喫茶店経営している場合じゃねえ   作:気宇

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お久しぶりです。色々な事に追われた結果、約二週間以上に渡って更新をサボった事を謝罪致します。情けねえ。

それでも更新するのは番外編と言うね。すまない、神のお告げが来たんだ。本編次回(お風呂)はもう少し待ってくれ。本当にすまない。


お酒は怖い I

「なあキョーヤ」

「どうかしたかモードレッド?」

 

 

カウンターの向こうでカップを磨く鏡夜の顔を見つめながら、モードレッドは不満そうに足をブラブラさせ声をかけた。鏡夜的にはこれと言ってモードレッドの機嫌を損ねる様な真似はしていないのだが。

モードレッドは右腕で頬杖をつき、落ち着いた内装の喫茶店内を顔だけを動かして見回す。

 

やっぱり、無い。

 

 

「ここって食い物屋だよな?」

「喫茶店だからそうなるな」

「んじゃさ、何で酒樽の一つも転がっねェんだ?」

 

 

成る程、納得。

どうやらモードレッドは酒が飲みたいらしい。フランスからの帰還から早数日、更に召喚されてからかなりの日数が経過した今。すっかり現代に順応したとなるとアルコールの一つでも欲しくなるのは当然だろう。

隠す理由も特に無い。鏡夜はカウンターの足元にある引き出しを開け、モードレッドにこっちに来いと言った。鏡夜に指差された場所を見ると、数多くの瓶がそこには保管されていた。

 

 

「ほら、ここにある。子供達の目に付けたらいけないから出して無いだけだ」

「おお!山程あるじゃねえか!なあキョーヤ、一本くれ!」

「バイト代から天引きな」

「頼む、くれ!金がねえんだよ、この前のアサシンの一件で」

 

 

この通り!と腰を折り頭の前で両手を合わせて見せるモードレッドに、鏡夜は軽く溜息をついて見せた。しかしどうして、空白鏡夜と言う男も身内に甘い。それに「ばーちゃん」の教えの中の「女の子には優しくしてあげなさい」と言うのを思い出した彼は、今回限りはタダでくれてやるかと考えた。

しゃがみ、薄茶色の瓶を取り出す。ラベルにはフランス語で酒の銘柄が書かれている。それを指差し、鏡夜はモードレッドに音を聞かせた。

 

 

「アブサント。ヨーロッパ各国で作られるアルコール度数の高い酒だ。最低でも40%はある。これは……うん、67%だ。モードレッド達の時代には蒸留技術何て無かったからな、刺激的な体験が出来るぜ」

「おおー!流石キョーヤだぜ!」

 

 

手渡しで受け取った酒瓶を頭上に掲げ、モードレッドは子供の様にはしゃいだ。それを微笑ましく見ていた鏡夜だが、突然何かを思い出したかの様に抜けた声をあげた。

 

 

「あ、そうだ。夜までは飲むなよ。陽の高い内に酒に浸るのは道徳的にもよろしくない」

「わぁってるよ。それぐらいは守る」

「それとだな。決して、『ジャンヌに酒を飲ませるな』よ」

 

 

真剣な顔をして忠告をして来た鏡夜に圧されたモードレッドは、数秒の間を経て同意した。

鏡夜は一息をついて安堵する。アレは彼だけが知っておくべき事なのだろう。しかしてそれと同時に、アレは、思い出したくない。特に前世の記憶が欠片ずつだが蘇って来たここ数日では、より強くそう思うのだった。

 

 

ーーーー

 

ーー

 

 

「とは言え……」

 

 

モードレッドと言う人物は非常に活発だ。そして好奇心にも溢れている。ならば、鏡夜があれ程釘を刺せば逆効果なのだ。それこそ、「その箱を開けるなよ⁉︎絶対開けるなよ⁉︎」と言った類の、所謂フリの様に受け取ってしまう。

もちろんその後のお説教は怖い。仮にだが「晩飯抜き」何て言われたら心が折れる自身がある。まあもしそうなれば、父上の居候先(衛宮邸)(正義の味方)に晩飯をたかりに行くだけなのだが。

 

 

「うし、やってみますか」

 

 

時刻は午後の9:30分。そして鏡夜は丁度、入浴中だ。これ程都合の良い時間もあるまい。思い立ったが吉日、モードレッドは早速ジャンヌに酒を飲ませる準備を開始した。

 

 

「ええと……。角砂糖を垂らせば良いのか。そのまま飲むのはキツそうだからな。食器棚食器棚っと」

 

 

リビング兼ダイニングルームの奥にある食器棚を漁る。昼間鏡夜に説明された「アブサンスプーン」なる物がしまわれているはずだ。彼曰く「アブサンスプーンをグラスの上に置き、その上に角砂糖を置く」らしい。少々回りくどいが、これはこれで面白味があるとモードレッドは思った。

準備完了。特徴的なスプーンを橋渡しし、その上に角砂糖を一つ置く。仕上げにそれを水滴で湿らせ、着火。マッチを近づけられた角砂糖はロウソクの様に、その身に小さな炎を灯し始める。

 

 

「おお!こりゃ楽しいぜ!燃ーえろ燃えろ……あ、換気扇」

 

 

危ない、怒られる所だった。屋内で火を使う時は換気をしっかりと。ここへ来てから最初に教えられたルールの一つである。

モードレッドはグラスをテーブルの上に運び、自らはその前に腰掛けその光景をぼんやりと眺める。確かある程度燃えたらミネラルウォーターで消化するはずだ。ふと思い出したモードレッドは素早い動作で冷蔵庫前に移動し、中から500mlのペットボトルを取り出した。うん、頃合いも良いだろう。

 

 

「よーし……行けっ!」

 

 

一思いに水をかける。ジュッと音を立てた火は消され、グラス内の若緑の液体に水が注がれて行く。それが混ざった事により薄緑は更に薄くなり、最早緑と言うよりは緑風味の透明、と言う状況にまで変化した。これで良いだろう。もう、飲める。

 

 

「ジャンヌの奴は部屋にいたかな。早速呼びにーーー」

「お腹が空きました〜」

 

 

何やら比較的大きな声で呟きながら、ベストタイミングでジャンヌが扉を開けリビングダイニングへ入って来た。モードレッドは手間が省けた事に少々喜ぶ。

さて、ここからが手腕の見せ所だろう。如何にしてもジャンヌ・ダルクにこのアブサントを飲ませるか。そのままグイッと行ってくれれば問題無いのだが、彼女の性格からしてやれ未成年だからだのやれ宗教的なあれだの諸所の弊害が考えられる。

 

ーーー城を落とす。

 

モードレッドの目が野獣の如き眼光を見せた。気分はまさに城落としのそれ。まずは一石を投じてみよう。

 

 

「ようジャンヌ。そこに菓子パンがあるぜ」

「あ、じゃあ貰っちゃいますね」

 

 

(今だーーー!)

 

 

好機と断定したモードレッドは、ジャンヌがグラスに興味を示す事を狙い、それを軽く指で叩いた。軽い音が鳴る。

 

 

「おや?それは一体?」

「ああ、キョーヤから貰ったアブサントっつー酒だ。結構美味いぜ、飲んでみるか?」

 

 

さあどう答えるジャンヌ・ダルクよ。

モードレッドに緊張が奔る。飲むか、飲まないか。確率は二つに一つ。

 

 

「うーん……折角ですし一口味見してみても?」

「(キタァっ!)良いぜ、ほら」

 

 

右手でグラスを持ち、ジャンヌへ差し出す。礼を述べたジャンヌはそれを手に取り、ゆっくりと口に近付ける。

モードレッドの視線がジャンヌの口元に固定される。液体が飲み込まれる瞬間を今か今かと待つ。

そう言えば酒など記憶の限りでは飲んだ事が無いと思い出したジャンヌに一抹の、未知への恐怖が湧くが、別に死にはしない。そう思い、覚悟を決めて喉に流し込む。

二、三口飲んだだろうか。ジャンヌはゆっくりとグラスを再度テーブルに置いた。

 

モードレッドは硬唾をごくりと飲み込む。果たして、一体どの様な変化が訪れるのだろうか。悪酔いして誰とも構わず絡むのか、それとも山羊酔いして身体をベタベタ触る様になるのか。いずれにせよ、普段は見る事が出来ない一面が露出するはずだ。

 

 

「ど、どうだ……?」

 

 

恐る恐る尋ねる。するとジャンヌの身体が僅かに動き、左腕がスローモーションで昇って来た。続けて、親指が立つ。所謂、グッドのポーズ。

 

 

「バリバリ行けてますねえコレ!よし、ちょっとマスターのお背中流して来ます!」

 

 

この瞬間、モードレッドは自らの行いを真なる悪だと後悔した。

 

 

ーー

 

 

「ん?誰だ……ってジャンヌ⁉︎」

「えっへへ〜〜。ましゅたー、お背中お流ししましゅよおー」

「待て待て待て!何があったんだ⁉︎てか酒の匂いが!お前飲んだな⁉︎」

「ふぇ?何の事でしょうか〜?」

「さてはモードレッドの奴…!釘を刺したのが逆効果だったかああ‼︎」

「うるしゃいですよましゅたー」

「舌!舌が回ってない!て言うか出ろよ!今すぐ出ろよ!」

「む〜〜。つれないですねえ」

「だ、誰か来てくれええ‼︎」

 

 

約二分後、風呂場から聞こえた会話を抜粋。




おっp……槍師匠来ましたね。まずは先行して呼符三枚。タマモキャットさんが来たぜ!地味に嬉しい。
ところでディルムッドよ、お主何故脱いでおるのだ?野郎のヌードには興味ねえよ。

槍師匠体験クエ瞬間、登場予定サーヴァントに改変が生じたのはここだけの話し。
体験クエとかFGOプロデューサー有能じゃん(熱い掌返し)

最近話題なのはガールフレンド(♪)ですね。怒涛のメンテ一週間越え。GFO、つまりFGOの法則は続く。
おい庄司プロデューサー、お前負けてるじゃん(メンテ時間的な意味で)

あ、お酒は後一回か二回続きます。

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