クロスオーバー! REBORN!×名探偵コナン 作:cibetkato
夜、獄寺は違和感に首を捻り、ベッドから無理矢理身体を起こした。
「・・・獄寺?」
隣に寝かされていた山本が眉を顰める。
「変だ・・・静かすぎる」
昼間までは誰かの足音やら、スパナの研究室からの何かを作る音やらが聞こえて来ていたというのに、今の基地内はまるで誰もいないかのように静まり返っていた。
「獄寺・・・僕は今、ものすごーく嫌な予感がしてるんだけど」
「奇遇だな、雲雀・・・俺もだ」
山本の隣に寝かされていた雲雀が呻くように言えば、獄寺は口元を引き攣らせた。
「あ~、ツナのヤツ・・・いつもならさり気なく止めてくれんのに、今回に限ってはリボーンの好きなようにさせたもんなァ・・・ありゃ、何か考えてるんだぜ。俺達が口を揃えて止めそうなことを、さ」
3人の考えが一致した。
「「「・・・・・・意図的に仲間外れかよッ!!!」」」
痛いとかなんとか言ってられない。3人は叫ぶなりベッドから飛び降りた。
とにかく現状を確認しなければと、獄寺は携帯を取り出す。
「入江とリボーンさんは共犯だな、ランボはあてにならねェし、クロームは10代目に命じられりゃ絶対に話さねェ・・・この場合は笹川兄か」
「じゃあ、俺はスクアーロにでも聞いてみるか」
「僕は哲に聞くよ」
それぞれに連絡を取った先で、事態が急展開したことを3人は知る。
「「「エエェッ!!!(ツナ/綱吉/10代目)が囮ィッ!?」」」
どうして、こう、ウチのボスは自ら危険な場所に突っ込んで行ってしまうんだろうか!
というか、なんで俺ら以外止めないんだよコノヤロー!!
なんてことを心の中で叫んだかどうかは知らないが、顔面蒼白になった獄寺、笑顔の般若になった山本、そして不機嫌絶好調の雲雀はすぐさま身支度を整え、並盛埠頭へと向かうことにした。
***
「・・・あ、悪寒来た」
「沢田さん?」
第7埠頭が見える場所で警察とリボーン、クロームとで最終の打ち合わせをしていたツナはポツリと呟いた。
その呟きを耳にした高木が首を傾げる。
「・・・獄寺達が気づいたか?」
同じくツナの様子を伺っていたリボーンが問えば苦笑が返って来る。
「かもねー・・・まぁ、でも・・・隼人達が来る前に片づくでしょ」
「じゃあ、後でこってりしぼられるんだな」
「えー、助けてくんないの?」
「怒らせるだけ怒らせりゃ、後は引きずらねェだろうが」
「3人とも、ね。・・・それにしても早々に潰しておいてよかった。あの3人に囮捜査のコトなんて話した日には、警察と合同捜査だって言ってんのにヤツ等の日本の拠点という拠点潰しまくりそうだし」
最初から囮になるつもり満々だったらしいツナにリボーンは溜息をついた。
「ったく、いつまで経ってもオメェは・・・」
「狙われてる人間を囮にするのが一番手っ取り早いだろ?それがボスだろうがなんだろうが関係ないはずだ。事件を早く解決したいなら、ね」
「そりゃ、そうだが・・・いい加減、立場ってもんを考えろって言ってるだろうが」
「じゃあリボーンは、安全な所に引っ込んでそこからただ傍観を決め込んで、部下に命をかけさせるのが立派なボスだと思ってんの?」
「・・・そこまでは言ってねェ」
昔は一喝すれば言うことを聞いた素直な生徒だったのにいつの間にか口達者になりやがって・・・そう心の中で嘆きながらリボーンは肩を落とした。
「とにかく、今回は囮捜査が一番効果があるんだから。決定事項に文句言うなよな」
「わかった・・・チッ・・・今度またイタリアでヤツ等の仲間がうろつくようなら、問答無用で蜂の巣にしてやる」
リボーンは怒気を隠そうともせずに呟きその場は折れた。
だが、これを匣兵器の流通するイタリアでやられたらたまらない。相手がどんな匣兵器をもっているのかわからないのだから。
「・・・ボス、いざとなったらアレ(幻術)使うから」
「ん~・・・まぁ、大丈夫だろうけど・・・頼む、クローム」
リボーンの脇でそう言ったクロームに、ツナは困ったように笑ってそう告げる。
「はい、ボス」
「・・・クロームには言い返さね―のか」
笑顔で頷くクロームの脇で、リボーンは釈然としない思いを抱え、小さく呟く。
「ん?なんか言った、リボーン」
ニッコリと笑ってリボーンに顔を向けるツナ。そのツナの笑顔の威圧に圧され、リボーンは首を振った。
「・・・いや、何でもねェ」
(笑顔の悪魔が降臨しやがった!!くそぅ、昔はあんなに可愛かったのに!!)
「沢田さん、こちらの配置準備完了しました」
リボーンが内心地団太を踏んでいたら、捜査員に指示を飛ばしていた佐藤が走り寄って来て報告してきた。
「ああ、ありがとうございます。わがまま言ってすみません」
「いえ・・・」
感謝の意を伝えると佐藤は苦笑をうかべた。
捜査員はボンゴレの人員よりも後ろに配置して欲しい、そう頼み込んだツナに最初は難色を示していた目暮を説得してくれたのは鉄側とこの佐藤だったのだ。
「佐藤さん、僕達も配置につきましょう。・・・そろそろ向こうもこの付近まで来ているかもしれませんし」
高木が言えば、佐藤は頷く。
「そうね・・・じゃあ、沢田さん・・・ご武運を」
「心配いりませんよ、すぐに終わります」
そう言うと人を安心させるような笑みをうかべて、ツナは自分達の配置へと向かう佐藤と高木を見送った。
「・・・さて、一体誰にケンカを売ったのか、ヤツ等にちゃーんと教えてやることにするか」
穏健派の弱腰ボス?冗談ではない。そんな評価など上辺のもの。イタリアンマフィアならば新人が入るとまず一番最初に徹底して叩き込む。
ボンゴレ10代目が戦いの場で眉間のしわを解いて笑顔をうかべたら逃げろ。その笑顔を見てなお、その場に立つ者の末路は推して知るべし、と。
「自業自得だな・・・ツナをあんなに怒らせやがって」
「・・・私達の出番、多分無いわ」
「だろうな」
リボーンとクロームは互いに顔を見合わせて苦笑をうかべ、それぞれの配置へと向かった。