クロスオーバー! REBORN!×名探偵コナン 作:cibetkato
「あ、あの~、ツナさんって今いくつですか?10年前ってことは、14歳ってことで良いんでしょうか?」
「へ?・・・あ、ああ、うん。そうだよ、今は中学2年生・・・」
光彦に不意に問われて、ぎゃんぎゃんと叫んでいたツナはキョトンとしたまま答える。
まだ子供らしい丸みのある顔に、不安いっぱいで潤む瞳。誰が見ても母性本能というか庇護欲を沸かせる。
「・・・なんか、守ってあげなきゃいけない気になるわね」
ボソ、と哀が言えば、コナンも頷く。
「た、確かに」
そう話す2人の会話を聞いてランボは首を振った。
「必要ない。こう見えてもおそらく戦闘力では、この時代でも右に出るものはいない」
「「「「「え!?」」」」」
思わず全員の声がハモる。
「こう見えてもって酷いよ、ランボ・・・」
フルフルと震えながら抗議するツナはどう見ても小動物系なのだが、この細い身体のどこにそんな力が秘められているのだろう。
「本当のことだ。今のボンゴレの力は、すでにこの頃に完成していたはずだ」
そう言われれば、ツナは黙り込むしかない。
「クフフ・・・随分と面白いことになっていますね」
突然聞こえた声は、嫌でも聞き覚えのある声だった。
その場にいきなり姿を現した彼は、その手に持つ三叉槍をツナに向けて振り下ろす。
咄嗟にそれを避けたツナは、死ぬ気丸を口に放り込んだ。
「・・・骸ッ」
「クフフ・・・懐かしい姿ですね。少し、試させてもらいましょうか」
突然始まった戦闘に、ランボは慌てて子ども達と共に退避する。
「あ、危ないよ!止めなくちゃ!」
歩美が叫ぶが、ランボは首を振る。
「ああなったら、六道氏を止められるのはボンゴレしかいない」
戦い始めたツナは、冷静な表情を崩さず、先程までオロオロしていた彼とは別人のようだった。
子ども達がそれをランボに問うと、ランボは肩を竦めた。
「・・・アレは死ぬ気状態になっているからだ。戦う時はいつもああやって極限の状態で戦っている」
「そ、そうなんだ・・・」
「ツナさん・・・スゴイです」
子ども達が呆けたように見守る中、ツナは骸の三叉槍を片手で受け止める。
「・・・お前、有幻覚じゃないのか?」
「おや、わかりましたか」
「本体と有幻覚の違いくらいわかる」
当然のように言ってくれるが、この違いがわかるのはごく一部の限られた者だけ。クロームやマーモンでさえも時々騙されるこの力が通じないのは彼とヴァリアーのボスくらいだ。
「やれやれ。君に言われて情報網を張っていたんですがねぇ・・・それを頼みこんできた本人が真っ先に問題を起こすなんて、本当に君は不幸体質というか、トラブルメーカーというか・・・」
「お前が言うなよ!」
死ぬ気モードが解けて叫ぶツナ。それを見て、骸はさも可笑しそうに笑う。
「クフフ・・・本当に懐かしい」
「も~・・・この時代の俺、ほんっとに何やってんの?」
「ご立派にボスをやってますよ」
「それ、厭味にしか聞こえない」
「嬉しいですね、君に厭味が通じるなんて。いつもはスルーですよ、スルー」
「・・・うわぁ・・・」
あの骸がたそがれるなんてどんだけだと、ツナは10年後の自分にどん引いた。
「10代目~」
そして戦闘が終了したそのタイミングで自分を呼ぶ声が聞こえて、ツナはそちらを振り向いた。
「あ、獄寺さ・・・え、ええっ!」
ツナが叫んだのも当然だった。守護者全員が揃ってこちらに走り寄ってきたからだ。
「・・・クローム、この頃の彼を返せなんて言うのは、理不尽ですかねェ」
「骸様・・・」
たそがれる骸を発見したクロームが苦笑をうかべる。
「うわぁ~・・・10年後の皆だぁ・・・うわぁ~」
素直に感動しているツナに、獄寺が微妙な表情をうかべる。
「本当に、10年前のお姿で・・・ランボ、入れ替わってから何分経っている?」
「15分は過ぎてる」
「ははっ・・・この頃のツナってこんなだったっけか?ちっこいな~」
山本は口元に笑みをうかべ、ガシガシとツナの頭を撫でくり回す。
「うわっ・・・止めてよ、山本」
「極限に懐かしいな」
「・・・小動物」
最後に雲雀がボソリと呟いて、ツナの傍に歩み寄る。
「ひ、ひぃいっ・・・ひ、雲雀さん?」
10年後の雲雀には散々ボコボコにされた想い出しかないために、ツナは及び腰になって後退る。
「なんで逃げるの?」
「なんでって・・・」
(怖いからに決まってんじゃん!!!)
心の中で叫ぶツナは、じりじりと近寄る雲雀から逃げるためにじりじりと後退り、トン、と誰かに背中からぶつかった。
「あ、ス、スミマセン!」
謝りながら振り返り、ツナはビシリと固まった。
どう見ても堅気には思えないその黒服の男性の雰囲気に呑まれそうになって咄嗟に視線を落とす。
(というか、どこかで見たような気もしなくもないような・・・あれ?どこで見たんだっけ?)
「・・・ツナ、オメェ自分の家庭教師の顔も忘れたのか?」
「は!?」
ガバッと顔をあげマジマジとその顔を見れば、どことなく面影のあるそれにツナは目を点にした。
「家庭教師って・・・り、リボーン・・・なの?」
ニヤリと笑うそのリボーンの肩に、ちょろり、とカメレオンが這い上がって来る。
「・・・あ、レオン?」
「ああ、そうだぞ」
「じゃあ、やっぱり、リボーン!?」
「一々叫ぶな、ウルセェぞ」
「ええっ、なんで!?どうして!?」
叫ぶツナに、リボーンは眉間のしわを深くする。
「ウルセェって言ってんだろ?少し黙ってろ」
ガシッとツナの頭を掴み、リボーンは溜息をついた。
「おい、獄寺」
「はい、リボーンさん」
「車回せ、とりあえず基地に連れ帰る」
「わかりました!!」
獄寺が行ってしまうと、ツナはリボーンを見上げる。
「ね、ねぇ・・・リボーン・・・」
「なんだ?」
「今って、平和?・・・大きな事件があったってランボは言ってたけど・・・」
「チッ、アホ牛が。余計なこと喋りやがって・・・後でねっちょりお仕置きだな」
「ひっ!」
ギロリとリボーンに睨まれて、ランボが身体を硬直させる。
「ちょ、ちょっと、リボーン!」
「問題ねぇぞ。・・・その事件も片づいた。白蘭の時のようなことは起きてねぇ」
「・・・ほ、ホント?」
「嘘言ってどうする。それに、こうやってのんびりと外に出てる時点で、平和だってわかるだろうが。・・・平和じゃねぇなら、オメェをランボなんかと2人で外に出したりなんかしねぇぞ」
リボーンはそう言うと、不安そうに見上げてくるツナの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
「・・・そ、そっか。よかった」
「「「「「「~ッ!」」」」」」
ホッとした様子で微笑むツナに、それを間近で見たリボーンを始め守護者が一斉に固まり、次の瞬間感極まったように言葉を詰まらせてツナを見つめた。
「えっ、えっ!?何!?どうしたの!?」
オロオロとするツナの脇で、一番最初に我に返ったリボーンが口元を押さえながら呟いた。
「オメェは一体どのあたりで化けちまったのか・・・つか、あの時に決まってんだ。チッ、戻れるもんならあの時に戻って、9代目をぶん殴ってでも止めるんだが」
「は?・・・さっきから何なんだよ・・・」
「元の時代に帰ったら、傍にいた連中に聞いてみろ。10年後の俺はどうだった?とな・・・絶対に今の俺達と同じ反応をするはずだぞ」
首を振りながら答えるリボーンに、ツナは訝しんだ表情をうかべる。
「えぇ~・・・?」
ハッキリとは口にしないが、10年後の自分は余程彼等を怯えさせているというか、引っ張り回しているのだろう。
「当人同士は会えねェからな・・・周りの意見を聞くしかねェだろうが」
「それはそうなんだけど・・・」
ツナはそう言いながら視線を巡らせ、コナン達を視界に入れる。そして、リボーンの腕からするりと抜けて彼らの目の前に立つ。
「ねぇ、君達の目から見た10年後の俺はどんな人?」
そう問われ、言って良いものかと互いに顔を見合わせていたコナン達だったが、不意にポン、と肩を叩かれてハッとする。
「・・・言っても大丈夫、この人がボスであることに変わりはないから」
クロームだった。
彼女の言葉に背を押される形で、子ども達はその印象を口にした。
「なんて言うかいつもニコニコしてて・・・そう、怒っている時も笑ってました。僕はそれがツナさんの一種の武器なんだと思いました」
光彦が答えると、歩美が頷く。
「うん、そうかも。ツナお兄さんの武器は笑顔だって誰かも言ってた気がする。でも、時々悲しそうに笑ってる時もあったよ」
「でもよ、すっげー強かったよな!あの兄ちゃんをボッコボコにしてたし」
そう言って元太が指差したのは雲雀。
「えッ!?・・・雲雀さんをボッコボコ・・・」
さぁ~っと青褪めるツナをよそに、哀が呟く。
「それに、いざという時には必ず自分が真っ先に危険に飛び込んでいくような人だったわ」
「ああ、それは言えてるな。・・・あの事件の時も随分と部下に・・・特に獄寺さんに怒られてた」
コナンが哀の言葉を補足すると、ツナはハッとする。
「獄寺君が・・・俺に怒る?・・・そっか、ちゃんと右腕って感じになってるんだな」
いつもツナを“10代目”と呼び、常に傍にいて守ろうとしてくれる獄寺。
最初は崇拝に近い態度をとっていた彼だが、白蘭との戦いの時辺りからその関係は最初の頃よりも近くなった気がしていた。
そして、10年後は“ボンゴレ10代目”と“ボンゴレ10代目の右腕”という関係になっている。
嬉しいと思う反面、結局はそうなるのかと肩を落した。