真剣で私に恋しなさい! ~Junk Student~   作:りせっと

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2話 ~国吉灯、西の生徒と対決~

「おいこれ押されてるじゃんかー」

 

 

 

 灯は見晴らしが良い場所から川神水を瓶でラッパ飲みしながら、現在行われている東西交流戦を見ている。その様子は川神学園の生徒が押され気味だ。

 

 東西交流戦は今夜で3回目。1日目は1年生が、2日目は3年生が天神館相手に戦った。結果は1年生陣が敗北、3年生陣が勝利というものだ。

 1勝1敗で迎えた今夜、2年生陣には川神学園の名を高めるか、辱めるかがかかっている。

 

 

 

「そうだな、明らかに東の旗色が悪い」

 

 

「西方十勇士……手ごわい相手ですね」

 

 

 

 灯と共にいるのは同じクラスメートである直江大和、もう1人は2年S組所属の葵冬馬。この2人は2年生を代表する軍師、要するにブレイン担当だ。その2人が今現在頭を使いつつも悩んでいた。

 

 

 

「灯がいくら強いって言っても……今は大将を取れるタイミングではない」

 

 

「灯くんが大将を狙いに行ってる間、他の十勇士に英雄がやられたら本末転倒もいいところです」

 

 

 

 悩みのタネはタイミング。灯が百代とやりあえるぐらい強いのは知っているが今、灯が天神館の大将を狙いに向かっても、天神館に押されているこの状況ではこちらの大将――九鬼英雄が先にやられる可能性の方が高い。

 

 この不利な状況を打破するため、2人は部隊と配置をもう1度整える指示を出していてそれの報告待ちなのだ。

 

 そのことは灯も分かっているためまだ動かない。

 

 

 

「思った以上に手練だったな……大和、何か食べ物もってないか?」

 

 

 

 大和と葵が真面目に戦況を見てどうすべきか考えている中、1人慌てた様子もなくマイペースで飲酒(川神水)し続けながら観戦気分でいる灯。どうやら摘みが欲しくなったらしい。

 

 

 

「こんな状況で持ってる訳ないだろ」

 

 

「ち、バイは何か持ってないのか?」

 

 

「残念なことに私も持ってません。持ってたら距離が貴方との距離が縮まったというのに」

 

 

「もぅ一生お前に強請らねぇよ」

 

 

 

 バイとは葵のことだ。葵は女の子が好きだが男の子も好きなバイセクシャルのため、顔だけは良い灯は1年生の時から目をつけられているのだ。自愛に満ちた笑顔を振りまきつつ葵がこちらに向かって来て「私と淫らなことをしませんか?」と言われた時、灯は初めて人に殺意を覚えた。曰く「人って本当に殺意湧くもんなんだな」

 

 食べ物を探す…もといたかることを諦めたのか再び川神水を飲む灯。だが川神水もほぼ無くなっていた。それもそのはずだ、何せ今夜の交流戦開始直後から殿様気分でずっと飲んでいたのだから。

 

 

 

「こっちも無くなってしまった……」

 

 

「なら丁度良い、そろそろ灯も準備してくれ」

 

 

「たった今連絡が来ました。再配置が済んだようです」

 

 

「よし! なら反撃開始だ!」

 

 

 

 灯1人凹んでいる中、川神学園の反撃が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 再配置が整ってある程度時間が経つと、マルギッテ、井上準、英雄(倒したのはあずみ)、不死川心が西方十勇士を1人ずつ撃破したと、大和と葵の携帯に連絡が入った。それを聞いた2人の考えは一緒だった。

 

 

 

「よし! 一気に畳み掛けるときだ!」

 

 

「今こそ好機、ですね」

 

 

 

 2年を代表するブレイン2人が今こそ大将を打ち取る時だと確信する。今こそ切り札を切る時だと。

 

 

 

「灯! 大将を狙ってきてくれ。大将がいる位置は今携帯に送ったからそこに向かってくれ」

 

 

 

 大和が灯に向かって指示を出す。指示と言っても非常に単純なもので指示と言えるものではない。だがこの男に関していえばこの指示で充分。後は勝手にやってくれると思ってるからだ。

 

 

 

「んーっ」

 

 

 

 ゆっくりと背伸びをした後、全身に力を込め立ち上がる灯。今までダラダラしていた分体力は有り余っている。川神水を飲んでいたにも関わらず、足取りはしっかりとしていて目もはっきりしている。場酔出来る川神水何てなんのそのだ。

 

 

 

「んじゃ行ってくるわ、ここに敵がきてもお前らでどうにかしろよ」

 

 

「はい、こちらのことは心配しないで下さい」

 

 

 

 葵がここまで言い切るということは対処する方法はあるのだろう、そう判断した灯は戦場に向かうために大きくジャンプして下に降りていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だ、相手の大将はこんな死角に移動するのか」

 

 

 

 灯は大和から送られていた情報を歩きながら確認した。場所を理解し目的地へ向かう途中

 

 

 

「ん?」

 

 

 

 ふと前を見ると天神館の戦士が4人……内1人女性がこちらに向かって来てる。遠目からの確認だが4人ともやる気満々のようだ。

 

 

 

「ここから先は行かせん!!」

 

 

「たった1人だ! さっさとやってしまおうぜ!!」

 

 

 

 声を上げながら戦闘態勢を取って向かっている天神館の生徒を見ても灯は慌てない。

 

 

 

(後ろの女……お、結構可愛い、スタイルも良い!)

 

 

 

 戦闘に必要には全く関係ないことを確認した灯はニヤリ、と不敵な笑みを浮かべ――地面を蹴る。

 

 

 

「え?」

 

 

 

 驚いた声を上げたのは天神館で先頭を走っていた男だ。男には灯がこちらに向かってきた姿が全く見えなかった。気づいたときには既に自分の目の前に拳が迫っていた。

 

 

 

「ぶっっ!!」

 

 

 

 何が起きたか詳しく理解出来ないまま先頭を走っていた男が殴られる。その拳の威力は男を一撃で倒すほどだ。

 

 後ろを走っていた3人も何が起きたか正確に理解出来てない。

 

 

 

「「?」」

 

 

 

 残り3人の内、男2人の襟が同時に掴まれている。掴んでいるのは灯。それを男2人は理解できてない。なぜならば灯の行動が早すぎるからだ。当然この2人も灯がこっちに向かってきた姿は見えていない。

 

 

 

「ふっ」

 

 

 

 一瞬息を吐いて灯は掴んでいる2つの襟を同時に引っ張り、男と男のデコ同士を思いっきりぶつけた。

 

 大きな音は聞こえなかったが、やられた男たちの脳内には鐘を付くような音が響き渡っただろう。音が響き割った頃には既に男2人の意識はなかった。

 

 ぶつけた後は直ぐ様襟を離し男2人を床に投げ捨てる。これで残っているのは天神館の女子1人だ。

 

 

 

「ひっ!?」

 

 

 

 天神館の女子生徒は怯えながらも、灯に武器である棒を向けた。ここまでやられれば流石に灯が迫っているのは目視出来る。そしてどうやら戦意は喪失してないようだ。

 

 その後間を置かないまま灯に向かって棒で攻撃を始めた。構えた方向へ素早い攻撃を出せる突きだ。

 

 灯はそれを冷静に対処する。突きを右にスライドするように躱し、更に女子に迫るため1歩踏み出す。そのスピードに女子生徒は対処できない。灯はそのまま女子生徒の後ろへと回り込み――

 

 

 

「え!? ……あ、ぁ」

 

 

 

 右手で女子生徒の胸を触っていた。いや、揉んでいた。

 

 灯は至って真面目な顔をしながら女子生徒の胸を揉んでいる。女子生徒は今まで味わったことが無い感覚に怯えつつも声を漏らしていた。

 

 

 

「ほぅ……86! バストサイズはEカップってとこか。交流戦に参加したのはこうゆうのを期待してだ」

 

 バストサイズをピタリ当てるという無駄な特技を誰に見せるわけでもなく披露していると

 

 

 

「そなた!! 何をしている!!」

 

 

 

 死角であるエアポケットに移動しようとしていた島と石田に遭遇した。

 

 

 

「何だよ……お、天神館の大将じゃん」

 

 

 

 目的であった天神館の大将、石田三郎と偶然出会った。女子生徒の胸を揉むのを辞め、床に置く。女子生徒は腰砕けになっているのか、立ち去ることも出来ず座り込んでしまった。女子生徒は息を切らしており、灯は満足そうだった。

 

 

 

「貴様……ここで何をしてた?」

 

 

 

 石田は眉間に皺寄せつつここで灯が何をしてたかと問う。何をしていたかは知っているのにも関わらずだ。

 

 

 

「何してたって……」

 

 

 

 灯は床に座っている女子生徒を見る。女子生徒は戦ってもいないのに息が切れていて、その姿はどことなく色っぽく見える。顔も熱があるかのように真っ赤だ。

 

 

 

「触ってた」

 

 

「貴様阿呆か!?」

 

 

「普通にセクハラではないか!?」

 

 

「だってこの娘スタイル良いし」

 

 

 

 灯はこれだけスタイルが良ければ触るのは当然、と言うばかりの態度。自分が悪いことをした、という気持ちは全くない。

 

 

 

「はぁ……島」

 

 

 

 石田は思わず呆れてしまう。そして自分の懐刀である島に命令を出す。この目の前にいる男を倒せっと。

 

 

 

「はい、それがしは西方十勇士の島右近! お覚悟!!」

 

 

 

 名前が呼ばれただけで自分に命令された内容を理解し、島は武器である槍を出し、灯を撃つ態勢を取った。

 

 その行動に対して灯は1つ文句を言った。

 

 

 

「? おい、この交流戦は2年だけだろ。何で教師がいるんだよ」

 

 

「それがし立派にそなたと同い年!」

 

 

「は? 嘘だろ?」

 

 

「本当です!!」

 

 

「マジかよ……」

 

 

 

 信じられないっと言った表情を浮かべつつ、島を迎え撃つ態勢を取る灯。

 

 

 

「まぁテメェには用が無いんだ、来るなら来い。5秒でK.Oしてやるから」

 

 

「はぁああああああ!!!!」

 

 

 

 島は真っ直ぐ灯に向かっていき槍を振るう。槍を振るう速度だけ見てもこの島と言う男はしっかりと鍛錬を積んで鍛えてることが分かる。その鍛えられた男、島から振るわれる槍を灯は

 

 

 

「ほ」

 

 

 

 難なく右手で受け止める。槍先の刃の部分ではなく、刃の真下の部分をガッチリと掴んで離さない。

 

 

 

「何!?」

 

 

 

 流石の島も、こうも簡単に自分の振るった槍が受け止められるとは思わず動きを止めてしまう。槍を引っ張って強引に離そうとするが……灯は全く離す気配がない。島は灯がとんでもない怪力の持ち主であると理解した。

 

 

 

「ふっ」

 

 

 

 灯は手首に力を込め、細い木の棒を折るかのように槍先を折る。

 

 

 

「なぁ!!」

 

 

 

 驚いた島は1度態勢を立て直そうと槍を引こうとした。しかし灯はそれを許さない。直ぐ様左手で槍の真ん中あたりを持ち、槍を奪い取ろうと強引に引っ張る。

 

 灯の怪力の前では島の槍を奪われて当然だろう。その引っ張られた影響で、島は前につんのめりそうになる。当然体制は崩れている。

 

 島が体制を崩している間に灯は槍を左手で2回転させ軽く手遊びしたあと、槍を振り上げ両手持ちで島の頭目掛けて振り下ろす。

 

 

 

「はぐぅう!?」

 

 

 

 それをモロに喰らった島はそのまま倒れてしまった。

 

 灯は倒れた姿を確認したあと、奪った槍を投げ捨て、視線を石田へと向けた。

 

 

 

「さ、次はお前だぜ。大将さんよぉ」

 

 

「まさか島がこうもアッサリ倒れるとはな……」

 

 

 

 石田は島が敗れたことに対して驚きつつも、武器である刀を抜き戦う体制を取る。石田自身が戦う必要があると判断したためだ。そして石田はある技を使うことも決めていた。

 

 

 

「貴様相手に本気など出したくはなかったが……はぁあああああ!!」

 

 

「?」

 

 

「奥義・光龍覚醒!!! これで貴様に勝ち目はなくなったぞ!!」

 

 

 

 石田の髪の色が金になった。どんな曲芸技だよ……灯はそう思いつつも、同時に戦闘力が上がっていることを感じ取った。

 

 

 

「は、大層なこって。髪の色を黒と金、使い分けることが出来る便利な技だな」

 

 

 

 だが灯は全く慌ててない。余裕の態度を一切崩さず、馬鹿にしたような目付きで石田を見る。 

 

 

 

「そうやって余裕でいられるのは今のうちだけだ!! 寿命を削る大技! 光龍覚醒した俺に勝てると思うな!!」

 

 

 

 石田も光龍覚醒した自分の強さに絶対の自信があるのか、余裕の態度で灯を撃とうとする。

 

 

 

「貴様なんぞに見切れるおれの斬撃ではない!!」

 

 

 

 灯に鋭い一太刀が飛んでくる。石田の斬撃は並みの武道家では受け止めることすら出来ないであろう強力なものだった。それほどまでに早く、そして鍛えられているもの。

 

 だがそれは並みの武道家ならばの話しだ。この男、国吉灯は並みの武道家ではない。

 

 

 

「――はっ」

 

 

 

 灯は余裕を持って、鼻で笑いながら石田の斬撃を躱す。灯に取っては今の攻撃は遅すぎるようだ。

 

 

 

(おれの斬撃を軽々と躱した!? いや! まぐれだ!)

 

 

 

 石田は自分に言い聞かせる。目の前のこいつはまぐれで躱しただけ。次こそ仕留めると。間を置かずに直ぐ様第2撃、第3撃と繰り出していく。その斬撃は第1撃目と同じく、どれも鋭く、早いものだった。

 

 その連続で繰り出された斬撃ですら灯は軽々と躱していく、しっかりと石田の太刀筋を見て、鍛えられてるであろう斬撃を次々と躱す、躱す! 躱す!! 

 

 

 

「ち!」

 

 

 

 当たらないことに苛立ちを隠せないのか、石田は大きく舌打ちをしてなぎ払いを繰り出す。今までの斬撃に比べるとあまりにもおお振り、灯にとっては隙が出来たとしか言えないもの。

 

 だが灯は反撃を出すことなく、そのなぎ払いに合わせて大きく跳躍。そのまま工場の一部分、何かのタンクの様なものに片膝を立てて座り、上から石田を見下す。

 

 

 

「おいおいおい、そんなもんかよ。大将っつっても大したことねぇな。態々俺が出張る必要なかったじゃねぇか」

 

 

 

 灯はつまらなさそうな表情を浮かべながら石田を挑発する。明らかに石田を怒らせることを狙ってるかのような見え見えの挑発。

 

 そしてこの石田、灯の挑発を受け流すほど出来た人間ではなく、ましてや受け流せる状況ではなかった。

 

 

 

「きっさまーーーー!!!!」

 

 

 

 石田は怒りを爆発させ物凄い形相を浮かべながら灯を見る。その視線に対して、灯は悪戯っ子のような笑みを浮かべつつ、タンクの上から下りてくる。

 

 降りてきた瞬間、石田が猛スピードで灯に迫って来る。が、灯は笑みを崩さない。

 

 

 

「くらえ!! イナズマブレイド!!!!」

 

 

 

 電撃を帯びた力任せのなぎ払い。だが今まで斬撃の中で最も早い、そしてその分威力もある。その斬撃を灯は慌てることなく、しゃがむ事で回避、そして今度は隙を見逃さない。石田の顎目掛けてアッパーを繰り出す。

 

 

 

「な! ぐっはぁ!!」

 

 

 

 石田は刀をおお振りしているため避けることが出来ずにモロにくらってしまう。顎に攻撃をもらった事により体が言うことを利かず、意識が一瞬吹っ飛ぶような感覚に襲われた。その出来たチャンスで更なる追撃をかける。右足を前に掲げ、それを石田の腹めがけて真っ直ぐ放つ。俗に言うヤクザキックだ。

 

 

 

「ぐっほぉっ!!」

 

 

 

 石田は吹っ飛び工場の壁にぶつかったことで動きを止める。石田は動かない、いや動けない。この勝負は灯の勝ち、そして大将を討ち取ったことにより川神学園の勝ちだ。

 

 灯は首を動かし川神学園の生徒がいないか探す。大将を討ち取ったのだ、勝鬨を上げる必要がある。だが自分で上げるのはメンドクサイ。そのためそこらへんの生徒を捕まえて上げさせようと考えたのだ。

 

 辺りを探したのだが川神学園の生徒は見つからない。仕方ない、そう思った灯はこの場を離れて別の場所で探そうとした――その時

 

 

 

「くっ………おのれぇ…」

 

 

「ん、なんだまだ立つのか」

 

 

 

 石田が立ち上がってこちらに向かってきた。だが光龍覚醒は解けたのか、髪の色は元の黒色に戻り、戦闘力も落ちている。ましてやボロボロ。石田に勝ち目は到底なかった。

 

 

 

「今度はしっかりとどめをさしてやる」

 

 

 

 1つため息をついて体を反転させ石田に向かおうとする。すると――

 

 

 

「とどめは止めるんだ。決着は付いている」

 

 

 

 不意に肩を掴まれた。誰だ? そう思い灯は後ろを向く。するとそこにいたのは1人の少女だった。川神学園の制服を着ていて、髪型はポニーテールの黒髪。顔立ちは整っていて女性でありながらも凛々しい感じがした。何より目を引いたのは腰に刀を刺していることだ。

 

 

 

「天神館のお前もよく戦ったが限界だろう。ここまでだ」

 

 

 

 灯が話しかける前に、少女は石田に降伏を呼びかけた。その言葉の中には相手を労わる優しさが込められている。

 

 

 

「く……そ……」

 

 

 

 石田は灯にたどり着くことが出来ずに力尽きた。どうやら根性と怒りだけで立ち上がってきたらしい。

 

 石田が倒れたことにより、漸く落ち着くことが出来る。灯は少女に話しかけた。

 

 

 

「なぁ、君は誰だ? 俺は君みたいな可愛い子知らないんだが?」

 

 

「か、可愛い……よ、義経の名前は源義経と言う。今日からこの川神学園の2年S組に編入することになったんだ」

 

 

 

 源義経と名乗った少女は可愛いという言葉に困惑しつつも灯に自己紹介をする。

 

 

 

「源義経? それ日本の英雄様の名前じゃないか」

 

 

 

 灯が口にしたことは不思議以外の何にでもない。源義経とは過去の日本で活躍した英雄の名前、もう何年も前に死んだはずだ。

 

 

 

「義経は武士道プランの子なんだ」

 

 

 

「武士道プラン?」

 

 

 

 訳の分からない事だらけだ。だが灯は1度考えることを放棄して義経にあることを押し付けた。

 

 

 

「まぁ今は君が何者であろうと関係ない。それより義経ちゃん、1つ頼みがあるんだ」

 

 

「何だ、義経に出来ることなら頑張ろうと思う」

 

 

「勝鬨を上げてくれないか」

 

 

「え?」

 

 

 

 義経は思わず目が点になった。それもそうだろう、義経は戦っていない、ましてやこの東西交流戦に参加してないのだ。

 

 

 

「よ、義経が上げるわけにはいかない! 相手の大将を倒したのは君だ」

 

 

「だけど俺が上げるのはメンドイんだよね、だから1つ頼まれてくれないかな?」

 

 

「そ、そうなのか? なら」

 

 

 

 義経は大きく息を吸った。

 

 

 

「敵将!! 全て討ち取ったぞーー!!!!」

 

 

 

 義経の凛々しくて逞しい声が工場内に響き渡り、東西交流戦は幕を降ろした。


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