クロスオーバー! REBORN!×名探偵コナン 作:cibetkato
「ジャンニーニ!」
「ああっ、10代目ぇ」
息を切らせることもなくブリーフィングルームに駆け付けたツナを、ジャンニーニはホッとしたような表情で出迎えた。
「沢田さん、これを」
一緒に詰めていたらしい高木達に促されて警視庁と繋げてあるモニターをツナは確認する。
「・・・これって」
「ええ、おそらくは犯人からのメッセージではないかと」
進入禁止にしてあったはずの現場に、鑑識がもう一度調査に入った際に見つけたという1枚のメモ。
「“親愛なる10代目、満月の頃第7埠頭で待つ”・・・か」
「あちらもしびれを切らした、ということでしょうか」
ジャンニーニが心配そうにツナを見つめる。ツナが次に何と言いだすかわかっているからだ。
「そうだねぇ・・・じゃあ、このお誘いに乗ってみようか」
「さ、沢田さん!!」
「危険です!」
高木と佐藤が反対の声を上げるが、ツナは笑顔でそれを一蹴した。
「これに応じなければ次はどんな手に出るかわかりませんよ?・・・今はまだ僕達の関係者しか被害に遭っていませんが、こういった類の組織は一般人でも平気で巻き込みますから」
それは避けたいだろう?と問われれば、高木も佐藤も黙りこむしかない。
『沢田さん・・・しかし、それでは貴方が危険な目に』
「目暮警部、マフィアのボスの心配なんて警察がするもんじゃないですよ。皆さんは犯人を捕まえることだけに集中してください」
モニターの向こうで渋い表情をうかべる目暮に、ツナは笑みをうかべた。
『・・・ボンゴレ10代目』
「ああ、鉄側警視」
『大丈夫、なんですね?』
「ええ大丈夫ですよ。今回は僕達に任せてもらえますか?怪我人は相手側に多少出るかもしれませんが、ちゃんと警察に引き渡しますので」
その後復讐者が回収しに来るかもしれないが、それはこちらの預かり知らぬことだ。
『しかし・・・』
ツナは渋る目暮にトドメとなる一言を放った。
「そもそもこちらの不注意で起きた事件です。警察の手を煩わせてしまったことは申し訳ないと思っています。ですから囮役ぐらいはさせてください」
『ぐ・・・』
囮役と言われて目暮は更に顔を顰めた。嫌な思い出が脳裏に浮かぶ。
『目暮、ボンゴレ10代目を信じよう。・・・彼なら大丈夫だ』
鉄側も説得に回ってくれる。ツナは目元を緩めた。
「大丈夫ですよ目暮警部。周りには僕の部下も配置しておくので」
『・・・わかった。我々も周囲を固めます。・・・危ないと思ったら、止めますからそのつもりで』
「はい、わかりました」
今度は素直に頷いたツナに、目暮はホッと息を吐いた。
***
「しかし、満月の頃というのはいつなんでしょう?しかも第7埠頭って、どこの埠頭なのか・・・」
「多分、並盛の埠頭じゃないでしょうか。日本でのボンゴレの拠点が並盛にあるのは伏せていませんから。・・・それから、満月の頃っていうのは次の満月ってことでしょうね・・・ジャンニーニ、今日の月齢は?」
高木の疑問に答えると、ツナはジャンニーニに視線を向ける。
「それが、10代目・・・満月は今晩なんです」
既に調べていたらしいジャンニーニが答えると、高木と佐藤がギョッとした。
「そ、それじゃ、すぐに配置の準備をしないと!!」
「目暮警部!すぐにSATの手配を」
「そんな大袈裟な・・・SATなんて必要ないですよ。拳銃を携帯した刑事さんで充分です。・・・そのかわり、こちらの部下にも武器の携帯を許可して貰えるとありがたいですけど」
ツナがSATの出動を固辞すると目暮は困ったように眉を顰め、後ろに控えていた松本を振り返った。
こくり、と頷いてみせる松本に目暮の心は決まった。
『わかりました。SATは出動させません。・・・貴方の部下が武器を携帯することも許可します』
「ありがとうございます。・・・ジャンニーニ、リボーンに連絡取って。それからクロームはまだ食堂にいると思うから食堂に通信繋げて」
「は、はい、10代目」
ツナの指示に応じて、ジャンニーニは食堂に通信を繋ぎ、続いて自分はリボーンへと連絡を取り始めた。
「クローム、いる?」
『ボス、こちらは滞りなく“終わった”・・・そっちは?』
「うん、向こうからの呼び出しがあった。今晩だよ。・・・手の空いてる部下を並盛の第7埠頭に集めて」
『・・・他の守護者には?』
「恭弥、隼人、山本は動けないから今回は外す。了平さんには俺から連絡しておくよ。ランボは子ども達が危険な目に遭わないように護衛させといて、骸にも一応連絡を」
『はい』
クロームの返事を確認してツナは通信を切る。そして耳に装着してあった通信機をタップする。
「もしもーし」
『おう!沢田か!!』
突如聞こえた大音声にツナは思わず通信機を取り外した。
「あ~、了平さん、もうちょっと声のトーン落として・・・スクじゃないんだから」
『あー、すまん。・・・で、どうしたのだ?』
外してもなおハッキリと聞こえてくる了平の声に、ツナはそのままで会話することにする。(でないと、耳がおかしくなりそうだと直感した)
「えーと、向こうに動きが合って俺が呼びだされたんですけど」
『何!?・・・極限にタイミングが悪いな』
「はは。まぁ、囮捜査大反対組が寝込んでるので、とりあえず俺が囮やるつもりですけど」
『大丈夫なのか?』
「まぁ、リボーンもクロームも付けられるので」
『ならば極限に問題なさそうだな!』
了平の声に安堵が滲む。
アルコバレーノとボンゴレの霧の片割れがいれば、“普通の”犯罪組織に後れを取るわけが無かったからだ。
もちろんツナ1人であっても大丈夫だとは思っているが、多勢に無勢となると怪我くらいはするだろう。
そんなことになったら、9代目と門外顧問が怖い(というより煩い)。
「というわけなんで、了平さんは財団の方をお願いしますね」
『極限、任せておけ!!』
大人になって頼りがいのある男に成長した了平に、ツナは全幅の信頼を寄せていた。
雲雀にしても、なんだかんだと言いながらも了平が自分の事に口出しするのを許している節があるくらいだ。
10年って恐ろしい。と自分の事は棚に上げてツナは苦笑をうかべたのだった。