クロスオーバー! REBORN!×名探偵コナン 作:cibetkato
「ツナヨシ様!!ようこそいらっしゃいました!!」
大使館に着くなりリィナに大歓迎されたツナは、わずかに口元を引き攣らせた。
「・・・約束通り来たよ」
「はい!」
満面の笑みを浮かべるリィナに案内され、ツナ達は応接間に通される。
応接間には調度品が嫌味でない程度に置かれ、品の良さを感じるレイアウトになっていた。
「・・・こういう所は優秀なんだけどねェ・・・」
ボソリと呟いたツナの言葉がハッキリと聞き取れなかったらしいリィナは首を傾げた。
「はい?何かおっしゃいましたか?」
「いや、なんでもない」
わざわざ褒めて調子に乗らせることもないだろうとツナは誤魔化す。
「いらっしゃいませ、ボンゴレⅩ世」
そこに、世話役の女性がやって来て給仕を始める。
「コーヒーはツナヨシ様のお好きなブレンドを、ドルチェはナポリのスフォリアテッラをご用意しました」
リィナが褒めて褒めてと目を輝かせているのをウンザリと見ながら、ツナはコーヒーを一口飲む。
「・・・あ、おいし」
リィナが厳選しただけあってさすがに良い豆を使っているらしい。素直に洩れた言葉にリィナの表情が輝く。
「お気に召していただけましたのなら、お土産に豆をお譲りしますが」
「ホント?じゃあ、遠慮なく」
リィナの好意は好意として受け取ることにし、ツナは早速懐から政府より預かった封筒を取り出した。
「・・・これは?」
「封緘の刻印見りゃわかるだろ?」
「ええ、これは政府の刻印ですが・・・珍しいですねこのように封書でなど」
リィナは首を傾げながら封を開ける。
そして裏うつりに見えた人事発令の文字に、ツナの超直感は警鐘を鳴らした。
みるみる頬が赤く染まり、目がキラキラと輝くリィナ。
「つ、ツナヨシ様・・・!」
「・・・えーと、なんとなくわかったけど、ナニ?」
嫌そうに応じるツナに、リィナは書状を見せた。
「私、外務省に戻れます!!」
「げ」
「マジで?」
「・・・ご愁傷様」
「クフフ・・・賑やかになりそうですねェ」
獄寺と山本は表情を引き攣らせ、日本での活動がメインの雲雀や骸は生暖かい視線をツナに向ける。
「・・・外務省のどこ?」
「この書き方だと渉外担当ですね、常にイタリアにいられるわけではなさそうですが・・・今よりはずっと近いです!!」
ツナの問いに答えるリィナは興奮した様子を隠せずにいる。
しかし、渉外担当にした政府の思惑は理解できた。
彼を駐日イタリア大使にと望んだのはツナであり、それを破棄するにあたってギリギリ許されるだろうとふんだ人事がこのポストなのだろう。
「・・・まぁ、フリーで動き回ってた頃よりかは鬱陶しくなさそうだけど」
「あ、そういえば、この間ニュースで渉外担当の重要ポストについていた人物がセクハラで降任したって言ってましたね」
ポン、と獄寺が手を打って告げると、ツナは目を細めた。
「ほう・・・つまり名前忘れたけど、そのエロジジィのせいでジュリオはイタリアに帰還させられるわけだ」
ツナ達にとってハタ迷惑な相手でも、リィナは優秀な人材に変わりはない。政府から処分するには惜しいと言われ、ボンゴレで身柄預かりになったくらいには。
つまり、人手が足りないから戻って来い的な?
それが、セクハラ男の後任?
冗談じゃねェ。
「隼人」
「わかってます、すぐに野郎の身柄が拘束されている所を探ります」
「・・・ツナヨシ様?それは、アレッシオのことですか?」
「ジュリオ、知ってんの!?」
「ええ、知ってますよ?というか、以前私がボンゴレにお世話になった事件の黒幕的な?」
「「「「「はァ!?」」」」」
「な、なんで捕まってねェんだ!?」
「え、彼、トカゲのしっぽ切りが得意なんですよ」
「っていうか、なんでそんなのほほんと答えてんだよ」
獄寺の問いにのんびりと答えたリィナに、さすがの山本もツッコミを入れる。
「だって、彼が嵌めてくれたおかげでツナヨシ様に会えたわけですし・・・」
ポッ、と頬を赤らめてそう言ったリィナに、ツナはぞぞぞぞぞ、と背筋に悪寒が走るのを感じた。
「おかげって・・・おまえなァ」
ツナが呆れ顔で溜息を漏らすと、リィナはニコリと笑った。
「ですが、天はきちんと見ているのですね。これで彼がやった悪事も次々に発覚するでしょう」
「だろうねェ・・・権力に媚びてた連中が一気に手のひら返すだろうし」
「・・・彼の本拠地はヴェネト州です。おそらく拘束しているのはヴェネト州の自治体警察でしょう。余罪が明らかになれば財務警察か国家警察に引き渡されると思いますが」
「じゃ、文句言いに行くのはその後ででも良いか」
ツナはあっさりとそう言うとドルチェに手をつける。
「あー、ストレス感じてばっかりだったから甘いもの身体が欲してるんだよねぇ」
日本の警察を相手にするのはかなりのストレスになったのだろう。しかも、その後に控えていた獄寺の説教がかなり堪えた。
いつになく甘いものが恋しかったわけだと改めて思いながら、ツナはスフォリアテッラを頬張ったのだった。