クロスオーバー! REBORN!×名探偵コナン   作:cibetkato

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旅は道連れ?世間は狭い! 6

 あちこちからイベント参加者の悲鳴があがる。

 

 そして、演台には―――。

 

「あ、社長の奥さんがっ!」

 

 園子が指す通り、社長夫人が襲撃者たちによって捕らえられていた。

 

「・・・武、ディーノさんは?」

 

「不思議動物コーナーでスクーデリアに乗ってる」

 

「・・・あー、ちょっと演台には遠いね」

 

「どうする?俺なら気付かれずにあそこまで行けるぜ?」

 

 山本が演台に視線をやる。

 

「んー・・・ここは霧が居て欲しかったなァ」

 

 できればクローム、でなくても骸かマーモンあたりに居て欲しかった。

 

「まぁ、術師がいれば楽だったろうけど・・・」

 

 居ないものはしょうがない、そう山本が告げようとした時だった。

 

「あ、居るじゃん。俺、なんか妙な予感がしてこの近くに任務で飛ばしたんだよ」

 

 ポン、とツナが手を叩く。

 

 そして、懐をゴソゴソと探り携帯電話を取り出して、おもむろに電話をかけ始めた。

 

「あー、もしもし?フラン君?」

 

『もしもしー?その声はボンゴレですよねー?「あ゛ぁ゛!!綱吉だとぉお!?」・・・煩いです―、カス鮫たいちょー「カス言うなぁあ゛あ゛あ!!!」』

 

 のんびりと返してくるフランと、電話から遠く離れているだろうにビンビンと響くスクアーロの声。

 

「お、ヴァリアーをこの近くに配置してたのかよ?」

 

「んー、配置っていうか・・・お使いを頼んだんだよ」

 

「お使い?・・・スクアーロとフランに?」

 

「そ。・・・“力ある石”が見つかったらしくてね。ちょっと争いの種になりそうだったから、回収してもらおうと思って」

 

 ツナの説明に山本は頷き、未だにギャンギャンと電話の向こうで叫ぶスクアーロに苦笑した。

 

「いいのか?なんか叫んでるけど」

 

「ん~、もうちょっと落ち着いてからじゃないと、鼓膜破れそうだし」

 

「・・・俺、慣れてっから、代わってやろうか?」

 

「あ、だと助かる」

 

 あっさりと携帯を山本に渡し、ツナは演台の様子を伺う。

 

 未だ膠着状態ではあるが、既に会場に配置している部下達が恐慌状態に陥っている客を誘導していた。

 

「・・・何が目的かなぁ?」

 

「のんびり言うてる場合か?」

 

 思わず平次がツッコミを入れると、ツナは苦笑した。

 

「まぁ、下手に俺が顔を出すと向こうも興奮しちゃうだろうしね」

 

 ボンゴレのボスというのはそれだけ裏社会では名の馳せた存在らしい。

 

「確かに、興奮させたら社長夫人があぶねーな」

 

 新一がツナの言葉に一理あると呟けば、平次も頷く。

 

「せやな・・・しかし、目的も話さんと・・・社長夫人を盾にとって何するつもりやろうか」

 

「うーん・・・俺が出資してるってバレたかなぁ?ボンゴレに連絡行ってたりして」

 

「あぁ、そっちの線か・・・どうするんですか、ツナさん」

 

「うん、まぁ霧部隊の出番だよね」

 

 ニコリ、とツナが笑みをうかべれば、思い出すのは強制的に記憶を書き変えられた時のこと。

 

「・・・アレは、ちょう怖かったな」

 

 平次がぶるり、と身体を震わせれば和葉が首を傾げた。

 

「へ?なんなん?」

 

「いや・・・一般人が知ったら危険なコトがあってな、事件を解決するためにちょうだけそれを説明してもろたんや。けど、やっぱ覚えてんのはマズイやろってコトになって・・・幻術っちゅうやつで記憶を書き変えてもろたんや」

 

「ええ!?そんなことできるん!?・・・っちゅうか、そんなんがほんまに存在してるなんて、信じられへんわ」

 

「和葉ちゃんの気持ちもわかるけど、ホントなんだよ・・・」

 

 蘭が苦笑しながら言えば、和葉は目を丸くした。

 

「蘭ちゃん達も幻術に?」

 

「そうそう、なんか同意があったとはいえ、強制的に消されちゃったし。・・・まぁ、危険なのは嫌だけどね」

 

 園子までもがそう言って頷くのを見て、和葉はようやく自分だけがそのコトを知らなかったことに気付いた。

 

「・・・嘘やん・・・私だけ知らなかったん!?平次、なんで教えてくれへんかってん!」

 

「いや・・・ただ言うても信じられへんやろ?」

 

「・・・そ、そら、そうやけど・・・」

 

 むくれてしまった和葉に、平次はそれどころではないだろうと言って含める。

 

 そんな幼馴染の2人の様子を微笑ましげに見ていたツナだったが、不意に顔を顰めた。

 

「ん、なんか嫌な予感」

 

 一斉にハッとしてツナを見つめた新一達に、困ったような笑みを見せ、それからツナはスクアーロ達に指示を飛ばしていた山本を見た。

 

「スクアーロとフランはもう近くまで来てるってさ。・・・どうする?」

 

「・・・ちょっと電話貸して」

 

「コレか?それとも、コレ?」

 

 フランに繋げたままのツナの電話と使っていない山本の電話。2つを差し出され、ツナは山本の電話を手に取った。

 

 電話をかける先はもちろん、ボンゴレ本部だ。

 

「もしもし、隼人?―――あぁ、そう。やっぱりね。わかった、こっちは何とかするから、交渉を受けるフリでもしてて?うん、よろしくね」

 

 どうやら、ツナの考えは当たっていたらしい。

 

 電話を切ると、ツナは大きな溜息をついた。

 

「目的は“力ある石”で、このイベントにはボンゴレの力が働いてるとわかった上で、社長夫人を人質にとったらしいよ」

 

「それはまた・・・アホなのな。ボンゴレに喧嘩売って無事で済むと思ってるあたり、新興勢力か?怖いもの知らずというかなんというか・・・やっぱ、アホなのな~」

 

 満面の笑みで、山本は犯人達を扱き下ろした。

 

「うわ、めっちゃエエ笑顔で、毒吐いてはるわ、あの人」

 

 和葉がボソリと呟けば、その呟きを耳にしたツナが噴き出した。

 

「ぷっ・・・ホント、いい笑顔だよね。武ってさ、ちょっと腹黒い所があるんだけど、それをあの笑顔で口に出すから面白いよね~」

 

 面白いって言えるのは身内だけだと思う。

 

 そう新一は心の中でツッコミを入れておいた。

 


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