クロスオーバー! REBORN!×名探偵コナン   作:cibetkato

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 復讐者はそんなに甘くない!と思われるような掟の抜け道が用意されています。

 復讐者は理不尽なまでに厳しいからこそ復讐者だと思われる方は、ここは読まなくても話は通じますので読みとばしてください。

 その他の方、二次創作だと理解したうえでお読みください。


閑話:過去の事件

「そういや、まだ聞いてませんでしたねぇ」

 

 ポツリと小五郎が呟く。

 

「毛利君?」

 

 目暮が首を傾げる。

 

「今なら時間が少しあるでしょう?・・・例の・・・沢田さんが言っていた“あの時”とやらの話が聞きたいんですがねェ、鉄側警視」

 

 今現在、目暮達は並盛埠頭付近にワゴン車を止めそこを仮の捜査本部にしている。

 

 犯人がツナと接触するまでの時間はヒマと言えばヒマだ。小五郎がそんなことを言いだしたのも理解できた。

 

 が、なぜその話題なのかと目暮は首を捻った。

 

「今、話した方が良いのか?」

 

 鉄側も同じ疑問を持ったらしい。そう問い返すと小五郎は肩を竦めた。

 

「今聞いとかないと、もう聞く機会はないように思ったんすよ」

 

「まぁ、それもそうか。・・・もう、5年ほど前になる。まだ、彼がボンゴレ10代目を継いだばかりの頃なんだが、もう今は完全に潰れたが桃巨会という暴力団があってな、イタリアンマフィアと手を組んで悪さをしていたんだ」

 

 ツナとも浅からぬ縁があったらしい、桃巨会。

 

 そして、イタリアンマフィアが絡む事件とあってボンゴレが動くことになったのだが、事は日本で起きていた為に拠点を並盛に置く雲雀が動くことになった。

 

「桃巨会、聞いたことがあります・・・随分と汚い金を集めていたようですが」

 

「ああ、詐欺がメインの稼ぎだったようなんだが、その時はイタリアのマフィアからの依頼で並盛の“ある年代層の男女”をメインに大規模な詐欺を仕掛けたんだ」

 

「並盛、だけっすか?」

 

 小五郎が訊ねる。依頼があったということも違和感があるというのに、そこまで限定したのは何故なのだろうか、と。

 

「ああ、狙いはボンゴレ10代目の同級生だったんだ。・・・彼もああいう性格だから誤解されがちだが本来根は素直で優しい。

 何も関係の無い一般人に手を出したということに激怒してね・・・イタリアから日本にリボーンさんだけを連れて並盛に戻って来た」

 

「他の幹部は・・・?」

 

「イタリアの方もまだ安定してない頃で・・・若いボンゴレ10代目をナメてかかってくる連中も多かったそうだ。その後始末に追われて動けるのはボスである彼とその家庭教師であり御意見番のリボーンさんぐらいだったらしい」

 

「では、日本に拠点を置いていた雲雀さんと、沢田さんとリボーンさんのたった3人で?」

 

「ああ・・・捜査協力という形で関わった。私もあの時はマル暴に配属されたばかりで勝手がわからなくてな。だが、前任者から雲雀恭弥の名は聞いていたし、財団に関しては並盛一帯を支配していたから捜査の段階で協力することにはなっていたんだが・・・」

 

 ツナは己が至らないせいでと自分を責める様子を見せ、犯人を絶対に捕まえてくれと警察に頭を下げた。

 

 鉄側は苦い笑みをうかべる。

 

「今回のように自分からは動かなかったのか・・・」

 

 目暮がポツリと漏らす。

 

「まぁ、動けなかったというのが本当だろう。彼自身が動けばイタリアで煩く言う連中がいたようだ。

 ・・・ただ、財団自体は恭弥個人の組織なのでまだ自由に動けたらしく、草壁さんを始めとした人達が捜査員さながらに動いてくれて桃巨会は一斉摘発をすることができたんだ」

 

「桃巨会は、ですか」

 

「ああ・・・イタリアンマフィアがトカゲのしっぽ切りに使ったことは一目瞭然だったが・・・巧妙に証拠は隠され、我々警察では追い切れなかった」

 

「じゃあ、そいつらは野放しですか!?」

 

「・・・野放し程度なら良かった。だが、ヤツ等はボンゴレ10代目が我々警察に力を貸したことを知ると、標的をただ1人に絞って誘拐を企てたんだ」

 

「・・・その1人とは?」

 

 訊ねる目暮に鉄側は一瞬躊躇し、それから口を開いた。

 

「彼の守護者と呼ばれる幹部の中で“晴”という名を頂く守護者・笹川さんの妹であり、彼の同級生でもある京子さんが狙われた」

 

「そ、それで・・・どうなったんすか」

 

 ツナは誘拐された京子を救いにたった1人でそのアジトに乗り込んだ。だが人質を取られている以上余計な手出しは出来ず暴力を甘んじてその身に受けていた。

 

「すぐに彼の不在に気付いた雲雀さんとリボーンさんが我々に通報し、共にそのアジトへ向かった。誘拐で引っ張れば余罪も明らかにできると踏んだからだ」

 

 そこで鉄側は一呼吸置く。

 

「警視?」

 

「・・・いや、アレは私達の落ち度でもあったんだが・・・」

 

 言葉を濁す鉄側に、小五郎と目暮は互いに顔を見合わせた。

 

「何があったんすか、鉄側警視」

 

「ん、うん・・・我々警察の突入で形勢は一気に逆転して京子さんを救ったまでは良かった。が、ボンゴレ10代目は未だに捕まったままでな」

 

 窮鼠猫を噛むとは言うが、追い詰められたマフィア達は暴行を受け動けなくなっていたツナを人質にとった。

 

 更にはここから立ち去れと喚き立て、躊躇する雲雀とリボーンに本気の度合いを見せるためにか、目の前でツナの両太ももを銃で撃ち抜いた。

 

「両太もも・・・っすか」

 

 思わずその痛みを想像して、小五郎は身震いする。

 

「元々暴行を受けて弱っていたうえにその傷じゃまず歩けない。だがヤツ等は彼を連れて逃げる気は毛頭なく、我々が引いた後にそこに打ち捨てて行くつもりだったようだ」

 

「・・・でも、解決したんでしょう?今ここに彼がいる、ということは」

 

「ああ、散々ヤツ等に思う通りに動かされて激怒した雲雀さんがその光景をきっかけにその場にいた者達を全員“咬み殺し”た。ああ、“咬み殺す”っていうのはあの人の口癖のようなものでな、本当に殺しはしなかったが・・・」

 

 ツナを無事に救出しこれで事件は解決と安堵したその時だった。

 

 拘束しようとしていた捜査員の手をすり抜け、マフィアのボスとも言える男が最後の抵抗と目の前にいた雲雀に銃を向けた。

 

 咄嗟の事で誰も動けない中、皆、雲雀が撃たれると思った。

 

 目暮と小五郎は、ごくりと知らないうちに緊張で乾いた喉にツバを嚥下する。

 

「両足を撃たれた彼がどうやって動いたか未だに詳しくは教えてもらっていないが、目にもとまらぬ速さで雲雀さんの前に移動していて・・・」

 

 銃声がして熱風が辺りを包み・・・そこには雲雀にもたれかかったツナと倒れ伏したマフィアのボスがいた。

 

「どうやら相手の銃弾が彼に届く前に、リボーンさんが撃った銃弾が弾き飛ばしたように見えたが・・・それが妙に熱で溶けたように歪んていてな」

 

 リボーンは特殊な弾なのだと説明していたが、それはツナ自身の力を隠すためのものだった。

 

「沢田さんの力ですか?」

 

 目暮が問う。

 

「そうだ・・・ボンゴレの血統は、代々“超直感”と呼ばれる力と“死ぬ気の炎”を出す体質を持って生まれてくる」

 

「「“死ぬ気の炎”?」」

 

 思わず声を揃えた目暮と小五郎に、鉄側は苦笑した。

 

「信じられんだろうが、人体で炎を出すんだそうだ。・・・どういう仕組みなのか、どうやって使うのか、それを説明するとイタリアンマフィアの掟に抵触するから教えられないと言われた。

 捕まえたマフィア達もその点だけは黙秘を貫いた。どうやら掟を破ると警察に捕まるよりも厄介なことになるらしいのだが・・・それも黙秘だ」

 

 鉄側自身の情報網を使い、呪われたマフィア界最強の赤ん坊“アルコバレーノ”の存在や、ボンゴレ血統の特徴については調べられたものの、肝心な部分はわからずじまいだった。

 

「・・・い、意外と、チャレンジャーだったんですね鉄側警視」

 

 マフィア達がそれほどまでに怯える厄介なことに巻き込まれるかもしれないというのに、鉄側はそこに敢えて首を突っ込んだのだ。

 

「フッ・・・命知らずな、と雲雀さんに笑われたぞ。そのおかげか私の事は気に入ってくれたようだが」

 

 雲雀は一般人に教えられるギリギリのところまで鉄側が勝手に調べることを許した。だから風紀財団の下っ端が知っているレベルのものまでなら鉄側も知ることができたのだ。

 

 おそらく鉄側を風紀財団の下っ端扱いにすることで、厄介なこととやらから遠ざけてくれたようだった。

 

「掟にも抜け道があるのだ、と雲雀さんは言っていたな」

 

「・・・はぁ・・・」

 

 理解が追い付かない。

 

 目暮と小五郎は目を点にしたまま曖昧な返事しか出来なかった。

 


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