クロスオーバー! REBORN!×名探偵コナン   作:cibetkato

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記憶の消去

「じゃあ・・・リモンチェッロっていう男が、その復讐者ってぇのに捕まるのを黙って見てるッちゅうコトか?」

 

 平次の確認に、ツナは苦笑いをうかべる。

 

「まぁ・・・日本の警察に捕まったところで、結局は復讐者が手を回して他の“何か”と入れ替えるのが目に見えてるからね~」

 

「“何か”って?」

 

 コナンが首を傾げる。

 

「まぁ復讐者も幻術が使えるからね、それで身代わり作るんだよ。そこらの術師なんかじゃ太刀打ちできないくらいの高度の術だから絶対バレないだろうし?

 ・・・対抗できるとしたら、ウチの術師2人かヴァリアーの術師2人ってトコ?」

 

「確かに、ボンゴレ所属のその4人以外じゃ太刀打ちできないと思うが」

 

 ランボが言えば、クロームがキョトンと目を瞬かせた。

 

「・・・対抗っていうだけなら、ボスも可能だと思うけど?」

 

「あー、まぁ確かに対抗だけならできるけど・・・俺は幻術使えないから、ノーカウントでしょ」

 

「幻術はじき返して、X BURNERとかで全部灰にしちゃう人が何言ってんだ・・・」

 

「さっきから大概失礼だね、ランボ。・・・お仕置きされたい?」

 

「ヒッ!?」

 

「・・・なんてね、冗談だよ。でも、いちいち突っかかって来ないで。今、ひじょーにイライラしてるから」

 

 笑顔のツナからわずかに殺気を感じて、ランボはガクガクと頷いた。

 

「まぁ、泣き寝入りするような質じゃないとは思てたけど・・・アンタも大概イイ性格してんねやな」

 

「フフ。これくらいじゃないと、マフィアのボスなんてやってけないよ?特にウチみたいな大きなトコのはね」

 

 どれだけの古狸を相手にしてきたか数知れない。年若く、そして日本人であることで厭味を言われることなどしょっちゅう、時には面と向かって馬鹿にされることだってあったのだ。

 

「ツナさん」

 

「ん?ナニ?」

 

「ツナさんの話が本当だとして、そうしたらツナさんが囮になる必要はないんじゃ」

 

 コナンの言葉に、ツナはああ、と破顔する。

 

「それはそれ。これはこれ。・・・全てを復讐者に任せたらこっちが借りをつくる羽目になりそうだしね」

 

 それだけは避けたいのだとツナが言えば、コナンは納得したように頷いた。

 

「なるほど」

 

「・・・心配は無用だよ。それに君達はこの件に首を突っ込み過ぎない方が良い。明確なメリットがあるならともかく、ね」

 

「あら、メリットなら有るわよ。・・・彼らがしばらく日本で行動しにくくなるなら、私達も安心して暮らせるもの」

 

 哀が口を開けば、ツナは苦笑した。

 

「まぁ、それも一応メリットとは言えるけど・・・君達が無理して首を突っ込む理由にはならないかな?」

 

「本当に、僕達が手伝えることは何もないですか?」

 

 コナンがツナを見上げる。

 

「そうだなァ・・・黒の組織の幹部の名前とか、哀ちゃんがくれた解毒薬だけでも十分なんだけど」

 

 何故か必死に見つめてくるコナンに、ツナは困ったように眉根を寄せた。

 

「何でもいいんです!・・・僕達のせいでツナさん達はやらなくても良い警察との合同捜査なんてやってるんですから!」

 

「ああ・・・あんなの、いずれバレてたよ。イタリア語でわざとらしく書いてあったんだから。君達が責任を感じなくてもいいんだよ」

 

「でもっ」

 

「君達はこれ以上深く関わらない方が良い。・・・マフィアに協力したなんてことが知られたら将来に傷がつく」

 

「っ・・・」

 

 正論だった。

 

 マフィアに協力する=犯罪ととられてもおかしくはない。世間一般の感覚はそんなものだ。

 

 現に小五郎の反応は顕著で、基地から帰った後はツナ達のことを話すだけで渋い顔をしていた。

 

 悔しそうな表情をうかべるコナンに苦笑をうかべ、ツナは軽く息を吐いた。

 

「・・・マフィアなんかに気を赦しちゃダメだよ、探偵さん?」

 

 ハッとして顔を上げたコナンに、ツナは続ける。

 

「確かに探偵なら警察よりも柔軟に情報源を確保できる。でもね、アンダーグラウンドに足を踏み入れたら二度と抜け出せなくなるから気をつけた方が良い。平次君もね?」

 

「そら、わかてるけど・・・アンタは信用したかてええと思てんねん」

 

「平次君。そう言ってもらえるのは嬉しいけど・・・なんか心苦しいなァ」

 

 どうやって彼等を説得しようかとツナが考えを巡らせた時だった。

 

『10代目ぇ~~!』

 

 食堂に設置されていたモニターにジャンニーニの顔がどアップで映し出される。

 

「ジャンニーニ?どうした?」

 

『今すぐブリーフィングルームにいらしてください!!』

 

 切羽詰まったその声に、ツナは眉を顰めた。

 

「わかった、すぐに行くよ」

 

『お待ちしております~!!』

 

 プツリと通信が切れた後、ツナは大きく溜息をついた。

 

「はぁああ~・・・どうやら、事態急変ってトコみたいだ。やっぱり君達はこれ以上関わらない方が良い。今すぐに炎と匣の存在についてのみ記憶を消させてもらう」

 

「「「「ッ!!?」」」」

 

 ギョッとするコナン達の前に、クロームが表情を動かさないまま静かに立ち塞がった。

 

「つ、ツナさん・・・でもっ」

 

「丁度、蘭さん達にも幻術かけてる最中だったしね・・・それに“幻術で何かを忘れさせられた”っていうことは覚えておくようにしてあげる」

 

 ツナの考えは変わらないようで、こちらの説得にはまったく応じないそぶりを見せた。

 

「ごめんなさい・・・ボスの命令は絶対」

 

 ポツリとクロームが呟き、手に持った三叉槍の柄を床にトン、と軽く叩きつける。途端にコナン達の表情がぼーっとしたものに変わった。

 

 更には倒れていた蘭達もむくりと起きあがってぼーっとした表情で衣服をはたく。

 

「ランボ、彼等の記憶の調整が済んだら米花町に送って行ってあげて」

 

「・・・わかった」

 

 コクリと頷いたランボに、ツナは笑みを向けて食堂を後にした。

 

 食堂に残された面々は、それぞれに顔を見合わせ、苦笑をうかべる。

 

「しょうがないよね、だって・・・ツッ君が危険だって判断したんだもん」

 

「はひ・・・少年探偵団の皆さんには申し訳ないですけど、でも、しょうがないですよね」

 

「・・・もうすぐ調整が終わる。ここからは炎や匣の事は口にしないで」

 

「うん、わかったよ、クロームちゃん」

 

「はひ!りょーかいです!」

 

「俺も、口にはしない。大丈夫だ」

 

 返事が返ってくると、クロームはコクリと頷いてもう一度三叉槍の柄で床を突いた。


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