IS~自称策士は自重しない~   作:reizen

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#42 粉砕されるプライドと理性

「おらおらおらおらぁッ!!」

 

 弱点という傷口に塩だけでなく唐辛子を容赦なく塗ってきた本音に鈴音は容赦なく猛攻を加える。本音はそれを最小限の動きで回避していた。

 

「死ね死ね死ね死ね死ね!!」

「どこ狙ってるの~、ドペチャパイおねえちゃん?」

「ウガーッ!!」

 

 女として出してはいけないであろう雄叫びを上げる鈴音。だが次第に攻撃はおおざっぱとなり、近接を得意とする本音にとってはそれは容易に避けやすかった。

 

「かんちゃんには足止めだけを頼まれていたけど、面倒だからやっちゃうね。いくよ、バーサクーブレード」

 

 途端に本音が持っている大木剣から黒い何かが出てきて、本音はそれを容赦なく振りぬく。その光景に土壇場で正気に戻った鈴音は《双天牙月》で防御したが、見事にそれらを吹き飛ばされる。

 

「アンタ……今の、何?」

「二次元の中に秘儀があり、だよ。リンリン」

 

 本音が持つ《バーサクブレード》はとある英雄が持つ武器を元に作成した近接武装だ。後ろの「アードラー」もだが、この武装も悠夜が持つ「アビリティーブレード」《蒼竜》と同種である。もっともこれは内臓されているエネルギーで使用する、謂わば量産を主軸にしたものだ。

 

「アンタ、悠夜と一緒にいすぎて趣味が特殊すぎてない?」

「未だにあのゲームを何度もやり直している人に言われたくないな~」

「―――!?」

 

 鈴音が心当たりである悠夜の方を見た瞬間、本音がそこから距離を話してアサルトライフル《焔備》を展開、発射する。

 

「容赦ないわね、アンタ」

「こっちとしては結構手加減しているんだけどね~」

「……いいじゃない。だったら本気を出させてあげるわ!」

 

 鈴音は《龍砲》を起動させ、連射して本音を襲わせたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本音が鈴音を引き付けているとき、セシリアは簪を何とかして振り切ろうとしていたが、まるでそれを見越しているかのように簪はセシリアを妨害していた。

 

「そこを退きなさい」

「だったら先に私と倒せばいい。まぁ、あなた程度の実力じゃまず無理だけど」

 

 はっきりと言う簪にセシリアは怒りを見せる。

 

「言ってくれますわね」

「うん。機体スペックと操縦者スペック。どっちも私の上。ま、精々私を楽しませてね。サーカスレベルの代表候補生さん?」

「お行きなさい!」

 

 セシリアはビットを飛ばし、マニュアル通りのビット操作を行う。簪はそれを回避するが何度か攻撃を当たってしまった。

 

「どうやら言うほど大したことはないようですわね。ならば、フィナーレです―――」

 

 瞬間、簪の周囲に浮いていたセシリアの青いビットが2基破壊される。あまりに唐突な出来事だったからか、セシリアも、そして観客も唖然としていた。だがセシリアはすぐに正気に戻ったようだ。

 

「……待ってくださいな」

 

 その言葉に簪は首を傾げるが、すぐにセシリアが何を言わんとしているのか理解した。

 

「どうして……どうしてあなたがそれを持っていますの!?」

 

 今、簪の機体の周りには四つの小型武装が浮いていた。それは黒鋼の《サーヴァント》と同じ形をしているが、灰色の機体色に合わせてか、灰色に塗られている。

 

「私の「風鋼(かざがね)」は黒鋼と同じ開発場所だから、別に不思議ではない」

「……そ、そうでしょうが……」

「それに、地区予選レベルでしかないあなたのビットを壊すのなんて、別段難しくはない。むしろ、世界レベルの私にしてみれば児戯同然」

「―――!?」

 

 流石のセシリアもこればかりには怒ったようだ。

 

「わ、わたくしの操作が児戯ですって!?」

「そんな自覚なかったんだ。大体、悠夜さんが8本動かしている状態で自分の機体も動けているのに、4月に悠夜さんを侮辱したあなたはそんなことをできないの?」

「そ、それは……」

「おかしいよね? だって、あなたにしてみれば悠夜さんはあなたよりも下のはず。なのに、あなたにはできないことが悠夜さんはできる。どう考えてもあなたの方が下じゃない」

 

 さっきまでの落ち着いていた簪は既にいない。それは観客席にいる楯無や虚、そして悠夜は気付いていた。

 

「そ、その………」

「それとも、今も下だって思っているの? だとしたら―――それこそ何様?」

 

 簪から放たれ始めた殺気がセシリアを襲い、委縮させる。

 

「それに忘れているようだから教えてあげる。これまでの事件、確かに織斑君も解決しているけど、結局やあなたや凰さんを交えてでしょう? でも、悠夜さんは単独。そして今回の暴走事件もそう。結局解決したのは悠夜さん単騎よ。そんな彼にあなたが―――ううん、観客席にいる人たちが何人勝てるかしら? もちろん、2年生と3年生も含めてね。ま、黒鋼を持ってしまった悠夜さんにたった一人で勝てるのは、織斑先生か生徒会長、そして私ぐらい」

「……よくもそんなこと言えますわね」

「だって私は自信があるもの。あなたたち一般人と違ってね」

 

 するとセシリアは残っているビットを引き寄せて戦闘状態に入る。

 

「良いですわ。だったら―――その自信を折ってあげましょう」

「頑張って」

 

 他人事だと言わんばかりに返す簪の物言いに眉を顰めるセシリア。簪は二つの玉をセシリアに投げる。

 セシリアは自身のレーザーライフル《スターライトMk-Ⅲ》で撃ち抜く。するとその玉が爆発すると共にそこらに煙を発生させた。

 そしてその煙は本音と鈴音の方へと影響し始め、鈴音は素早く上昇する。同じく上昇したセシリアはすぐに鈴音と合流した。

 

「大丈夫ですか、鈴さん。先程は随分と荒ぶられていたようですが」

「そういうのは後よ。戦っている内に目を覚ましたけど、あの二人を倒せば決勝は楽勝だと思った方がいいわ」

「何を言って―――」

 

 セシリアは途中で言葉を切り、ハイパーセンサーに映るロック警告音に意識を向けた。

 

「煙の中でわたくしたちの場所がわかったんですの?」

「おそらくそうじゃない? 信じられないけど―――」

 

 セシリアと鈴音は反射的にそこから離れると、ミサイル群が通過して規定位置に張られているバリアにぶつかり、爆散した。すると同時に本音が煙の中から現れてセシリアに向かって飛ぶ。

 

「させませんわ!」

「させないわよ!」

 

 セシリアはビットで、鈴音は《龍砲》で本音を妨害するが、《バーサクブレード》の大きさを利用して防いだ。しかし、セシリアだけはビットで牽制するが、それを防ぐために煙の中から一筋のビームがセシリアに襲い掛かる。

 

(下から援護———煙がもうほとんど晴れているなんて―――)

 

 その隙がまさしく命取りだった。

 本音はセシリアの懐に入った―――しかし、彼女の手には《バーサクブレード》がない。

 

「得物を持たずに懐に入るなど―――」

 

 だが、本音はそれでいいのだ。本音はすぐさまセシリアの胸部―――双丘(おっぱい)を掴んだ。

 

「な、あなた、何をしていますの!?」

「ゆうやんが言っていた。生物すべてのデリケートな部分は弱点だと」

 

 そして本音は叫ぶのだった。

 

「見て見て! ここに私より巨乳の人がいるよ! ど貧乳おねえちゃん!」

 

 ———ビシィッ!

 

 その空間は凍り付き、鈴音は静かに二本の《双天牙月》を連結させた。

 

「……あの、鈴さん……?」

「セシリア……」

「何でしょう?」

「神様って、不公平よね?」

 

 いつの間にか下げていた顔をゆっくりと上げる鈴音。彼女の瞳には光がなく、その二つの目はセシリアのある一点を見ていた。

 

「………あの、鈴さん? まさかそれでわたくしを攻撃するなんてことはない……ですわよね?」

「…………巨乳なんて……巨乳……なんて……みんな……みんな死ねばいいのよ!!!」

 

 《龍砲》が起動するが、エネルギーが充電され始めた。そしてそれが満タンになり、殺意によって錯乱した鈴音はセシリアと本音めがけてそれを発射―――しようとした。

 

 ———ドォオオオンンッッ!!!

 

 だが発射される前にいくつものビームが鈴音を襲い、その攻撃の影響で甲龍のシールドエネルギーが0となった。

 

「ナイス本音。後は下がって」

「りょーかい」

 

 本音は大人しくセシリアを放し、そのまま下へ降りて大型シールド《メガマウンテン》を展開した。

 

「情けをかけたつもりですの?」

「違う」

 

 そう言って簪は一本の近接ブレードを展開した。

 

「ブルー・ティアーズは中距離射撃型。それなのに近接武装だなんて、やはり舐めていますのね」

「……良いことを教えてあげる」

 

 簪はあえて距離を取り、ミサイルを全弾ぶっ放した。セシリアはそれを《スターライトMk-Ⅲ》と2基のビットで撃ち落とした。

 

「私たちの機体……荒鋼と黒鋼の機体コンセプト。あなたたちの専用機は実験機だけど―――」

 

 腰部の荷電粒子砲《春雷》を起動させてセシリアめがけて撃つが、セシリアはウエイトが大きいからか回避し、ビットを飛ばして牽制した。

 それを簪は近接ブレードで防ぎ、お返しと言わんばかりにビットで応戦する。

 

「私たちはそのままの意味での専用機―――だから―――」

 

 今度は簪自身が前に出た。

 

「落ちなさいな!」

「―――距離を選ばない」

 

 飛んできたレーザーを再び弾き、簪はその近接ブレードの銘を叫んだ。

 

「目覚めて、《銀氷(ぎんひょう)》!」

 

 途端に《銀氷》の刀身に水色の一筋の光が射し、エネルギーの刀身として拡大した。

 

「大きくなったところで、当たらないならば意味がないですわ―――」

「そう」

 

 だが、その移動スピードはセシリアの常識を壊した。

 

 ―――当たる

 

 そう予感したセシリア。だが、彼女の予感は外れ、代わりにハイパーセンサーから警告音が鳴り響く。

 

【警告! 全箇所に同時ロックを確認!】

 

 おそるおそるセシリアは後ろを見ると、そこには全射撃兵装を展開してセシリアを狙う簪の姿があった。

 

「……認めたくありませんが、完敗ですわ。降参します」

「そう」

 

 簪はブルー・ティアーズのスラスターのみを破壊した。

 そのことに驚いたセシリアには何かを言おうとしたが、それよりも早く彼女の腹部に《銀氷》が触れる。

 

「あ……が……」

「これでするのはちょっと嫌だけど、あなたに相応しい技で葬ってあげる」

 

 そう言って簪はセシリアの胸部やや左をひたすら、ひたすら突いていく。どれだけセシリアがうめき声を上げようが、ブザーが鳴ろうが、簪は構わず突いた。

 

『もういい! 止めろ更識! 失格にされたいのか!!』

 

 千冬に言われてようやく攻撃を止めた簪。周りからブーイングが飛び交う中、簪はセシリアをゴミのように捨ててカタパルト射出口に降り立ち、先に上がっていた本音の後からピットに戻っていくが、途中で足を止める。

 

「この悪魔!」

「専用機なんて没収されてしまえ!!」

 

 試合が終了した場合、観客席からシールドバリアと言う壁を越えて歓声が飛んでくるように設定されているが、今回はその設定は裏目に出ている。

 その声が聞こえていると普通なら後悔で胸がいっぱいになるだろうが、簪の場合は別だった。

 

「じゃあ、悠夜さんの得意分野で戦いを挑めない雑魚のあなたたちが私に喧嘩を売って来たらどう? その代わり、あなたたちが就職できなくても私を巻き込まないでね」

 

 途端に観客席が黙り込んでしまい、それを楽しそうに、そして冷ややかな目で確認した簪は、

 

「ISがあってこそ女は男の上を行けるってまだわからないブス共が」

 

 一発で思い人に嫌われるであろう暴言を吐き、ピットへと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 簪たちの試合が終わって言えるのは「酷い」という一言だろう。特に最後の簪のあれはもはやリンチでしかない。そんなことをしたところで彼女に対する周りの評価は下降するし、俺だって不愉快に思えた。

 

 ———おそらく、表向きな感想としてはこれくらいでいいだろう

 

 そう。そんなのはジョーク……いや、偽りで飾った世間体を取り繕うだけの理由である。

 

「あ、あんなの……酷いッスよ……」

「フォルたん先輩、それって同族嫌悪?」

「こんな時に何をふざけているッスか!?」

「まぁ、ゲーム関連に関して無知な人ならばそう思いますよね? でも俺は普通だと思いますよ。だってあれ、ゲームの技をIS用にアレンジしただけですもん」

 

 そう返すとサファイア先輩が立ち上がり、俺の胸倉をつかんで無理やり立たせる。

 

「お前はどれだけ根性が腐っているんだよ!」

 

 ………やれやれ。まったく女ってのは大半が馬鹿なのな。

 俺はため息を吐いて説明してやった。

 

「わかっていないようだから説明してやるが、簪はやろうと思えばブルー・ティアーズなんて全壊させれるんだぜ? おそらくああやって痛めつけたのはおそらく本国に返したらただでは済まないことを知っているからだろ」

「………」

 

 そう言うとサファイア先輩は黙り込んでしまう。掴まれた状態だったので無理やり剥がした俺はそのまま簪たちがいるであろうピットに向かう。俺だって彼女に色々と言いたいことがある。

 

「待って、私たちも行くわ」

 

 どうやら更識も布仏先輩もその気のようで、俺たちは三人で簪のピットに向かった。

 

「失礼します」

 

 ピットに入るとそこには織斑先生と山田先生がいて、二人で簪に迫っていた。

 

「退いてください二人とも。彼女に用事があります」

「後にしろ。今はこっちが優先だ」

「どうせ簪がオルコットにした行動だろ? まさかあの程度で機体に制限をかけるって言うんじゃねえだろうな?」

 

 そう言うと後ろで更識が驚き、先輩がやれやれと呆れていた。

 

「まだ決まっていませんが、その可能性は十分あります」

 

 山田先生がそう言ったので俺は鼻で笑ってやった。

 

「そんなことで大の大人が二人がかりで一人の生徒に迫るか」

「桂木君。今回更識さんがしたことは危険行為です。それを「そんなこと」で済ますなんて―――」

「ISには絶対防御があるのに、何言ってんだ?」

 

 そう返すと、織斑先生が眉をひそめて俺に言った。

 

「確かにISには絶対防御がある。だが、更識した行為は正しいとは言えない」

「だから制限をかけるのかよ。アンタら、そんなに贔屓にしている織斑に優勝してもらいたいのか」

「そういうわけではない。だが、更識のした行為は―――」

「だったら四月に日本を侮辱したオルコットは何で問題になっていない? 零落白夜を使ってシールドバリアを壊した織斑もだ。それにボーデヴィッヒなんてこの大会が始まる前に既に学校を辞めさせられているはずだろう。それに、篠ノ之も銃刀法違反で捕まっているはずだし、山田先生が凰とオルコットを倒す前にあいつら、平然と生身の織斑を攻撃したよな? それも十分問題だろうが。それにクラス対抗戦のこともそうだ。アンタがとっとと命令して俺の援護に行かせればこっちは5日も寝ずに済んだんだ。それらを罰せず平然と学園にはびこらせておいて、こっちに近しい簪に制限をかけるなんて、依怙贔屓の何物でもないだろう!!」

 

 別に俺には正義感もないが、最近平然とダメ出しすることが多いな。

 自分でも驚くほど吠えると、意外なことにそれを止めたのは簪だった。

 

「落ち着いて、悠夜さん」

「いや、でも……」

「むしろそうしてくれた方が、オルコットさんにしたみたいにブルー・ティアーズを壊すことを躊躇わずに済む」

「………」

 

 ということは、やっぱりスラスターだけを壊したのは「壊れても問題ない」と思ったからなのだろう。優しいと思えるが、この先のことを考えればある意味悲惨である。

 

「更識、つまり貴様は「手を抜いた」ということか?」

「ええ。でも、正直彼女の物言いはイラつくのでああいう風にしました。仮にもISという兵器を扱っている代表候補生なのにその程度で挫折するならばこの先に操縦者としての大成はないでしょうし、そんなことはどうでもいいので」

「………更識、お前……」

「何か?」

「いや、なんでもない。今回は忠告だけに留めておくが、二度とあんなことはするな」

 

 織斑先生は山田先生を連れてピットを出ていく。

 

「……悪いが簪、俺も言いたいことがあるんだ」

「……何?」

 

 さっきまで織斑先生と対峙していた彼女はどこに行ったのか、簪はビクビクと怯えながら俺を見てくる。

 

「何であれをするなら、前もって相談してくれなかったんだ!! 俺がアルフ○ミィ風に仕上げるのに!」

「……そこ?」

「そこ!」

 

 こう見えて俺は義妹の髪の手入れをしていたから扱いには自信がある。イベントに合わせて忙しい義母の代わりによくヘアアレンジをしていた。

 

「………後ろに回って準備したときに気付いたから」

「……そ、それは無理か………」

 

 ちょっとショックを受けていると、やり取りに一切口を出さなかった三人が会話に入ってくる。

 

「ねぇねぇ、ゆうやん。ちょっと聞きたいことがあるんだけど~」

「何だ?」

 

 口調はともかく、何故か目のハイライトが薄くなっている布仏。先輩はにこやかに見ているし、更識は先輩の後ろで複雑そうな顔で見てくる。

 

「何でかんちゃんのことは名前で呼んでいるのに、私は名前で呼んでくれないの~?」

「別に布仏の場合は先輩には「先輩」を付ければ問題ないから」

「私も名前で呼んでよ~」

「いや、それはちょっと……」

 

 名前とかで呼んだら親近感が湧くからなぁ。布仏自体は結構可愛いから特に困る。ほら、なんていうか……父性本能が動いてしまうっていうか。

 

「おねがい」

「年頃の女の子がみだりに体をくねらせてはいけません!」

 

 まったく。何を考えているんだこの馬鹿は! 俺は一応思春期の男の子なんだからな。

 

「じゃあ、私のことも名前で」

「そうね。そろそろ私たちもその段階に入っても問題はない―――」

「そこの姉コンビ! さりげなく混じるな!」

 

 というかアンタらはそれぞれの魅力に気づけ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悠夜たちがピットで談笑していると、本音にお祝いを言いに来た鷹月(たかつき)静寐(しずね)谷本(たにもと)癒子(ゆこ)四十院(しじゅういん)神楽(かぐら)は廊下で待機していた。

 

「……なんというか、凄かったわね」

 

 静寐の言葉にほかの2人が頷く。

 3人はさっきの試合を見て簪に対して恐怖を抱いていたが、それでも友人の本音が決勝まで残ったことを祝いに来た。そこで悠夜たちの会話を聞いてしまったが、普通ならば千冬と対峙するだけでも委縮するであろうに、悠夜はむしろ怒鳴り返していたことで彼女らの中で評価が上がっているのである。

 

「そういえば、わたくしはクラス対抗戦の時に外で観戦していた時に所属不明機が現れましたが、いち早く対処したのは他ならぬ彼でしたわ。後はわたくしもそうですが、怯えたり逃げたりという人たちでしたが、今思えばあの時の彼の鼓舞は誰も残らないようにということもあったのでしょうか? あそこでただ罵倒しても敵を作るだけでしたし」

「……確か、月曜日の暴走を桂木君が一人で対処したんだったんだよね?」

「もしかして更識さんって桂木君の評価を変えようとしているのかしら? 彼女自身はかなり評価しているみたいだし」

 

 それから彼女らは当初の目的を忘れてみんなが出てくるまで悠夜の良いところを探し始めたのだった。




次回予告 (もちろん嘘)

無事決勝に駒を進めることができた簪と本音。
そして決勝戦を迎えた翌日。いよいよ簪にとっては恩人であり討つべき敵である一夏と対峙する。

「俺は、お前のやり方を認めない!」
「あなたは私が討つ!」

 自称策士は自重しない 第43話

「交差する刃と刃」

 その二つ名に違わぬ実力を見せつけろ、簪!




ということで、一応簪の無双回。皆様の思った通りの無双を書けたかはわかりませんが、どうでしょうか?
そして虐められた挙句裏切ってしまう鈴音。別に私は彼女が嫌いじゃないですよ。実際、ISさえ出さなければ鈴音は普通に可愛い女の子だと思っています。つまりすべては織斑一夏が悪い(笑)

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