喫茶店経営している場合じゃねえ   作:気宇

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ノリとテンションだけでやってしまった。反省も後悔も無い。前々から暖めていたネタです。シリアス続きに対する中和剤としてどうぞ。

所謂パラレルワールドです。条件付けするならば

・三人のテンションが200%
・ワイバーンが一頭
ですね。戦闘描写も薄いですので、勢いだけをお楽しみください。


番外編:モンスターハンター(英雄)

ワイバーン、幻想種。所謂ドラゴンの仲間。過去の英雄の記録を漁れば、ドラゴンを鎮めた…やドラゴンを恋に落とした…などが複数出て来るが、この1400年代にそれが目撃されたと言う物は、少なくとも歴史上には記録されていない。

ならばきっとこれは聖杯、ひいては人類滅亡の影響だろう。本来存在しないはずのワイバーンがこちらへ飛翔しているのも、大方聖杯を悪用する者の手段の一つ。この国を完全な焦土に変える手法だ、と推測出来る。

 

 

兵達の士気は最低。まともに取り合う事なく、これを死のお告げとして受け入れるに違いない。…ああそうさ、それは許容できぬ案件だ。ならば我らが立ち上がるまで。

 

 

「ルーラー、セイバー、アサシン。やるぞ」

 

 

彼女らをクラス名で呼ぶ行為が、スイッチの切り替えの合図。ワイバーンの到着まで、推測残り十数秒。それだけあれば迎撃の準備は整う。

 

鏡夜が出来る事は少ない。ならばその少ない事に全力を尽くせば良い。魔術回路に火をいれ、唸らせ、十二指腸から小指の爪先までに魔力を流す。単純な散弾による妨害と援護。自慢では無いが、これはかなりありがたいとジャンヌの談だ。

 

ーー視認。数は一。ワイバーンの実力がいかなる物かは知りはしないが、おおよそ負ける気配は無い。そして勝利を決定付けるのはアサシンの戦闘能力次第だろう。

 

 

「よっしゃ、行くぜ。フォーメーションをDに!」

 

「「了解!」」

 

「え?フォーメーションDとか聞いてない」

 

 

そんな鏡夜の困惑など露知らず。モードレッド、ジャンヌ、アサシンの三人は飛来したワイバーンを取り囲む様に陣形を取る。

遅れて鏡夜も理解したらしく、間隔の広かった座標へその身を置いた。モードレッドは王剣を、ジャンヌは聖旗を、アサシンはダークをそれぞれ構える。

 

 

「一狩り行こうぜぇぇ‼︎」

 

「「一狩り行こうぜ‼︎」」

 

「何か始まった⁉︎」

 

 

モードレッドは前転し、着陸していたワイバーンの懐へ忍び込み抜刀。縦斬りの後、刀身を使った横殴り。

ジャンヌは穂先の剣を光らせ、跳躍から放たれる思い一突きを繰り出す。丁度剣は脇腹付近を捉え、そこから血が流れた。

アサシンは遠くからモードレッドとジャンヌの行動を阻害しない様に、計算された位置にダークを投擲する。刃には毒が塗りたくられており、傷からそれを流し込まれたワイバーンは重苦しい苦痛の声に喘いだ。

 

 

だが大人しくやられるワイバーンでは無い。飛翔、上空数100メートルの地点を旋回し、こちらの様子を伺う。モードレッドが舌打ちをこぼし、アサシンが指で大気をボードに計算を始めた。

 

ワイバーンの本能が作戦を決定したのか、旋回状態を継続し、口から火球を投げる。それぞれが前転、バックステップ、軽い跳躍でそれを回避し、身体を反転させ視界の中にワイバーンを映した。…未だワイバーンは降りて来ず。

 

 

「チッ、ワールドツアーかよ」

 

「どうします?閃光玉投げますか?」

 

「なら私に任せて…。得意」

 

ジャンヌから手渡された白色の球体を、アサシンはワイバーン目掛けて天に投げつける。重力に逆らい続け、やがてワイバーンの視界に侵入した球。その瞬間に、弾けた。

 

刹那的だが、太陽がもう一つ現れたのかと錯覚する程に強い閃光を放った。そんな物を眼前で見ればたまったものでは無い。その通りらしく、ワイバーンは力無く落下して来た。…今頃視界は暗黒に染まっているのだろう。

 

落下地点へ全速で駆け出した彼女達は、己が得物でこれでもかとワイバーンを斬り付ける。いやよく考えれば、何故ワイバーンはまだ生きているのだろうか。

 

 

モードレッドの溜め斬り。それは大地すら斬る程の重厚な一閃である。何を思ったか、モードレッドはその重撃をひたすら、尾部に与えていた。

アサシンはダークで頭部を執拗に攻める。それはまるで炭鉱夫。硬い岩盤を削るかの様な手つきだ。

ジャンヌは剣でワイバーンの腕部を屠る。その行動にどの様な意図が隠されているか分からない鏡夜だが、それでも彼女達を止めなかった。蚊帳の外とはこの事である。

 

ワイバーンが頭部をしきりに振り、再び蒼天の中へと両翼を広げた。おそらくは逃亡する魂胆だろう。いや、ワイバーンの願望は叶わない。何故ならここには

 

ーーー血に飢えた狩人がいるのだから

 

 

「タマよこせぇぇぇええ‼︎」

 

「落ちろぉおおお!」

 

「新しい武器……!」

 

 

モードレッドとジャンヌが手を合わせて作った人間踏み台を、アサシンが軽やかな足取りで踏み付ける。呼吸を合わせ、腕を振り上げ、アサシンを上空へ押し出す。

羽ばたき初めより間の無いワイバーンは、そこまで高度に辿り着いていない。すなわち、アサシンはその背に騎乗する事が可能。

宙返りを決め、背に足をつけたアサシン。今、彼女の宝具が明かされる。

 

妄想心音(ザバーニーヤ)

 

真名解放と同時にアサシンの肉体が変質する。腕が編まれ、呪いが付与され、けたたましく第三の腕は天を貫く勢いで唸った。

風でローブがはためく。鱗にしがみつき、身体の安定を確保したアサシンは直進的に、ワイバーンの背に呪いの腕を穿った。

 

引き抜く。彼女の腕に握られたのは鏡面心臓。たった今彼女が騎乗しているワイバーンの心臓のコピー。それを握りつぶす事により、妄想心音は終息へ至る。

 

ーーー潰す

 

エーテルで組まれた鏡面心臓は潰しても音はしない。かわりにワイバーンの喘ぎが響くのみ。呪殺により心臓、つまり核を殺されたワイバーンはもう一度墜ちた。

 

 

 

 

ふと鏡夜は、ワイバーンの亡骸の一つに触れ、小さく詠唱を唱えた。

脳裏にモヤがかかり、死したワイバーンの本能から全てを吸収し、理解する。

 

「……!」

 

ワイバーンを統率する、黒い巨大な影を見た。それでもその姿だけで、名と正体までは、理解出来なかった。

ーーーーーー

 

ーーーー

 

ーー

 

 

「お、何か分厚い鱗がとれたぜ」

 

「私なんて光る球が手に入いりましたよ。紅玉です」

 

「これで新しい武器が作れる…」

 

 

彼女達が何をしているのか、鏡夜にはさっぱり理解が出来なかった。いや少なくともこれは分かる。ワイバーンは屈辱の中で死んだのだろうと。しっかり弔ってやろう。

 

 

「何作ります?」

 

「うーん……太刀かな。大剣は間に合ってるし」

 

「私は双剣…。そう言うジャンヌは?」

 

「私はそうですねえ。アックスに興味があります」

 

 

ーーーこの世界はゲームじゃねえぞ。

 

 

鏡夜的には時代が時代だけに聖女っぽく振舞って欲しかったが、どうやらその願望も打ち砕かれた様だ。今のジャンヌは聖女ジャンヌでは無く、村娘Aのジャンヌである。

 

そう遠くない所から大数の咆哮が聞こえる。先程の自分達の戦闘を見ていた兵達に士気が戻ったのだろうか、それともただ単に興奮しただけなのか。どちらかは分からないが、前者ならとてもありがたい。

 

話を戻そう。砦では魔女の存在を知る事が出来た。おかげで当面の目標も定まる。次はその魔女に関する本格的な情報、例えばどこに出没するかなどが欲しい。つまりはこの砦を後にする必要がある。では、どこへ向かえば良いのだろうか。

 

 

ーー答えはオルレアン。ジャンヌ・ダルクの生まれた地。そこならば何かしらの情報が、あるいは魔女が潜んでいる可能性がある。例え魔女と呼ばれ復讐心を滾らせていても、帰巣本能は残っているはずだ。いや、自分が黒ジャンヌの立場ならば故郷を覗くだろう。

 

 

「と言う訳だ。ジャンヌ、覚えている範囲でオルレアンへの案内を頼む」

 

「お任せを。この一帯は生前の記憶があるので問題ありません」

 

 

今だけはジャンヌが物凄く頼りになる。そんな彼女を筆頭に、鏡夜達はオルレアンの地へ足を進め始めた。

 

日差しが強く照り付ける。鏡夜達を待ち受けるは希望か絶望か。それは誰にも知り得ない。それでも彼らは前へ進む。




モーさん「お、タマ採れた」
ジャンヌ「アサシンはどうですか?」
アサシン「私も採れた…」
店長「(ワイバーンって焼いたら食えるのかな?)」

こんな時でも料理優先の店長マジ店長。なおワイバーンの皮はモーさんによって鎧に取り付けられた模様

※本回はネタです。本編に還元される事はありません。

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