クロスオーバー! REBORN!×名探偵コナン 作:cibetkato
子ども達と別れ、ツナ達は日本支部へと帰って来た。
根本的に解決したわけではないが、リモンチェッロは日本での裁きを受ける前に復讐者へと連れ去られるのだろう。
ツナはそのコトについては敢えて知らなかったフリをするつもりでいる。当然の報いだと思っているからだ。
「これで、ヤツ等もボンゴレやイタリアンマフィアに関わろうと思わなくなってくれるとありがたいんですが」
「・・・そうだねェ」
基地に帰ってからも獄寺にこってりとしぼられたツナは、いささかダルそうに応じた。
「ツッ君大丈夫?」
苦笑を浮かべながら京子がコーヒーの入ったカップを手渡す。
「ありがと~・・・大丈夫だよ」
へにゃりと笑う姿は数時間前の“マフィアのボスらしさ”など一欠けらも見えない。
「はひ・・・ツナさん、どうして獄寺さんに怒られてたんですか?」
「ん~?・・・無茶したーって怒られたんだけさぁ、ハッキリ言って相手は雑魚だったからねェ・・・無茶なんてしてないんだけど。ほら、反論したらもっと説教が長引くじゃん?」
「10代目ぇ・・・よくもまぁ、本人を目の前にして言えますねぇ・・・っていうか、全然反省してないじゃないですか!!!」
ハルの問いに答えると、背後から殺気立った獄寺が見下ろしてくる。
「・・・ご、獄寺さん」
「やだなぁ~隼人。俺は今回の事は無茶じゃないよな~って言っただけで、イタリアで同じような真似はもうするつもりはないってば~」
「それは屁理屈って言うんです!!」
「おおっ、隼人がキレた!!」
「10代目ぇ・・・なんで喜んでるんですか・・・」
嬉しそうにパチパチと手を叩くツナに、獄寺はガックリと肩を落とす。
「えー、だって隼人が怒るってことは、俺を心配してるってことだろ?すっごい嬉しいじゃん」
「っ・・・そもそも、心配させるようなことをなさらないでくださいとお願い申しあげているんです!!」
「ん~?」
「・・・ああ、聞く気はないんですね、はい、わかります。わかりますとも!!」
だてに10年強、傍にいるわけではない。が、どうしてこうも開き直ってしまったのかと獄寺は思う。
「そんなガッカリしないでよぅ。俺だって一生懸命やってるんだよぉ?」
「・・・10代目、その口調は止めてください。あと、口も尖らせないでください!」
「むー・・・最近、隼人が口うるさいと思わない?」
ツナに同意を求めるように視線を向けられた京子とハルは苦笑するばかり。
昔はツナが獄寺に振り回されっぱなしだったように思ったが、今ではすっかり立場が逆転だ。
「でも、獄寺が口うるさくなるのもわかるのな~・・・じゃねぇと、ツナは無茶ばっかりするし」
「武まで~?・・・でも、まぁ・・・あんな無茶はもうしないって皆と約束したし、そこまで追いつめられるような状況はもう無いと思うけど」
「あったら困ります」
「そーそー。そんな状況になったら、俺等今度こそ復讐者に目ぇ付けられようが相手方を徹底的にブッ潰すからな~?」
「うわ~出た。ブラック山本」
爽やかな笑みの裏にチラリと見える黒さが何ともいえず怖い。と、もっぱら評判の山本の笑顔もツナにとってはそうでもないらしく、ニコニコと笑って言う始末だ。
「・・・俺らって」
「まー、ツナにとっちゃ御しやすいんだろうなー。ははっ」
「笑い事じゃねェっての」
結局のところツナには逆らえない2人である。
微妙な空気が食堂に流れた時だった。
「う゛お゛ぉ゛いッ!!」
「うわっ」
「きゃ!」
「はひ!?」
「ウルセッ!」
「おー、スクアーロ!」
もはや騒音レベルの大声が響き渡った。
「おい、綱吉ィ!!日本の方は任務終了だァ!」
「あ、早かったねェ」
「それ程多くなかったからなァ!!」
そもそも霧の術師があれだけ揃っていれば、補給ルートを調べるなど造作もない。
「他と違って組織の者なら誰でも知ってるような情報でしたからね」
スクアーロの後ろから骸がやって来て、そう告げる。
「まぁ、それもそうか。・・・この調子であの薬とかの成分がわかればいいのに」
「残念ながらその情報を持つ者はいませんでした」
「・・・わかってるよ。そんなに簡単に解決するなら誰も苦労なんてしないさ」
「残るはアメリカの方か?」
「ああ、それもすぐに終わるだろうぜェ!!レヴィとルッスーリアが張り切ってたからなぁッ!!」
獄寺に頷きながらスクアーロが答える。
「じゃあ、これで報復も終わったことだし、後は本国に帰る前にイタリア大使館に寄ってジュリオに顔を見せてこようか」
「そうですね、黙って帰ったらそれこそ次に日本に来た時にウザそうですし」
「あはは・・・確かに。っていうか、ジュリオにも用があったんだよね~」
ツナの言葉に全員が首を傾げた。
「なぁツナ、リィナ大使に用ってなんだ?」
「僕も、聞いてませんよ?」
山本と骸が口に出すと、ツナは懐から書状の入った封筒を取り出した。
「・・・コレ、なんだと思う?」
その封筒は蝋で封緘してあり、守護者がその刻印をまじまじと見つめていると、突然獄寺がアッと叫んだ。
「獄寺?」
「どうしたんです?」
「こ、これ・・・イタリア政府の刻印じゃないですか!」
「ピンポーン♪大当たり~。さすが隼人だね」
「お褒め戴き光栄です・・・が、なぜこんなものを?」
獄寺が問うと、ツナは苦笑をうかべた。
「うん、日本に行く時になるべく目立たないようにするために手を回して貰っただろう?」
「ええ」
「まぁ、これだけのボンゴレ幹部が一斉に日本に向かうっていうのは、かなり目立ちますからね」
「で、ついでだからってお使い頼まれちゃって」
「お使い!?・・・ヤツ等、10代目に使い走りなんぞさせやがって!!後で果たす!!」
「ちょ、ストップ隼人。無理矢理じゃないし俺も了承したんだから良いだろ?」
「う・・・そ、そうですけど・・・」
最近では滅多に短絡的にキレることが無くなった獄寺だが、さすがに政府から使いを頼まれたと聞いてカチンときたらしい。
が、ツナが慌てて止めると渋々引き下がる。
「でェ、何の使いを頼まれたんだぁあ?」
スクアーロが訊ねればツナはカクン、と首を傾げた。
「さぁ?」
「さぁって・・・理由も聞かねェで引き受けたのかぁああ!?」
「ウルさッ・・・ただ、ジュリオに渡してって言われたから持って来ただけだよ。蝋で封緘してあるし開けたらすぐバレちゃうじゃん」
「いや・・・リィナ大使が相手なら、ツナに怒るってコトは無いだろうし・・・見ちまわねェ?」
山本が提案するが、ツナは首を振った。
「だぁめ。とりあえずはこのままジュリオに渡すよ。・・・目の前で開いてもらえば済むことじゃないか」
「まぁ・・・そうですね」
「じゃあ、中身も気になるし・・・さっさと大使館に行こうぜ。俺、連絡してくる」
そう言って食堂を出て行く山本を見送り、ツナはポツリと呟いた。
「さすが武・・・コレに嫌な予感でもしたかな?」
「ってコトは、10代目も?」
「うん・・・そうなんだよねぇ・・・ちょー嫌な予感がする」
「はひ、ツナさんがちょー嫌な予感っていうくらいですから、きっとデンジャラスなお手紙です~!」
ハルが怯えたように封筒を見つめる。
「うーん、どうだろうか?」
「・・・とにかく、リィナ大使に開けさせりゃイイことです。山本が戻って来たらすぐにでも出発しましょう」
「あー、そうだねェ・・・あ、そうだ。京子ちゃんとハルに頼みたいことがあるんだけど」
「ん?なぁに?」
「はひ、ツナさんのお願いなら、何でも聞いちゃいますよ!!」
「カンノーリ、作っておいてくれるかな?」
カンノーリとはシチリアの伝統的なお菓子だ。
イタリアに帰れば本格的なものも食べられるというのになぜ自分達に頼むのか、京子とハルが首を傾げるとツナは薄く笑った。
「うん、あの子達にお礼も兼ねて渡そうと思ってね」
あの子達というのが誰を指すのかわかった2人は快く了承した。
「うん!じゃあ、お礼の気持ちを沢山こめて作るね!」
「お任せくださいです!!」
「じゃあ、頼むね」
そして、直後に戻って来た山本と基地内にいた守護者全員を連れ、ツナはイタリア大使館へと向かった。