クロスオーバー! REBORN!×名探偵コナン   作:cibetkato

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ツナ様VS雲雀

 時は少し遡り、地下のトレーニングルームまで雲雀を引っ張ってきたツナは、パッと腕を離すと雲雀から距離を置いた。

 

「じゃ、お仕置きとは名ばかりのストレス解消やろうか!イタリアではずーっと缶詰めだったから、もうストレス溜まっちゃって大変だったよ~」

 

 上着を脱ぎ捨て、腕まくりをする。

 

 やる気満々のツナに、雲雀は肩を竦めた。

 

「別に、ストレス解消の相手は誰でも良かったんでしょ・・・?」

 

「まぁ、そうだけど~。今は恭弥相手の方が遠慮なくやれそうだしっ♪」

 

「はぁ・・・いいよ、相手してあげる。君とやるのは久しぶりだ・・・おいで」

 

 雲雀のトンファーに紫の炎が燃え上がる。

 

「匣無しでイイよね?」

 

「・・・その方が楽しめるでしょ?」

 

 大空のボンゴレ匣なんざ使われた日には文字通り灰になる。そう思いながらも平然と雲雀は答えた。

 

 ニコリ、と笑ったツナは額に炎を宿す。

 

「・・・行くぞ」

 

 感情が一切削がれた様な声。雲雀は背筋がゾクリとするのを感じ、ツナの姿が視界から消えたのと同時に右へ飛んだ。

 

「甘い」

 

「!」

 

 雲雀の目の前に現れたツナは、炎を宿した拳を雲雀に向けて放つ。

 

 咄嗟にトンファーで防御し、その反動で後ろに身体が下がる。ビリビリとしびれる腕に気付かれないように、雲雀はクツリと笑った。

 

「こんなもんじゃ、ないだろう?・・・沢田」

 

「・・・ああ、次は出力40%」

 

 コンタクトレンズ型のディスプレイに写された表示が30%から40%に上がり、見た目にも炎が大きくなったのがわかる。

 

「匣を使っても良いぞ」

 

「冗談でしょ・・・いいから来なよ」

 

 ムッとして雲雀はトンファーの炎を更に大きくする。

 

「フ、そうこないとな」

 

 ツナは左手を後ろに向け、右手を前に向ける。

 

「・・・X BURNER(イクス・バーナー)」

 

 今では殆どゲージを貯める動作も無い。ますます速くなったその攻撃を避けるのは至難の技だ。

 

 構えを見た瞬間に、雲雀は広く開いている左の方にダッシュした。

 

 その背後、ギリギリの所をオレンジの炎が通り過ぎる。

 

 ドォン!と派手な音がして壁が抉れる。グラグラと部屋全体が揺れ、その揺れは他の階にも伝わっていく。

 

「40%で壁が抉れるか・・・もう少し壁を強化して貰わないとな」

 

 冷静に分析するツナだが雲雀は冷や汗ものだ。ほんのわずかでも回避行動が遅かったなら、おそらく大火傷を負っていただろう。

 

「・・・ちょっと、X BURNERって・・・」

 

「・・・避けられただろう?」

 

 避けられなかったらどうするつもりだったのか、この男は。若干恐怖を感じつつも、本来雲雀が持っている闘争心に火が付く。

 

「・・・やってくれたね、お返しだよ!」

 

 トンファーが閃き、ツナは軽く後ろに仰け反る。ヒュ、と目の前を銀色が横切り、すぐに反対からもトンファーが迫って来る。

 

 それを更に後ろに下がって避けると、今度は雲雀の左足がツナを襲う。

 

「・・・X BURNERを撃たせないつもりか」

 

 雲雀の猛攻を避けながら冷静に呟き、ツナは両側から襲ってくるトンファーを受け止める。そしてそのまま雲雀の顎を狙って足を振り上げる。

 

 雲雀は身体を捩ってその蹴りを避けると、ツナの手を振り払う。

 

「ホンットに、容赦ないね・・・」

 

 雲雀が言う。

 

「俺を怒らせた自覚はあるだろう?」

 

 冷笑をうかべるツナに、雲雀は口元を引き攣らせた。

 

「・・・本気で怒ってるんだね・・・」

 

 なんだかんだ言っても味方には甘いツナなのだが、今回に限っては本気で怒っているらしい。

 

「当然。イーピンにあんな言葉を教えて・・・俺が怒らないとでも?」

 

 身内の、それも女性には特に甘いツナ。その中でも年少のイーピンのことは妹のように可愛がっていて、そのイーピンから“若作り”と言われたことが、相当堪えたらしい。

 

「それに、若いと言われるのはキライだけれど・・・まだ若作りと言われるほど、俺は年食ってない!」

 

(怒りのポイントはそこか!!!)

 

 言葉と同時に放たれた炎の塊を必死で避け、雲雀は心の中でツッコミを入れた。

 

「っていうか!いつからXANXUSの憤怒の炎みたいなのまで出来るようになってるのさ!!」

 

「お前が日本にいる間の、俺のストレス解消の相手は誰だと思う?」

 

(XANXUSか!!!)

 

 数打てば当たると言わんばかりに放たれる炎の塊全てを完璧には避けられず、雲雀のスーツのあちこちが焼け焦げている。

 

 頬の辺りにも火傷を負い、炎の塊がぶつかった衝撃で爆ぜた壁の破片で腕も負傷している。

 

 それでも、足だけには殆どダメージを受けていないのは、逃げるために必要な足をほぼ無意識で庇っているからだ。

 

「さすが、俺の最強の守護者。そう簡単にはやられないな」

 

 口の端をつりあげたツナの表情を見て、雲雀の本能が危機を訴えた。

 

「出力・・・50%」

 

「~っ!・・・それ!直撃したら、いくら僕でも無事じゃ済まないから!!!」

 

「だから、言ってるだろ?・・・匣を使っても良いぞとな?」

 

「っ、ロール!」

 

 さすがの雲雀も、今度は素直にボンゴレ匣を取り出した。

 

「・・・きゅぅぅう」

 

 雲のボンゴレ匣。雲雀のハリネズミ・ロールはその場の状況を一瞬で理解し怯えたような声を出した、が。

 

「・・・ロール、防御頼むよ」

 

 主がそう命じるならばと、増殖を始めた。

 

「防御に徹しても、俺は倒せないぞ?」

 

「わかってるよ!」

 

 まずは時間稼ぎだ。ツナの隙を狙う。

 

 ただ、ほんの少し時間を与えただけでツナは炎の塊かX BURNERを撃ってくるので油断ができない。

 

 トレーニングルームの中を走り回り炎の塊を避けながら、雲雀はツナの隙を窺った。

 

(・・・っていうか、全然隙がない!)

 

 恐るべき超直感である。隙という隙がまったくない。

 

「ロール!形態変化!」

 

「きゅぅぅううう!」

 

 増殖を続けていたロールが、雲雀の言葉と共に手錠へと形態変化する。

 

「出たな」

 

 ツナが嬉しそうに呟く。

 

「これで、君を止める」

 

「さて、止められるかな?」

 

 ツナが口元にだけ笑みをうかべる。その瞬間、その姿がかき消える。

 

「・・・っ!?」

 

 息を呑んだ瞬間、背後にツナが現れて強烈なパンチが繰り出される。雲雀は振り返りざまに腕でガードするが、そのまま吹っ飛ばされる。

 

「手錠で圧死なんて、ごめんだからな・・・抵抗はするぞ」

 

「君が大人しくしてるとは思ってない・・・」

 

 ゆらり、と立ち上がると、ジャラリ、と両手に持つ手錠が音をたてる。2つ、4つ、6つ・・・徐々に増えていく手錠を雲雀は構えた。

 

「数打てば当たる・・・それは、君よりも僕の専売特許だ」

 

「ナルホド・・・じゃあ、当たる前に潰す」

 

 美しい笑みと肌に突き刺さるような純粋な殺気に一瞬見惚れる。

 

(これだ・・・これが僕を惹きつける)

 

 見惚れたのもつかの間、我に返った雲雀が手錠を投擲するが、すでにその場にはツナはいない。

 

「・・・珍しい、お前が戦いの途中に気を逸らすなんて」

 

 ツナの声が聞こえたかと思ったらその顔が目の前にあり、雲雀はギョッとして身を引いた。

 

 それが致命的だった。綺麗なフォームでツナの蹴りが雲雀に放たれたその瞬間。

 

『綱吉君ッ!そこまでだ!』

 

 鋭い叫びに、ツナは雲雀の首まであと数センチというところで足をピタリと止め、小さく笑んだ。

 

「正一、見ていたのか?」

 

『もう!気づいてたクセに・・・今、本気で雲雀さんを潰すつもりだっただろう!?そんなことしたら後で困るのは君だぞ!』

 

「・・・ふぅ、手加減はしたよ?恭弥にはこれで充分だったと思うんだけど」

 

 額の炎が消え、ツナはヘラリと力の抜けた笑みを見せる。

 

(もったいない・・・キレイだったのに)

 

 雲雀は思わず残念に思う。

 

「水入りになっちゃったし、恭弥へのお仕置きはこれでおしまいかな~」

 

「・・・そう」

 

 ホッとしたような残念なような、複雑な気持ちで雲雀は呟いて視線を逸らす。

 

「というわけで、俺はリボーンのトコに行くから恭弥はちゃんと医務室で治療してね?」

 

 ニコリ、と笑ってツナはそのままトレーニングルームを出ていく。

 

『大丈夫かい?雲雀さん』

 

 ツナを見送っていた雲雀に、正一が声をかける。

 

「・・・入江正一、余計なことを」

 

『え、ええっ?!だってあのままだったら、雲雀さんは・・・!』

 

「彼は最初から止めるつもりだったよ。じゃなかったら、君の声であのスピードの蹴りを寸止めなんて出来るわけがないだろう?」

 

『え・・・あ、ああっ!』

 

 大声をあげる正一に眉を軽く顰め、雲雀はトン、と壁に背をもたれかかる。

 

「・・・もう少し・・・見てたかった、の、に・・・」

 

 ずるずるとそのままへたり込み、雲雀は目を閉じた。

 


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