クロスオーバー! REBORN!×名探偵コナン 作:cibetkato
一方、ツナは、子ども達に連れられて、喫茶店“ポワロ”の前までやってきていた。
「お~、ここがイーピンが一時期バイトしてた“ポワロ”っていう喫茶店?」
そう訊きながらイーピンを振り返ると、彼女は満面の笑みをうかべる。
「そーデス!・・・マスターも、梓サンも、とっても、良い人デス」
「そっか、じゃあ、後で挨拶に行かないと・・・俺はイーピンの保護者でもあるんだから」
「はい!」
頷くイーピンに、ツナは柔らかな笑みをうかべる。
その笑みがあまりにも綺麗な笑みだったので、子ども達はぼうっと見惚れてしまう。
「ん?どうしたの?皆」
クスクスと笑いながらツナが問いかけると、ハッとした子ども達は、何でもないと、ブンブン首を振る。
「そう?・・・じゃあ、毛利さんに会わせてもらっても良いかな?」
「多分、いると思うけど・・・」
コナンが呟きながら、喫茶店脇の階段を駆けあがって行き、他の子ども達もその後に続いて行く。
「・・・ねぇ、イーピン・・・」
「なんですか?ツナサン」
「・・・あの子、コナン君、だっけ・・・どこか、他の子と違うって思ったことがある?」
「ええと・・・時々、大人みたいなことを言いマス・・・色々な事件で、警察にも協力してるみたいデス」
「そう・・・ありがとう」
ツナは頷くと、わずかに表情を曇らせる。
「・・・ツナサン?」
イーピンが心配そうに顔を覗き込んでくるので、ツナは苦笑する。
「大丈夫。ちょっと気になっただけだから・・・心配ないよ、イーピン」
「ツナお兄さん!!おじさん、いたよ!」
そこに、歩美が2人を呼びに来る。
「・・・良かった、じゃあ、行こうか」
ツナはそう言うと、歩美に手を引かれ階段を上がって行き、それを見て、イーピンも慌てて着いて行く。
「ツナお兄さん、呼んできたよ!」
歩美に連れられてツナが事務所の中に入ると、そこには、既に先客がいた。
「あ、お仕事中にスミマセン・・・僕は、沢田綱吉といいます」
「俺が毛利小五郎だ・・・こちらは警視庁の佐藤刑事と高木刑事」
「どうも」
「こんにちは」
ぺこりと頭を下げたツナに、佐藤や高木も頭を下げる。
「それから、こっちが娘の蘭、その友人の鈴木園子さんだ」
「こんにちは」
「はじめまして!」
「こんにちは。・・・鈴木さんは有名ですよね、鈴木財閥の2番目のお嬢さんだったと記憶してますけど」
「当たりです~!良くご存じなんですねぇ!」
想像以上に綺麗な男性が現れて、園子は完全に舞い上がっていて、その脇で蘭が苦笑をうかべる。
「ええ、日本の財界には知り合いも多いものですから」
ニッコリと笑うツナに、園子は頬を赤らめる。
「それで、沢田さん、と言いましたか、私に会いたいとかいうことでしたが・・・何か、ご依頼ですか?」
小五郎が問えば、ツナはコクリと頷いた。
「ええ、是非、名探偵の毛利小五郎さんにお願いしたいことがありまして、イーピンに無理を言ってしまいました」
「えーと、じゃあ・・・僕達は、これで・・・」
高木がそう言いながら佐藤を促そうとすると、ツナがそれを止める。
「あ、良いですよ、警察の方もお仕事で来ているんでしょうし」
「え?」
仕事で来ているなどという雰囲気は臭わせていなかったはずだが、と佐藤が首を傾げると、ツナは苦笑した。
「僕、勘だけは妙に鋭いんですよ・・・この力を意図して使うようになってから、百発百中ですから」
「意図して使う・・・ですか?」
「ええ・・・“そういう”血筋なんですよ」
蘭の問いに答え、クスクスと笑うツナ。
「・・・それで、依頼っていうのは?」
小五郎がしびれを切らしてそう訊くと、ツナはああ、と呟いた。
「探してほしい人がいるんです」
「探し人、ですか」
「ええ・・・全身を黒い衣服で身を包んだ・・・リモンチェッロと名乗る男を、探しています」
ツナがそれを口にした瞬間、哀とコナンがギョッとする。その気配を悟ったツナは、チラリと2人に視線を向け、2人が顔を見合わせたのを確認した。
リモンチェッロ、とはイタリアを起源とするレモンのリキュール。
黒い衣服に、酒の名を名乗る男。
コナンと哀には、覚えのあり過ぎる組み合わせだった。
「リモンチェッロ・・・ですか・・・」
「ええ、どうしても会いたいんです」
小五郎の戸惑ったような視線を受けながら、ツナは頷く。
「・・・ね、ねぇ・・・ツナお兄さん・・・」
コナンが声をかけてくる。ツナは振り返り、その疑惑に満ちた視線に、苦笑をうかべた。
「ん?ナニ?コナン君」
「あ、あのね・・・どうして・・・その人を探してるの?」
「・・・ん~・・・そうだなぁ・・・部下が、お世話になったから・・・かな?」
答えたツナは、ますますコナンが自分を疑っているような様子を見せるのを見て、おや、と思う。
「あ~、では、沢田さん」
「・・・はい?」
小五郎の方を再び向くと、ツナはニコリと笑う。その笑みにちょっとドキッとしてしまった小五郎はわずかに視線を逸らして訊ねる。
「手掛かりは、それだけ、でしょうか?」
「そうですね・・・リモンチェッロという名も偽名だと思いますし・・・容姿もちゃんと部下が覚えていれば良かったんですけど・・・帽子を目深に被っていて、わからなかったそうなんです」
「そんなにお若いのに、部下がいらっしゃるんですね」
困ったように言ったツナに、佐藤が声をかける。
どうやら、コナン達の様子を見て、不審に思ったらしい。
「・・・ええ、こう見えても組織のトップなんですよ?まぁ、ひいひいひいじいさんの起こした組織を引き継いだだけなんですけどね」
「そうなんですか・・・もしかしなくても、10代目とかでいらっしゃる?」
「さ、佐藤さん?」
高木が困惑した様子で佐藤を見つめるが、佐藤は真っ直ぐにツナに視線を向けている。
「・・・へぇ・・・スゴイですね・・・警察にしておくのはもったいないなァ・・・いや、刑事の嗅覚ってやつですか?」
クツクツと笑うツナに、小五郎や高木、そして、蘭や園子、子ども達も不思議そうな顔をする。
が、佐藤は表情を強張らせて、問いを口にした。
「・・・あなたが・・・『A caro il decimo(親愛なる10代目へ)』というメッセージを送られた、“10代目”なんですね?」
その瞬間、全員がツナを驚いたように見つめ、ツナは笑顔のまま頷いた。
「素晴らしい発音ですね・・・イタリアに行ったばかりの時の僕よりか、ずっとお上手ですよ」
「っ・・・イタリアの、どういった組織の・・・?」
高木が問えば、ツナはあっさりと答えた。
「僕が所属しているのは、ボンゴレという組織です・・・まぁ、世間一般では、マフィアと呼ばれる職業ですね」
ニコニコと笑みを崩さないツナに、佐藤と高木はどうしたらいいのかわからず、途方に暮れてしまった。