魔法科高校の武器商人<修正版>   作:akito324

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17話です!

今回は達也と清夜の表パートってやつです。
それではどうぞ!!


17話 清夜の謎

2095年 4月4日 九重寺

 

「はあっ!!」

 

「とりゃ!」

 

ガッ!!

ブンッ!!

 

寺の僧侶達20名の攻撃を捌いていく達也

達也は日課の稽古のため、深雪は入学報告のために九重寺まで足を運んだのが

そこでは手荒い歓迎が待っていた。

とは言っても殺し合いという訳ではない。

これが今日の達也の稽古という訳だ。

 

深雪は邪魔にならぬよう山門に控えていると不意に陽気な声がかかる。

 

「やぁ深雪くん!おはよう。」

 

「キャッ!!・・もぉ・・おはようございます先生、忍び寄らないで普通にあいさつしてください。」

 

深雪は何度もこういう経験はしていたのだが慣れないものは慣れないというやつだ。

後ろにはハゲ頭と目の傷が目立つ坊主が立っていた。

 

「忍び寄るな、って言われてもね〜僕は『忍び』だから忍び寄るのは文字通りで、性みたいなものなんだ。」

 

飄々と答える坊主だがこの坊主こそ達也の師匠であり、昔で言う『忍者』、今では『忍術使い』と呼ばれる古式魔法師でもある『九重八雲』その人である。

 

「今時、忍者なんて職種はありません!!先生が由緒正しい『忍術使い』というのは理解してますが・・」

 

「それが第一高校の制服かい?ふむふむ・・」

 

別の話になっているが、いつものことなので深雪は気にせず答える。

 

「はい、今日は入学のご報告をと・・先生?」

 

深雪の制服を舐め回すように見る八雲

 

「そうか、そうか。その制服が初々しくて、清楚なんだが隠しきれない色香があって・・表すなら綻ばんとする花の蕾、萌え出ずる新緑の芽・・そうか!!これは萌えだ!萌えなんだよ〜!!ややっ!?」

 

何かに気づくと八雲は振り返り防御の構えをする。

するとそこに達也の鋭い手刀が振り下ろされる。

 

ブンッ!!

バシッ!!

 

見事に防ぐ八雲。

見ると達也の後ろでは倒れている僧侶達がいた。

 

「師匠、妹が怯えているので止めてもらえませんか?」

 

「やるね〜達也くん。僕の背後を取るとは・・・ねっ!!」

 

八雲が突きを繰り出し本格的な稽古が始まる。

達也は極め技をしかけようとする手から逃れつつ八雲の突きを躱す。

するとお互いは距離をとった。

そしてまた二人は激突する。

倒れていた僧侶たちは起き上がり深雪とともに稽古をながめるのであった。

 

〜数分後〜

 

達也は八雲に惨敗し息を荒げながら地面に倒れていた。

 

「はぁっ・・はあっ・・」

 

「大丈夫ですか、お兄様?」

 

「んっ・・・大丈夫だ。ありがとう。」

 

そう言って達也は深雪からタオルを受け取り起き上がる。

そこで達也は深雪のスカートに気がつく。

 

「すまない、スカートが汚れてしまったな。」

 

「大丈夫ですよ。お兄様。」

 

深雪は携帯端末型のCADを取り出す。

そしてCADを操作すると魔法が発動し深雪と達也の服を綺麗にした。

 

ここでCADについて説明しよう。

CADとは現代魔法で用いられている道具で昔で言う杖や魔導書のようなものだ。

CADは魔法の設計図である起動式を格納しており杖や魔導書などに代わり起動式を提供する現代魔法師の必須アイテムである。

種類としては大きく分けて二つあり魔法の系統に多様化した汎用型CADと多様化を犠牲に発動スピードに特化した特化型CADがある。

そして今、深雪が使ったのは汎用型に部類されるCADだ。

 

達也は起き上がり礼を言った。

 

「俺の分まで・・ありがとう」

 

「いえ これぐらいのことは・・それよりも朝ごはんにしませんか?先生も宜しければご一緒に」

 

八雲も喜んで頷き

何事もなかったかのように準備を始める深雪。

そうこれぐらいのこと深雪にとっては”なんでもない”ことだった。

 

食事は稽古の評価について会話しながら行われた。

そして食事が終わると達也は話題を切り替える。

 

「それで話が変わりますが、実は師匠にお願いしたいことが・・・」

 

「おや、改まって一体どうしたんだい?」

 

八雲も只事ではないと理解したのか姿勢を正した。

 

「自分のクラスメイトである『式 清夜』について調べていただきたいのです。」

 

「ほぉ・・今日はまだ入学して二日目だろう?その彼が君達に何かをしたのかい?」

 

達也は昨日の一連を八雲に話す。

達也が一瞬感じた気配、深雪に一瞬見えた清夜の心の色を

八雲は何かを、知っているような顔をする。

 

「なるほど・・気のせいかもしれないが達也君ほどが身構えてしまい、深雪君ほどが固まってしまう人物か・・それにしても『式』か・・」

 

これが誘いであると知っていたが深雪は躊躇わずに聞く。

 

「先生、何か心当たりがあるのですか?」

 

「確か”式海運”の社長『式 一正』を調べていた時に息子の名前にそんな名前があったな、と思ってね。」

 

達也も知識として式海運は知っていた。

 

「式海運・・海運で世界中に名の知れた会社でしたね。一時期は倒産の危機でしたが『式 一正』の死亡で社長が『アイザック・ウェストコット』に変わり、今では社名をDeus Ex Machina Industryに変え武器商や魔法工業でも世界トップクラスになった会社・・ですか。」

 

「私も『式 一正』については本家から聞いたことがあります。式海運の頃から武器商として護衛の傭兵とともに戦場を渡り歩いた危険人物だとか。それで彼は元御曹司ということですか先生?」

 

八雲は慌てて訂正する。

 

「待った待った!二人共、早合点はよくないな。僕は『式 清夜』君が『式 一正』の息子だと決めつけた訳じゃないよ。もし君たちの勘違いで変に警戒したら他の人間に正体がバレてしまうかもしれないよ?それじゃあ本末転倒じゃないかな?」

 

「ですが師匠。気のせいかもしれませんが あれほどの気配を出す人物が只の一般人なわけがないと思いますが」

 

「うーむ・・君を疑っているわけじゃないんだけどね。僕の調べた限り『式 一正』の息子は魔法は使えるけど魔法師としての才能がなかったんだよ。魔法科高校にも入れないぐらいね。まぁ、その妹は魔法師として才能は一級品だったけど。」

 

深雪は妹とというワードに反応する。

 

「妹・・ですか?」

 

「うん。話題がずれてしまうけど、式 一正には兄妹がいてね。息子は運動も勉学も何の才能にも恵まれくて無能と呼ばれるほどだったんだが逆に妹は魔法だけでなく容姿や勉学など様々な才能に恵まれていたとか。元々、『式 一正』の後継者は妹さんだったんだよ。兄妹仲は良かったんだけど。なんだか君達に似ているね。」

 

達也は無言で聞いていたが深雪は最後のセリフに納得いかなかった。

 

「先生!!お言葉ですが兄は無能なんかではありません!!」

 

深雪の怒気に流石の八雲も驚く。

 

「い、いや すまない!仲が良かったことを言いたかったんだけどね。」

 

達也も目で深雪を叱りつける。

すると深雪は顔を赤くしながらも謝罪する。

 

「申し訳ありません先生!!」

 

「いや、いいんだよ。話題とは違う話をしたのは僕だから。とにかく式 清夜君の調査については任せてくれ。」

 

二人は深く頭を下げ達也が礼を言う。

 

「ありがとうございます師匠。それでは学校があるので自分達はこれで・・」

 

そうして立ち去ろうとすると八雲から忠告を受ける。

 

「あ、そうそう。最近、東京の裏では893とか麻薬の悪党が沢山潰されているんだ。凄腕の殺し屋にね。少なくとも二組が暗躍している。関係ないとは思うけど気をつけてね。」

 

「分かりました。一応警戒しておきます。それでは失礼します。」

 

不安がる深雪の肩を抱いて達也は九重寺を後にした。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

2095年 4月4日 第一高校

 

清夜は教室に入るなり頭が痛くなった。病気とかではなく精神的な意味で・・

理由は二つ。

一つ目は達也の席が清夜の席の斜め後ろだったこと。ついでに言うと美月が後ろ。

これは清夜の正体などが気づかれるリスクもあったが達也の正体についても探れるチャンスでもあるので、これは百歩ぐらい譲ってもいいだろう。

二つ目が問題だった。

 

「失礼なのはお前だろうが!ちょっと顔の出来が良いからって調子に乗るんじゃねーぞ!」

 

「見た目は大事なのよ?だらしなさとワイルドを取り違えてるむさ男には理解できないとは思・う・け・ど」

 

それはエリカと男子生徒が清夜の席(・・・・)で言い争っていることだ。

もう関わらないという公約は早速失敗に終わりそうだ。

 

そこで達也と美月が清夜に気づき、この状況から逃げ出すために挨拶をする。

 

「式さん!おはようございます。」

 

「おはよう清夜。席はそこだぞ。」

 

達也は八雲の注意もあってか自分では先入観なく自然に挨拶ができた。

清夜も観念し自然にあいさつをする。

 

「おはよう。そうか、二人と席が近いのか一年間よろしく。それで、夫婦喧嘩中すまないけど出来れば退いてくれないかな?席に座れないんだ。」

 

夫婦という言葉に清夜の心はモヤモヤするが紳士な笑顔と不快にならない調子でお願いする。

 

「あっ!清夜君!おはよう!ゴメンゴメン今退くから・・って」

 

「おう、すまねぇな・・って」

 

「「誰が夫婦だ!」」

 

二人は息ぴったりにツッコミを入れてくる。

さらにエリカに関しては

 

ドフッ!!

 

「ぐぉっ!!・・」

 

と清夜の腹にボディーブローをぶつけてくる。

どうやら選んだ言葉に関しては間違っていたようだ。

美月と男子生徒は心配そうに見ていたが

腹を押さえてうずくまる清夜を見て達也は

 

(・・アホだ・・やっぱり気のせい・・か?とりあえず調査を待ってからでも遅くないはずだ。)

 

と若干呆れ顔になっていた。

そしてエリカは自分の行動が分からなかった。

 

(あれ?なんでアタシ、むさ男より清夜君に怒っているんだろう?・・って『清夜(・・)』君!?アタシなんで名前で!?あぁ〜もうなんなのよ!?この感覚!)

 

「うぐぅ・・千葉さん、おは・・よう・・そして痛いよ。てか・・昨日と呼び方違わない?」

 

「フン!・・清夜君が悪いのよ。名前は・・名前は・・そう!!司波君だけ名前呼びは不平等だからよ!!そう思うよね美月!?」

 

突然、美月に会話の強烈なパス!!戸惑う美月!!

 

「ひぁ!?あの・・その・・そ、そうですね。私も深夜さんとお呼びしても?あと司波君もよろしければ・・」

 

ここで美月は上手に会話をトラップ!!そして達也と清夜にパス!!

 

「えと・・俺は別にいいけど・・達也は?」

 

「あぁ俺も達也で構わないぞ。」

 

とここで会話が終了し何故か気まずい雰囲気になる。

だが男子生徒は清夜を見て気まずげに声をあげた。

 

「なんだか仲間ハズレみたくなっているが自己紹介いいか?」

 

「あ・・ああ!!もちろんだよ。」

 

彼のおかげで雰囲気が戻る。

 

「俺は西城レオンハルト!親がハーフとクォーターだから洋風な名前になってるんだ。レオって呼んでくれ。得意魔法は収束系の硬化魔法だ。機動隊や山岳警備隊の志望だ。お前の席の隣だからよろしくな!」

 

レオは手を差し出して握手を求める。

清夜はガッチリと手を握って握手に応える。

 

「式 清夜だ。俺のことも清夜と呼んでくれ。得意魔法は・・特にないかな。魔工師志望なんだ。こちらこそ、よろしく」

 

二人は笑顔で挨拶を終わらせるがエリカが茶々を入れる。

 

「『見た目通りガサツです』って言うの忘れてるわよ。」

 

「なんだと!この〜・・」

 

売り言葉に買い言葉で返そうとするレオ。

だが他の三人が止めに入る。

 

「エリカちゃん。もう止めましょう。少し言い過ぎよ」

 

「レオも、もう止めとけ。今までの経緯を踏まえればお互い様だし、口じゃ敵わないんじゃないか?」

 

「千葉さんもレオも一回席に戻ろう?そろそろオリエンテーションが始まるよ」

 

とここで5分前の予鈴が鳴り二人は渋々従う。

睨み合いは終わらなかったが。

 

「・・美月がそう言うなら」

 

「・・しょうがないか」

 

こうしてやっと落ち着けた清夜は残された時間で受講登録することにした。

 

カタカタカタカタ・・

 

達也が清夜を見つめる。

清夜は気にせず受講登録を済ませると達也が疑問を投げかける。

 

「清夜もキーボードオンリーなのか?」

 

「『も』ということは達也もキーボードオンリーなのかい?」

 

「ああ、結構気が合うようだな。」

 

「だね。改めてよろしく頼むよ。」

 

まだ二日と出会ったばかりでお互い油断ならないことは分かっていたが、互いに仲の良い友人になれると本心から思った。

 

受講登録を終えた2分後に本鈴が鳴り、それと同時にスーツを着た若い女性が入ってきた。

前に説明した通りこの学校で指導教員は一科生だけで、授業自体も実習以外は一科、二科関係なく卓上端末を使ったオンライン授業であるため教師が教壇に立つことはない。

だが清夜はその女性に心当たりがあった。

 

(小野遥!サイモンさんが警戒しろ忠告した要注意人物・・表向きはカウンセラー、裏ではミズ・ファントムと呼ばれる公安の諜報員か。まさか俺のクラスになるとは・・偶然?必然?どちらにせよ悩みの種は尽きそうにないな。)

 

そうこう考えているうちにカウンセラーの説明などが終わり一名の男子生徒が席を立つ。

どうやら受講登録を終わらせている生徒は退室していいらしい。

だが下手に退室してミズ・ファントムに印象を持たれるのは困ると判断し

おとなしくガイダンスを受けるのだった。

 

 

ガイダンスが終了し教室は一気に賑やかになる。

清夜は工房の場所を確認し席を立つとレオから声がかかる。

 

「おっ、清夜。どこ行くんだ?」

 

「魔工師志望だからね。これから工房に行くんだ。それz・・」

 

「待った!俺も工房に行きてぇんだ。一緒に行こうぜ。達也もどうだ?」

 

達也は自分のデバイスを閉じて答える。

 

「もう少し資料を眺めていようと思ったが・・OK付き合うよ。」

 

清夜も悪さをするわけではないので同意する。

 

「俺も構わないけどいいのかい?闘技場じゃなくて?」

 

「その印象も間違っちゃいねぇが硬化魔法は武器術との組み合わせがいいからな。武器の調整技術スキルが欲しいんだ。」

 

席にいた美月も遠慮気味だが同行の申し出をする。

 

「なら私もご一緒してよろしいですか?私も魔工師志望なので」

 

「あっ、確かに美月はそれっぽいかも。そこのむさ男とは違って」

 

美月の頭越しにエリカも乱入してくる。喧嘩の火種込みで

 

「なっ!オメーの方が工房に似合わねーよ!さっさと闘技場に行ってこい!」

 

「そのセリフ、そっくりそのままお返しするわ。」

 

殺し屋ほどではないがエリカとレオの間で火花が飛び散る。

清夜達はまたも仲裁に入る羽目になる

 

「あの〜喧嘩はいいから工房に行こうよ。」

 

「そうですよ!時間がなくなってしまいますよ。」

 

「そうだぞ。早くしないと俺たちが最後になっちまう。」

 

レオとエリカは最後に思いっきり睨みながらお互いそっぽを向いた。

結局、清夜は朝のメンバーと共に工房に行くことになった。

この後のトラブルに巻き込まれるとは知らずに・・・

 




関わらない詐欺をしている清夜君。彼の心のうちはどうなんでしょうね〜
まぁ私も知りませんが。

次回はとうとうアレが登場!!清夜はどうするのか!え、アレはアレですよ・・ほら、も・・・もずく?

次回もお楽しみに!

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