喫茶店経営している場合じゃねえ   作:気宇

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何故か最近無性にクールorダークor血の気が多い主人公を書いてみたくなって来た。あれか、これは神のお告げなのか。
そんな訳でダーク店長なるIFを試作してますです。多分投稿させて頂きます。その時はよろしくゥ(姑息な宣伝)

そしてオルフェンズを見るとロボット作品を書きたくなる。よし、一夏兄貴に鉄パイプ持たせてみよう(唐突な発想)


ローマの地

どこまでも広がる草原。白い雲がいくつか浮かび、のどかな風が吹き抜く丘。第三の聖杯の潜む地、当時のローマへ、彼らはとうとう訪れた。

遠目に壮大な建築物がいくつも見える。欠損箇所も無く、まさにそれらは今を生きる人々の生活の象徴。

 

 

ーーーさて、此度のメンバーを確認してみようか。

 

今回は長期休暇との兼ね合いの都合が良かった為、衛宮士郎、遠坂凛、セイバー、アーチャーの計四名が援軍として同行して来た。無論魔術師とは言え学生の彼らを危険な区域に引き連れて来るのは鏡夜も当初は気が引けた。……が、一度決めたら決して折れない士郎に逆に鏡夜が折れる形で、渋々それを承諾した。ほとほと、士郎の頑固さは凄まじい。まあそれも、鏡夜が士郎を気に入っている点の一つなのだが。

 

マスター計三名、サーヴァント計六名。今なら正規の聖杯戦争に殴り込んで優勝するどころか、小国一つすら堕とそうな戦力が集約している。まさに動く戦術兵器。当人達にもその自覚が無い為に、余計に手がつけ難い。

 

 

「ローマ、ローマ、当時のローマ……。ねえ、ちょっと私買い物したいんだけど」

「凛、通貨はどうするのかね?」

「あーーー」

 

 

こいつ悪巧みしてるだろ。具体的には、安い金でローマの物品を手に入れて現代で転売するとか、そんな感じの。

 

ここに来て鏡夜は凛を連れて来た事を非常に後悔した。ここで本当に首都ローマに足を踏み込めば、たちまちどこからか金を手に入れ、転売儲けを実行するに違いない。いくら家計が宝石魔術の為に火の車状態とは言え、淑女に恥ずべき強欲さだろう。遠坂マネー・イズ・パワーシステムなる物を提唱する凛の金の亡者っぷりは誰しもが脱帽する。

 

 

「ねえ(ワタシ)、古代ローマって結婚指輪の概念あったっけ?」

「ええと……。確かプレーンな物をつけるはずです。紳士階級の人達は外に出る時に豪華な物に変えるとか」

「じゃあわざわざ探す必要もありませんね。さっさと聖杯獲って帰りましょう」

 

 

向こうで二人のジャンヌが何やらこそこそと話しているが、おそらくは何も無い談笑ーーー「遠坂こえー」的なお話しでもしているのだろう。わざわざ近付いて聞き出す程の物では無いはずだ。

さて、これならどうするべきか。最終目的こそ聖杯の回収だが、その道程をいかにするか。フランスの時の様に召還サークルの設置と情報収集も最優先だが、その実鏡夜も少しは観光してみたかったりもする。今まで冬木、フランスと見知った土地ばかり巡って来た為に正真正銘の未知の地は心を躍らせるのだ。

期限も特に定められていないし。情報収集がてら、街をぶらつくのも良いかも知れない。そう提案しかけた矢先、セイバーの神妙な顔が目に入った。士郎もそれに気が付いたのか、セイバーに疑問を投げかける。

 

 

「どうしたんだセイバー?」

「ああいえ……少し遠くに闘争の気を感じます。もしやと思いまして」

「闘争?ここでか?」

 

 

ふむーーーおかしい。ワイワイと騒いでいるサーヴァント達+凛を尻目に、士郎、アルトリア、鏡夜、アーチャーは思考を開始する。こ時代、特にこれと言った国同士の小競り合いも戦争も無いはずだ。それなのに何故この様な野良で兵士達が争っているのか。その答えは、可能性だが、"聖杯"にあるかも知れない。

 

いずれにせよ何か手がかりになる物が掴めるはずだ。彼らは積極的に諍いに首を突っ込む程の、高尚な趣味趣向は持ち合わせてはいないが。

 

 

ーーーそうだ、ちょうど良い。

 

ジャンヌのスキル"聖人"は選択肢の中から選んだ能力を保有しているらしい。当人は"聖骸布の作成" 選択した。実は昨日、遊び半分でその能力を試してみたのだ。

結果完成したのは試作品一号、「目がよくなーるくん」改め「千里眼の聖骸布」である。ジャンヌ曰く「それこそアーチャークラスの千里眼になれる」一品だとな。では実際に活用してみようか。

 

赤い布を額に巻き、ゆるりと目を閉じる。数秒の間を挟み、今度はひっきりと双眼を閉ざす瞼を開いた。視えるーー!

 

 

「よしOK、きちんと機能してるな。アーチャー、ちょっと偵察行こうぜ」

「賛同しよう。では凛、私と鏡夜は先導し様子を見る。君達はゆるりと後をついて来てくれ」

「よし、強化全身へ……っと。準備完了!」

 

 

 

 

ーーーさて、方や文字通りの大軍。方や蹂躙されかかっている少数編成の部隊。果たしてどちらが味方なのか。

 

少数編成の方は赤い服を着た女性が、それこそ百人力とも呼べる猛威を振るい、たった一人で複数人を相手取っては倒して行く。まさに一騎当千、それはサーヴァントにも匹敵するだろう。

そして大軍の方は、僅かな足取りだが確実に数が減っていっている。それでも未だ赤に勝機が見えないのはそもそもの人数の格差が起因だろう。物量で攻めろとはよく言った物だ。

 

 

ではどちらを助けるべきとして見定めるか。鏡夜とアーチャーは冷静に今現在の状況を把握する。待て、そう言えばあの大軍の進行方向、街が無いかーー?

 

 

「アーチャー、俺は赤い方に味方したい。お前は?」

「おそらくそれが正解だろう。見れば大軍の方は首都に攻め込もうとしている。あの赤が敵か味方かはこの際関係無い、まずは人々の平穏の守護だ」

「ーーーヘッ、やっぱりそう言うと思ったぜ」

 

 

鏡夜はパスからクロに念話と飛ばす。

 

 

『クロ、そこから右に回ってあの大軍の背後から強襲してくれ』

『あ、はい。了解です』

 

 

アーチャーは黒塗りの弓と捻れた剣を投影する。相変わらずその精度は高い。本人の研鑽の末、最も自身と相性の良い形で作り上げた何の変哲も無いその弓は、元を辿れば魔術師である鏡夜からすれば充分宝具足り得る逸品。無骨なデザインが更に彼の心を躍らせる。正直、欲しい。

 

思考を振り切る。余計な事は余裕のある時にでも回そう。今するべき事は大軍の無殺傷排除。

 

 

「おいアーチャー、間違っても殺すなよ?」

「君こそ、出力の調整をミスってくれるな」

 

互いが不敵に、そしてイヤらしく微笑う。そして鏡夜は魔力塊の矢を、アーチャーは剣を改造した魔剣矢を、全くの同時に射る。

 

 

 

 

ーーーそれは赤からすれば僥倖だった。

己が国を守る為に数少ない兵を率いて大軍と対峙したものの、あまりの戦力差ーーーざっと100対1だろうかによりいつまで待っても敵兵は衰えを見せず。寧ろこちら側が消耗に前進している最悪の状況。下手をすれば、国が盗られるーーー!

 

その不安の中、一筋の矢が飛来した。戦場のちょうど真ん中に矢は突き刺さり、間髪入れず爆発した。幸いこちらの兵はそれに巻き込まれず、不幸に敵兵もその爆発の餌食になった者はおらず。さて、矢は何処より飛来したのか。疑問に尽きる。

 

 

その最中、大軍の後方より野太い悲鳴が響いた。見れば名も知らぬ者達が大軍の兵達を、不殺を貫きつつなぎ倒しているでは無いか。そしてそれを支援するかの様に、降り注ぐ矢と乳白色の実体を持たぬ槍。一気に。まさしく一気に形成は真逆に逆転した。

 

 

「これはーーー?」

 

 

思わず言葉を漏らした。唐突な現実に思考が追い付いていない。故に赤は本能的な疑問の言葉を呟くだけで終わってしまった。

その彼女へ白い鎧に身を包んだ少女が駆け寄る。赤から見ても、まるで聖人の様な気高さを感じさせる少女は、聖母の如き慈愛の笑みを浮かべ彼女に問うた。

 

 

「失礼、護国の将とお見受けします。あの軍隊はあちらの街を攻め立てているーーー違いますか?」

「う、うむ。其方の言う通りだ。奴らは我が国の敵である」

「(アルトリアさんに似てますね。あ、でも胸がーーー失礼。人のコンプレックスに触れてはいけません)承知しました。我らは旅の者。ひとまず貴女に加勢しましょう」

 

 

赤は一抹の希望を彼女に見出し、身元を問わぬままに、その背中を預けた。

 

ーーー奮起。愛しき国を護る為にも、まだこの身は止まってはならぬ。




あ、カルデア勢は二章終了時に登場すると決定しました。楽しみにされている方々、今暫くお待ちください。

ところでオケアノスピックアップガチャ、意外とラインナップが良かったですね。一瞬引こうかと迷いましたよ。危ねえ危ねえ、私はモーさん待機組なんだ。鉄の意志と鋼の強さでガチャ欲を堪えるぞ。


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