喫茶店経営している場合じゃねえ   作:気宇

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ああ、伝え忘れていたがーーーアサ子は童顔だ。

ーーーFake本編では割と大人の顔だったが……
ーーー店長のアサ子は顔がロリってる。

以上、特筆事項第一でした。


洗礼詠唱

洗礼詠唱は続く。

 

ジャンヌ・ダルクとゲオルギウスの二名により、ジークフリートにかけられた多重の呪いの解呪が行われている。穏やかな光が彼らを包んでいる。集中力を削いでは、と鏡夜達は砦の外側で待機していた。

 

 

と言うが、実際は鏡夜の回復を守護する状態だ。モードレッドを筆頭に見回りを続け、敏捷が一番高いアサシンが鏡夜の真横で待機している。いざとなれば、鏡夜を連れて遠くまで脱出出来る。マスターとはサーヴァント達の心臓。サーヴァントはいざとなれば霊体化、と言う事もあるが生身の人間にはそうもいかない。

 

既に保有するメイン魔術回路41本の内2本が壊死してしまっている。魔術回路とは擬似神経、一度失えば二度と再生はしない。サブから回せば良いが、このペースで行けば後何年持つのか。

 

そうやすやすと命を捨てる真似をする程、歪なワケでも擦り切れているワケでも無い。だがしかし、此度のみは何故か命を投げ捨ててでも、と覚悟を決めていた。おかしな話だろうがどうしても彼女だけは見捨てられない。

 

ーーー白も黒も助ける

 

 

欲張りだろう。傲慢だろう。そんな不安定な物を追うこの身は歪んでいるのだろう。

いいや、面白い。彼の英雄王も言っていたでは無いか。欲などいくらでも張れと。

 

 

ーーーフランスに来た時からそうだ

 

何かに引っ張られる感覚が絶えない。それと同時に、知りもしないはずの事実を知っている。更に並行して夢が膨れ上がった。それこそ手がつけられ無い程にまで。けれども悪い感覚はしない。何か、何か大事な事を思いだけそうな気がする。何か大事な事を思い出せている気がする。

 

 

「…ちょー、店長さん」

 

「……?ああアサシン、どうかしたか?」

 

「店長さん難しい顔をしてる…。悩み事があるなら相談するべき…」

 

「…そうか?いやな、少し考え事をしてた。ありがとな」

 

「ん」

 

 

ぽんぽん、とアサシンの頭を撫でる。全身に治癒魔術が浸透した為にある程度融通が効くまでは回復していた。

 

しかしアサシンに配慮されるまで思い詰めていたのか。いやはや、存外自分の事は理解出来ない物である。起源が起源だけに……と踏んでいたが、結果には裏切られた。結論から言えば、この謎の現象に対する理解は無い。

 

 

「そう言えば清姫、あの仔イヌの事をどう評価する?」

 

「私ですか?そうですね…とても優秀な方だと思いますよ。実力然り、精神面然り」

 

「やっぱり?でも私は他のマスターに狙いを定めてあるから。それこそ月辺りにいる」

 

「私は2015年辺りに好みの方がいるので」

 

「何でそんな事分かるのよ」

 

 

ーー

 

 

 

「みなさーん!ジークさんの解呪が終わりましたよ!」

 

「成功しました!彼はこれで自由です!」

 

「すまない。俺の所為で手間をかけた。だがその分働くと誓おう」

 

心無し…と言うよりはっきりと分かる。ジークフリートの顔が穏やかな物に変わっていた。呪いの痛みも重圧も全部とれたのだろう。これで戦力が揃った。

 

 

「ありがとうジャンヌ、ゲオルギウス。…よし!」

 

周りを見る。サーヴァントが九人。そして彼らの視線を受けるこの身が一つ。

 

「セイバー・モードレッド、セイバー・ジークフリート、ランサー・エリザベート、ライダー・マリー、ライダー・ゲオルギウス、キャスター・アマデウス、アサシン・無銘、バーサーカー・清姫、そしてルーラー・ジャンヌ。これで全員だ。やるぞ貴様ら」

 

 

ーーーオルレアンを墜とす

 

 

ーーーーーー

 

ーーーー

 

ーー

 

 

 

ーーー白い

 

真っ白な空間がひたすら広がっていた。そこには天井も床も、窓も扉も無い。ただ単に白いだけの永遠空間。人影も無いし、物も無い。

 

ここはどこだ?

 

確か自分は眠りに就いたはずだ。明日はいよいよ黒い彼女との決戦。休める時に休んでおけ、とのジャンヌのアドバイスを聞き入れての事だ。見回りは他のサーヴァント達が交代でやってくれるらしい。つくづく彼らには頭が上がらない。

 

過去の整理は完了。さあ、ここはどこだ?

 

この身体に、この精神に、何かしらの魔術がかけられた痕跡は無い。つまり仮結論を導き出すならば、ここは夢の中。あるいは精神空間。どちらにせよその類だろう。

 

 

さあどうしたものか。夢ならともかく、自身の精神空間に迷い込む程精神を磨ぎ澄ませた訳でも無い。第三者の手によって引きずりこまれた、と言う訳でも無さそうである。そもそもそんな事を可能にするのは彼らの組み合わせしかあり得ない。

 

 

ーーーアハハ、起きた?ごめんごめん、急に連れ込んだから混乱してるでしょ?

 

 

声が響く。十代半ばの女の声。耳にするのは初だが、それが纏う独特の味には確かに、記憶がある。

 

 

……ばーちゃん?

 

 

ーーーせいかーい!流石キョウちゃん、話が早くて助かっちゃうよ

 

 

……嘘だろ?ばーちゃん、だって昔に俺に看取られて……

 

 

ーーーんー?ああ、その話はまた今度。今日は君に伝える事があるからねー。

 

 

……話?俺にか?

 

 

ーーーそーそー。扉をノックしてごらんよ。面白い物が見られるよ

 

 

……面白い物?何だよばーちゃん、その面白い物って?

 

 

ーーーさあねー?ほら、そこにある扉。ああそれと、愛しのばーちゃんから助言をあげるよー。

 

 

……ばーちゃんの助言か。そりゃ助かるな。

 

 

ーーーじゃあ言うよ。君の想いは届く。なおも貫き続ければ、の話だけど。ほら、最後に愛は勝つって言うじゃん。世界からの修正を受けても、約500年の研磨の後にもその夢を覚えているキョウちゃんの愛はホンモノだよ。だから肩の力を抜いてごらんよ。君が誰であれ、その夢は君の物なんだからさ。

 

 

……愛は勝つ、か。そうだな。ありがとうばーちゃん。それじゃあまあ、(オレ)の愛であいつに説教喰らわせてやる。

 

 

ーーーキハ、キハハハハッ!キハハ!ああ、ああ、もうやだ、最ッッ高だよ!ヤダヤダ、胆管と脾臓がよじれちゃう!流石私の孫‼︎ハハッ、ばーちゃんは遠くから見守ってるから、頑張ってねー。

 

 

 

……扉。この黒い奴か。ばーちゃんの言う事だからミスって事は無いだろうが…。ええい南無三。どうせ精神空間だ、死にゃしない。

 

 

 

世界が黒く染まる。その深淵の闇の奥、祖母が指し示していた"面白い物"の断片を掴んだ。

 

 

 

ーーーああそうだ、こんな男が。こんな男が、いたのだったな

 

 

ーーーーーー

 

ーーーー

 

ーー

 

「んー!よく寝たっと」

 

「あ、おはようございます」

 

「ああ清姫さん。おはよう」

 

 

欠伸、手を組み天空へ向けて引き延ばす。昨晩は奇妙な夢を見たが、どうにか目覚めは良い。

すると清姫が濡れたタオルを持って来てくれた。一言礼を言い、力強く顔を拭く。ひんやりとした冷たさがまだ眠気の残る意識を刺激し、覚醒を促す。

 

 

「ぷはー!よし、朝ごはん作るか。腹が減っては戦は出来ぬと言うしな」

 

「そうですね。あ、一つ聞いてもよろしいですか?」

 

「ん?ああ、別に良いよ」

 

 

その問いは別段何難しい訳でも無かった。それでも彼女は神妙な顔付きで、まるでこちらを見定めるかの様な雰囲気を纏っている。

ーーーそんな物決まっている。答えははい、イエスだ。

 

何故この問いを投げかけたのかは分からない。いやもしかすると、彼女は人の心を読むのが得意なのかも知れない。更にもしかすると、自分はまた難しい顔をしていたのかも知れない。

 

頬をいじめる。グニグニと音が出そうな程、指先でほぐす。思い詰めるな、簡単な話だろう。

 

 

「そうですか……。うん、それがよろしいでしょう」

 

「誰かから応援をもらうと安心だ。それじゃあ、俺は準備に取り掛かる」

 

「私は皆さんを呼んで来ますね」

 

ーーーー

 

ーー

 

城が見える。彼の地の天空には無数の、数えるのもバカらしい程のワイバーンが交錯し旋回している。あの数を相手取るのは不可能に近い。

 

さて、状況整理を始めよう。敵は黒ジャンヌ、カーミラ、ヴラド三世、ファブニール。そして無数の雑魚達。対してこちらに被害は0。強いて言うなら鏡夜の魔術回路が二本、死んだ事だろうか。

本当に今までよくやって来た物だ。それも全てサーヴァント達の助力と奇跡が重なった結果だろう。敵はオルレアンにあり。

 

 

「ファブニールは俺とマスター、聖ゲオルギウスで受け持つ」

 

「ええ。竜殺しと竜を殺した話の残る私、そして鏡夜さんが一番適任でしょう」

 

「私はちょっと因縁のある奴と戦うわ。終わったら手伝ってあげても良いけど」

 

「私とアマデウス、清姫さんはワイバーン達の相手ですわね」

 

「僕は肉弾戦に不向きだしね」

 

「火を吐くのは得意なのでお任せを。あんな爬虫類モドキには負けません」

 

「ヴラドは任せな。オレがぶっ殺す」

 

「セイバーは妄想心音(ザバーニーヤ)で確定1発…」

 

「黒い私は私の役目です。…やります!」

「そうだな。ああジャンヌ、黒いあいつを倒したらトドメを刺さずに抑えていてくれないか?一発頭にゲンコツ落として話がしたい」

 

「…え?はい、わたしも彼女に聞きたい事が山ほどあるので」

 

 

目標は定まった。向こうにこちらの位置が筒抜けな以上、残された選択肢は最悪の正面突破しか無い。

 

小さく笑う。そうだ、あの時もこれに近い絶望的な状況だったては無いか。いつだって正面突破。真っ向から敵を粉砕する。

 

ーーーさあ行こうか。ゴールはもう見えている




最近の妄想まとめ
・店長&店長ジャンヌがapoジャンヌと出会ってジー君捜索
・店長&ジャンヌ、ごちうさ時空に突撃
番外編の予定変更してこれらやろうかしら。

はい、凡夫です。駄目人間です。実は店長の正体を紐解くキーパーソンはジャンヌでも旦那でも無くばーちゃんだったりするかも。そして今回のばーちゃんの口調で正体が分かった方もいらっしゃると思います。

洗礼詠唱終了。後は突撃するだけ。次回の更新は数日お待ち下さいな。書き溜めが0に至ったんです。助けてケリィ。

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