クロスオーバー! REBORN!×名探偵コナン 作:cibetkato
そして一行は並盛へと向かうため警視庁を出る。
出た瞬間、目の前にずらりと黒塗りの高級車が数台止まっていて皆は何事かと目を丸くした。
「さぁ、ツナヨシ様!先程大使館に連絡して呼び寄せておきました!」
その時、リィナ大使が大きく手を広げ得意気に告げる。
「・・・ガエターノ」
ツナが低い声で、リィナ大使の護衛の名を呟く。
「・・・申し訳ございません、すぐに大使館に帰らせます」
ツナの言いたいことはしっかりと伝わったらしく、ガエターノは深々と頭を下げ、無線機に向かってイタリア語で引き返すように告げる。
「・・・つ、ツナヨシ様?」
次々と帰って行く車と己の護衛を交互に見て、オロオロとリィナ大使が問えばツナは肩を落とす。
「ジュリオ・・・俺は仰々しいのは苦手だっていつも言ってるだろ?・・・それに俺は一応“お忍び”で来てんの!!わかる!?」
万が一にでも敵対勢力にツナが日本に来ているなんて連絡が行こうものなら、総本部が攻撃される可能性だってある。
何しろ守護者も技術者も皆、日本について来てしまったのだ。いくら9代目やその守護者チェデフがいたとしても、10代目とその守護者の戦闘力にははるかに及ばない。
ちなみに、ヴァリアーも任務中でイタリアにはいない。総攻撃された日にはさすがに苦労するはずだ。
そしたら、後が―――面倒くさい。
「・・・申し訳ありません・・・」
先程からツナを怒らせてばかりのリィナ大使は、シュンとして項垂れる。
「・・・あーもー・・・良い大人がナニしょぼくれてるんだよ・・・ったく」
ガシガシと頭を掻いたツナは、リィナ大使の肩をポンと叩いた。
「事件が終わったら大使館には顔を出す・・・その時にはちゃんと相手してやるから・・・それで我慢しろ」
その言葉を聞いた瞬間、シュンとしていたリィナ大使の目がきらっきらと輝き、ツナにガバッと抱きついた。
「Ti amo! decimo!!(愛しています!10代目!!)」
「オーバーだって!!ひっつくなよ!・・・こらっ・・・ジュリオ!!」
リィナ大使の方が体格が良いため、ツナは腕をはがすのに一苦労する。
「・・・本気でぶん殴れば良いのに・・・」
ぼそり、と言ったのは雲雀だ。
「いや、それマズイだろ、一応相手は大使だぜ?」
「・・・ああ、10代目が本気でぶん殴ったら・・・アイツ、死ぬぞ」
それに対し素早くツッコミを入れた、山本と獄寺。
「それもそうか・・・じゃあ、僕がかるーく、咬み殺してくる」
「きょ、恭さんッ!・・・恭さんのかるーく、は一般人の全力です!!止めてくださいッ!!」
トンファーを構えてそう言った雲雀を、草壁が羽交い絞めにして一生懸命抑え込む。
「ちょっと、放してよ、哲」
「ダメです~~!・・・っ、沢田さんっ!早いところ、大使をどうにかしてくださいっ!」
そんな草壁の叫びが聞こえて、ツナはジュリオの身体を目一杯押して一喝した。
「は・な・れ・ろ~ッ!!じゃないと、大使館でも一切無視してやるからなッ!!イタリアにも戻してやらないッ!!」
「それは嫌です~~ッ!!!」
ようやく離れた大使を見て、ツナは疲れたように溜息をついた。
「・・・はぁ・・・ガエターノ・・・」
「かしこまりました・・・さ、大使、戻りましょう・・・これ以上お邪魔をするのは、大使にとってもボンゴレにとってもよくありません」
「うう・・・ツナヨシ様・・・絶対に帰る前には、大使館にお寄りくださいね?」
「ハイハイ。わかったよ・・・」
ヒラヒラと手を振りながら大使を見送ったツナは、呆気に取られていた面々を振り返った。
「スミマセン、本当にお騒がせしまして」
「・・・あ、いえ・・・」
目暮が応じると、ツナはニコリと笑う。
「今から謝っておきますね?・・・多分、今まで以上にとんでもない連中ばっかりに会うことになると思うんで」
「・・・い、今まで以上っすか?」
小五郎がごくり、と喉を鳴らす。
それってどんなんだと、不安に駆られボンゴレをよく知っているらしい鉄側に視線が集まる。
「・・・私もここにいるメンバーと、あともう1人しか知らないぞ・・・?」
その1人が1番危険とも知らず、鉄側はそう呟くように言ったのだった。
***
並盛は、今日も平和だ。―――表向きは。
風紀財団の監視の目があるからこその、仮初の平和である。
そうでなければ、ボンゴレ10代目をはじめとして守護者やその身内の出身地である並盛は、敵勢力によって制圧されてもおかしくない場所だ。かつての、ミルフィオーレのように考える敵勢力もいなくはない。
「やっぱ、並盛に帰って来ると、落ち着くよなー」
ポツリ、と山本が呟けば、ツナは苦笑する。
「ほんと、落ち着くよねぇ・・・イタリアに帰りたくなくなる」
そこまで言った時、ツナはハッとして一歩後ろに下がった。
ツナの立っていた場所のアスファルトが跳ねて、舗装の一部に穴が開く。
「狙撃!?」
佐藤が叫んで、高木と目暮が身構え、小五郎が厳しい表情をうかべて辺りを見回し、子ども達は不安そうに互いの顔を見合わせる。
「もー・・・危ないだろ、リボーン」
「フン、イタリアに帰りたくないなんて言うからだ・・・冗談でも口にするな」
呆れたようなツナの言葉で狙撃手が姿を現した。
一言で言うなら、鋭い刃、だろうか。
その雰囲気は、まさに暗殺者そのもの。殺気を隠そうともしない彼に気圧されてボンゴレ以外の面子はその場から一歩も動けなくなってしまう。
「立場は理解してるってば・・・でも、偽らざる気持ちだ」
「・・・なお悪い」
ツカツカとツナに歩み寄り、愛銃をその額に突き付けた。
ツナはそれには一切反応を見せず、リボーンを真っ直ぐに見据えた。
「一般人の前だ、殺気を抑えろリボーン」
「・・・誰に命じてやがる、ダメツナが」
「2度も言わせるな、リボーン。殺気を、抑えろ」
ツナの声が低くなる。リボーンは眉間にしわを寄せ、それからフイッと顔を背けた。その瞬間、彼から発せられていた殺気が霧散する。
ホッと息をついた佐藤と高木、そして目暮は、ツナに問うような視線を向けた。
「ああ、紹介します。ウチの御意見番でヒットマンのリボーンです。・・・物騒な奴ですが許可なしに他人を傷付けることはしないので安心してください・・・と、言っても説得力皆無ですよね?しかも日本じゃ銃刀法違反だし」
困ったように笑うツナ。
目暮達も、本物の暗殺者の登場にどうしたものかと視線を交わし合う。
そこで一歩、鉄側が前に進み出た。
「お久しぶりですね、黄のアルコバレーノ」
「・・・あぁ、アイアンサイドか」
声をかけて来た相手に視線を向け、リボーンは表情をわずかに動かす。
「アイアンサイドはあだ名みたいなもんですし、恥ずかしいから呼ばないで下さいと言っているでしょう?」
「だったら、俺にだって名前はある」
「ああ・・・スミマセン、リボーンさん。しばらく見ない間に“大きく”なりましたね」
「よく勉強してやがるな・・・オメェの担当でもねぇだろうが」
「まぁ、ボンゴレと関わってから随分と勉強しましたよ、イタリアのマフィア界の“謎”について・・・殆ど趣味のようなものですが役には立ってますよ、こうやってね」
「フン、食えねェ奴だな・・・情報源は風紀財団か?」
「・・・ええ、まぁ」
「鉄側警視・・・」
目暮が困ったように名前を呼ぶ。
「・・・ああ、大丈夫だ。彼は決してボンゴレ10代目の不利益になるようなことはしない・・・銃刀法違反には目をつぶってやれ。“イタリア大使館の関係者”となれば、我々の埒外だ」
「大使館の関係者・・・ですか・・・わかりました」
チラチラとリボーンを確認しながら、目暮は渋々頷いた。