IS~自称策士は自重しない~   作:reizen

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執筆(?)はたいてい曲を聞きながら書くんですが、今回の…とくに最後が迷いました。
ながらだから文章が悪い? 家事は本気を出せば考えながらしています。


#130 荒れ狂うそれぞれ

 ―――私、死ぬの?

 

 自分の腹部に刺さる剣を見て、楯無にそんな思いがよぎる。

 これまで、彼女は裏の仕事がある時には常に死を覚悟して戦っていた。今回もそのはずなのだが、何故か楯無は今、自分が「楯無」でいることを心から後悔しているのである。

 

「―――楯無!」

 

 声がする方に視線を移す。髪をなびかせて駆け寄ってくる悠夜。その後ろにはさっき現れた無人機と同型のものが損傷していた。

 近づいてくる悠夜が次第に縮みはじめ、姿を変える。髪は黒から白――いや、白に近い銀へと変化していき、伸びて行く。

 彼女は思い出していた。これまでの人生を―――そして、あのことを。

 

「……ゆう……くん……」

 

 呼び方に驚く悠夜だが、それも一瞬のことで構わず楯無を抱きしめた。

 すると楯無の所にいた二機が近付いてくるが、悠夜は《デストロイ》で足止めした。

 

「……ゆうくん」

「それ以上しゃべるな! 今止血―――じゃない、学園の医療室に―――」

「……もう、無理よ……」

 

 そう言い、楯無は悠夜に抱き着く。

 

「……ごめんね、ユウ君。私、ずっとあなたのことを忘れてた」

「馬鹿、何を言って―――」

「……私、ずっと簪ちゃんが羨ましかったの」

 

 ハイパーセンサーからの警告で《サーヴァント》を起動させ、まだ動く二機を牽制しつつ、楯無を抱えて離脱する。

 

「……でも、それは今気付いた。ずっと忘れてたの、あなたのことを……10年前、白夜事件であなたが私たちを助けてくれたことも……それ以前に、髪のことで虐められていた私を助けてくれた」

「しゃべるなって言って―――」

 

 熱線が近付き、悠夜は《サーヴァント》による防御壁で防ごうとしたが、瞬時に斜めにして逸らした。

 

「……ねぇ、ユウ君」

「大丈夫だ! もう少しで―――」

「簪ちゃんを……お願い」

 

 そう言って楯無の腕は悠夜の首から落ちた。

 

「楯無!? おい、楯な―――」

 

 動きを止めた悠夜。その隙を突いて無人機は左手にビーム砲を展開し、発射した。

 悠夜はまともに食らう。とっさに楯無を庇ったので彼女が傷つくことはなかったが、悠夜の左肩が完全に吹き飛んでいた。そして、その庇い方が悪かったのか悠夜の腕から楯無がするりと抜け、落ち始める。

 

「楯無!」

 

 悠夜は右腕を楯無に向ける。が、それがさらなる隙を生んだ。

 後ろからもう一機が回り込んでいて、悠夜を刺したのである。

 

「―――ガファッ」

 

 口から血を吐く悠夜。だが、すぐに楯無に意識を向けて彼女を守るために重力を生じさせ、落下スピードを緩める。そして楯無がゆっくりと着地したのを見た悠夜は既に事切れかかっていた。

 

「…………そういう、ことか」

 

 血を流しながら、悠夜はそう呟く。まるで力が抜けたかのように落下するが、そのスピードが緩くなり、着地した時の衝撃は数段上から落下した程度だった。

 〈黒鋼〉を解除した悠夜は、楯無に近付いた。既に〈ミステリアス・レイディ〉も解除されている楯無の頬に触れた。その周囲を飛ぶ無人機は全機、跡形もなく消すつもりなのか左腕の砲口をチャージし始める。

 

「………俺は……馬鹿だな」

 

 右腕で楯無を抱き寄せながら、悠夜は呟き始める。

 

「力があるのに……世界すら壊せる力があると言うのに……ずっと眼を瞑ってきた。怖ったんだ。その力で、もしかしたらみんなを壊してしまうんじゃないかって……俺みたいな人間と一緒にいたら、滅茶苦茶な人生にしてしまうんじゃないかって……」

 

 それはまるで、妹を愛でる兄のようだった。

 悠夜は楯無の髪をすくい始める。

 

「でも、そんなことがあるわけがないのに…」

 

 愛おしそうに、今はもう動かない少女に悠夜は話し続ける。傍から見れば異常な行為だが、悠夜はもう、周りを視なくなっていた。

 

「だってそう。俺は10年前に、既にI()S()()()()()()()、世界に怯える必要なんてないんだ」

 

 瞬間、超高密度圧縮熱線が二人に向かって飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、少し離れた場所で箒とダリルに合流した簪たちは無人機を破壊していく。

 だが途中で簪の手が止まり、騎士型のISが斬りかかろうとしたが、ラウラのAICによる援護、一夏と箒の攻撃で怯ませられる。

 

「ボサッとするな!」

「大丈夫か、更識さん」

 

 一夏が心配そうに声をかけ、箒が不機嫌になる。だが簪はそのことに気付いていなかった。

 

「………おい、更識」

 

 後ろからダリルが簪に声をかける。その様子から、簪はすぐに察知したのだ。

 そしてすぐに〈黒鋼〉の反応を追うが、どういうことか掴めない。

 

「一体何をしている! こんな時に―――」

 

 箒の言葉を無視してすがるように何度も何度も反応を探るが、〈黒鋼〉も〈ミステリアス・レイディ〉も反応がない。

 するとそれを遮るように朱音から通信が入った。

 

「かんちゃん! お兄ちゃんが……〈黒鋼〉の反応が!!」

「私もすぐに行けそうにない。………何か、感じた?」

 

 簪の質問に画面に映る朱音は素早く何度も頷いた。

 

「何か、ゾワって、気持ち悪いのが―――」

「……じゃあ、今すぐ避難して。たぶん、IS学園が消えてなくなる可能性がある」

 

 二人が使っているのはラボ用の回線のため、ラウラ以外のほかには聞こえなくなっている。

 だが、先程から動かないからか近くにいた箒は〈荒鋼〉の装甲を掴んだ。

 

「いい加減にしろ! 気分が悪いなら今すぐ下がれ!」

 

 箒は正論を言っているが、今の簪の気分は最悪だった。これまで溜め込んでいた負の感情が前面に出て、箒を怯ませるほどの睨みを利かせる。

 

「お、おい、更識さん―――」

「簪、どうする?」

 

 ラウラは簪と自分の差異を知っている。それ故に今の簪がどのような状況になっているか察した彼女は指示を仰いだ。

 

「とりあえず、このまま戦闘を続けて他の人たちを回収する。それからでもいい。下手に様子を見に行ったらこっちがやられる」

「ちょっと待てよ! 生徒会長を見捨てるのか!?」

 

 一夏が反論すると、簪は容赦なく言った。

 

「………たぶん、既に何かあった後」

「え!? だったら今すぐ助けに行かないと!」

 

 白式の向きを変えて離脱を図ろうとするが、簪がすぐに撃ち落した。

 

「な、何するんだよ!?」

「勝手なことをしないで。何かあったとしても、よほどのことがない限りあの二人が死ぬことはない。それに、私たちが言ったところであの二人の邪魔になるだけ」

「でも、そんなことを言って手遅れになったりしたら―――」

 

 その言葉を聞くや否や、簪は一夏を殴った。さらに、後ろから攻撃してきた無人機を《銀氷》で切り裂く。

 

「―――何か、勘違いしていない?」

 

 プラズマビーム砲《襲穿》でさらに二機、撃墜させ、一夏に遠慮なく言った。

 

「あなたがチヤホヤされているのは、あなたがお姉さんと同じくらい強くなる見込みがあると思われているからよ! 悠夜さんが本気を出さないのも、記憶が消されているし、何よりも悠夜さん自身が力を恐れているから! 周りはあなたに向けられない矛先を向けているけど、それは何も知らないからできることなの! むしろこれまでの事件、これまでただ精神崩壊()()が最大の負傷なのは奇跡なの! むしろ今考えるべきことは、30分もしない内に来るであろう史上最悪の天災をどうやって乗り切るか、よ! あなたみたいに幼馴染の気持ちすら気づかない最低最悪の鈍感屑野郎が足りない頭で勝手に動かないで!」

 

 そう言って簪は近付いてきた機体を斬りつけ、プラズマビーム砲《襲穿》と荷電粒子砲《春雷》で破壊していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少し離れた場所で、鈴音たちはセシリア、シャルロットと合流して無人機と戦闘していた。だが、彼女らの場合はたったの二機である。

 これは簪、そして悠夜の方へと割かれているため、少ないのである。

 だがそれでも、彼女らは苦戦しているのは、メタルシリーズのスペック差が大きいのもあるが、少し離れた場所でおそらく彼女らに差し向けられていた機体が潰されているのだ。

 

「攻撃とは…こうするものですよ!!」

 

 途端、リベルトが使用する〈ゼクスリッター〉の胸部装甲が開き、そこから黒いビームが発射されて無人機たちを容赦なく薙ぎ払う。回避が間に合った無人機たちは、突然現れた二機の連携によって次々と破壊されていく。

 

「アラン! そっち一機行ったわ!」

「なら、これで!!」

 

 アランが使用する〈イクスイェーガー〉の右腕に大きな鋏が展開され、無人機の腹部を中心に真っ二つにした。

 それを見た無人機は突如、レオナの前に移動して斬りかかるが刃は彼女に届かなかった。脚部から展開されたビーム刃でブレードを切断されたのである。

 

「モード、スピア」

 

 短く言うとレオナが持つ大型二銃身ライフル《シュペーア・ゲヴェール》の形状が槍に変わり、レオナは連続で突いた。

 

「悪いけど、ISと違って接近戦もできなければフェイクスードを操ることができないのよ!!」

 

 本人は意識せず、とあるイギリスの青い狙撃手を傷つけるが、構わず刃から伸びたビーム刃で無人機の首を切断し、背部からスクリューに近いカッターを二枚展開して空いた穴から入れる。すると内部から仕事を終えたカッターが背部に戻ってきて収納され、無人機は爆発した。

 

「〈ロンドシュワルベ〉、高機動モード。アラン! 一気に畳みかけるわよ!」

「え? ちょっと待って! あれはまだ成功率が限りなく低い―――」

「土壇場の成功率が90%は超えているんだから大丈夫!」

 

 そう言って〈ロンドシュワルベ〉を駆るレオナは誰よりも早く飛ぶ―――しかしそれを〈イクスイェーガー〉が追い越し、〈ロンドシュワルベ〉が背面を向けたことで二機の背部から連結アームが伸び、接続した。〈ロンドシュワルベ〉が《シュペーア・ゲヴェール》を、〈イクスイェーガー〉が大型の碇を両手に一本ずつ展開した。

 

「ほう。あれをやるのですか」

 

 シャルロットに迫る無人機を剣で破壊し、二人の奇妙な行動を見たリベルトは感心するように言った。鈴音も近くにいたのか、恐る恐る尋ねる。

 

「あの、あれって―――」

「見ていればわかりますよ」

 

 〈イクスイェーガー〉はフェイクスードの中で古い機体だ。当初はリベルトが使用していたが、十蔵が引き取った子供の中でリベルトが一番優れていたこともあり、また何よりもお互いが信頼していたのでリベルト用に別の機体が開発された。そして余ることになった〈イクスイェーガー〉は当初レオナを乗せようという話だったが、試作機故に改造しやすい構造であり、整備要員として働いていたアランが改造プランを持って来たことがきっかけで話は一気に変わったのである。

 レオナは接近戦もかなり高いレベルでできるが、それは小さい頃から培われた技術から、それに「できる」だけの話で、彼女の狙撃はそれよりも高い。だが〈イクスイェーガー〉は扱いやすさも重視していたことから接近戦がメインだったので、レオナの性能を十分に活かすことができないと考えたアランは密かに射撃用の改造プランを考えていたのである。反対に、アランは接近戦が得意であり、猪突猛進型に近い彼には朱音が考え、やりやすさから〈イクスイェーガー〉に施されたのである。そして、彼女のお節介によって二人の少々特殊な突撃必殺技ができたわけだ。

 それを使用し、アランは前方からの攻撃を碇で逸らし、敵機を叩き潰していく。レオナは後ろからの敵機を防ぎ、破壊していく。さらに、高出力のブースト力が二重に働いているため、たまに電車が脱線するように〈ロンドシュワルベ〉がずれるが、構わず次々と破壊していく。

 

「私も負けていられませんね」

 

 そう言ったリベルトに応えるように、形状が変化。両肩にそれぞれ四つの緑色の球体が入っており、そこにエネルギーが溜まっていく。

 

「跡形もなく、吹き飛びなさい!」

 

 前方に二本のビームが発射される。だが放射範囲がそれぞれ扇状を形成し、大量の無人機を破壊していった。

 その姿に四人の専用機持ちたちは唖然としていると、〈ゼクスリッター〉に通信が入る。

 

「リベルトさん、聞こえる?」

「お嬢様ですか? 一体どうしました?」

「すぐに指定するポイントへ偵察に向かってください。そこから、とても恐ろしい感覚がするんです」

 

 その言葉の意味を瞬時に理解したリベルトは、ただ一言「わかりました」と答え、わずかに動き始める無人機を残りはアランとレオナの二人に任せて向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 亡国機業本部。その地下に保管されている鞘に異常が起こり始めていた。

 封印に使用されていた鎖は消滅していき、鞘が滞空しているとドアが蹴破られる勢いで開かれた。

 

「嘘だろ!?」

 

 その状況を見たクラウドは驚きを見せる。意味を知らぬほかの構成員には光の度合いが大きい鞘で、何か重要なものだとは思う程度だが、クラウドのように黄金の鞘がどんな意味を持つか知っている者は、その状況に恐怖すら感じない。

 炎を司る四元属家の一つ「ミューゼル」が離脱したのは、王族の勝手な振る舞いに嫌気を刺したからだ。

 そのため、彼らは私兵を集めて離脱し、「亡国機業」を作って敢えて裏切り者の織斑一族を引き入れた。嫌味もあるが、彼らは織斑が持つある技術が欲しかったのだ。「遺伝子強化技術」という、ある種の禁断の手法を。

 結果、ミューゼルはその技法を手に入れることに成功した。世界の一部にその方法を知らせたのは、教育費などの削減によるものであり、現在は各地域を襲撃して回収に当たっている。

 それほどまで勢力を拡大しているミューゼルが一つだけ、恐れているものがある。それは、その鞘の動きだった。

 黄金の鞘は、神樹国の王位継承時に用いられる道具の一つだ。陽子の時は継承前に崩壊したので、武闘派である「ミューゼル」が保管し続けているのだが、それ故に鞘のことを知っているのである。

 鞘は何もしなければ光っているだけのものだが、文献にはこう記されている。

 

 ―――黄金の鞘は、最強となった王候補の存在を感知し、馳せ参じる

 

 その意味はつまり、今この現象は、鞘が最強の存在を感知したということなのだ。ミューゼルにとって、それは何よりも避けたいことなのだ。まだ、彼らが想像する男に向かうなら話が通じると信じている。が―――悠夜に行ったとなれば話は別だ。

 亡国機業は理解しているのだ。この状況がどれだけ大変なことなのかと言うことを。

 

 ―――そして、事と次第によっては地球そのものの崩壊が起こることも

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 子供は、好奇心が旺盛だ。それは何も知らないからであり、成長するにつれて何が危険でそうでないかを理解する。それは生まれながらにして人知を超えた存在であろうがなかろうが関係ないことだ。

 小さい頃は、自分が能力を使えることが当たり前だと思っていた。そして頭の回転が早いことに対しても特に違和感を覚えていなかった。一部だけの話だけど、それでも当時を振り返ってみれば何もかもが異質だと、今ならわかる。

 まだ子供のままなら、子供のまま成長すれば簪たちと一線を越えていたかもしれない。本当の意味で周りに興味がなくて、喧嘩した相手の親を黙らせ続けたあの時ならば、容赦なく()を受け入れていただろう。

 

 ―――でも、その時の記憶は失っていた

 

 力がない。そう思っていたから普通に過ごしていた。〈黒鋼〉を手に入れるまでは、自分には何もないと思っていた。〈黒鋼〉を纏って強くなるのは、あくまで得意分野の延長だからだ。

 

 ―――だから、()は来なかった

 

 いや、自分が拒絶していたのだから来なくて当たり前だ。だから、今の自分には()を否定する権利なんてない。

 

 ―――ようやく、覚悟を決めた

 

 自分は周りとは違う。自分が本当に大切なものに触れれば壊れる。その人の人生を壊してしまう。それが怖かった。戦闘中に理性が崩壊し、ただ強者を求めるのは、身体の記憶による最後の抗いなのだろう。

 

 ―――もう、心は決まっている

 

 ある意味、普通として成長したのは、記憶を消した本人とその周囲にとっては嬉しいことなのだろう。思えば自分は、過去に他人の家族を、他人の尊厳を壊しかけたのだ。今なら感謝できるが、同時に自分が好きだった少女を忘れていたことが悲しかった。

 

 ―――今なら、断言できる

 

 自分は―――俺は手を伸ばす。過去を受け入れ、現代(いま)と混ざり、すべてを一つにして未来(あす)を生きるために、失いかけている物を取り戻すために。

 

 ―――自分が、最強だと

 

 思い込みでも、幻想でも、空想でもない。ただ一つでも最強だけど、二つが混ざればより高みを目指すことができる。

 

 ―――だから、()も手を伸ばして

 

 後悔で押し潰されそうな顔をして、涙を流す少女を受け入れる。自分のために生まれたのに、自分に拒絶されて現状を作ったと思っている少女を。利用ではなく、同化へ。

 

 ―――真の意味で、一つになるために

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 少年は、ただ知らぬ過去を目指していた。そして少女はただ、その手助けをしたかった。

 少年は微笑む。少女は真実の目を開いて観察する。そして理解する。真の意味で少年が自分を求めていることを。

 

《………ありがとう》

 

 少女はお礼を言った。そして、少年が伸ばす手を取り、引き寄せられ、同化する。それがどれだけ、世界に対して有害であり、悪影響であり、天災を超えるほどのことかを知りつつも、真の意味で受け入れてくれた主に報いるために、ようやく振り向いてくれた主と共にいるために。

 

 ―――その波動は、世界へと飛んだ

 

 だがそれを感じ取れるのは、本当の意味で特別な存在のみだ。ごく微量であり、種火程度でしかないその波動は、地球を覆うように広がっていく。

 一人は私物を持ち込んで遊んでいる時に、一人は自分が見た未来に対処するために動いている時に、一人はその未来が訪れることを信じて手伝っている時に、一人は自分を慕う家来を愛でている時に、一人は自分にはいないことに気付いて疎外感を感じている時に。

 

 ―――そして、一人は

 

「………やはり、最悪の時は始まってしまうのか」

 

 今、予見した未来に対処するために、部下に、家来に、演説を行おうとしている時に。

 そしてその一人は、演説を始める。自分を神のように崇拝する者、自分を疑わしく見ている者、様々な思いが渦巻いているその場で、その一人は慣れたように言った。

 

 ―――常識を超えた世界を垣間見たいか、と













今だから言える。「ようやくここまで来れた」と。
実は最初から、この部分でとんでもないことをさせようとばかり考えていたんです。福音戦とか、他のは結構後から考えています。「最初からルシフェリオンで!」って感じですかね。
それと今話の途中のある部分で「ここはいらないだろう」と思うところはあるかもしれませんが、実は前話のある部分に関係しています。さぁ、それはどこかな? あ、すみません。ここまで読んでくださった方は絶対わかりますよね。いや、流し読んでいてもわかることだ。どんだけ低いんだ、マイクオリティー! ま、今更ですけどね(笑)


―――と言うことで、次回予告(誤字にあらず)





彼女らは抗う。それが無駄と知りながら、自身の使命だから抗うのだ。
たとえそれが生徒でも、どれだけ抗っても勝てないことをわかっていながら止めようとする。自分たちでは、受け入れた力に勝てないとわかっていながら。

自称策士は自重しない 第131話

「一族、集結」

だが彼らには力がある。彼女らにはない神にも等しき力を、少年を止めるために振るう。

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