を把握できない以上、下手に撃ち続けるのは悪手。
迎撃体勢前に来たロマニの通信では、那岐達は全速力で此方へと戻ってきているとのことで、合流さえすれば後はどうにでもなる筈だ。
「今のところは問題ないけど、ここでモードレッドが宝具を撃てなくなってしまえば元の木阿弥だ。僕の宝具ではあそこまで殲滅力はない」
「円卓の騎士の一角と比較すること自体が間違いじゃないかしら?」
「当たり前だ。僕はあんな野蛮な行為は一度としてないし、これからもするつもりはない」
「聞こえてんぞ大量鼓膜破壊野郎!!」
ギャーギャーと騒ぎながらも、やることはしっかりとやる。
三人の役目は単純。モードレッドが殲滅、アマデウスがそのフォロー、マリーは形勢不利となった場合の移動手段。
つまり、マリーはともかくアマデウスは本来ならば働いて然るべき状況なのだが――予想外、あるいは予想通りか、魔力が潤沢なモードレッドの大奮闘によって役目を奪われ、しめたものだと楽をしていたりする。
モードレッドとしてもそれはそれでいいのだが、したり顔で後方で遊んでいるアマデウスの存在そのものがなんだかムカつくので、マリーが傍にいなければ彼に向かってブッパしていたことだろう。
「さて、事態は全く好転する様子はないようだけど、どうする?」
「どうするも何も、こうしているしかないのではなくて?」
「それはそうだろう。けどね、そもそもその事実こそが相手の思惑通りだとしたら?」
「……やっぱり、そう思う?」
「物量に頼る作戦、大いに結構じゃないか。だけど、如何に量産が出来ようとも、今減っている数と生産されている量が釣り合いが取れているとは考えにくい。それに、非効率的だ」
「余裕があるからこそ、という可能性は?」
「竜の魔女がおつむの弱そうな事は全面的に同意するが、それでも参法の一人はいるんじゃないかな。それこそ、いるだろう?彼女に縁があり、狂的なまでに聖女ジャンヌ・ダルクを信奉していた、そこそこ名のある英雄が」
「……まさか。でも、この時代はジャンヌが処刑されて幾許も経っていない筈」
「いやいや、別におかしくはないだろう?何せ竜の魔女と聖女ジャンヌの両方が存在しているんだ。それこそ今を生きている彼と、ジャンヌの死後に外道へと堕ちた彼の両方が存在していたとして、何ら矛盾はない」
マリーとアマデウスの中で想起されたのは、ジル・ド・レェという、後に青髭と言う名で歴史に名を刻んだ男。
ジャンヌ・ダルクと共にオルレアンを奪回したことで英雄として讃えられた彼だが、ジャンヌの理不尽な死を切っ掛けに魔導に堕ち、非道な行いを繰り返してきた。
竜の魔女と呼ばれるジャンヌの傍には、性質の関係で青髭である方が召喚されていても不思議ではない。
否、居て当然と考えた方が寧ろ自然なぐらいであろう。
「ジャンヌのお陰でフランスは確かに救われた。しかし、神の声を聞いただけの一介の田舎娘一人でその偉業を為すことは出来なかった。それを為し得たのは、ひとえに軍事に明るく軍略に敏い存在がいたからこそ。今回の進行とて、一見力押しに見えるがもし参法としてあの男がいたとするならば――」
アマデウスの確信に近い推測は、突然のロマニからの通信によって遮られた。
『――突然すまない。良い報せと悪い報せだ』
ロマ二の僅かな焦りと緊張が声色を通して伝わってくる。
深刻、という程ではないにしても穏やかな内容でもない。そんな雰囲気。
「……あまり穏やかな様子ではないようね。悪い知らせから教えて頂戴」
『うん。悪い報せは、リヨンが襲われた。敵のサーヴァント、それもニ体だ』
「はぁ!?おい、ひょろ長!!母上は無事なんだろうな!?てか、なんですぐ報告しなかった!?」
ロマニの言葉に一番に反応したのは、モードレッドだった。
吠えるようなそれに一瞬すくみ上がるも、すぐに持ち直してロマニは話を続けていく。
『こっちだって、那岐君の方や理子ちゃんの方を並行してモニターしているから、作業が追いつかないんだ!』
「それがお前らの仕事だろうが!」
「駄目よ、モードレッド。無理を言っては。それよりも、これからどうするかを考えましょう?」
それでも食って掛かるモードレッドをマリーが諌める。
頭ごなしに叱るのではない、なだめるようなそれが一瞬リリィと被って見える。
それを不覚と恥じている内に、いつの間にか怒りは収まっていた。
「……ちっ、わかったよ」
「叱られて不貞腐れるなんて、まさに子供だね」
「そんなんじゃねぇ!!」
『喧嘩は止めてくれ、頼むから!そこまで状況は深刻ではないけど、危機であることには変わらないんだから』
状況が状況にも関わらず平常運転なのは、余裕の表れでも何でも無く、単に二人の反りが合わないだけ。
戦術の分担としては最適解だったかもしれないが、性格を考慮に入れられなかったのは致命的とも言える。
「そう言えば、良い報告もあったわよね。それは?」
『ああ、それがさっき言った状況が深刻ではないって言葉に繋がるんだけど……こっちにも、味方のサーヴァントが出来た。名前はゲオルギウス。聖ジョージとしても有名な、竜殺しの逸話を持った守護騎士だ!いやぁ、モニター越しに見ても凄い戦闘能力だって分かるよ。派手さはないけど、その堅実な立ち回りは堅牢かつ強固で、まさに騎士って感じで惚れ惚れするよ!』
「そんなことはどうでもいい!母上は無事なんだろうな!?」
『セイバー・リリィなら無事だよ。当然、マシュ達にマスターの理子ちゃんも然りだ。ただ、護りに特化した編成であるが故に、打って出ることが出来ないのが問題だ。君達に戻ってきて貰いたいという思いはあるけど、ワイバーンを捨て置く訳にはいかない。今ここで足止めしないと、状況が悪化するだけだ』
「っ、ざけんな畜生ォオオオオ――!!」
モードレッドは憂さを晴らすように宝具を再びワイバーンへと放つ。
彼女とて、曲がりなりにも騎士の名を冠している身。個々に課せられた役目が大局を左右することぐらいは承知している。
故に、ロマニの意見は至極真っ当であり、感情論を抜きにすれば反論する余地はない。
叛逆の騎士で名を馳せている彼女にとっては、そんなもん知ったこっちゃねぇとバッサリ切り捨てる話かと言えば、実はそうでもない。
モードレッドとて、自身の身勝手で母に万が一の事が起こるかもしれないと思えば、流石に躊躇うというもの。
これもある意味では、良い流れなのかもしれない。少なくとも、足並みが揃わないということはなくなるであろうから。
『那岐君達にも早く戻るよう言っては見たけど、位置的にまだ時間が掛かりそうだから、もう少し辛抱してもらうしか――って、嘘だろ!?那岐君の位置情報が断続的になるぐらいに加速して、リヨンへと一直線に向かっている!』
驚愕を孕んだロマニの言葉に続くように、遠くから咆哮が響く。
ワイバーンのものではない、もっと雄々しい、まるで竜のような――
「ねぇ、あれ見て」
「――随分なご登場の方法だ。演出家で食べていけるじゃないか?彼」
マリーの指差す先には、まるで東洋の龍を思わせるような巨大な生物が空を飛んでいた。
そして、龍の背の上には、機械剣の柄を背中に掛けたまま握り、世界を見下ろしている那岐の姿があった。
隙間なく鳴り響く金属音が街中一帯に響き渡る。
その中心にいるのは、漆黒の鎧を纏いし狂戦士ランスロットと、狂戦士となった彼の本能の赴くままに放つ斬撃を受け止めるマシュ。
バーサーカーのクラスに更に狂化を重ね、圧倒的なまでの力を得た漆黒の騎士と、戦闘経験の浅いマシュが防戦一方とは言え拮抗していられる理由は、2つある。
ひとつは、ランスロットが完全な狂気に支配されているが故に、複雑な行動が出来ないという点。
そしてもうひとつ。ランスロットが求めている人物が、マシュの背後に待機しているからだ。
「――Arrrrrrrthurrrrrrrrr!!」
ランスロットはそればかりを叫び、我武者羅にマシュの防御を突破しようと躍起になっている。
アーサーは、ランスロットにとって――否、円卓の騎士にとって何よりも特別な意味を持つ存在だ。
精鋭揃いと謳われた円卓の騎士の中で、最強とさえ評された騎士。それこそランスロットその人であり、目の前の狂戦士の正体である。
裏切りの騎士と呼ばれるに至った彼の経緯の中に、当時アーサー王の后とされていたギネヴィアとの不貞がある。
そして、モードレッドも含めた二人の行動が切っ掛けで、円卓の崩壊が始まっていくことになる。
同情の余地が無い訳ではないが、それでも彼らが犯した過ちは決して精算されることはない。
だからと言って、開き直れる程にランスロットのアーサーへの忠が無いどころか、寧ろその逆を行く程に正義感のある彼が、後悔を抱えずに生を終える訳もなく、こうして英霊として召喚された彼は、ただただアーサーを求めるだけの装置と成り果てる。
それは、贖罪の為。
赦されたいが故に刃を向け、断罪されたいという奥底の感情が、狂気を昇らせる。
整合性も何もない、自分勝手極まりない暴走は、皮肉にも狂戦士としてのポテンシャルを十全に働かせる要因となり、マシュを苦しめていた。
「くっ……!!」
防戦一方。押すことも引くこともままならない。
そこに在るだけの壁として立ちはだかることしか出来ない歯痒さ。
未熟を呪うマシュであるが、その感情は余分なものでしかない。
デミサーヴァントとなって日の浅い彼女と、円卓の騎士最強と謳われたランスロットでは、あまりにも経験が違いすぎる。
それこそ、狂戦士となって色褪せない技量を持つ彼を、条件込みかつ護り一辺倒とは言え持ちこたえられている時点で、マシュの戦士としての才能が伺える。
そんな中、マシュ以外は行動を起こさない。否、起こせない。
理子は言わずもがな。ジャンヌは能力が不完全な状態な上、リヨンの人々に万が一があることを恐れて。
加えてマシュに意識が向いている状態に横槍を下手に入れてしまえば、折角の膠着状態が崩れる可能もある。
護る相手が多いか少ないかで、結局メンバーが欠けている現状彼女達に出来ることは僅かしか無い。
そして、セイバー・リリィ。
全盛期では無いが、紛れもないアーサー・ペンドラゴンその人である彼女は、無残な姿に成り果てた円卓の騎士を見て――ただ混乱していた。
無理もない。何故なら、今の彼女は
彼女が召喚される時代では、ランスロットはまだ円卓の騎士の住人ではなかった。
ランスロットは未だ湖の乙女ヴィヴィアンの下で修行をしており、召喚による知識で円卓の騎士を知らされなかった彼女にとっては紛れもなく他人。
モードレッドも、敢えてその情報は告げていない。
リリィとアーサー王は別人であると切り捨てて考えているが故に、主観の混じった説明をするのはリリィにとって悪影響となりえると考えた結果である。
その選択は正しかったとも言えるし、間違っていたとも言える。
だが、誰がこのような状況を想定できる?
教えるにしても、せめてもう少しリリィが心身ともに成長する時間があればまだ分からなかった。
しかし、此度の邂逅はあまりにも早すぎた。
遠目で一度存在を認識しているとは言え、その時はここまでの殺気を放ってはいなかった。
リリィ達には知るよしもないが、あの時のランスロットは誰も彼もが狂化した影響でアーサーに見えており、殺意に明確な指向性は存在しなかった。
だが、彼は認識してしまった。
同じのようで、限りなく別。されど決して偽物では放てない、本物の輝きを。
そうなってしまえば、後は篝火に群がる虫の如く一直線に光を目指す。恐ろしいまでの暴力を以て。
ただの殺意ではないことは分かる。だけど、それが何なのかは分からない。
堕ちた騎士王の時は、未来の可能性という事を考慮に入れればまだ考察する余地はあった。
しかし、今回は赤の他人から謂れのない殺意を抱かれている。
敵だからとか、そういった安直なものではない。もっと、絡み合った糸のように複雑怪奇な感情の発露。
理不尽である筈なのに、何故か弾劾された気持ちになる。
恐れる必要なんてないのに、彼の狂戦士を前にすると指が動かない。
ただただ悲しくて――涙が出そうになるけれど、それだけは駄目だと最後の一線を必死で堪えるぐらいしか出来ない。
自分で自分が分からない。何がしたいのか、何をすればいいのか――そんな、戦場には不要な思考に支配されてしまっていた。
「リリィさん!!」
「逃げてっ!!」
――そんな、愚かとしか言いようのない、油断。
マシュが遂にその護りを崩し、ランスロットは一直線にリリィへと肉薄する。
リリィとてある程度は実戦を経験しているが、英霊召喚の条件もイレギュラーな彼女と、全盛期に等しい能力で召喚されたランスロットでは、あまりにも力の差は歴然。
刹那にも満たない逡巡とて、英霊同士の戦いにおいては致命的なまでの隙となる。
如何に優れた直感を有していようとも、それを損なわせるのは自身の思考ともなれば、最早縋るものなどありはしない。
「あ、――――」
漆黒の刃が眼前へと迫る。
剣で受ける?――それごと両断される未来しか見えない。
回避する?――全盛期ならばともかく、未熟な身では動けたところで致命傷は免れない。
思考が加速し、ゆっくりと刀身が迫る様子だけがはっきりと映る。
それでも、身体は思考と同じように加速はしてくれず、ただただ死が迫る時間が引き伸ばされていくだけ。
「(マス、ター……マスターッ!!)」
ここにはいない彼女のマスター、那岐を思う。
サーヴァントさえも凌駕する強さを持つ、イレギュラーなマスター。
未熟な自分は言わずもがな、クー・フーリンやモードレッドのような全盛期に呼ばれたサーヴァント相手にも劣らぬ強さを持つ彼に、彼女は救いを求めた。奇跡を、求めた。
幾度となく助けられてきた身ではあるが、今度こそは助からない。そんな諦観を抱きつつも、それでもと粒のような希望に縋る。
それはただの足掻きか、それとも――信じているからか。
果たして、その答えは出た。
突如、上空から降り注いだ何かは、二人の間に割り込むように着弾し、ランスロットだけを後方へ吹き飛ばした。
不意打ち気味であったとは言え、彼の狂戦士を抵抗も許さず吹き飛ばした事実に、一同は目を見張る。
同時に、確信した。何がランスロットにあれ程の一撃を叩き込んだのか、その正体を。
「――間に合ったか」
土煙が晴れたその先には、那岐が低姿勢で地に機械剣を叩きつける姿があった。
ランスロットの姿を見ると、兜から鎧にかけて斬撃の痕が刻まれており、その一撃によるものか、明らかに那岐の存在を遠くから警戒していた。
改めて思い知らされる那岐の強さに、リリィを始めとした面々は息を呑んだ。
そして、同時に胸に去来する不甲斐なさ。
三人のサーヴァントがいながら、単体のバーサーカー一人抑えるだけしか出来なかったのに対して、不意打ち気味ではあれど、明確なダメージを与えることが出来た那岐。これで何も思わない方があり得ないというものだ。
「マスター……申し訳ありません。私が不甲斐ないばかりに」
「気に病むな。あの男の相手は君には酷だろう」
那岐の言葉は、リリィがアーサーであると知っているが故の慰め。
しかし、その言葉は的外れであり、だからと言って全面的に否定出来るものでもない。
それに――どんな理由があろうとも、私情を挟んで人理修復など夢のまた夢。
例え相手が何者であれ、阻むのであれば打ち破る。さもなくば、何もかもが無為に帰すのだから。
「湖の騎士、ランスロットか……。生憎と騎士道精神なんて高尚な精神は持ち合わせていないからな、存分に卑怯な手を使わせてもらう」
那岐の宣言と共に、空から炎が降り注ぐ。
炎はランスロット諸共地形を焼くべくして、周囲一帯を満遍なく満たしていく。
「あれは、ドラゴン!?いえ、違う……。まるで、蛇のような――」
その存在にいち早く気が付いたのは、ジャンヌだった。
炎が降り注いだ地点から遥か上空を見上げれば、そこには蛇のように長い胴体に短い手足に鋭い爪を備えた、白い何かが居た。
それは東洋における龍を彷彿とさせる容姿で、炎を吐き出しているのもこの龍であった。
膨大な熱量はランスロットの退路を塞ぎ、突破しようものならば相応の被害は免れない。
狂戦士と言えども――否、獣じみた感性が故に、危険に対してはより敏感になっている彼が取った行動は――その場からの消失だった。
「――令呪、か」
ランスロットの意思に関わらず、何かしらの方法で監視していたのであろう誰かによって、強制的に退去させられたようだ。
ここまで追い詰めておきながら、制御の利かないバーサーカーを敢えて使い潰さずに手元に残したのは、何か考えがあってのものか。
真意は不明ではあるが、那岐の存在が決して侮られていないことだけは一連の流れではっきりと分かった。
それは同時に、那岐達以外は取るに足らない存在であったと侮られていた証明でもあった。
「那岐さんっ!」
脅威が消え、静寂が訪れる。
それを見計らうように理子が那岐の下へと走り出した瞬間――何かが飛来する音が徐々に空から落ちてくることに気付く。
否、それは音だけにあらず。
音は自由落下を伴って、那岐の頭上へと迫り――遂に、その腕の中に収まった。
「
「偶然の結果だ。そんな芸当、俺には無理というものだ」
「嘘偽りのない謙虚事さは美徳ですが、その答えは女としては複雑な気分ですね……」
「済まないな。女心を理解するよりも、先の芸当のこなす方が百倍は楽というぐらいには疎い自覚はある」
頬を赤らめて那岐の胸の中で横抱きになる角の生えた着物少女の突然の出現に、周囲のメンバーはぽかんとした表情で眺めることしか出来なかった。
ただ一人、また助けられてしまったという情けなさと無力感によって、心と表情に影を落としたリリィを除いて。
Q:相変わらず話進まねぇ
A:ぶっちゃけ一回全部なかったことにしてもっとテンポ良い構成で書き直したい(本気)
Q:清姫が暴走していないのが新鮮
A:きよひーの狂化が抑えられている以上に、那岐君がガチガチの正直者なのがデカイね。きよひーが消極的になるだけで、二人の相性はかなり良くなる。
Q:次回はいつ投稿するの?
A:(無言の逃走)