クロスオーバー! REBORN!×名探偵コナン   作:cibetkato

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お別れ

 警察関係者がリモンチェッロを連行し、埠頭にはツナ達だけが残された。

 

「おい獄寺、ツナに客だ。続きは基地に帰ってからにしろ」

 

「――わかりました。リボーンさん」

 

 未だに続いていた説教を止めてリボーンが言うと、獄寺は渋々と頷く。

 

「・・・た、助かった・・・」

 

 ジンジンとしびれる足を撫でながらツナは涙目でリボーンを見上げた。

 

「・・・警察の連中ならともかく、アイツらにはお前の言葉が必要だろ」

 

 顎でしゃくって示した方向にツナが視線を向ける。

 

「・・・まぁ、そうだよねー」

 

 そう呟いたツナの視線の先には、こちらに向かって駆け寄ってくる子ども達の姿があった。

 

「ツナさん!!」

 

 真っ先に駆け寄って来たのは、コナンだった。

 

「やぁ・・・やっぱり来ちゃったんだね」

 

「・・・ごめんなさい・・・でも、気になって!」

 

 コナンの言葉に同意するように、他の面々も頷く。

 

「まぁ、わかってたから・・・君達がこのまま諦めて帰るわけはないだろうなーって」

 

 苦笑をうかべたツナに平次がハッとする。

 

「えーと、それって・・・そういう血筋ッちゅう話やったな?」

 

「そうそう。よく覚えてたね~。超直感っていうんだよ」

 

 平次に答えたツナは未だにしびれる足を撫でながら、コナンに視線を向けた。

 

「・・・さて、事件は終わったよ?探偵さん」

 

「あ・・・」

 

 それは別れの言葉に等しかった。

 

 マフィアである彼等と一時とはいえ交流があったのは、事件を解決するためだったからだ。

 

「・・・あの・・・えっと」

 

 何か言わなくては、そう思ってもコナンは言葉が継げなかった。

 

 相手はどんなに良い人でもマフィアを名乗っているのだ。これからも交流を持ちたいなどとは思っていても口には出せない。

 

「ツナお兄さん」

 

 そんなコナンの隣に歩美が立つ。

 

 真っ直ぐに向けられた視線にツナは柔らかい笑みを浮かべた。

 

「ん?なぁに、歩美ちゃん」

 

「事件、解決して良かったね」

 

「・・・うん、ありがとう」

 

「歩美ね、ツナお兄さんが怪我しなくて良かったって思うの」

 

「うん」

 

「歩美、ツナお兄さんのこと、絶対に忘れないよ!」

 

 歩美の言葉にコナンはハッとした。

 

 己もその言葉が言いたかったのだと気付かされたからだ。

 

「ぼ、僕も!・・・僕も忘れない!!」

 

 コナンが叫ぶように言えば、子ども達が一斉に駆け寄って口々に告げる。

 

「俺も兄ちゃんのこと、忘れないぞ!!」

 

「僕もです!」

 

「・・・私も、忘れないわ」

 

 そんな子ども達を見て、平次達もツナに歩み寄った。

 

「俺も忘れへん」

 

「沢田さん、私も忘れませんから」

 

「私も!」

 

「皆・・・もう、しょうがないなァ・・・俺達のことは忘れてって言うつもりだったのに」

 

 先を越されてしまったと苦笑をうかべるツナに、その言葉を拒絶する様子はない。

 

「ツナ」

 

リボーンが呼ぶ。

 

 これ以上は情が移りそうだった。それを読心術で見抜かれたのだろう。

 

「わかってるよ、リボーン・・・俺も皆のことは忘れないよ。でも、皆と俺の歩む道が二度と交わらないことを願ってる」

 

 道端でバッタリ会うということはあっても、今回のように深い付き合いになることは避けなければならなかった。

 

 彼等は一般人で己はマフィア。絶対に相容れないものなのだから。

 

「・・・アンタが俺等の携わる事件に容疑者として浮上しないことを俺も願てるで」

 

 ツナの言いたいことを理解したのだろう。平次がニヤリと笑う。

 

「ふふっ・・・善処します」

 

 探偵である以上ある程度は犯罪者とは関わる機会も多いからこその言葉だ。

 

 平次の言った言葉は、おそらくコナンも告げたかった言葉なのだろう。こっそりと頷いている姿を視界の端に捉えた。

 

「ああ・・・もう一つだけ・・・È la buona fortuna questo per Lei(君達に幸あれ)」

 

 ゆっくりと告げたイタリア語に大半の者が首を傾げる中、コナンと哀、平次がその言葉を口の中で反芻する。

 

 意味はわかっていないだろう。だが、彼等ならきっと調べる。

 

 だから敢えてツナは意味を告げずに笑みを浮かべた。

 

「じゃあ、行くね?・・・ランボ、今度こそちゃんとお家に送って行くんだよ?」

 

 後ろでビクビクとしていたランボに声を掛ければ、ガクンガクンと勢い良く首を縦に振る。

 

「10代目」

 

「うん、行こうか隼人」

 

 獄寺が満身創痍ながらも、座り込んだままのツナに手を差し伸べる。

 

 その手をとったツナはひらりと立ちあがった。

 

「ん、しびれはとれたかな。・・・あ~、アスファルトに正座はさすがにキツイよ」

 

 ズボンを叩きながらぼやくツナに、守護者達は苦笑をうかべる。

 

「綱吉、俺は一度黒曜に行く・・・まだ後始末が残っているからな」

 

 今まで傍観していたXANXUSが口を開くと、ツナは口の端をつりあげた。

 

「りょーかい。よろしくね~」

 

「ああ、ボンゴレの恐ろしさを叩きこんでおいてやる」

 

 ニヤリと笑いあう2人の表情は笑顔なのに殺気立っていて怖い。

 

「・・・黒の組織も可哀想にな」

 

「ははっ、ツナのヤツをあんだけ怒らせたんだもんなァ。仕方ねーって・・・ま、コレがイタリアだったらアジト全部更地だろうけど」

 

 獄寺と会話しながらぼそりと山本が漏らした言葉を、子ども達は全力で聞かなかったことにしたのだった。

 


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