クロスオーバー! REBORN!×名探偵コナン 作:cibetkato
ヴァリアーの部屋を出ると、ツナは子ども達を振り返った。
「さてと、じゃあお昼にしようか」
緊張から解放されて、わっ、と子ども達から歓声があがると、ツナは目を細めた。
「京子ちゃん達がイタリア料理を用意してくれてるからねぇ。ヘタなレストランより美味しいよー」
「わー、楽しみですね!」
「イタリア料理ってどんなのだ?」
「ピザとかパスタとかじゃないのかな」
「ガキんちょ共、イタリア料理ってのは、なにもピザやパスタだけじゃないのよ~」
イタリア料理の中でも特に有名なところをあげる子ども達に、園子がそう言ってフフン、と笑う。
「え~、じゃあ、他にどんなのあるんだよ!」
「ぜひ、教えて欲しいです!」
「そうねェ~、リゾットとかミネストローネとか、パニーニとかね!」
はしゃいだ声で話す子ども達に園子がイタリア料理で思い浮かべるモノを羅列する。
「楽しみじゃのぅ」
「食べ過ぎちゃダメよ、メタボになるから」
「うっ・・・」
ワクワクと言った阿笠博士に哀が即座に注意する。
そんな賑やかさのまま、一同はツナに連れられて食堂までやって来る。
「いらっしゃい、皆。大丈夫だった?」
「はひ、昨日ぶりですぅ」
「待ってた」
京子やハル、そしてクロームが笑顔で出迎える。そして目の前のテーブルには食べきれないのではないのかと思うほどの料理の山。
「ふふ、久しぶりだから気合入れて作っちゃった!」
「たくさん食べてくれると嬉しいです!」
「警察の人とか、他の守護者の分は別に届けてあるから」
そう言われてしまえばもう遠慮なくご馳走になるしかない。と言わんばかりに子ども達がテーブルに駆け寄った。
椅子に座るやいなや目についた物にドンドン手を伸ばしていく。
「蘭ちゃんや園子ちゃんも食べてね」
「はひ、コナン君や哀ちゃんもどーぞ!」
最初は遠慮していた面々も、京子やハルに促されてテーブルにつく。
「うめー!」
「ホント、美味しいですね!」
「コナン君、哀ちゃん!コレ美味しいよ!」
コナンや哀は、歩美の差し出したパニーニを受け取って口に入れる。
「・・・美味い」
「ほんと、美味しいわ」
「どれどれ、俺にも食わせろや」
その2人の脇から平次が手を伸ばし、阿笠博士も遠慮なくテーブルの料理へ手を伸ばし始める。
料理を大絶賛されて気を良くした京子とハルは、クロームと共にデザートのティラミスやパンナコッタを次々と取り出してくる。
「デザートもたくさん食べてね!」
「まだ、ジェラートもありますからね!!」
そう言ってハルが綺麗に盛り付けられたジェラートを持ってくる。
子ども達や女性陣から歓声があがり、結局用意された料理をすべて平らげてしまった。
「はー、食った食った・・・もう、満腹や」
平次がお腹をさすってみせると、コナンが苦笑をうかべた。
「平次兄ちゃん、途中から無言で食べてたもんね」
「当たり前や!こないな美味い料理なんか滅多に食べられないねんからな!夢中になて食うに決まとるやろ!」
「気に入ってくれたみたいで良かった」
「はひ、これだけ食べてもらえれば作ったかいがあるってもんです」
「うん、喜んで貰えて嬉しい」
京子達も満足げに頷いて、食器を片づけ始める。
「あ、手伝います」
「私も」
蘭と園子が申し出ると、京子達は洗った皿を拭いてくれるように頼んだ。
「・・・ほんで、囮捜査てどないいうこっちゃ?」
女性陣が席を外すと、平次が口を開いた。
「さて・・・どう説明しようかなぁ・・・」
子ども達の視線が心配そうなのに気まずい思いになる。
「あの強面の兄ちゃんと、そっちのメガネの兄ちゃんは大丈夫みたいなこと言うてたけど、ほんまはどないねや?」
困ったようにツナが首を傾げていると、平次がまずはと訊ねてくる。
「ああ、それは大丈夫。・・・イタリアンマフィアの戦い方を知らない人間は、俺に傷一つだってつけられやしないよ」
「ほんまか?」
「うん、本当。・・・ね?コナン君達は俺と恭弥の戦いをちゃんと見ていただろう?アレがイタリアンマフィアの戦い方だ。普通にライフルやら格闘技やらで対抗できると思う?」
訊ねられた子ども達は一斉に首を振った。あの戦いは尋常ではなかった。それこそ特撮モノか?と思ったくらいに。
アレが生身の人間同士の戦いとはどうしても思えなかったのだが、イタリアでは普通のことなのかと思うとゾッとする。
「まぁ、よっぽどのコトが無ければ匣を使うこともないし、俺自身の能力を使う必要もないだろうね。・・・体術だけでもそれなりに自信はあるし、勘が良いからライフルで狙われても避けられるし」
「避けられるの!?・・・ライフルの弾ってすっごい早いんだよ?」
「うん、余裕だね。速さで言えばウチの御意見番の弾の方が何倍も速いし」
コナンの問いに、ツナはあっさりと答える。
「そういう“血統”だと言っただろう?・・・ブラッド・オブ・ボンゴレ、またの名を超直感。とにかく勘が鋭い一族なんだ。代々のボスはその力を使ってファミリーを導き大きくしてきたんだ」
「そう、それにボンゴレの団結力は並じゃない。・・・以前のXANXUSさんの言葉を借りるなら“内部にどんな抗争があろうとも外部からの攻撃を受けた非常時にはボンゴレは常に一つ”なんだ」
「はは。もうちょっと荒っぽい言い方だったけどね」
正一の補足にツナは訂正を入れる。
「・・・でも、ツナさんはそのファミリーを壊そうとしている・・・ってこと?」
哀が困惑気に問うと、ツナは苦笑した。
「まぁ、おかしいと思うかもしれないけどね・・・それが、初代の願いでもあるんだよ。・・・ボンゴレは大きくなりすぎた。力を求めるあまりに本来の結成された目的を忘れてしまったんだ」
「本来の目的?」
平次が首を傾げる。
「・・・ボンゴレの始まりは町の人々を守る自警団なんだ。だから、マフィアとなった今でも形は変われど自分達のシマは絶対に守るという思いは強い」
「そんなボンゴレファミリーを壊そうとするなんて、無謀だと思うけどな」
ボソリとランボが呟く。
「まぁ、そう簡単にはいかないってことはわかってるよ。・・・長い時間をかけて解体していくしかないんだろうね」
「・・・どうしても、解体するのか」
ランボにしてみれば、別のファミリーからの出向扱いの立場であり、ボンゴレが無くなってしまえばツナ達との繋がりも無くなってしまう。余計に複雑な思いを抱えているのだろう。
「まぁ、マフィアとしては解体しても、自警団としてこじんまりとやるのはイイかもって思ってる・・・7³を守らなければいけないのは変わりないし、ね」
「・・・うん」
渋々頷くランボに、ツナは困ったように笑った。
「で、話は戻るが、囮捜査でツナさんに危険はあらへんちゅうのはわかったけど、どないすんねん?」
平次が話を戻すと、ツナは首を傾げる。
「俺が目的なんだから・・・普通に彼等のアジトらしきショットバーか何かに行ってみようかと思ってるんだけど」
「ちょう、待て!!なんぼなんでも、危険すぎる!!」
慌てて平次が言う。
「・・・ん~・・・そう?」
「せや!・・・もうちょい作戦を練てからでもええやろ!」
なぜそんなに慌てるのかがわからないと言わんばかりに首を傾げるツナに、平次は頭を抱えた。
(なんやねん、この人は!まったく危機感があらへんのはなんでや!)
「・・・は、ははは・・・」
ツナと雲雀の戦いを見ているコナンは、平次の苦悩がわかりつつもツナの余裕っぷりもわかるので、何とも言えない微妙な表情でから笑いをするしかなかった。